かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『少年、機関車に乗る』 ★★★★★
2007年 10月 28日 |
中央アジア、17歳のファルーと7歳のアザマットの兄弟は遠くの町に住む父親に会うために、オンボロ機関車に乗って旅に出る。
タジキスタン・旧ソ連の1991年作品。



これは5年程前に一度VIDEO鑑賞をしていて、そのみずみずしさと躍動感に心うたれた作品。ストーリー展開や細かいことは忘れていたけれど、スクリーンで再見する機会を逃すなんてもったいないと思うタイプの映像の印象が心に残る映画だったから、シネマヴェーラ渋谷の 「子供たちの時間」に出かけたのだった。この映画のVIDEOを5年前にレンタルしたのはどういう理由だったのかは忘れた。単純に、このタイトルや雰囲気に惹かれたのかな。それとも、大好きな『ルナ・パパ』の監督作品だという認識のもとでセレクトしたんだろうか。5年前にはタジキスタンなんてまるで遠い国だったというのに、今その中央アジアにあるウズベキスタン旅行から帰ってきたばかりの私が、お隣タジキスタンの映画を観に行くべくして観に行ったの。

セピア色のモノクロームの映像のきらめきに心躍る映画体験。ロードムービーの何が好きって、その躍動感。機関車が走り、広大な風景がスクリーンいっぱいに広がり、流れていくのだ。乗り物に乗って、大地を駆けることはなんてステキなんだろう。
ここが渋谷の円山町で、この後人混みをかき分けて、喧騒の満員電車に揺られて帰路に着かなくちゃいけないということは一切忘れさせてくれる。私もファルーとアザマットと共に、大平原を旅するのだ。線路はどこまでも続き、人生の冒険旅行も続くのだね。ハラショー。

兄ちゃんファルーがちっちゃい弟アザマットの面倒を見る様がとってもいいの。17歳なんていったら、自身が身軽に自由に振る舞いたい盛りだろうから、彼が訪ねた先の父に申し出たことも当然。だけど、兄弟の絆は断ちきれなかったんだよね。あんな場所よりも兄ちゃんと一緒にいたかった弟を、また当然のように受け容れる姿には感動ヒトシオ。土を食っちゃうお馬鹿な弟をからかうのは兄ちゃんだからこそだもの。無神経な友人に弟のことを言われて、怒って喧嘩になったファルーの心情にもグッときたなぁ。親が子どもをいたわるのはまるで違う、年の離れた兄弟のふれあい模様が本当にほほえましい。

5年前のVIDEO鑑賞時の時から、大好きな映画だったけど、今回スクリーンでその素晴らしさを堪能して、もっともっと大好きな作品になったよー。
ウズベキスタンに行く前に観られたらよかったなーって旅行のことを考えたらそう思えたのだけど、映画をポイントに考えると、旅行後に鑑賞できたことでより感慨が増したといえるかな。チャイを飲む姿やロシア語の響きに親近感を感じたりして、終始興味深く見入っちゃった。

旅に際し、地球の歩き方の「シルクロードと中央アジアの国々」編を買ったのだけど、この中でタジキスタンのページはホントに少ないんだよね。国土の多くが山岳地帯というのどかな場所。そんな地域から、こんなステキな映画を撮る監督が育ったなんて。そんな風景を身近に知っている人だから、それをみずみずしいままにフレームにおさめることができるわけだし。文化のまるで違うバルトや中央アジアをまとめちゃったソビエトってずいぶん強引だったよなーって旅行中に思ったのだけど、ムスリムの国からこういった映像作家が輩出されたのは、連邦があっての影響だったかもしれないなぁなんて思ったりした。バフティヤル・フドイナザーロフ監督がモスクワの映画学校を卒業し、故郷に戻って撮った長編処女作が本作なのだそう。

『ルナ・パパ』も7年ぶりに観てみたくなるー。
ルナ・パパはそのドタバタ感がクストリッツァ節に似ていたことを記憶しているんだけど、乗り物の躍動感と人間や動物の愛嬌ある姿を映し出すところも、クストリッツァを思わせるかもしれない。本作の、飛ぶ前に歩いている蝙蝠の姿には釘付けになっちゃった。おもしろーい。
監督のインタビュー記事をちょっと読んで感激したんだけど、映画をつくる上で、"リズム"というものをとても大事にしているみたい。ルナ・パパのリズムは、胎児の視点によるものなんだって。おおー。

ロシア映画社アーカイブスの作品概説

シネマヴェーラの上映の作品紹介には、蓮實氏の文章の一文、"これは、冒険であり、運動であり、魔術でもあるようなフィルム"っていうのが使われていて、これだけで観に行きたくなっちゃいますな。

バフティヤル・フドイナザーロフ インタビュー/crisscross/大場正明

 ВРАТАН
監督:バフティヤル・フドイナザーロフ
脚本:バフティヤル・フドイナザーロフ、レオニード・マフカーモフ
撮影:ゲオルギー・ザラーエフ
音楽:アフマド・バカエフ
出演:チムール・トゥルスーノフ、フィルズ・ザブザリエフ、I・タバロワ、R・クルバノフ、N・ベグムロドフ
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by CaeRu_noix | 2007-10-28 22:05 | CINEMAレヴュー | Trackback(1) | Comments(2)
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Tracked from 寄り道カフェ at 2008-06-30 22:50
タイトル : 「少年、機関車に乗る」
BRATAN 1991年/タジキスタン・ロシア/100分 長編3作目となる「ルナ・パパ」でなんとも賑々しいファンタジーを見せてくれたタジキスタン共和国のバフティヤル・フドイナザーロフ監督が26歳で撮った初監督作品「少年、機関車に乗る」。 「ルナ・パパ」ではエミール・クストリッツァ並みのドタバタ奇想天外ながら、物語に流れる彼らの純朴さと家族の情愛に、この監督の人柄を垣間見え、私のお気に入りの作品の一つ(といってもお気に入りだらけなのだけれど)でもある。なんといっても逞しき土着の匂いがいい...... more
Commented by mchouette at 2008-06-30 23:15
かえるさん!TBありがとう。
ファンの多いかえるさんのブログ。TBとか遠慮してたけど、こういうマニアックな作品にはお邪魔いたしましょう。(笑)
こういう作品をみるとハリウッド作品がなんとも柔で軽く見えてくる。
セピアカラーの映像と音楽も魅力。
本作、記事上げるのに久々に鑑賞して、やはり良かったです。
ウズベキスタンに行かれたんですか?
羨ましい。余計に感慨深かったでしょう。
普段、ほとんど馴染みがない国ですものね。
映画製作には厳しい環境だからこそ、こんな素敵な作品が作れるのかもしれませんね。

Commented by CaeRu_noix at 2008-07-02 00:48
シュエットさん♪
ありがとうございます。
(ふぁんはいないと思いますが・・)そうなんですよ。一般公開作品は観ている人、記事を書いているブロガーさんはいっぱいいるので、いちいちやり取りしなくてもいいかなぁとも思っちゃうんですよね。
でも、こういう旧作の名作について、その映画の素晴らしさについて共感できるのはやっぱり嬉しいのでした。
ハリウッド映画はとにかく消耗品的なものが多いですよね。
お金がかかっているからそこそこに楽しめるものは結構あるけれど、自分の特別な宝物になりうる映画はホントに少ないです。
これは今でも思い出してはキューンとするようなキラキラした作品でした。
セピアの色合いがまたいいんですよねー。
ウズベキスタンは去年の10月に行って来ました。
旅行記もありますので、お時間ありましたら覗いてください。(カテゴリに)
で、ウズベクから帰国した直後にこの映画を観ることができたのですよ。
お隣のタジキスタンゆえ、文化的には似ていて、一段と興味深く観られたのでした。
そうですね。東欧だとかソ連だとか圧政下ほど素晴らしい芸術が生まれたりするんですよね。
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