かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ジェイムズ聖地へ行く』
2007年 07月 15日 |
社会見学。お金を巡る冒険。

アフリカの村で次期牧師に任命された若者ジェイムズは聖地エルサレムへ巡礼の旅へ出かけるが、不法労働者と間違えられ留置場へ放り込まれてしまう。そして、保釈金の借金を負わされ働かされることになる。



エルサレムを目指す巡礼の旅もの、ロードムービー仕立ての映画かなと思ったら、滞在型だった。イスラエルへは飛行機でひとっ飛びなのだけど、エルサレムへの巡礼を果たすことができないまま、労働をする羽目になるトホホな物語。と出来事は滑稽なんだけど、純真なジェイムズが常に真顔なものだから、ストレートなコメディとは異なった風変わりなタッチに感じられた。宗教や民族の壁にまつわるエピソードなんかもあるのかなと思っていたんだけど、それより何よりこの世の拝金主義について考えさせられるばかり。理不尽ながらも地味な毎日が淡々と流れていくので、心もち退屈に感じられることもあったのだけど、テーマには大いに引かれるものがあり、その諷刺を興味深く味わえたかな。

それは神の与えた試練と、受難をも大らかに受け止める真面目なジェイムズ。国ではこれから牧師になるという徳のある偉い人なのに、イスラエルでは低賃金で掃除の仕事をやらされるなんて酷い扱いだ。母国ではインテリであっても、政治的な事情などで移民した国ではブルーカラーの仕事に就かざるを得ないことってよくあることなんだよね。アフリカ人といったら、不法就労が目的だろうと決めつけられる空港職員の偏見も酷い。むやみにテロリストの疑いをかけられるイスラム圏の人たちも大変だろうし。自由に行き来できても壁の厚い国際社会に苦笑い。

純粋なる信仰心をもって聖地を目指していたジェイムズが次第に資本主義経済社会のシステムに慣らされていく。それを見つめるのはとても複雑な心境。いえ、諷刺コメディなのだから、それを笑い飛ばしていればいいのだけど、ピュアな人間が汚れていく姿を見るのは寂しいのだもの。こういうのって、拝金主義な世の中に疑問をもっていなかったら、無知な田舎者の主人公が処世術を身につけて、経験を重ねて成長して行くサクセスストーリーとして応援モードで見ることもできたのかもしれない。でも、そうではないから、ニヤリとしつつもちょっとため息。世の中はお金で回っているっていうことを憂えても仕方ないのだけど、こうやって皆がそこにどんどん取り込まれていくのねー。

これはまぁイスラエルの社会を諷刺しているのだけど、そこがいわゆる聖地であるのに・・・という皮肉な部分をのぞけば、アメリカも日本も同じようなものだよね。日本なんて、低賃金の外国人労働者の雇用を促進しよう!コスト削減のためにーなんてフレーズが当然のように使われているもんね。もしくはシャットアウト。

「フライヤーになるな」という繰り返し使われる台詞が印象的。フライヤーとはヘブライ語で搾取される者を指すらしい。結局、社会の生存競争で生き抜くことは、他者に負けないで優位に立つことが必須なのだろうか。搾取する者と搾取される者のどちらかしかあり得ないのだとしたら、そりゃあみんな賢く効率よく楽に生きたいよね。そうやって、教えを受けたジェイムズは自ら地道に労働することをやめて、斡旋業で利益を得るのだった。無垢だったジェイムズがそういう変化を体現するのを見るのは寂しいけれど、楽して儲けることをみんなが夢見ている国に住む私にそれを非難することはできないかも・・・。あーめん。

James'Journey To Jerusalem
2003 イスラエル  公式サイト
監督 ラアナン・アレクサンドロヴィッチ
プロデューサー アミール・ハレル
出演 シアボンガ・シブ、サリム・ダウ、アリー・エリアス、サンドラ・ショーンワルド
 (渋谷 アップリンク X)
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by CaeRu_noix | 2007-07-15 23:59 | CINEMAレヴュー | Trackback(1) | Comments(2)
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Tracked from ゆるり鑑賞 at 2007-07-18 23:34
タイトル : ジェイムズ聖地(エルサレム)へ行く
シネ・ヌーヴォX にて鑑賞。(2003年/イスラエル) 【物語】 アフリカの村で次期牧師に任命された、敬虔なキリスト教徒の青年 ジェイムズ(シアボンガ・シブ)は、“聖地”エルサレムへ巡礼の旅に出る。 しかし、イスラ... more
Commented by ぺろんぱ at 2007-07-18 21:30 x
TBありがとうございました。
頭を打たれる感じもあった映画ですね。
この世界は広いのだなと改めて感じ、「溜息」だったです。
Commented by CaeRu_noix at 2007-07-19 15:34
ぺろんぱ さん♪
そうですねー。とても面白い切り口の映画でした。
常々断片的に疑問を持っていたことがジェイムズの体験を通して、浮き彫りになっていくところは痛快でもあり、そういうふうに世の中が回っていることにため息をつくしかなかったり。
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