かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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第8回東京フィルメックスの鑑賞メモ
2007年 11月 29日 |
今年は、全部で9本鑑賞。



他にも観たいものはあったのだけど、日程的な都合により、こんなところで。
去年よりはお目当ての監督作品が少なかったこともあるし、配給のついているものは見送ったのでした。


▼コンペティション

・『テヒリーム』 - Tehilim

ラファエル・ナジャリ/イスラエル

父親の失踪で揺れ動くユダヤ教聖職者の家族のドラマ。

★最優秀作品賞★受賞
受賞理由;
イスラエルに暮らす一般的な家庭に起こった父親の謎の失踪が、今日の世界が抱える普遍的な問題である「方向性の欠如」を浮き彫りにする。この物語を、人々が抱える問題として捉えるか、私的な物語として捉えるか、それとも今日のイスラエル社会の反映として捉えるかは、一人一人の手に委ねられる。国や宗教を超越し、独自な表現方法で語られている国際的な映画作品である。

そうか、普遍的な問題だったのか。ウッチーの対談本を読んだばかりだったからユダヤ思想から読み解こうとしておりました。ユダヤ文化を理解しているわけではないけれどね。なんだ。ドイツ映画なら、ベルリン派に属する作風ですね。なんて。おもしろかったんだけど、抽象的なものが頭の中に渦巻くばかり。


『ブッダは恥辱のあまり崩れ落ちた』(個別レヴュー) Buddha Collapsed Out of Shame

ハナ・マフマルバフ/ イラン

タリバンが破壊したバーミアン遺跡付近を舞台に、アフガンの少女の視点から、戦争の無慈悲さを、寓話的であるとともにリアルに描く。


『ドラマー』 - The Drummer

ケネス・ビー/香港・台湾

香港で揉め事を起こし台湾に逃げた若者が、伝統的な太鼓演奏グループに出会い成長するという青春映画。ジャッキー・チェンの息子ジェイシー・チェンが主人公を鮮烈に演じる。

ジャッキー・チェンの息子はあまりステキじゃないんだけど、情けないヤツが成長していくという物語にはピッタリ合っていたかも。香港黒社会アクションな始まりから、台湾の自然あふれる山里で、宗教思想団体のような雰囲気で太鼓の鍛錬の日々へと、不思議な取り合わせのエンタメでした。太鼓の演奏/パフォーマンスも見ごたえあり。


『ヘルプ・ミー・エロス』 - Help Me Eros

リー・カンション/台湾

自ら脚本・主演で、絶望した青年が出会う恋と性愛を、奔放なヴィジュアル・イメージで描く。
ヴェネチア映画祭コンペティション部門出品作。

リー・カンションが『西瓜』なんかでAV男優役をやったのは、俳優として仕方なくのことだと思っていたのだけど、実は好きでやっていたのねーと思いなおしてしまうような、大胆な性描写あり。本番ではないとQ&Aでは答えていたけれど。エロスが散りばめられつつも、官能的というんではなくて、ポップアートしているカンジ。ツァイ・ミンリャンの影響を受けているのは当然だけど、ところどころがツァイ・ミンリャンテイストだったなぁ。それは問題でもあるかもしれないけど、それゆえに気に入りました。


J氏いわく、今年のコンペ作品のレベルは高かったそう。
『最後の木こりたち』も観たかったなー。
『ジェリーフィッシュ』はとっても好みな雰囲気なので、一般公開を楽しみに。
『アイ・イン・ザ・スカイ』も観たいー。



▼特別招待作品

『それぞれのシネマ』(個別レヴュー) To Each His Own Cinema

カンヌ映画祭が60回開催を記念して世界の著名監督に委嘱した短編によるオムニバス。


『無用』 Useless / Wuyong

ジャ・ジャンクー(賈樟柯)/中国

ファッションをテーマに、広東省の縫製工場、気鋭の女性デザイナー、山西省の裁縫店の3部構成で中国の現状を多面的に捉える。
ヴェネチア映画祭最優秀ドキュメンタリー賞受賞。

評論家がそう言うと監督本人が紹介してくれた通り、ホントにジャ・ジャンクーの劇映画はドキュメンタリーみたいだし、そして、ドキュメンタリーはそういった劇映画にそっくりでありました。だから、物語のある劇映画に近いような味わいがあるのでした。人民服の国でこんなブランドが生まれていたとは知らなくて、興味深かったな。


『撤退』 Disengagement

アモス・ギタイ/イスラエル

父の死後、ガザ地区へ自身の娘を探しに行く女性(ジュリエット・ビノシュ)が直面する現実を、圧倒的な緊張感で描く。

パレスチナに対して圧力をかけるイスラエルという題材には馴染みがあったけれど、イスラエル側の人々も上の方針に翻弄されて警察と衝突をするという構図はあまり見たことがなかったかもしれない。混沌の中での、ビノシュ母と娘との再会シーンは泣けます。筋書き的には無理があるはずなのに、映画のワンシーンとしては素晴らしい。台詞よりも何よりもカメラの捉える活きたショットにこだわるというのに納得。積み重ね方が好き。


『脳に烙印を!』 Brand Upon the Brain!

自らの幼少期を大胆なイマジネーションで脚色。
孤島を舞台に奇妙な一家を描き、独創的な怪奇趣味により奇想天外な物語が繰り広げられる。

ガイ・マディン/カナダ

モノクロームのサイレント映画仕立てのシュールなアート作品。小ネタがとてもツボだった。独創的にコミカルにでも美しく。チェコのアニメにこういうテイストのものがあった気がするけど、長編実写映画でこのスタイルを通してくれるというのはすごく楽しい。


『食べよ、これは我が体なり』 Eat, for this is my body

ミケランジュ・ケイ/ハイチ/2007/105分

登場するのは白人の老婆とその娘、子供たちと黒人召使。

これは、アピチャッポン『世紀の光』っぽい感触。右脳左脳にバランスよく刺激。メルシー体操してお宿で旅館でおいしい食事の邦画『めがね』の暢気さを思い出しつつ、「メルシー、マダム」という言葉とテーブルマナーを憶えなければ食事にありつけない黒い肌の少年達の姿にドキリとしたり。これまた抽象的なイメージが飛び交うんだけど、思考に導かれるよりも、その感覚に身を任せることが心地よいカンジ。


審査委員長のイ・チャンドンの『シークレット・サンシャイン』(密陽)も一般公開待ち。
ジョニー・トーのもやるよね?


さてさて、今年も何だか、どんな映画なのか私には説明できないような作品が多かったなぁ。でも、そういうものこそ、他でもない「映画」だよね。起承転結だとかストーリーテリングなんてものはなくて、映像によってジワジワと訴えかけてくるものこそ刺激的。そんな独創的な映画に出逢えるフィルメックスはやっぱり素晴らしき映画祭なのでした。満喫。
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by CaeRu_noix | 2007-11-29 23:58 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(2)
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Commented by シャーロット at 2007-11-30 19:26 x
こんばんは。
今思えば配給がついてないものをもう少し見ておきたかったと・・・。
でも今回はこれでも見れた方かなと思ってます。レベル的には良し悪しはわからずとも、確かに見たものは皆手ごたえがあって好きなものが多くて満足しました。テヒリームは配給はついてるのですかね?ジェリー・フィッシュは一般公開ありなんですかー。楽しみ。
アイ・イン・ザ・スカイは配給がついていたと思います。私は普通に堪能しましたけど会場は拍手で盛り上がってましたよ。
かえるさん的にはどの作品が一番星??

これからもずっと見に行けたらいいなって思う映画祭です~。
もう12月ですね。まとめ時期だし、今年のかえるさんの一番の作品も気になるところです…。
Commented by CaeRu_noix at 2007-12-01 00:54
シャーロット さん♪
そう、映画祭は配給ついてないものが一番の目当てですー。っていうかそもそもは、配給ついていないものを上映するのが映画祭というものなのに、フランス映画祭やTIFFの招待作品は有料試写会状態になっちゃっているんですよね。
ジェリーフィッシュは来年、シネカノンでかかるみたいですよー。
テヒリームは配給ついてないです。そういうタイプではありませんー。フィルメックスものって、やっぱり商業映画とは逆方向のものが多いので、香港アクションものなんかは別ですが、イランやイスラエルのちょっと小難しげなものなんかは一般公開はされないカンジです。一昨年上映されたギタイの『フリーゾーン』は今度DVDが出るみたいですが。
私の一番星はどれかなぁ・・・。悩むなぁ。『脳に烙印を!』かなぁ。
いや、僅差で『ヘルプ・ミー・エロス』 かもしれないなぁ。ヘンだけどツボでしたー。
フィルメックスの趣向はとてもいいと思います。勤労感謝の日がからむのもありがたいし。にしじーにも会えるし。通わずにはいられない魅力的な映画祭ですよねー。
ううう、もう12月ですね。今年のベストなんて決められないようなぁぁ。


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