かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
latchodrom.exblog.jp
(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
Top
『ドッグ・バイト・ドッグ』 狗咬狗
2007年 08月 27日 |
演出は好感触。クール一辺倒でいってほしかった。

カンボジアで生まれ育った青年パンは、殺人の依頼を受けて香港にやって来た。刑事ワイはパンを追うことになる。



タイトルからして、何やらクールでカッコいい響きで、そのオープン・クレジットのデザインもなかなかスタイリッシュ。ジョニー・トーの『PTU』ばりに冷徹でクールなバイオレンスものの予感がしてわくわく。血みどろな残酷シーンは決して得意じゃないけれど、徹底した激しいバイオレンス描写には時として圧倒されて魅了されてしまうのだ。状況説明がされないままに、噂どおりに冷酷非道な暴力シーン、殺し合いが展開。目をそむけたくなるシーンもたくさんあるのだけど、鮮烈に駆け抜けるその勢いがむしろクールでカッコいいじゃないか。演出にかなりの手ごたえを感じた。

と状況説明がほとんどなく進み、登場人物に感情移入させない非情さがいいじゃんと思ってしまった私は、むしろ後半のドラマ展開に気持ちが萎えてしまった。普通はたぶん逆で、前半の非道さには耐え難くても、後半の彼らの過去が見えてきたり、殺人マシーンな青年が少女と出会って温かなやり取りをするところにおもしろみを感じるのだろうけど、私にとっては残念な筋書きだった。

それも説得力をもって描いてくれたらもう少しノレたのかもしれないけど、殺人マシーンとして育てられた悲しい青年とまた違った不幸を背負った少女が出会って行動を共にするなんてちょっと陳腐に感じられてしまったのだよね。あの少女役の演技は評価されているらしいけど、言葉が通じず足を引きずりながら、健気な表情をする少女という、いかにもな状況の熱演には、わざとらしさを感じてしまったりして。せっかくノワールの香りがしたのだから、とことんクールにいってほしかったのだけど、可哀想な無垢な少女が重要な役どころだったことは個人的にはOUTだったな。

でも、エディソン・チャンは素晴らしかった。『インファナル・アフェア2』でしか観たことなかったけど、ずいぶんと魅せてくれる俳優になったものだ。バイオレンスは苦手な女性も彼の演技は堪能したことでしょう。非道な殺し屋なのに、寂しげな感じがまたカッコよくて、無意識にパンを応援してしまっていたような。愛嬌あるイメージのサム・リーが、ここでは暗い過去を抱えていて、これまた刑事なのにこの上なく冷酷に暴力的。目を見開き驚嘆する表情が印象的だった。

相手を傷つけることが目的の暴力は激しさいっぱいでも、バイオレンスという映画の中ではいちいち気にせずに見ていられるんだけど、おなかにナイフを入れるところには血の気が引いた。ひょっとしてここは、人の命を奪い続けて来た男が新しい生命を本能的に救う突き抜けた感動シーンなのかなと思いつつ、気持ちはついていけなかったなぁ。希望のあるラストなんだろうか。ちょっと妙。独創的ではあるけれど。
「You are my sunshine」の使い方もプププ。
[PR]
by CaeRu_noix | 2007-08-27 18:54 | CINEMAレヴュー | Trackback(4) | Comments(10)
トラックバックURL : http://latchodrom.exblog.jp/tb/6039632
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from 地球が回ればフィルムも回る at 2007-08-28 00:52
タイトル : 香港B級バイオレンス映画『ドッグ・バイト・ドッグ』
[画像] 『ドッグ・バイト・ドッグ』 この映画は5分の4までは退屈・・、というのか、えんえんと続く非情なバイオレンス描写に、なんで自分はお金を払ってこんな映画を見ているんだろうか・・という気さえ、してくる・・。が、この映画は本当に、終盤の、あまりにも異様な展開のためにあったのだ。それまでの5分の4は終盤部のための長い序章でしかなかったのかもしれないと思う。 そして、この映画の終盤部の5分の1はあまりにも異様であり、神がかり的であり、荒唐無稽である。 この映画が無謀なただの怪作(快作ではなく怪作...... more
Tracked from まてぃの徒然映画+雑記 at 2007-08-28 22:44
タイトル : ドッグ・バイト・ドッグ 狗咬狗
超弩級の暴力映画。陳冠希演じるカンボジアからの密入国者。貨物船の船倉に入り、満足にご飯も食べられない。港に着くとタクシーが待っていて、場所が指定され金が支払われる。レストランで猛烈に点心を平らげ、写真の女性を殺害する。通報を受けやってきた警察の一人、李...... more
Tracked from 映画通の部屋 at 2007-09-01 20:54
タイトル : ドッグ・バイト・ドッグ
「ドッグ・バイト・ドッグ」狗咬狗/DOG BITE DOG/製作:2006年、香... more
Tracked from MY HIDEOUT〜私.. at 2007-12-02 23:25
タイトル : 「ドッグ・バイト・ドッグ」(2006・香港)
"DOGBITEDOG""狗咬狗"監督・・・ソイ・チェン出演・・・エディソン・チャン、サム・リー、ペイ・ペイ、ラム・シュー、チョン・シウファイ、他。・物語序盤・1人の殺伐とした風貌の若い男が香港へとやって来た。カンボジアから来た彼の名はパン、プロの殺し屋である。パン...... more
Commented by kusukusu at 2007-08-28 00:48 x
うーん、たぶんこの映画に描かれる恋愛像が違和感を覚えるものだったのではないでしょうか?
それは、僕でさえ、たしかにこの映画の恋愛像はどうなのかなー、さすがに陳腐かもしれない・・と感じるところはありましたもの・・。
でも、この映画の主人公のような、常軌を逸した生い立ちの人間が恋愛するとすると、たしかにこういう原始的な(?)恋愛なのかもしれないなあ・・と思うところもあって・・。

これは『フランドル』もそうなのだけど、白痴(うーん、差別語かも?)的な女性に男が聖性を見出すみたいなのはやっぱりひと昔前の映画とか少女マンガみたいな感覚でまずいのではないかと思うところはあるんだけど、一方では妙にそういうものに興奮してしまうところは実はあって、そういうのが出てくると、僕は何か、「こういうのに興奮してしまってはいけないのではないか?」という気持ちと、たしかに興奮してしまっている自分との間でなんとも言えない気持ちになってしまいます。結果としてはそういう作品は印象に残ってしまうわけですが・・。(なんとも言えない気持ちになる、ジレンマみたいなものを感じるからこそ、印象に残る作品になってしまう・・。)
Commented by CaeRu_noix at 2007-08-28 19:17
kusukusuさん♪
少女からみの部分には強い違和感があったと思います。でも、「恋愛像」というほどに、私はそれを恋心だとは思っていなかったかなと。ま、恋愛感情のような思いは芽生えたのだろうけど、相手が8歳の少女でも物語は成立したんじゃないかというとらえ方。弱者を守る慈しみの心というカンジの人間らしい感情を彼はもったんだなぁって。だから、厳密に「恋愛像」に違和感をもったというのとも違う気がするんですよね。恋の対象の女としてどうのというより、可哀想な少女を登場させ、コミュニケーションもままならない状態で行動を共にするというのが狙いすぎで冷めちゃうカンジ。
そうかー、あれは恋愛だったのかーと今知りました。それはさておき、フランドルと合わせて、白痴的な女性に男が聖性を見出すという物語だから、受け入れがたいものがあるというのも言えてるかもしれません。じゃあ本作は男性の方がハマれるのかもしれませんね。少女漫画だったら、平凡な少女がステキな男性に救われるので、これは少女漫画の世界などではなくて、少年漫画??とにかくそういう男性好みの物語だから、私はハマれず、kusukusuさんは逆にのめり込めたのでしょうかね。興奮しました?w
Commented by まてぃ at 2007-08-28 22:44 x
こんにちは。
私はこの映画のあまりの非情さにちょっと引きながら見ていました。
エディソン・チャンとサム・リーの演技は、「ここまでの演技ができるようになったか」と、ちょっと上から目線で。でも二人とも素晴らしかったですよね。
Commented by kusukusu at 2007-08-28 23:27 x
>少女漫画だったら、平凡な少女がステキな男性に救われるので、これは少女漫画の世界などではなくて、少年漫画??

あ、そうか。たしかにひと昔前の少女マンガというのは、なんか、貧しくて不幸な少女が王子様みたいな男に見初められて・・みたいな感じ(?)だから、こういう白痴的少女の話とはちょっと違うのかな。かといって、ひと昔前の少年マンガでもあまりない気がするけれども・・。
やっぱりマンガよりも、ひと昔前のアート系映画みたいな感じなのかな? フェリーニの『道』とか。

>興奮しました?w

まあ、でも、上のように書いたけれども、少女との話の部分ではそんなにこの映画に感動して、興奮したわけでもないけれども。。
それ以外の部分でこの映画はちょっと興奮しましたが・・。
Commented by kusukusu at 2007-08-29 10:55 x
>そうかー、あれは恋愛だったのかーと今知りました。

むむ、僕は、この映画の主人公のような、愛情というものをまったく知らずに育ち、他人を殺すことになんにも感じなくなっているというような人間が「弱者を守る慈しみの心というカンジの人間らしい感情」を持ったというのは十分に「恋愛」として成り立っていると思うのだけど・・。逆にそれが恋愛であることは僕は疑わずに見ていたので、かえるさんのように「恋愛」ではないという見方もあることを今、知った(笑)。
たしかに、自分がこういう恋愛をしたいと普通に憧れるような恋愛ではないとは思うけれども・・。
というか、僕が思うのは、自分が思う「恋愛」というイメージ(概念)、「恋愛像」自体があくまで特定の時代とか環境の中で形成されたものでしかないのではないかということです。僕らはこの時代にこういう社会の中で生きてきて、子供の頃から周囲の恋愛する人間を見たりそういうフィクションに触れたりしてきて「恋愛とはこういうものだ」というイメージを持つようになり、憧れているに過ぎないわけでしょう。
Commented by kusukusu at 2007-08-29 10:56 x
でも、たとえば原始の縄文人にとっての恋愛というのはまったく違うものなのかもしれないと思うんですね。だけど、それはあくまで、21世紀の社会に生きる自分が抱く「恋愛」のイメージとは違うということであって、原始の縄文人の男と女の間であったコミュニケーションが自分が今抱く「恋愛」の概念、恋愛像と違うものだとしてもそれが「恋愛」ではないということは言えないのではないか?と思うんですね。
で、この映画の主人公のような特殊な状況で育った人間であるならば、そもそも僕らが持っているような「恋愛」という概念自体をこの主人公が持っているのか否かもよく分からないんですが(もしかしたらこの主人公は「恋愛」という言葉自体、まったく聞いたこともなくて知らないかもしれないし)、特定の人間に対して「弱者を守る慈しみの心というカンジの人間らしい感情」を持った・・というのはやっぱり恋愛の一種であるように思うのですが。
Commented by CaeRu_noix at 2007-08-30 00:16
まてぃ さん♪
とことん非情なバイオレンスでしたよね。引きながら観ちゃうというのはわかります。私は逆に、非情な部分の方がノリノリだった大非情者です・・・。
エディソン・チャンはホントにうまかったですよね。インファナル2の片割れのショーン・ユーは龍虎門でコミカルにいっていたのに比べ、一歩リードなカンジ。久々にサム・リーに会えたのも嬉しかったけど、笑顔が見たかった。
Commented by CaeRu_noix at 2007-08-30 00:20
kusukusu さん♪
恋とかあらゆる抽象的な言葉の概念は人それぞれのものですよね。"恋愛"というのももちろんそう。前に、好きな恋愛映画の選出を数人でした時に感じたのは、私の"恋愛映画"の枠は他の人より狭いということ。他の人にとっての恋愛モノが私にとってはそうじゃなかったんです。今回もそういうカンジかな?それから、男と女の違いもありますよね。歳を重ねてからは、男女差はなくなるかもしれませんが、初恋だとか若い頃の恋でいうと、"守ってあげたい"という思いは、男子には恋愛感情の一部なのかもしれないけど、女子には別ものという気がします。だから、私の感覚だとどうしても、愛というなら"弱者を守る慈しみの心というカンジの人間らしい感情"を含むのもわかるけど、男女間におこる恋はそれとは微妙に違うと感じてしまうんです。イラン映画の『少女の髪どめ』も恋愛ものというよりヒューマンドラマとして受け止めた私でした。
彼のような育ち方をした男の恋心ってどんなものなのかはよくわからないけど、私の概念においてはあれは恋じゃないんです。まぁ、どのみち虚構なんですけど、作り手は恋愛として描いた可能性が高いですね。
Commented by となひょう at 2007-09-01 21:00 x
こにしわー
ご覧になっていたんですねぇ!
かなり強烈な描写も多かった気がしますが、大丈夫でしたかー?
私は、何となく黄色い雰囲気が気に入りました。
エディソンも金髪だった?あっ、それは気のせいだったかも。

私も、ペイペイはそんなに印象に残っていないんですよ。
男性目線だと、健気で愛らしいのかなぁ
女性目線だと、やっぱりエディソンとサムですよねー
サム・リーには私も愛敬のあるキャラってイメージを持っていたし。
エディソン・チャンは、『呪怨 パンデミック』にも出演していて。英語も日本語も堪能という設定だったんですよ。今回の汚い役作りは、『美しき野獣』のクォン・サンウの頑張りを遥かに凌ぐ迫力でした。
2人とも、とても見直しましたー。次の作品では、どんな顔を見せてくれるのか楽しみですー。
Commented by CaeRu_noix at 2007-09-03 00:35
となひょう さん♪
強烈バイオレンスでしたねー。
それは事前に知っていたので、フツーの殺し合いシーンは平気でした。もはや、タランティーノ映画の暴力シーンを見るのと大きく変わらないようなカンカクでいられます。でも、ラストのお腹切るシーンは全く予想外だったので、キャーやめてーって生理的に引いちゃいましたです。
エディソン、金髪じゃなかったですっけ?とにかく黄色みがかったり、青みがかったりする映像はありがちながら好みでしたー。

ペイペイってあの少女?私は印象に残っていないとかじゃなくて、彼女を重要な役柄として登場させた構想自体が好きじゃなかったみたいです。印象に残らなかったらよかったんですけどね。彼女が絡んでから冷めてきました。個人的には女は登場させない方がよかったのになーって思いました。女を出すなら、『ワンナイト・イン・モンコック』の娼婦キャラみたいなおきゃん娘の方が好きかな。
エディソン・チャンは国際的に活躍しているようですね。とにかく本作の演技はすんばらしかったですよねー。
<< 『クレイジー・ストーン -翡翠... PageTop 8月25日の公開映画ちぇーっくなど >>
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Beige Shade by Sun&Moon