かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『マラノーチェ』 Mala Noche (1985)
2007年 08月 22日 |
繊細に描かれた青春模様が愛おしいのがガス・ヴァン・サント作品。

ポートランドの小さな食料品店で働くウォルトは、メキシコからやって来たジョニーに出逢う。



ホームタウンともいえるオレゴン州ポートランドを舞台に、地元出身の詩人ウォルト・カーティスの自伝的小説を映画化。映画祭で上映されただけのガス・ヴァン・サントの伝説の長編デビュー作が最先端のHD処理により蘇る。

復元されたというだけあって、そのモノクロ映像はとても美しいものだった。マラノーチェって、最悪の夜っていう意味なのね。最悪と感じてしまう落ち込む出来事があろうとも、闇に浮かぶライトが目映い美しい夜。街の風景の切り取り方もステキなんだけど、ウォルトのヒゲがいちいち気になってしまうような人物のクローズアップの大胆さも印象的。店で働き、車を走らせ、友人たちと談笑する日常が、瑞々しく描かれている。まだ洗練されてはいないんだけど、その粗さも含めて、ガスのセンスを感じてしまう映像・演出なのだ。

ゲイの主人公の思いを綴る感傷的な寂しいトーンの物語なのかと思いきや、案外飄々として軽快さすら感じさせるものだった。主人公ウォルトは初っぱなから積極的で、ジョニーと寝ることができるなら150ドルあげるよなんてことも簡単に言っちゃうんだもん。なんだ、そんなにデリカシーのない展開なのかと思ったら、やはりコトはうまくは運ばずで、思いは届かないまま変な三角関係状態になってしまうところがおかしい。お金に困っているラティーノくんをお金で買おうとしたわりに、予想外のコトの顛末に痛みを感じたり。行動は軽いんだけど、胸の奥の思いは繊細だったりするところがよかったな。

ウォルトのジョニーへの思いは叶わないんだけど、スパッと拒絶されるわけでもなくて、三角関係状態のまま、つかず離れず、不思議な友情を保つところがイイカンジで興味深い。心の奥底ではせつない思いを噛みしめていても、しみったれた感じはにじみ出ていなくて、彼らの日常がとても微笑ましいの。ドライブシーンが楽しかったなぁ。不法移民の彼らの暮らしは危険で苦難に満ちているはずなのに、ジョニーとロベルトはエネルギッシュに元気なんだもん。いたずらっ子な男の子たち。ウォルトが惚れるだけあって、ジョニーの笑顔はとてもキュート。

哀愁のラテン音楽、ギターの音色がせつなく響いて、物語を情感豊かに彩る。音楽のセンスももちろん素晴らしい。思い人がラティーノだから、ラテンのメロディを使ったのだろうか。ゲイの物語でラテン音楽の調べというと、『ブロークバック・マウンテン』を思い浮かべてしまったのだけど、本当はこっちがずっと先に作られていたんだよね。音楽はもの悲しいのだけれど、ウォルトは観客に悩んでいる姿を見せないところがいいな。最近の作品に比べると、朗らかさを感じさせるもの。『ブエノスアイレス』のこともふと思い出した。

ほろ苦くてせつないのだけど、なぜかかわいい物語だったなーっていう印象。エンディングのカラー映像がすこぶるハッピートーンだったからかな。青春映画色の強いところが好きだな。胸キュンに気に入っちゃった。
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by CaeRu_noix | 2007-08-22 23:58 | CINEMAレヴュー | Trackback(2) | Comments(4)
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タイトル : マラノーチェ
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Commented by ふぇあるーざ at 2007-08-25 19:48 x
かわいくてきれいな映画でした。
雨は冷たいし、昼間はカラっと湿っぽい(←わけがわかりませんが)、風が見えるようでした。
ジョニーとロベルトはその日暮らしなのに精神も肉体も元気一杯なので、痛々しいところがなくて観ていて気持ちよかったです。

ウォルトのお店でウォルトを頭上から撮ったショット、『ランブルフィッシュ』でトム・ウェイツが演じた“ベニーズビリヤード”の店主ベニーが語るシーンそっくりでした!そっくりというか、そのものです。


 
Commented by CaeRu_noix at 2007-08-26 12:06
ふぇあるーざ さん♪
かわいくてきれいでしたね。『マイ・プライベート・アイダホ』 みたいな感じをイメージしていたので、 こんなにかわいい印象が強いとは思いもよらずー。カラっと湿っぽいっていうのは言葉的には矛盾してはいるんだけど、まさにそういう雰囲気でしたね。乾いた感じと濡れた感じの両方があるんだなぁ。そして、風。
そうなの。過酷な境遇の不法入国の2人なのに、悲痛さや惨めさはなくて、元気でかわいくて、そこがよかった。
おお、『ランブルフィッシュ』にそっくりなシーンですと!それは影響を受けたというより、おまーじゅを捧げていたってことなんでしょか。そんなのを今発見できるのは嬉しいですね。
Commented by ぺろんぱ at 2007-08-26 19:18 x
コレ、観たかったのですがレイトしかなく見送ってしまいました。
かえるさんのレヴューを読ませて頂いて、是非ガス作品をなぞってみたい思いに強く駆られています。
結構“痛々しい”トーンの作品かと想像していましたが、「胸キュンで」とのかえるさんの言葉により、一層今作が気になる今です。
Commented by CaeRu_noix at 2007-08-27 00:46
ぺろんぱ さん♪
そうなんですよね。レイトな扱いで残念です。
私はそれほどにガスファンでもなかったのだけど、近年になって興味が増しています。『エレファント』、『ジェリー』、『ラストデイズ』あたりを観て、また昔の作品が観たくなったのでした。そして、この長編処女作は、客観的な感じではなくて、主人公に寄り添っていて、シンプルだけどとても温かい感じがしたんですよ。うん、これは好き。DVD化した際にはぜひ観てほしいですー。胸きゅんしてくださーい。
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