かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『サイボーグでも大丈夫』
2007年 10月 04日 |
シュールさを乗り越える愛らしさ。

自分がサイボーグだと信じるヨングンは、新世界精神クリニックに入院させられて、青年イルスンに出逢う。



タランティーノ監督作やらタランティーノ出演作を観たばかりなんだけど、これまたタランティーノ繋がりだ。韓国の鬼才パク・チャヌクの名を世に知らしめたのは、『オールド・ボーイ』!タラちゃんが審査委員長だった年のカンヌ映画祭でグランプリ受賞。映画を観た皆が声を揃えて、タランティーノが好きそうな作品だなーって言っていたっけ。

そして今回、そんな鬼才監督が復讐三部作のあとに手がけたのは風変わりな男女の物語。最初はてっきり、サイボーグものというから、近未来SFかファンタジーな設定なのかと思っていた。ところが実際は、自分がサイボーグだと思いこんでしまった女の子が主人公で主なる舞台は精神クリニックなのだった。POPにコミカルなドラマだと思いきや、シュールなブラックユーモア劇場。これまでのようなバイオレンスものじゃないものの、そこにある痛みと屈折ぶりはやっぱりパク・チャヌクだなぁって。

病院の患者たちが奇声を発したり、あちらこちらで奇行を繰り広げているシーンはコミカルなんだけど、ここで笑っていいものかしらと一瞬戸惑った。これってかなり微妙な題材とアプローチだよね。でもね、そのうちに、そういう気まずさを持つことの方が、偏見的なんじゃないかと思えてきた。ブラックな切り口を面白がるっていうのももちろんあるんだけど、それを超越しちゃうファンタジックでロマンチックな妄想世界なのだ。へんてこ具合が可愛らしくて楽しくて仕方ないの。

自称サイボーグ妄想娘ヨンスンは、血の通った人間とは思えない無表情な不思議ちゃんぶりを見せつけてくれた。入れ歯づかいは最高。ピさんの天真爛漫な笑顔は無機質ヒロインの相手役にぴったり。妙ちくりんなカップルの姿がほほえましくって夢いっぱい。見方をかえたら、痛々しい奇行なのかもしれないというシュール感がせめぎ合うからこそ、ロマンチックな感慨も高まっていくのだった。草原もお空を飛ぶシーンも大好きさ。

ときめき禁止。気の迷いも、同情も、感謝も禁止。そんな七つの禁止事項をもつサイボーグ。それを守ることってどんなに難しいことか。ヨングンの葛藤にせつなくなりつつ、人間らしい感情がどんなに崇高かということに改めて気づかされる。お見事な切り口。そんなことを考えさせられながら、2人のピュアな思いに心うたれるばかり。

独創的でユーモアもファンタジー感もすこぶる好み。
全体的にもうちょっとテンポがよくて、美術・映像のつくりこみが徹底していたらもっとよかったかな。
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by CaeRu_noix | 2007-10-04 01:23 | CINEMAレヴュー | Trackback(11) | Comments(12)
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Commented by latifa at 2007-10-05 08:53 x
こんにちは~かえるさん!
ご覧になられたのですねー。羨ましいなー。
私は、韓国版は持ってるんですが、日本語字幕が無く・・。 
それでも30分くらいは見たんですが、やっぱり私の2歳程度のハングル力じゃ良く解らなくて・・。
最近英語字幕は発見したのですが、英語も苦手と来てる・・・(T_T)
やっぱり日本語字幕と一緒に見たいと思って、我慢している処です。

最初の部分が、「チャーリーとチョコレート工場」に似てた気がしました(別に真似したとか、そういうんじゃなくて。音楽とか、雰囲気が)
Commented by CaeRu_noix at 2007-10-05 22:32
latifa さん♪
韓国のDVDをお持ちだなんて、熱烈なファンなのですねー。
ってどなたがお目当てなのでしょうー。ピ?
30分だけご覧になったのですね。ハングル、少しでもわかるなんて素晴らしいです。でもやっぱり日本語で味わっていただきたいです。やはりやはり見どころは後半ですよー。
工場のシーンはチャリチョコっぽかったかもしれませんね。ケロッグ博士の世界なんかを思い出したり。工場のビジュアルっておもしろいですよね。痛いシーンもありましたが。
とにかくパクチャヌクの新境地、ワタシ的にはよかったですよー。

Commented by となひょう at 2007-10-06 18:53 x
こんにちわ。
TB&コメントありがとうございました。
私も最初は笑っていいのか微妙か・・・と思ったんですけど。
やっぱり笑って楽しく鑑賞しておりました。
入れ歯のシーンも楽しかったし、「充電完了」の場面も。
なかなか思いつかないアイディアだなぁと感心しておりました。
個人的には、サイボーグの禁止事項を描いた絵本みたいなのがお気に入りです。あれ欲しいー
冒頭の工場のシーンも、とても楽しかったです♪
Commented by CaeRu_noix at 2007-10-07 01:08
となひょうさん♪
そうなんですよ。精神びょういんの描写の初めの方は、ちょっととまどいました。こういう患者の奇行で笑わせるのは不謹慎ではないかしらんって・・・。
でも、そんな戸惑いを吹き飛ばすほどに主人公の2人がチャーミングでしたよねー。あざけりの笑いはいかんのですが、ほほえましさにほど近い笑いがこみ上げてくるんですよね。ホント可愛くて楽しかったですー。
充電完了もよかったです。はじめ、彼のかぶりものはウサギの耳がついているのかと思ったんですが、そうではなくコンセント型だったのがラブリー。
禁止ごとを書いた絵本ほしいですよねー。あれを読むヨングンの葛藤がせつなくも可愛くて仕方なかったです。
美術的にはもっと金かけて?作り込んでほしかった私なんですが、この世界観はとても気に入りましたー。
Commented by たかこ at 2007-10-10 21:55 x
やっと観ました~
>人間らしい感情がどんなに崇高か
あ、そうですね~。そこまで考えると一歩行くのか。ふむ。
テンポは確かに。。少し疲れてたのかウトっとしそうに。。
奇行もピさんもほほえましかったです♪
Commented by CaeRu_noix at 2007-10-11 00:05
たかこさん♪
パク監督って、哲学の学んでいたとのことで、わりとテーマは深かったりするので、そう考えるとなかなか味わいがあるのですー。
でも、途中ちょっと眠かったですよね。そこが惜しいー。
ピさんの笑顔もゆるすぎな感じでしたが、そのほのぼの感がよいのかもしれませんな。奇行の数々は大好きです。いえ奇行なんていっちゃいけませんよね。
こういう世界で生きる方がむしろ幸せかもと一瞬思ってしまった自分が怖いですー。
Commented by とらねこ at 2007-10-16 00:52 x
かえるさん、こんばんは★
人間らしい感情があったがために、人を憎むことも、おばあちゃんの復讐を遂げることも出来ないでいたヨングンは、そのために自分をサイボーグだ、と思い込もうとする心の動きをしていましたね
病気と言えばそれまでですが、そうした心理は、とても象徴的で、ある種芸術的表現のように思えてしまうんですよね。
心理学の本を読んでいて、一番面白いのがこういうところだったりするんです私。
なので、それをここまでかわいく描く、しかもそれがパク・チャヌクが、ということにとても感心してしまいました!
Commented by CaeRu_noix at 2007-10-16 01:42
とらねこさん♪
ああ、そうですね。ままならないストレス生活やら、傷心によって病んじゃったというんではなく、そういう心の動きがあって、思いこむようになってしまったんですね。神経症ならば、もう少し自分の精神に近い部分もあるかもと思ったりするんですが(?)、精神病という括りだと、理解したつもりになるのは図々しいかなと、ちょっと距離をおいて見てしまった感じかも。。だから、そこにいたる際の心の動きという部分には私は感じ入らなかったかもしれません。でも、改めてそう振り返るとその時点でもせつないですね。そうか、芸術的かも。
精神病といわれると、素人の私はあまり安易に語ってはいけないかなと思ってしまうんですが、心理学というならば興味深いです。うん、おもしろい。
あのパク・チャヌクがこんなにカワイイお話を紡いでくれたからビックリでした。でも独創性は健在ですねー
Commented by 狗山椀太郎 at 2007-11-01 23:34 x
こんばんわ、こちらにもコメントさせていただきます。
ああ、私も近未来SFだとばかり思っていましたが、ゆるいタッチのラブコメディ風味でしたね。それでも、精神病院を舞台にした映画にありがちな(?)ダークな雰囲気がほとんどなくて、ファンタジックな物語に仕上がっていたところはユニークでした。
>こういう世界で生きる方がむしろ幸せかもと一瞬思ってしまった自分が怖いですー。
いや、やっぱり幸せなんじゃないでしょうか(笑)。世間の煩わしい喧噪とは無縁の世界で暮らしてみたいという願望は、実は私にもあります。まあ、実際にはありえない物語上の桃源郷的な世界だからこそ憧れるのかも知れませんが・・・。
そんなわけで、緑の草原に白い衣装が映える場面はなぜか『トンマッコルへようこそ』の情景を思い出してしまいました。
Commented by CaeRu_noix at 2007-11-03 10:43
狗山椀太郎 さん♪
あの予告は近未来SFかと思いますよねー。
実はこういうお話だったというのはちょっとショッキングでしたが、こんな題材をこんなにほんわか可愛らしいファンタジーに仕上げちゃうところには脱帽です。とことんコミカルでユニークでしたよね。せつない部分もあったんだけど、いわゆる暗さはなくて、哀しいエピソードは笑いにもっていっていましたもんね。
ああ、やっぱり現実世界よりこういう方が幸せですかね?クリニックで暮らしたいということではなくて、幻想世界でほのぼの生きていきたいと思う発想はヤバいかなーと思ったんですけど、憧れるのは真っ当だと聞いて安心しましたー。?あり得ないというか、精神に異常を来しちゃえば、緑の草原に住めるかなぁって・・・。
なるほど、トンマッコルのファンタジー感に似ている部分もあるかもしれません。
Commented by 真紅 at 2007-11-03 11:16 x
かえるさま、こんにちは~。ウズベク訪問記も読ませていただいてます♪
この映画、私はためらいなく一人で笑っていたのですが、劇場全体の雰囲気はちょっと引いていたかもです。
シュールさを強調するためか、ちょっとテンポが悪かったですね。
そこがちょっと乗り切れなかったのですが、面白く観られました。
SK-Ⅱ命のコプタンが、肌がきれいだったのがツボでした。
あとやっぱり、指先から散弾銃ですね。あの場面は監督の見た夢だそうで、ああいう夢を見るパク・チャヌクって、どういう人なんでしょうね(笑)。
ではでは、またです~。
Commented by CaeRu_noix at 2007-11-03 17:55
真紅 さん♪
劇場全体は引いていましたかー。そんな雰囲気にも負けず、一人で笑って楽しんだなんてすばらしいー。私にはほほえましさの方が大きかったかな。
テンポの悪さは残念でしたよねー。中盤は睡魔に襲われました。まったりしているなりに、さくさく進んでくれたらよかったのだけど、編集の問題でしょうか??
まわりのキャラもそれぞれがおもしろかったですよね。小道具、コネタが活躍していたところがよかったです。
おお、散弾銃は監督の夢がベースだったんですかー。面白すぎ。
さすがのパク・チャヌクですねー
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