かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ブラック・スネーク・モーン』
2007年 09月 17日 |
独創的でクールにして鮮烈。

アメリカ南部で畑仕事をして暮らすラザラスは、ある日道端で半裸のまま血だらけで倒れている若い女を見つける。



このタイトルにこのフライヤーの写真だもの、初めはバイオレンス作品かと思っていた。だって、黒い蛇でチェーンですよ。ちょうど同時期にデス・プルーフが公開されるから、こっちは観なくてもいいかなと思ったりした。最初は監禁エロ映画と思ったんではなく、チェーン振りまわして闘うオハナシだと思ったんですよ。クリスティーナ・リッチーったら、いつの間にアクションもやるようになったんだっけか?とぼんやり思いつつ。

そして、公開が近づく頃に、私の抱いていたイメージとはまるで違うタイプの作品だとわかってきた。これは意外とヒューマンドラマであり、 『ハッスル&フロウ』の監督が手がけているブルースな映画なんだ。フリーペーパーの「boid paper」No6に書かれている文章にひかれた。これはアメリカ南部の物語なんだ。今回も舞台は独特のにおいのある南部で、その土地に染みついている音楽が奏でられるってわけだ。一つの土地にこだわって撮り続ける監督って好きなんだよなー。今回は、『ハッスル&フロウ』のような音楽映画という感じではないけれど、魂に訴えるブルースが鍵になっているところが心にくーい。そして、ジーザス。

南部の田舎町で農業を営む元ブルースマンのラザラス。その地に足のついた暮らしぶりがカッコいい。妻の裏切りに打ちのめされて心の葛藤もあったに違いないけど、どっしりと肝が据わり彼の日常は落ち着いている。片や、トラウマを抱えたレイは、衝動を抑え込むことはできずに、自分を貶めるようにアバズレ女の道を突っ走る。C・リッチが普通に可愛くてビックリ。サラ・ポーリーかと思った。オフビートにけだるい女のイメージが強かったから、こんなに思いきり男に依存する脆くてお馬鹿な女が板につくとは。エロさと痛々しさいっぱいに体当たり演技で見せてくれたカンジ。

これは、そんな正反対ともいえる2人が出逢うべくして出逢ってしまう物語。傷つき荒みきった彼女を放っておけないラザラス。穏やかに包み込むような優しさを見せるのでもないけど、彼女を立ち直らせようとする献身的な本気ぶりが頼もしくてかっこよすぎ。あり得なさそうな気もするんだけど、ラザラスの人となりにはその善意に説得力があるんだよね。途中までは、鎖利用の危ない方向に走るんじゃないかというドキドキ感もあったんだけど、次第に本気でラザラスのレイへの真剣な行為に感動しちゃうカンジ。血迷った若者たちを更正してくれるブルースマンがこの世には必要かも。力強く導いてほしいー。そして、立ち直ったレイがロニーに手を差し伸べるラストが心に沁みるのだ。

出会いによる再生の物語といってしまったら、それはありふれているんだけど、その設定とディテールは思いきり独創的。ハリウッドメジャーはリメイクや続編ばかりだけど、現代アメリカ南部を舞台にこんなにオリジナリティにあふれた物語が紡がれるなんて素晴らしいじゃない。ストーリーだけをたどったなら、ずいぶん強引で奇妙なものなのかもしれないけれど、映画としてはかなりキマっているよね。サミュエル・L・ジャクソンとクリスティーナ・リッチの存在感が見事に活きるワンショット、ワンショットのビジュアルのインパクトが最高だよね。気持ちのいい構図がいっぱいで、その画づくりのセンスに注目。そして、そこに重なる音楽がやっぱり最高にクール。

極上の音楽に陶酔することって、それは官能的ですらあって、そこにはエクスタシーやカタルシスがあるんだよね。ブルースを聴けば、暴れる蛇も音楽に合わせて踊るのだ。ヘンなオハナシなのに、すこぶる爽快な後味のカッコいい映画。
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by CaeRu_noix | 2007-09-17 23:31 | CINEMAレヴュー | Trackback(8) | Comments(8)
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Commented by minori at 2007-09-19 20:06 x
こんばんわーん。
おお、まだ観てないのでかえるさんのレビューはチラ見ですけど、とうとうこれ、日本にやってきたんですねー。というのも、私のお気に入りのpodcastで絶賛されてる映画なんですよねー。これ。早くみたいなー。仙台ではいつ見れるのやら…ホント(笑)かえるさんも好感触らしいし、きになるわーん。
Commented by CaeRu_noix at 2007-09-20 00:01
minori さん♪
おお、絶讃されていましたかー。
そうなの。へんてこなオハナシなのに気持ちいい出来映えの映画たる映画でっす。この監督、名前が憶えられないんだけど、とってもセンスがいいし、映画のつくり方をわかっているなって感じです。
でも、本作は内容的にはminoriちゃん好みでもなさげな気もするんですが、どうでしょうー。早くそちらでも公開されるとよいねー。
Commented by とらねこ at 2007-09-20 12:09 x
こんにちは☆かえるさんも絶賛で、とても嬉しいです☆
>今回も舞台は独特のにおいのある南部で、その土地に染みついている音楽が奏でられるってわけだ。一つの土地にこだわって撮り続ける監督って好きなんだよなー
そうなんですよね。この辺りが、なんとも強烈に感じるんですよね、この監督さんが作ると。
『ハッスル&フロウ』の時も、随分と、リアルな黒人の“体臭”まで表現したような、ぶっとさを感じたのですが、今回も、これまた強烈。

>その設定とディテールは思いきり独創的
そうですよね!強烈な画ズラに、感激しました。
ストーリーが浅い、という意見も見受けられたのですが、私としては、南部の強烈な匂いと、この画ズラ。ストーリーも何も、この濃ゆさがヨカッタんです。
Commented by CaeRu_noix at 2007-09-23 00:28
とらねこ さん♪
絶讃です!アメリカ映画はこうあるべしってカンジです。
映画はやっぱり独創的なインパクトが大事ですよね。南部の土地柄がジットリと感じられて、強烈なことが魅力でしたー。そうそうそう、『ハッスル&フロウ』も見事でした。体臭まで描写されていたと思います。そういう質感をしかと表現できる芸達者な俳優をちゃんと起用していることも素晴らしいし。ヘンな物語なのに、すこぶる完成度高さを感じたんですよねー。画ズラもセンスよすぎー。
ストーリーが浅いとか薄っぺらいとかいう感想は何の映画でもよく見かけますねー。ストーリーが浅いって、出来事に起伏がないということでしょうか?物語はシンプルだけど、そこに描かれたものは奥深かったと私は思いますー。映画は演出が大事。空気感が全てですよねー?
Commented by minori at 2007-09-27 22:28 x
かえるさん、こんばんわー。
いつやってくるかわからないので友達に頼んで英語で見させていただきました。いやー、話題どおり久々にサミュエルの真の演技を見た気がしました。同じ蛇でもスネーク・フライトとは大違い。あれはお金儲けのためなのか…。
「ハッスル&フロウ」も英語鑑賞につき、何だか真のよさまでは追求できていないような気もしますが、ささやかな幸せを描くこの監督に共感。
ブルースまで楽しませていただいて、私の中では満足でした。
TB送りますねー。
Commented by CaeRu_noix at 2007-09-28 23:55
minori さん♪
英語ONLYでご覧になったなんて素晴らしいー。
あんど親切で重宝なお友達なり。
スネークフライトのサミュエルって手ぇ抜いてましたっけ?と、ギャラよかったのアレ? まぁ、あれは別の人でもよかったような役どころ。その点こちらのキャラはサミュエルじゃなくちゃって感じでしたよね。素晴らしい存在感。畑仕事する姿も歌う姿も。
「ハッスル&フロウ」は確かに隠語表現が多そうで難しいかも。ピンプはポン引きという字幕でしたわ。でも、音楽ものはとりあえず楽しめちゃいますよね。ブルースにもテーマ性にもしびれましたー
Commented by 狗山椀太郎 at 2007-12-19 01:14 x
こんばんは
上のとらねこさんにオススメいただいて、見に行って参りました。
予告編で、鎖につながれたC・リッチが宙を舞うシーンを見て「なんじゃいこの映画は!」と訝しげに思っていたのですが、予想外に説得力のある作品だったので驚かされました。サミュエル翁のパンチのあるギター演奏も良かった。ライブハウスで踊るC・リッチを見ながら、思わず顔がほころんできました。やっぱり音楽の活きている映画は良いですよね。終盤のハートウォーミングな展開は、W・ヴェンダース監督の『アメリカ、家族のいる風景』のような雰囲気にも感じました。
Commented by CaeRu_noix at 2007-12-19 23:21
狗山椀太郎 さん♪
椀太郎さん自身のセレクトにしては傾向がちと違うかなと思ったんですが、とらねこさんスイセンでしたかー。
なんじゃい!な素材で、こんなにも味わい深く説得力のある映画に仕上げるなんてお見事な手腕ですよね。相変わらず、メジャーラインでは、リメイクだの続編だの原作ありのものだのばかりなので、アメリカという舞台、題材で、このような独創的にエクセレントなオリジナル作品が生まれることはこの上なく重要なことだなぁと。
サミュエル翁はすごくカッコよかったです。踊るリッチーの描写なんかもめちゃめちゃよかったですよね。音楽も人間も生きているって感じでした。
わたし的にはヴェンダース作品はもっと淡色でほわわーんとしたイメージなんですよね。で、本作はとにかく濃い口な力強さを感じます。かなりバイオレンス寄りなのに、ヒューマン・ドラマとして完成しているのが素晴らしく。
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