かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『中国の植物学者の娘たち』
2007年 12月 28日 |
芸術性あふれるアジアの映像美にウットリ。

孤児院で育ったリー・ミンは、植物学者チェン教授のもとで働くために、小島の植物園に住み込み、娘のアン・チェンと出逢う。



ダイ・シージエ監督が描く中国南部の小島に浮かぶ植物園を舞台に描かれる禁断の愛の物語だなんてこれは劇場鑑賞必見。いえ、禁断が好きなわけじゃなくて、幻想的に美しいアジアならではの映像美が期待できるから。『小さな中国のお針子』を観て、「中国料理を食べに行ったら、ヌーベル・シノワが出てきた」という表現をしていた友人がいたのだけど、フランスで映画を学んだ中国人監督が描く、ヨーロッパで好まれそうなエキゾチックなアジアというものが私にはむしろ魅力。イメージどおりの美しき映像世界を堪能。文革で、再教育という苦々しい体験をした中国の監督、チェン・カイコーやチャン・イーモウはもはや他のテーマに取り組んでいるけれど。ダイ・シージエは今回も、同様のテーマや作風で持ち味を発揮してくれた。

中国では撮影許可が下りずに、ベトナムで撮影したのだそう。だから、街のシーンではちょっとベトナムっぽい風貌の人々の姿も見られるのだけど、広い中国だからそういう人の多い地域もありそうかな。山々や植物園には緑が生い茂り、この地域ならではの湿度を感じさせて独特のムード満点。たびたび登場した寺院のたたずまいも素晴らしく味わいがある。線路が走る狭い道の両脇にびっしりと民家が連なっている風景もよかったな。川から眺めた結婚の宴もそれは素晴らしかった。そんな魅惑的なロケーションで、ふんだんに美しい映像美を追求してくれたことに満足。青いパパイヤや夏至など、トラン・アン・ユン監督作品を思い出させる薫り高き芸術性。

そして、そんな魅惑の植物園で育まれる禁断の愛の物語。ブロークバック・マウンテンを思い出す。2人はもともと同性愛者だったというのでもないようで、ただ厳格な教授のもと、孤独な2人が育んだ友情がエスカレートしていったという感じ。惹かれ合っていく様はわりと自然だったと思うけど、短い期間であまりにも情熱的に向こう見ずに関係を追求し過ぎという印象もあったかな。恋は盲目とはいえ、初めの印象ではもうちょっと奥ゆかしさをもった節度のある女性に見えた2人だったので、傲慢な存在とはいえ、兄や父を欺き裏切ることに何の罪悪感も感じる様子もないことに少し首を傾げてしまった。禁断の恋に苦悩することもなく、甘美なる秘め事に酔いしれる2人。なので、リアリティのある物語として感情移入するというのではなく、外野からアジアン・ビューティ世界をウットリ見つめて楽しんだという感じ。

主人公はフランス人と中国人のハーフだと事前に知っていて、その子が個性的な美しさを表現しくれるのかと思っていたのだけど、その魅力を見せつけてくれたのは、アン役のリー・シャオランの方だった。お針子のジョウ・シュンに似ていると思うのだけど、監督好みのタイプなのかな。ハーフのミンも最初は野暮ったい雰囲気だったのに、2人の関係が深まるにつれて、自身に満ちた顔つきでエキゾチックな表情を見せてくれるようになったことも印象的。互いを輝かせるのが恋。そして、時に、周囲の者達を傷つける恋。終盤の展開は全く予想外でショッキングだったけれど、突っ走りすぎた2人の恋の物語には、ふさわしい劇的な幕引きといえるかもしれない。許されぬ恋の悲しい結末。厳格に不寛容な社会を愁いつつも、儚さが美しさを際だたせる。
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by CaeRu_noix | 2007-12-28 07:49 | CINEMAレヴュー | Trackback(13) | Comments(5)
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Commented by 風情♪ at 2007-12-28 10:20 x
こんにちは♪

>川から眺めた結婚の宴もそれは素晴らしかった
このシーンだけでも観に行った甲斐があったってぇ感じです。
基本的に同性愛者、特にレズものが好きじゃないボクでも
あまり嫌悪を感じることなく観ることが出来ました。
ミンとアンが互いに惹かれあう理由とでも言うんですかね?
その辺をもうちょい描いて欲しかったかなと言ったところです♪
(゚▽゚)v
Commented by CaeRu_noix at 2007-12-28 22:47
風情さん ♪
そうなんです。あの地元の婚礼のシーンはめちゃめちゃステキでしたよー。
そう、これが観たかったんだよーって感じでした。
植物園の温室も魅惑的だったし、ウットリの連続でした。
男性同士よりも女性同士の方が苦手なんですか?
私も前は結構苦手だったんですが、最近はゲイものは全然OKです。
が、れずびーものはありふれていない分、心もち抵抗感があるかもしれません。でも、そうこれはとても美しいツーショットでしたよねー。
孤独な2人が惹かれ合う気持ちそのものはよくわかったんだけど、一線を越えちゃって、向こう見ずにまっしぐらにその関係ばかりに執心するというのには、ちょっと唐突さもありましたよね。そこまでの思いにもうちょっと説得力をもたせてほしかったというのはありましたね。
Commented by 日本インターネット映画大賞 at 2007-12-29 01:30 x

突然で申しわけありません。現在2007年の映画ベストテンを選ぶ企画「日本インターネット映画大賞」を開催中です。投票にご参加いただくようよろしくお願いいたします。なお、日本インターネット映画大賞のURLはhttp://www.movieawards.jp/です。

Commented by kimion20002000 at 2008-05-31 17:54 x
TBありがとう。
あのふたりは、自分たちの関係を、隠しておくことは出来なかったですね。寺院でも、こちらが心配してしまいました。
革命的警戒心が足りなかったか(笑)
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-31 20:46
kimionさん♪
隠そうとしない2人にハラハラさせられましたよねー。
若気のいたり。幸せを周りの人に自慢したい気分があふれてしまったのかなという感じ。
それが恋なのでしょうね。でも、こんな危険な関係には警戒心が必要でしたよねぇ。
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