かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ゼロ時間の謎』
2007年 12月 26日 |
豪華な格調高さの中に漂うあやしさが魅力。

大金持ちの叔母カミーラの別荘に、甥であるテニスプレーヤーのギョームと再婚した妻キャロリーヌ、前妻のオードらが集う。



ミステリーの女王アガサ・クリスティーが自作のベスト10の一本と認める傑作小説が原作なんだって。それだけのことはあって、ミステリーとして大いに見ごたえのあるおもしろい作品だった。原作ストーリーが卓越しているのだから、よほど下手な腕前じゃない限り、おもしろい映画にはなるのかもしれないけど、たぶんそれが意外に難しいのだと思う。場面を読者が想像しながら読み進んでいく小説と、ビジュアルで訴える映画のアプローチは違って当然で、見せ方に工夫が必要になる。映画ならではの魅力を追求してほしいというのが第一なんだけど、そういう意味で、大いに満喫できる贅沢な映像作品になっていたと思う。

ブルターニュ地方のディナールで撮影されたその海辺の館のロケーションが素晴らしいのだけど、ここはアガサ・クリスティー自身も休暇を過ごしたことのある場所で、まさに原作の「ゼロ時間へ」を執筆した所であると言われているそう。美しい風景の中に、豪華で趣のある洋館がたたずみ、インテリアや調度品もまた見事。そこに登場するフランス俳優たちの存在感も衣装も華やかにゴージャスで、それだけでワクワクと、これから起こる出来事に身を乗り出してしまうのだった。事件が起こる前から、犯人はいったい誰だろう?なんていう目線で見つめてしまい、登場人物たちの一挙一動から目が離せないのだった。

フランス映画ならではのビジュアルの魅力にあふれつつも、演出の仕方は近頃の一般的なフランス映画のように淡々とした運びではなくて、ミステリーの醍醐味を感じさせる濃密な空気に満たされている。くっきりハッキリと観客を惹きつけて、火サスにもそのまま使えそうなタイプの物語でもあるのだけど、決して陳腐にはなっていないんだよね。クラシカルな雰囲気が漂って、格調高さを感じさせてくれるの。フランス映画として、映像化されていることが欠かせないポイントかなって思う。スリリングなのにしばしばウットリ。

誰もがそれぞれにアヤしいと感じさせてくれたキャスティングとその演技、演出もとてもよかった。ローラ・スメットのわがままぶりったら最高におもしろいし。大体、まだ若い男の前妻と新妻が一緒に別荘で過ごすなんて、普通はありえないような設定なのだけどね。一緒に過ごすことになっても、普通は平静を装って接するのが大人なんだけどね。オードに敵意むき出しで、もはや叔母に気に入られる努力もしようともしない、キャロリーヌの暴れぶりは大いなる見どころだったかも。そんな人間関係の複雑さ、胡散臭いキャラ達が、殺人事件にどう絡んでくるのかと釘付けになって楽しめました。ユーモアの色づけもよかった。

「ゼロ時間」というものに関しては、最初に老弁護士トレヴォースが言及していた時には、興味を引かれたのだけど、事件が解明される時には、ストーンとこなかったような・・・。よくよく考えたら、そこに騙されていたその時点の自分にも気づき、なるほどって思ったけど。でも、そのために殺人を犯すっていう気持ちはどうしても理解できないから、入念な計画的犯行よりも、突発的な犯行の方が本当はしっくりくるんだけど、それじゃあ"ゼロ時間"が活きませんからね。ミステリーというジャンルはこういうものなんだな。


メルヴィル・プポーったら、前に来日した時に、同時期に来ていたアルノー・デプレシャン監督と飲んだことがきっかけで、監督作にも出演することになったそう。(それもゴールデン街で飲んだとか。)というわけで、デプレシャンの「Un conte de Noël」がとても気になります。またキアラ共演で、母ドヌーヴが主演?で、お馴染みのマチュー・アマルリックも!
プポーは主演作を決める際、監督を重要視しているというところがいいなぁ。
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by CaeRu_noix | 2007-12-26 13:32 | CINEMAレヴュー | Trackback(10) | Comments(8)
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Commented by 風情♪ at 2007-12-26 15:28 x
こんにちは♪

キャロリーヌがいなきゃ、本作はちと退屈な流れになって
いたかもと思えたくらい、気に入ったキャラでした。
ほほう、舞台となった場所ってクリスティが実際に本作を
執筆した場所だったんですか。いえね、勝手に舞台が彼
女の生まれ故郷のイギリスだったら湖水で雨や霧が煙っ
てまた違った雰囲気のミステリーになるんじゃ?なんて
想像しながら観てたりしてたもんで…。r(^^;)
Commented by cinema_61 at 2007-12-26 20:45 x
こんばんは。
私は単純にアガサクリスティのファンでメルヴィル・プポーもお気に入りなので、隣のスクリーン「やわらかい手」とどちらにするかで迷い、こっちを観ました。
原作読んでなかったので、手法は古典的だけど、とってもスリリングに楽しめました。「太陽がいっぱい」でもそうだけど、メルヴィルのようなハンサムが最後を締めるミステリーは好みです。キアラとは現実にも恋仲だったんですってね。なんかキアラのほうがすごく貫禄でてきちゃって・・・・。
ダニエルダリューの若いころの映画をネットでみたけど、すごい美人だった!どんな美人も年齢には勝てないのかな?
やっぱりアガサクリスティはミステリーの王道だ~
Commented by CaeRu_noix at 2007-12-27 01:16
風情 さん♪
キャロリーヌのキャラってばサイコーでしたよねー。
ローラ・スメットは『石の微笑』では、また違うタイプの謎めいた危なげな女を演じていたんですが、今回のキャラ立ちぶりもお見事。
そうそう、アガサ・クリスティ本人も滞在し、執筆もしたらしい海辺がロケ地に選ばれたなんてステキです。原作では、舞台はソルトクリークだそうです。それって、アメリカ? でもそう、ミステリーって、霧の濃い曇り空のイギリスに似合うイメージですよね。ブルターニュ地方はケルト文化の色濃い北の方の地域だから、フランスの中ではイギリス風味なのかも?
Commented by CaeRu_noix at 2007-12-27 01:19
cinema_61 さん♪
アガサ・クリスティのファンですかー。
それだと映画を観る目も厳しくなりそうなところですが、楽しまれたとのことでよかったです。原作を読んでいる人が観たら、どういう評価をくだすのでしょうね。それはさておき、原作を知らないで観れば、大いに楽しめる作品でしたよね。私も見終わって、『太陽がいっぱい』を思い出しましたよ。最後の海の上のメルヴィル・プポーの姿が、あのドロンを思い出させました。顔は違うけど、なんとなく髣髴とさせるものがありました。見終わってみて、改めてキャスティングにニヤリでした。この役が似合うのはプポーかマジメルくらいしか思い浮かばないんですけど、ギラギラ感を出せるのはメルヴィルですよね、やっぱり。そう、キアラとは私生活の過去があったようで、その点でもニヤリなキャスティングでした。
ダニエル・ダリューの若い頃なんて想像つきませんー。
Commented by マダムS at 2007-12-29 20:22 x
こちらも一緒に観てきましたーん♪ プポーだもんね(^^*)
やはりドロンを思い出しますよね でもあんなに顔に出しちゃ~プロにはなれませんよねぇ~最後の表情はいくらなんでもオーバーアクションだってば(爆)
フレンチ・アガサミステリー第1弾の「奥さまは名探偵」よりは全体的にピリっと締まった感じで、進歩したなぁと思いましたよ^^ ローラ・スメットの怪演ぶりもホント見事でしたね~♪
Commented by CaeRu_noix at 2007-12-29 23:42
マダムS さん♪
こちらにもありがとうございますー。
プポーたんですからねー。(プポーは顔が濃すぎるので、ドロンの方が好みなんですが)プポーがこの役を演じると、ホント太陽がいっぱいのドロンのイメージに重なりますよねー。うう、私もあの船の上の演技は、ちょっと過剰じゃないのかなぁと思えました・・・。それまでは、ポーカーフェイスに振る舞い続けていた男が、いくら動揺したからって、あんなに取り乱さなくてもーって感じでしたよね。でも、このドラマは激しめなキャラ立ちがウリなので、ああいう演技が求められたのかもしれませんー。
「奥さまは名探偵」はレンタルして観たのですが、実は全部見終わらずに返しちゃいました。好みな雰囲気でしたが、あちらはゆるめな空気で今作は濃厚とタッチ、演出は全然違う感じでしたよねー。監督の演出センスは結構好きかもです。
ローラ・スメットはやってくれましたよねー。
Commented by たかこ at 2008-01-17 14:16 x
おー、ゴールデン街で一緒に飲みたかったですね~
そうそう、ローラ・スメットおもしろかったですね、なんかかわいい!
クラシカルで豪華で怪しい、目も喜ぶお正月映画でした♪

ありゃ♪ひとつ上のかえるさんのコメント、「プポーは顔が濃すぎる」が非常に光栄です!!わたしには褒め言葉デス。
Commented by CaeRu_noix at 2008-01-18 00:57
たかこさん♪
ゴールデン街で出くわしたかったー。
2人は何を呑むのでしょうー。うー、いいなー。
いや、ホント、ローラ・スメットは素晴らしかった。
あらゆるパターンのイヤな女を演じ続けてほしいですー。
風景とインテリアに衣装に俳優達に、豪華で見ごたえアリアリでしたし。
たかこさんはクッキリハッキリ美男子がお好みなのよね。
私は苦手めです。ホント、プポーは濃すぎー。
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