かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『アヴリルの恋』
2007年 12月 07日 |
色があるから人生はステキなの。

孤児として修道院で育てられた修練女のアヴリルは、修道女になるために断食・沈黙をしながら2週間礼拝所にこもろうとしたところ、密かに兄の存在を知らされる。



静かな山の中に佇むの修道院の風情が好き。と思うのだけど、自由気ままな暮らしを享受する自分は絶対に修道女のようには暮らせないだろうな。自分にはできないからこそ、自らの人生を神の道に捧げようとする人たちの心は崇高だと思う。でも、それはあくまでも人生を悟った上での自らの選択の道であるべきで、アヴリルのような境遇の若い女性が、その世界しか知らないままに修道女になってしまうことが望ましいとは思えない。何も知らない状態で未来の可能性を損なってしまうなんてもったいない。アヴリルには、絵を描く才能もあるのだものね。そんなわけで、生き別れた兄に会うべく、無垢なるアヴリルが俗世でささやかな冒険を試みるこの2週間は、興味深くもハラハラしてしまうものだった。それでいて、アヴリルにとってはかけがえのないものとなった不思議に心地よいホリディ。

自転車が壊れて山の中で足止めをくらっていると、たまたまニコラ・デュヴォシェルくん扮するピエールが車で通りかかり、その彼が驚くほどに親切で、遠い海辺に滞在する兄のもとに連れて行ってくれるという展開はあまりにも出来すぎではあった。大体、ひと気のない山道でたまたま通りかかったのが、ほどよい年齢で同じ絵心を持ちながら何の下心もない親切なイケメンだなんてあり得ないってばぁ~。と苦笑しつつも、若き修道女という存在があまりにも身近ではないせいか、それが89年のフランスを描いているとは思えないほどに、この物語の世界は御伽噺のような色を帯びているから、引っ掛かりを持つほどに不自然だとは感じないのだった。何しろ、彼自身の口から、自転車が壊れたことと同様に、彼が通りかかったことの偶然性をどう捉えるかという問いかけがあるのだから、これはもう運命的必然。清く正しく献身的に生きてきたアヴリルの身に起こるべくして起きたことこかもしれないなぁとその幸運を見守ることができるのだ。

ストーリー展開のポイント・ポイントに強引さを感じたりはしたものの、静かな語り口や美しいの映像の数々と、ディテールも作品全体の雰囲気も好みのものだった。主人公が丹念に絵を描くように、光の加減や構図の美しいショットが丁寧に重ねられているの。絵になるショットを大切にした映画であると同時に、絵を描くことが好きな主人公という物語設定もとてもよかったな。アヴリルとピエールが赤と青の多彩な色の名称を挙げるところも好きだし、顔料と秘伝の調合で色を作るシーンもステキだったな。最後の記念すべき壁画のアイディアはどうかと思ったけれどね・・・。冒涜というほどのものでもないかもしれないと・・・。

ずっとたしなんできた絵画表現にも決意を表せたのは、極上の海辺のバカンスがあったからなんだよね。兄貴とそのパートナーがあたたかい人間で本当によかった。お祈りの時間だわとわが道を行く彼女のアヴリルにハラハラしつつも、彼女の心が次第に解放されていく様にはすがすがしい気持ちになる。男性と接することなく生きてきた女性がこんなにいい仲間達と共に俗世の輝きと歓びを知ることができるなんてステキすぎるよね。沈黙の日々に聴く音楽も、断食の日々に食すスズキのムニエルやワッフルも極上のものでしょう。初めてのドレスと水着、初めて入る海の感触は忘れがたいものだよね。生きることとは、世界を知り、体験すること。

兄ダヴィッドとの再会はとても感動的だったし、あかされるもう一つの秘密にも驚かされて、感慨を受けた。シンプルな物語のようで、節々に感銘のある清々しい作品だったな。
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by CaeRu_noix | 2007-12-07 01:55 | CINEMAレヴュー | Trackback(5) | Comments(4)
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Commented by とらねこ at 2007-12-08 09:19 x
おはようございます☆
>節々に感銘のある清々しい作品
そうですよね~!おっしゃる通り、偶然通りかかったイケメンは下心を優先させず、アヴリルの良さをきちんと分かってくれる素敵な人で、しかも絵が上手で・・・
なんて出来すぎでしたけど。
でも、男がみな下心ばかりとは限りませんよね!
彼女のような人を見て、その純粋さに打たれる人というのがいてもいいよねって思えました。
彼女の成長を一緒のペースで歩んでくれる人で良かったです~。
Commented by CaeRu_noix at 2007-12-09 09:39
とらねこ さん♪
通りすがりの善良なイケメンに親切にされたことのない私は、ついついあり得ないーって思ってしまうところですが、まっすぐな気持ちで無垢に生きてきたアヴリルだからこそ、そんな運命が転がってくるのですよね。俗世で最初に出逢った男が、ピエールのような寛容な理解者でホントによかったです。イマドキの軽薄男だったら、アヴリルがお祈りにいくというたびに白けちゃうところでしょうが・・・。絵を愛する者同士というのもポイントでしたよね。みんなが下心だらけじゃないにしても、わざわざ遠い海辺まで車で送り届けてくれて一緒にバカンスの日々を過ごすなんていうことをやってしまうのはやはりデキスギなんですが・・・。そのことを自然だと思えてしまうほどに映画全体の雰囲気やディテールがステキだったのでした。兄カップルの存在もすごくよかったなぁ。こういうふうにまるで違う生き方をしてきた人たちが共に過ごす機会って貴重ですよね。

Commented by シャーロット at 2007-12-23 00:10 x
こちらにも。
そうそう、素敵過ぎるものがいっぱいありすぎでしたね;でもでも、それが特に突っ込むものではなくて、なんだか自然に受け止められていたのでした。やはりアヴリル嬢だからこその出会い、っていう感じでしょうか。双子にしても二卵性だと思うことにして(笑)
それと本作の雰囲気はとっても素敵でした。だから終盤の展開にはビックリしたのですが、やっぱり海辺での数々のシーンが印象的でした。
神様への気持ちはきっと変わってはいないとは思うのですけど、色々なことに挑戦して行く姿はとってもチャーミングで微笑ましかったです。
結構気に入りましたよ~。
ニコラの腕のタトゥーは本物なのかしら?なんだかわからない凄いデザイン;でしたけどいい役柄でしたねー
Commented by CaeRu_noix at 2007-12-23 22:58
シャーロット さん♪
山の中の修道院、絵を描くこと、色の存在、海辺のバカンス、ステキな素材ばかりでしたよねー。下手な演出の仕方だったら、物語が都合よすぎることに引っかかっちゃったかもしれませんが、好みのタッチなフランス映画だったから、のーぷろぶれむでした。そう、清らかな心をもつアブリルならではの、ラッキーな出来事だったのです。顔料を調合するシーンなんか真珠の耳飾りの少女以来に印象的なシーンでした。映画に登場するお気に入りシーンシリーズでは、ダンスだとか空飛ぶシーンだとか、圧倒的に動のものが好きな私なんですが、静的なものの代表として好きなのが、絵を描く場面なんですよねー。なので、それでポイントアップ。あと、海辺の夜に観た、思い出の映写シーンもすこぶるステキでしたよねー。
あ、男女の双子はみんな二卵性じゃないんですっけ??
完成度の高い映画とはいえないかもしれないけど、気にいる気に入らないでいったら、とても気に入りましたー。
ニコラの腕のタトゥは自前だと思います。だって、役柄にはふさわしくないですもん。サニエたんのハートを掴んだ素の彼はきっとピエールとは全然違うタイプなんじゃないかなーって思ったりー
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