かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『テラビシアにかける橋』
2008年 02月 21日 |
みんな、王国をもっている。

貧しい家庭で姉妹4人に囲まれ窮屈に暮らす11歳の少年ジェスの隣家にレスリーという風変わりな少女が越して来た。



児童文学の金字塔作品を『ナルニア国物語』スタッフが映画化、という一文にはまるで惹かれなかった。だって、ナルニアはイマヒトツな映画だったし、子ども向けファンタジーって、大人の自分がハマりきれないものも少なくはないから。でも、これは何やら評判よく、ハリポタ的ファンタジーとは違った切り口であるらしくって。"空想"がキーワードになっているそのテーマに改めて興味をもち、劇場でテラビシア王国体験がしたくなった。

新宿ミラノで六百円也。こんなによい映画を600円ぽっちで観られるなんて幸せなことよ。この原作本は、"親が子供に必ず読ませたい本"として愛読されているそうだけど、この映画もまさに、悪者と戦う物語などより何より、世界中の多くの子ども達に観てほしいと思えるものだった。それでいて決して子ども向けという枠にはまらない、昔子どもだった私たち大人の心にも大きな感動をもたらしてくれる良質の映画だね。

その王国が、当然のごとくそこにあるという設定のファンタジーじゃなくて、家でも学校でも窮屈な思いをしている現代の少年の現実的な日常の物語であることがとにかくとてもいい。魔法学校で寮生活をするんじゃなくて、バスに乗ってごく普通の学校に通い、上級生やクラスメイトの意地悪にイヤな思いをする等身大のナイーヴな少年の物語であるから、ググッと感情移入してしまうんだよね。学校で遭遇する嫌な出来事に、ジェスと一緒に心締め付けられるから、レスリーと出会うことによって、世界が輝いていくことにこの上ない解放感を覚えるの。皆で歌う音楽の授業のシーンも大好き。

ちょっぴりイジイジくんなジェスの気持ちで見るから、イジメを受けても弱気にならないレスリーという少女の屈託のない明るさに、その空想力と心の自由さに心打たれて、涙があふれる。レスリーは空想少女なんだけど、オタク気質ではない、アクティヴ・ガールなのが魅力的なんだよね。部屋に篭って空想遊びをするばかりだったら、ここまでの感激はなかったかもしれない。冒険心いっぱいに、2人は森を駆け回り、風の音に耳をすまし、やがてそこに王国が広がるからこそ、高揚感でいっぱいになるのだ。

ナルニアとは大違いで、主人公の子どもたちのキャラクター造形がきちんとしていて、学校でのもめごと・イジメ描写にもリアリティがあり、共感できるものになっているのがいい。ジェスの妹の存在も可愛くて重要だったし、いじめっ子上級生の存在も印象的で、彼女が王国に登場するのがまた楽しい。家族を養うためにあくせく働くお父さんのジェスへの態度というのも、現実的であってテーマを浮き彫りにする考えさせられるものであったり。内なるファンタジー世界や想像力についてを描いた映画が去年からいくつもあったけれど、これまたストレートに心に響くアプローチでお見事。

終盤の悲劇は実にショッキングだったけれど、だからこそ、ジェスは彼女の意思を継いで、より強く信念をもって王国の素晴らしさを感じ、王冠を受けることにしたのだよね。常に見えているわけじゃないからこそ、王国の住人達のビジュアルにもワクワクして魅せられた。王国よ、永遠なれ。

★★★★
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by CaeRu_noix | 2008-02-21 19:25 | CINEMAレヴュー | Trackback(8) | Comments(4)
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Commented by SGA屋伍一 at 2008-02-26 18:07 x
わたしは『ナルニア』もけっこう好きです。だって「トビラをあけたら雪国だった」ら面白いじゃないですか(笑)。もちろん何が面白いかなんて、人それぞれですけど

で、こちらはむしろ現実的で感情移入できすぎたために、いまひとつ乗り切れませんでした(理由はウチの記事をごらんください・・・) でもいい映画だとは思ってます。お父さんのあからさまなえこひいきには、『ロード・オブ・パーディション』の「お前はオレに似すぎてて扱いづらかった」というセリフを思い出しました

あと、この映画最後の方でとてもドキドキしたんですね。もしかしてレスリー父が「おまえのせいでこうなった」とジェスを責めるのではないかと。でも彼は自分もとても辛いのに、ジェスに暖かい言葉をかけていましたね。そういうところにとてもほっとしました
Commented by CaeRu_noix at 2008-02-28 00:40
SGA屋伍一 さん♪
ナルニア国物語の世界観もまたすばらしいと思うんですが、あの第一作目の映画「ライオンと魔女」はどうもゼンゼン・・・だったんですよね。CGの動物の造形もイマイチだったし、主人公の子ども達のキャラクター描写も物足りず。あれはきっと子供向けの映画なのかなぁという結論に達したのですが、SGA屋伍一さんは充分に楽しめたのですねぇ? ファンタジーなら、『スターダスト』はかなり気に入りましたよー。
ううむ、私なら、自分自身の経験にかぶる部分があるなら、よりドップリはまれる気がするんですが、SGA屋さんの場合は、感情移入イコール乗れる、ではないんですね。哀しさ痛さも含めて、リアルに共感できることが、私にとっては気にいる映画になりやすいのですが。
父さんキャラの存在もえらく現実味があって、それもポイントアップに繋がりました。子どもの心を忘れない大人でいたいと思いつつ、この社会ではあの父さんを責めることもできず。でも、たった1人の息子なんだから、むしろ可愛がられてもいいはずですよね。
客観的には、レスリーが亡くなったのはジェスのせいじゃないですもんね。
「マイフレンド・フォーエバー」は責められないことが不思議だったけど。
Commented by めかぶ at 2008-03-01 22:53 x
終盤の出来事は、予想だにしてなくってかなりショックでした。
レスリーのアナソフィア・ロブはキツい感じが好きではなかったんだけど、
こういうアウトローな女の子役は合ってるのかもしれませんね。

ファンタジーは基本的に好きなのは私もなのですが、「ナルニア」は気に入っています。今日、「ライラ」を観て来ましたが「ナルニア」の方が好きかなぁ(笑)。でも、早く続編を見せてくれ!的な作りでしたわ。待ち遠しいです。
Commented by CaeRu_noix at 2008-03-03 01:15
めかぶ さん♪
私は本作は、見ようか見まいか迷っていて、ちらりちらりと他の人の評価をうかがったのですよ。で、とらねこさんのレヴュー・コメントを読んだ時に、終盤に何らかの悲しい出来事が起こるらしいということを知ったのでした。だから、何らかの悲劇を受け止める覚悟はできていたんだけど、やっぱりその展開にはビックリ・ショッキングでしたわ。
そう、彼女はちょっと憎たらしい感じで私もあまり好感のもてるタイプではないんだけど、この役はピッタリで、魅力的でしたよねー。

きゃあ、めかぶさんもナルニアは楽しんだクチでしたのね。みんながつまらなかったと思いこんでいました。すみません。ええ、ライラはそれ以下っすかぁぁ。私もファンタジーはみんな好きなんだけど、戦闘ものは退屈に感じちゃうんですよ。冒険ものっていう感じで物語が進むファンタジーが好きかな。ライラはとにかく映像世界が楽しみですー
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