かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『呉清源 -極みの棋譜-』
2007年 12月 13日 |
アジアン・ビューティとは、ツィイーじゃなくて、チェンのことさ。

昭和の最強の棋士ともいわれた中国出身の呉清源を描く。



1914年中国・福建省に生まれ、14歳の時に来日した天才棋士、呉清源を、14歳の時に『クーリンチェ少年殺人事件』でデビューした台北生まれのチャン・チェン(張震)が演じる。チャン・チェンが大陸の監督と組んだのは初めてなんだって。そして、日本が舞台でほとんどの会話が日本語だなんて何だか不思議。そこは私の知っている雑多な文化が入り乱れた最近の日本じゃなくて、遙か遠い世界のように感じさせる静かに落ち着いた空気が漂う昭和の時代。中国人監督が描いている"和"のものの静謐な整然とした美しさにこんなにも見惚れてしまうなんて。

私の父は趣味で囲碁をやっていて、家に碁石があったけれど、ルールはよくわからないままだった。家にあったのはもっと安っぽいような平べったいシロモノだった気がするのだけど、映画に登場した、一流の棋士の対局で使われる碁石は、丸々と厚みがあって、美味しそうなほど。そんな滑らかな碁石を、ここぞというポイントにぱちんと打ち込む瞬間がとてもいい。同じ中国生まれの卓を囲むゲーム麻雀の騒がしさとは大違いだし、「打ち込み十番碁」と『かちこみ! ドラゴン・タイガー・ゲート』ももちろん大違い・・。

伝記的な映画は多いけれど、ミュージシャンが主人公のものなんかと比べて、棋士というのは、観客を楽しませる要素に乏しい題材だよね。なので、対局シーンを盛り上げて、エンタメ映画として作るという案もあったらしい。だけど、無理にそんなことはせず、囲碁の静かで理知的なイメージそのままに呉清源の生きた日々を品格ある映像におさめてくれてよかったと思う。畳も縁側もススキの原もとても美しくて。

しかし、まったり心地よく眺めていられる反面、起こっている出来事がわかりにくい映画であった。呉清源という人のことは何も知らなかったので、映画を観ることで、その人となりや人生を知ることになると思いきや、1人の著名人の半生を描いた伝記ものとしては、受け取りにくかった。呉氏の人生の中で起こった大きな出来事が、場面ごとに描かれていることはわかるのだけど、その位置づけや前後関係がつかめずに、具体的な部分が不明瞭だった。宗教のことや事故のことは後で調べて、なるほどその通りに描かれていたのだと納得。状況不明瞭のまま淡々と描かれているから、どんな事件が起こっても遠巻きに眺め続けてしまう感じだった。呉清源のことを知っていることが前提で観る映画だったんだろうか?

1人の天才棋士の半生の醍醐味はあまり感じられず、決しておもしろい映画でも、感動する映画でもなかったし、呉清源という人がどういう人なのかもよくわからなかった。でも、たぶんわからないと思うことも違うのかな。アメリカを中心に作られる伝記的な映画は、いつだって、気性の激しい著名人ばかりが描かれているから、自分は、カメラの前で感情をさらけ出してくれる主人公を当たり前に思いすぎていたのかもしれないな。そうじゃないから、理解しづらいと思うのはおかしいよね。映し出されたものが真の姿なのだよね。呉清源とは、静かで穏やかで、誠実さがにじみ出る一途な人なんだな。

その人間性やそこにある思いは手に取るようにはわからないし、共感や感情移入をさせるようにはなってもいないんだけど、凛々しいチャン・チェンが演じていることが好感度をアップさせていたのかな。出来事は遠巻きで眺めちゃうのに、呉氏その人のことは、擁護したい気持ちで終始見守るように見つめ続けることができた。めがねをかけて和服姿で姿勢よくゆったりと歩くチャン・チェンが素晴らしくステキなの。そんなわけで、案外と満喫。
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by CaeRu_noix | 2007-12-13 23:59 | CINEMAレヴュー | Trackback(5) | Comments(0)
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