かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ウェイトレス~おいしい人生のつくりかた』
2007年 12月 06日 |
現実の出来事が感慨を深めるハートウォーミングな物語。

アメリカ南部の田舎町にあるジョーズ・ダイナーで働くジェンナはパイづくりの名人。



主人公の友人ドーン役でも出演している監督・脚本のエイドリアン・シェリーは、この作品を遺して、哀しい死を遂げた。昨年2006年11月に騒音トラブルか何かで殺害されてしまったという。自らの妊娠体験をもとに執筆した脚本によるこのハート・ウォーミングな物語はサンダンス映画祭などで好評を得て、アメリカでもヒットしたというのに、そんな不幸に見舞われてしまうなんて・・・。

エイドリアンはいわゆる美人ではないけれど、とても味のあるキュートな女優だと思う。そういえば、『パリの恋人』のオードリーは正統派美人顔でちっともファニー・フェイスじゃないよと思っていた私だけど、言うなれば、エイドリアンはファニー・ガールだと思う。 『トラスト・ミー』や『酔いどれ詩人になるまえに』でも個性的で印象的だったな。

エイドリアンのキャラクターがそうであるように、本作もあくまでもファニーな雰囲気を損なわない作品。その結婚生活からは逃げ出してしまいたいと思っている田舎町のダイナーのしがないウェイトレスが主人公なんだけど、そのトホホな日常を愛嬌いっぱいにコミカルに描ききって、決して自己憐憫モードの悲劇のヒロインが顔を出したりはしない。これはあくまでもフィクションのコメディだから、トホホ感やおかしみが強調されてはいるんだけど、こんなふうに今の生活から逃げ出したいと思いながらも、脱げ出せずにやれやれと思いながら暮らしている人って実際にも少なくはないんじゃないかと思う。

それを愉快に楽しく描いているところが好評だったんだろうなと思う。とりあえず、抜け出せないのならば、悲嘆暮れるよりも、その状況を笑っちゃう方が好感度大。結婚してしまった相手にもはや少しも愛情を抱けないなんて、他ならない悲劇だと思うけど、ジェンナには、親しいウェイトレス友だちもいるし、パイづくりの素晴らしき才能とその技を活かしての夢も持っているから、決して哀れな女には成り下がらず、元気な姿がほほえましいのだ。勢いの不倫で活力を得るその姿さえも痛快。映画としては中盤はちょっとユルいかなぁと思えなくもなかったけど、美味しそうなパイのイメージそのままのハートフルな楽しい物語でありました。

中盤はそれなりなカンジだったけど、ラスト・着地点には大いに感動しちゃった。なんだかんだといいながら、こういう感情の芽生えにはグッときてしまう。妊娠なんてしたくてしたわけじゃなかったし、子育てに何の楽しみも思い描けなかった女が、実際に生まれたばかりの可愛い我が子を抱きしめたその時には、人生観が180度変わってしまうってこと。非力な主婦の立場では夫にハッキリと決別を言い渡すことさえままならずにいたのに、我が子のためにはこれからの道をアグレッシヴに切り開いていこうとキッパリと思えるのだなぁ。甘い栄養分だった不倫の交わりさえ、もはや少しも魅力を感じないのね。愛娘と友人達とパイのお店だけが彼女の人生の宝物なんだな。

出演しているのはエイドリアンの愛娘ちゃんなのだと思うとまた複雑な気持ちにもなるのだけど、こんな作品が最期に遺されたことは、娘ちゃんにとっても宝物だよね。彼女が大きくなってからママのこの映画を観たら、どんな気持ちになるのだろうか・・・。
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by CaeRu_noix | 2007-12-06 07:45 | CINEMAレヴュー | Trackback(15) | Comments(6)
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Commented by めかぶ at 2007-12-08 16:37 x
かえるさんがこの作品を観るのはちょっと意外でした。あまりハートウォーミング系は趣向じゃない気がして。チラシとか見てもなんからぶらぶ系っぽくも見えるし。でも開けてみればちょっとシニカルで意外にも女性の生き方の一面を見せるようなそんなお話でしたね。
彼女が選んだ生き方には、ああ、女ってやっぱりそうなるものなのかなあ、と。経験のない私には、そうなのかあ~、とまでしか思わなかったんだけど。嫌いじゃないです、うん。
ストップモーションのように動きのない、台詞抜きで表情だけで感情を表現したり、静と動を使い分けた演出が面白いと思ったのですが・・・。
エイドリアン・シェリーのことは全然知らなくてびっくりしました。これだとはっきり言えないんだけど、この顔には覚えがあって、「酔いどれ詩人になるまえに」にも出ていたらしく、きっと再見したら、あっと思うんだろうなと。何本も脚本・監督を手がけているのですね。もったいない。なんだか亡くなりかたもあんまりだな。あの最後の女の子が遺児なんですね。なんとも痛ましいですわ。
Commented by とらねこ at 2007-12-09 00:26 x
こんばんは☆この物語、冒頭の辺りではちょっとノレないかな、なんて思ったのですが、途中からとても気に入ってしまいました。
母性って通常、評価されたり、崇め奉られたり、世間では何かと神聖化されていますが、
本当は子供なんか欲しくなかったりするお母さんもいるのですよね。
おなかの中の赤ん坊に語りかけるということは、自分自身を見つめなおすことにもなるのだなあと思いました。
自分が好きではなかった、誇れなかった自分から、堂々と生きていく決心をするまでの物語だったので、そこが好きになってしまいました。
Commented by CaeRu_noix at 2007-12-09 09:48
めかぶ さん♪
いえいえ、ハートウォーミングものは大好きなんですよ。ただ、私の場合、アメリカ製のコメディ仕立てなヒューマンドラマとはどうも相性がよくないんです。だから、本作はどんぴしゃmyシネマじゃないというのはご名答。ヨーロッパの同系統タイプの作品には気に入るものも多いのだけど。世間では大評判だった、マイ・リトルサンシャインなどが私にはフツーな感じでしたから・・。これの前にシャンテシネでやっていた「ヴィーナス」も本作もそれほどにガツンとはこなかったです。とはいえ、こちらはエンディングにはとても感動しちゃいました。全ての母がそうとは限らないけど、子どもなんてほしくなかった女が体験によってその素晴らしさに目覚めちゃうっていうのはグッときちゃうのですよねー。
もっとテンポがいい方が楽しかったと思うけど、演出もなかなかよかったですね。
エイドリアン・シェリーのことは私も、「酔いどれ詩人になるまえに」のふぇあるーざさんのコメントのおかげで認識しました。そう、あちらにも出てました。もう既にこの世にいないなんて信じられないですよね。せっかくステキな映画を愛娘と共につくったのに。
Commented by CaeRu_noix at 2007-12-09 09:50
とらねこ さん♪
そうそう、私も中盤はあんまりおもしろくないかなーって思って観てました。(笑)ダメじゃないし、好感はもてるんだけど、ハマれるってほどじゃない・・・。でも、ラストにはとても温かな気持ちになれました。小粋な小品ですよね。
今年は男性の作り手による強き気高き母性を描いた映画も多かったですが、必ずしもそれが真実じゃないですよね。子どもなんてほしくないっていう女性だって結構いるし、本当にほしくないけど産むことになったという人もいるでしょう。そういうリアルが楽しく物語になっているのがお見事でした。
最初は流されまくりダメダメちゃんだった彼女が、この世に生を受けた我が子を抱きしめて、毅然と道を切り開く決意ができてしまうっていうのがホントによかったですよねー。
Commented by minori at 2008-01-09 21:02 x
かえるさーん。こんばんわー。
うんうん、小粋な作品でした。私は結構好きでしたー。子どもなんてほしくないよ、自分の全てを奪われちゃうよ、と思う人、結構いると思うんですよね。そこらへんがリアルでよかったな。だけどそれでもああやって産んで親になるのかもしれないですよね。母は強し。監督、残念です…。
Commented by CaeRu_noix at 2008-01-11 00:22
minori さん♪
エイドリアン・シェリー自らの妊娠の経験をもとに脚本が書かれただけあって、リアルでしたねー。大袈裟にコミカルに描かれてはいるんだけど、そこにある心情は等身大、わかるわかるーっていう感じでした。子どもなんてほしくないと思っていたのに、妊娠してしまったっていう女性って意外と多いのかしら?ジェンナと同じように、生んでみて母性に目覚めることができたらよいですなー。
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