かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『その名にちなんで』 The Namesake
2008年 01月 16日 |
変わりゆくことと変わらないこと。

インドからニューヨークへ渡ったアショケとアシマの夫妻は、生まれてきた子に「ゴーゴリ」と名付ける。



ジュンパ・ラヒリの短編集「停電の夜に」がとてもよかったので、長編小説の「その名にちなんで」の方も読もうと思った。そこで、映画化されるという情報を小耳に挟み、読書をお預けにした。原作も読みたい時は、映画を先に観るべきだと思っているから。小説を既に読んでいた友人が、あの長い小説をどうやって、1本の映画にするんだろうと言っていた。読みごたえのある長編小説を映画化する企画はいとも簡単に次から次へと出てくるけれど、それを脚本化、映像化するのって簡単なことじゃないよね。

全体を満遍なく物語るべきか、エピソードを絞るべきか、どんなふうにまとめるのがよりよいのかはわからない。これがベストではないかもしれない。だけど、その原作小説の醍醐味を大いに感じさせる見ごたえのある重厚なドラマに仕上っていた。インドの女性監督ミーラー・ナーイルは、『モンスーン・ウェディング』でも、エピソードが盛りだくさんの群像劇を手際よくまとめていたけれど、今回は家族の物語を2世代に渡って、長い年月の経過の中で描く。前半は主に妻アシマに共感しながらその展開を見守り、後半は主に息子のゴーゴリの思いに捕らわれた。そういった主体の切り替わりはいかにも文学作品らしくて、ドラマの味わいも増幅するのだよね。

何しろ私はエキゾチックなものを映画で味わうのが大好きなので、インドな世界がめいっぱい登場することが嬉しかった。モンスーン・ウェディングよろしく、華やかな結婚式のシーンに心躍る。美しいサリーを身にまとった女性達の晴れ姿にウットリ。北インドへは行ったことがあるので、ガンジス川やタージ・マハール、その景色もなつかしく楽しめちゃった。カルカッタは今はコルコタと発音すべきなのだね。熱い街の喧騒もたまらない。それは文学という枠からは離れた映画ならではのエンターテインメントだよね。つい、ミュージカルが始まることを期待してしまったりもして。ワインにサモサかー。

そんな風に観光客気分でわくわくとインド文化を楽しみつつも、異国の地で暮らす家族に降りかかる問題やそこに生まれるすれ違い模様はやるせなくて、心痛めながら見入ってしまった。これまで観た移民の二世を描いたいくつかの映画やこないだ観たばかりの『ペルセポリス』を思い出しつつ、ゴーゴリのアイデンティティの揺らぎにため息。そして、アメリカという国で生まれ育ち、独自の生活習慣や価値観を持つようになった子どもとの向き合い方に戸惑う母の思いもまた辛いんだな。強い絆で結びついているはずの家族がたびたび分かり合えずに苦しみ、でもやがてまた絆を確かめ合う。カルチャー・ギャップ×ジェネレーション・ギャップ。大河ロマンのボリュームで幾重の悲しみと感動が押し寄せる。

ゴーゴリという名前をつけた理由は初めの方でほとんどわかってしまうので、観客としてその名前に関する秘密にハッとすることがなかったのは残念だったけど、名前に不満を持っていた息子が父の思いを知り得る場面はやはり肝だった。異国で生活したならばなおのこと、世代間の溝は深くなるばかりで、親子といえど同じ方向を向いて同じ速度で歩むことは難しいのだろうね。山あり谷ありの人生はまだ続くのだけど、息子が父の本を発見し、母は子の成長を見極めて祖国へ帰るという一つのピリオドに胸がいっぱいになるのだった。

前に、「停電の夜に」を読んでいたことが、ささやかなエピソードにも感情移入しやすくしてくれたかもしれない。さて、次は、本作の原作小説を読んでみようーっと。
「書を捨て、旅に出よ」というアプローチも大好きで、やっぱり自分の目で世界を見ることはステキだよねーって共感。それでいて、文学の魅力もあわせて感じさせてくれる。書も旅も。

★★★★☆
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by CaeRu_noix | 2008-01-16 00:47 | CINEMAレヴュー | Trackback(13) | Comments(12)
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Commented by JT at 2008-01-17 01:55 x
こんばんはー
”つい、ミュージカルが始まることを期待してしまったりもして”
そうそう、どうしもインド映画というとあのインド舞踊満載のもの思い出してしまいます(笑)
あのインドの雑踏と、ニューヨークの雰囲気にあまりギャップを感じなかったんですけど、どうしてでしょうかね。やっぱり、エネルギーが集約されてるからでしょうか?
色んな人生を局面を描いていましたが、私が一番ほっとしたのは、最終的にアシマが自分の居場所を見つけたことなんですよ。不幸な出来事がなくてもそうなってれば良かったんですけどね。
Commented by Cartouche at 2008-01-17 14:36 x
見終わってから涙が止まりませんでした。別に悲しい・・ということではないのですが。ふたつの祖国を持つということの大変さ。でも人生2倍生きられるのかしら?『モンスーン・ウェディング』といい、この作品といいたまりません~
Commented by マダムS at 2008-01-17 16:51 x
今年初映画がこんなに自分の好みぴったりどんぴしゃだったのは幸運でした。
そうなんですよね、多分、異国で子育て経験した方ならきっと共感することだらけだと思われる話だったです。
かえるさんは原作者の他作品も、監督の他作品もご存知だったのですね~! 私はどちらも初めての出会いでしたが、幸運な初対面と言えます♪ 是非他の作品も観て(読んで)みたくなりましたわ。
トラコメ有難うでした♪
Commented by CaeRu_noix at 2008-01-18 00:47
JT さん♪
そうなんですよ。
インド映画といったら、歌ったり踊ったりーが定番ですよねー。
ゴーゴリが結婚しての初夜!のベッドで、彼女が歌い始めた時にはウキウキしちゃいました。
私個人的には、西洋の大都会ニューヨークの感じとインドの雑踏はそんなに似ているとは思えなかったんですが、監督がニューヨークとコルカタは似ているとコメントしていましたよね。混沌としてエネルギッシュなんですよね。
波乱に満ちた半生を送ったアシマの選択にはホッとしましたよねー。アメリカに住み続けるという選択もそれはそれでありだと思いますが、子どもも巣立った後に、故郷に帰って、自分のやりたいことをやるという生き方もとてもステキです。
Commented by CaeRu_noix at 2008-01-18 00:47
Cartouche さん♪
涙ナミダでしたよねー。
悲劇に見舞われた時の悲しい涙もありましたし、通い合った心に嬉しい涙を流したり。そして、生きることって本当に大変なのだよなぁと実感しつつも、でもこうやって生きていくのだなぁと感慨に満たされますよね。どちらの国でも異邦人になってしまう寂しい立場でもあるのだけど、とらえ方によっては2倍生きられるということですよね。
Commented by CaeRu_noix at 2008-01-18 00:49
マダムS さん♪
そんなにバッチリ気に入られたとはよかったですー。
2本目がちょっとイマイチであろうとも、初映画でそんなにも満足されたというのは最高ですね。
もちろん同じような経験をした人なら、大いに共感するのでしょうね。でも、カルチャー・ギャップでいうと、日本人がアメリカで暮らすことの方が障害は少ないような気もするし。逆に、異国ということじゃなくても、田舎で生まれ育った人が都会で結婚出産するというケースでも、何かしら思いが重なったりもしそうだし。というわけで、具体的、個人的経験に関係なく、普遍的に味わい深いドラマが描かれていたと思いましたですー。
近頃はめったに公開されない貴重なインド映画ですよね。
モンスーン・ウェディングはもっとポップなんですよー。
Commented by きらら at 2008-01-18 23:48 x
かえるさーん。こんばんは♪
私もインドパート好きでした☆特に結婚式!モンスーンウエディングほどの華やかさはないものの(そりゃとーぜんか。。。)キレイだったなー。
アシマを演じた女優さんも美しかったです♪
Commented by CaeRu_noix at 2008-01-19 21:48
きららさん♪
インドの結婚式って、すんごい豪華きらびやかで楽しいですよねー。
こういう風景をスクリーンで見られるだけで大いに満足。
美女のサリー姿にわくわくしちゃいましたねー。
Commented by rock-c at 2008-01-21 00:01 x
かえるPPさん
TBありがとうございます。観ている映画結構ダブっていますね、嬉しく思います。でも数がPPさんとは比較になりませんが・・。
さて、
そうですかー、インド行って見たいですね。やはり行った事のあるある方のコメントは説得力が有ります。しかし、何処の国の親も基本は同じですね。親の心、子知らずで。
Commented by CaeRu_noix at 2008-01-22 00:07
rock-c さん♪
コメントありがとうございます。
おお、鑑賞作品結構かぶっていますか。それは私も大変嬉しいです。
総数なんていいんです。自分好みの素敵な映画に出逢えればー。
インドは見どころがたくさんのエキサイティングな国でしたよー。
文化的にも興味がありますし、ミュージカルがいっぱいのインド映画も大好きですー。
そんなインドならではのものを見せてもらいつつ、やっぱりどこの国も親子は同じだなぁなどと思わせる普遍性がよかったですよねー。
ゴーゴリがやがて親の思いを理解してくれて安心しましたー
Commented by minori at 2008-02-16 11:31 x
かえるさーん。こんにちわー。
最近「書」にばかり偏っていた私ですが、また映画復活です。書も勿論映画も世界を知るにはいいものだし私も大好きですが旅もまたいいですよね。あの時はただ「本を読みたかった」アショケも後にああやって旅をして、人の出会いって何だかフシギでもありますよね。タージマハルは是非是非みたい私ですが、一度酷い事故にあった友人の話を聞いて恐れおののいている私です(笑)今回もまた電車怖いな、と(笑)だけどいつかいければなぁ。ああそうそう、チョトウのシーンは書き忘れちゃったけど、チョトウ、ダイ、には笑えました。笑えるシーンもあったりインドのきらびやかな冠婚葬祭なんかも見れて、映画ってやっぱりいいですな。ではではTBをしちゃいますー。
Commented by CaeRu_noix at 2008-02-17 11:28
minori さん♪
おお、書に偏ってましたかー。
私の読書は、移動の電車の中でのみなんて、映画の本数に比べると、全然少なくていけません。minoriちゃんを見習わねばー。本作の原作小説も図書館で予約したのだけど、まだまわってこないしー。
世界を広げてくれる本もまた魅力的だし、でも実際に自分で旅をすることも絶対的に大切なことだということにも賛同。原作は"本"でありながら、本もいいけど旅をせよというようなことを主張しているところがまたイイですよね。映画も本も旅も人生には欠かせないなぁと。運命のステキな出逢いにもグッときます。
インドの旅はすっごく楽しかったですよん。確かに、西洋の国よりは、事故にあう確率が高そうな交通事情なんですけどね。インドの文化は異国情緒あふれる文化はとてもよかった。カジュラホの遺跡が好きでした。ジャイプールもよかった。
笑って感動、観光客気分のエンタメにもあふれた盛りだくさんで見ごたえのある作品でしたね。映画はやっぱりいいでっす。
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