かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『マイティ・ハート/愛と絆』
2007年 12月 11日 |
ウィンターボトム印でよかった。

ウォールストリート・ジャーナル紙のダニエル・パール記者が2002年、パキスタンで取材中に消息を絶った実話に基づく。
その妻マリアンヌ・パールの著書が原作。



マイケル・ウィンターボトムの仕事はやっぱり素晴らしいな。
ウィンターボトムがブランジェリーナ作品のメガホンをとるなんてとても意外なニュースだったけど、監督の持ち味の活かされた見ごたえのある作品に仕上がっていたので満足。

ブラッド・ピットの製作会社「プランBエンタテインメント」によるこの企画。ウィンターボトムを起用してくれてありがとう。そして、プロデューサーブラピは、撮影が始まってからは何も口出ししなかったそうじゃないか。そう、それが大事。

個人的にはハリウッドの大スターが主演じゃない方が好みなんだけど、それはそれとしてアンジーの熱演は胸をうつものだったな。夫婦揃って大活躍なセレブなアンジーが、この悲劇のジャーナリストの妻を演じても、私生活での自信にあふれる笑みが脳裏にちらついて、ちょっとだけ緊迫感と、感情移入の邪魔をするっていう問題はゼロだったとは言えないけれどね。演技はうまいし、適役だったとは思う。ジャーナリストっぽくないっちゃーない気もするけど、世界を股にかける女は似合うよね。(お経は似合わないけど。)

結末の見えている物語であるにもかかわらず、スリリングで手に汗握るドラマに心掴まれる。ウィンターボトム作品ではおなじみの手持ちカメラを使用したドキュメンタリータッチの演出が私は大好き。臨場感いっぱいに、その緊迫した現場の空気に取り込まれて、息を飲んでしまうのだ。この地域を撮るのはお手の物とばかりに切り取られたアジアの匂い立つ街の喧騒がいいんだよね。異国イスラムを感じさせる街の俯瞰ショットがあり、あくせくと動き話す人間のクローズアップが続く。時に目まぐるしいほどのスピードで重なるカットによって、見る者の視点と視野も自在に移り変わるように、この広い世界を意識しながらも、その場にいる人々に同化してたった一人の身を案じるのだった。

危険に晒されているダニーを一刻も早く救い出さなくてはという熱意によって、人種も出身国も宗教も違う人たちが一丸となる姿に胸が熱くなる。その地では決して歓迎はされていないアメリカ人であろうとも。民族や宗教がトラブルのもとになるといういくつもの現実を垣間見ながらも、それを超えて、人間にとって大切なことや進むべき道、愛や正義は変わらないもの、共有できるものなんだということを感じさせてくれる。ため息をつかずにはいられない出来事が描かれているというのに、絶望するよりも、そこに確かに存在したまっすぐな思い、信念に希望を与えられるよう。

わざわざ危険な場所に出向くジャーナリストの職業は時と場合によっては煙たがられてしまう存在なのかもしれないけど、伝えてくれる人は必要だと思うし、危険に晒されてまで真実の追求に立ち向かう果敢な姿勢はやっぱり素晴らしいと思う。正義のジャーナリスト魂。

犯人の要求がグアンタナモのことというのは事実に基づいているの?ウィンターボトムがそこにこだわっているように取上げられていたことが印象的。

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by CaeRu_noix | 2007-12-11 23:59 | CINEMAレヴュー | Trackback(6) | Comments(4)
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Commented by moviepad at 2007-12-15 01:17 x
かえるさん、こんばんわ!

国も宗教も違う人たちがダニーの命を救うために一丸となる
姿には心を打たれました。

アンジーの演技はよかったと思いますよ!
世界を飛び回るアンジーのイメージは
役柄に説得力を加えていると思います。
ただ、別のイメージを重ねてみると...
ちょっと困りますけどね。(笑)
監督にウィンターボトムを指名したブラピのセンスは
なかなかのものです。自分がダニエル役をしなかったことも含めて。

>犯人の要求がグアンタナモのことというのは事実に基づいているの?

もちろんです。
ウィンターボトムのグアンタナモへの強いこだわりを感じますね。
Commented by CaeRu_noix at 2007-12-16 10:26
moviepad さん♪
民族・宗教の壁が諍いをおこしているのも現実であるゆえに、そこにこだわらずに人々が協調して心通わせる様には感動しますよね。ニュース報道では伝えられない水面下でこんなに熱いドラマがあったとはー。そんなやり取りと、マリアンヌのやるせなさだけで充分に胸をうつ映画だったんですが、世間の評判はイマヒトツのようで・・・。やはりウィンターボトムのつくりかたはポピュラーじゃないのかな。と思いつつも、彼にに白羽の矢を立てたブラピのセンスは素晴らしいです。そうそう、主演をアンジーにしたことはアレコレ言われもしたでしょうが、彼自身が出演なんてしないところがクールでした。一切口出ししないっていうところも。グアンタナモのことが犯人の真の要求だったということは、それについての映画を撮っていたウィンターボトムだからこそ選ばれたんでしょうかね。テロリストに屈するのではなく、グアンタナモの不当性を改めるという意味で、その要求をのんで、ダニエルを助ける道もあったのにと思えてしまうのが複雑・・。
アンジーの演技は17歳のカルテ以来に評価されていますね。
Commented by シリキ at 2007-12-21 00:28 x
今観てきたところです。興行的には日本では...なんですかね。
私にはスリルたっぷりの娯楽作品としても十分堪能出来たのですが、テーマはどっしりと重いですね(『ライフ・オブ・デビッド・ゲイル』を彷彿させる)。ドキュメンタリータッチなのがやはり『グアンタナモ..』とつなげて受け止めてしまう。マリアンヌも記者会見で話していましたが、「1ヶ月で10人もテロリストに殺害され、多くはパキスタン人だった」とのことで宗教、国家、そして深刻な貧富の差(主人公の住むメイド付きの立派な家と余りも対照的なバラック小屋のスラムの対比が印象的でした)が複雑にからみあい、とても簡単には「テロ撲滅」とはいえないのが苦しいですね。さらに、殺害方法ではどうしても日本人旅行者の悲しい事件が頭をよぎってしまいため息が出てしまいました。
ともあれ、やはりウインターボトム監督作品に間違いはないなあと思いましたね(ハリウッドカラーでも)。アンジェリーナは適役でしたねー。あとアスラ役の女性もよかった。
(始めたばかりのブログですがしばらくお休みします。感想はmixiに書きます...)
Commented by CaeRu_noix at 2007-12-21 21:19
シリキさん♪
ご覧になりましたか。
アメリカでは興行成績は全然だったみたいですね。日本でもたぶん・・。
でも、そうです。私にとっても、大いなる娯楽映画でしたよ。ドキドキハラハラ、手に汗握ってその展開を楽しめちゃいました。異国情緒いっぱいのパキスタンが舞台というのも結構わくわくポイント。
ウィンターボトム作品はドキュメンタリーっぽいのが魅力ですよね。ホントにリアルでした。グアンタナモと繋がっている感じがまた味わい深く。
この世から、テロ行為がなくなることは願ってやみませんが、その原因を突き詰めることなく、目には目をという感じで、テロ撲滅が掲げられることにはやはり抵抗があります。テロ警戒中って・・。
そうなんですよ。テロ組織の人質という状況は、あのイラクでの日本人の拘束事件の末路がオーバーラップ・・
というわけで、とにかく見ごたえがありましたよね。
社会派からラブストーリーまで、ウィンターボトムは何でもセンスよく、味わい深い作品に仕上げてくれますね。
あ、私もアスラが好きでした。
そして、お休みですか。あっちもこっちもというのは大変ですもんね。
余裕ができたら、再開してくださいー。とりあえずみくでよろしくです。
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