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ソクーロフと戯れる、『牡牛座 レーニンの肖像』
2008年 02月 22日 |
ユーロスペースのアレクサンドル・ソクーロフ特集鑑賞メモ



今年もまたソクーロフの作品をまとめて劇場体験する機会に恵まれるとはなんて幸せなことでしょう。思えば、一昨年の特集上映はレイトショーでかなりつらかったのだけど、日本での『太陽』のHITもあってか、ソクーロフファンが増えたからなのか、今回はなかなか親切なスケジュールだったと思います。(オリヴェイラ作品と日程がかぶったことだけは困ったが。)初めはたった一度の上映だった『痛ましき無関心』が改めて複数回上映されたことにも感謝。

83年製作の『痛ましき無関心』は、初見作品の中では一番の拾いものだったかもしれません。かなりトチ狂った映画っていう感じにも思えるんだけど、こんなのも作っていたんだーという奇妙なノリの斬新なおもしろさがありました。音楽にしても、いつもはクラシック調のものが静かに渋めに使われる印象なのだけど、本作に限っては時折明るくハイな曲が紛れ込んでいて。ソクーロフの知らなかった一面を垣間見られた感じの満足感。

新作として公開された『牡牛座 レーニンの肖像』は、今回観た中ではそれほどの感銘はなかったかな。結局のところ、自分はレーニンのことを知らなさすぎるので、あの著名人がこんな風に映画の主人公として描かれているということへの感動が『太陽』や『モレク神』を鑑賞した時よりは薄くなってしまうのでした。でも、やはり、いつものごとく、ソクーロフの創り上げる空間の浮遊感ある幻想的な美しさには釘付けになります。

という感じで、牡牛座を含めて、7本鑑賞することができました。
眠い・タルいのと紙一重なのかもしれませんが、やっぱり至福の映画体験。このたびも改めて、アレクサンドル・ソクーロフの独創的な芸術性に魅せられて満喫。いや、しかし、私、ソクーロフの作品レヴューは書けないんです。一昨年、『ファザー、サン』を観て、年間ベストに入れるくらいめちゃめちゃ気に入ったのに、レヴュー記事を書けなかった。ストーリーが明確な映画を観て、思ったことや考えたことを文章化することはできるのだけど、映像詩が感性に訴えかけてきたその感銘を言葉にする術をもっていない私。ということで、鑑賞作記録。

あ、もう一言。『太陽』に登場した鶴は印象的だったけど、他の作品でもツルみたいな鳥が出てきていました。気になる存在です。

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『牡牛座 レーニンの肖像』 2001
1922年モスクワ郊外ゴールキー村、病床で静かに最期のときを待つ男がいた。―ウラジミル・レーニン。発作の後遺症で右半身は麻痺し、言葉もおぼつかない。見守るのは妻と妹ただ二人。この孤独で頼りなげな男が、本当に史上初の社会主義政権を樹立させた権力者だったのか・・・。

『痛ましき無関心』 1983
第一次世界大戦中のさなか、厳しい社会情勢とは無関係に恋愛ゲームに興じる人々がいた…。原作はバーナード・ショウ。

『日陽はしづかに発酵し…』 1988 <再見> trailer
中央アジアの荒涼とした大地を舞台に、ロシアとアジアの青年の交流を軸に繰り広げられる壮大な叙事詩。原作はストガスキー兄弟のSF「世界終末十億年」。

『セカンド・サークル』 1990
ひとりの青年が亡き父親の葬儀をだすために、事務手続きから出棺まであれこれする、それだけの話だが、傍観するような死への距離感が強く印象に残る。

『ストーン クリミアの亡霊』 1992
チェーホフ館の番人の青年と、蘇ったチェーホフとが幻想的な交流をする。ゆがんだ画面、日常音を生かした見事な音設計はソクーロフの真髄そのものである。

『静かなる一頁』 1993 <再見>
原作はドストエフスキーの「罪と罰」だが、ソクーロフの自在なイメージはマーラーの音楽と相俟って、かつて誰も描けなかった映画空間をつくりだした。

『エルミタージュ幻想』 2002 <再見>
美術品が陳列されたままのエルミタージュ美術館を舞台に、ロシア近・現代300年史を、映画史上初の90分ワンカットで描いたソクーロフの代表作。

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一度目の鑑賞時にはウトウト状態だったものをこのたび再見したことにも大きな幸せがありました。『静かなる一頁』の廃墟の雰囲気の素晴らしさに目を見張り。そして、その暗さとは対照的に明るくきらびやかな『エルミタージュ幻想』のめくるめく美しい絢爛豪華な90分の旅にも歓喜せずにはいられませんでした。これって、初見の時は、旧ユーロスペースの小さめなスクリーンでの上映だったかと思うので、新生ユーロスペースのこの劇場空間で再会できたことは極上でした。舞踏界は夢のように素晴らしく、何だか音もクリアで音楽もこんなに美しかったんだなぁということに改めて感銘。エルミタージュはオールタイムのベストに入れるべき作品かも。ハラショー!



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by CaeRu_noix | 2008-02-22 07:30 | CINEMAレヴュー | Trackback(3) | Comments(8)
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Commented by とらねこ at 2008-02-22 08:17 x
おはようございます、かえるさん^^
>映像詩が感性に訴えかけてきたその感銘を言葉にする術をもっていない私
ノオオオぉぉ~っ!
かえるさんが「みずみずしい感性の言葉で語る人」でなかったら、私達は一体どうすればいいのでしょう?
ところで、こんなにたくさんご覧になっていたなんて、素晴らしいですね!
『ストーン クリミアの亡霊』と『モレク神』は、やっぱり見れば良かったなあ、と、
終わった今になって後悔しています。
ソクーロフって、見る前に気合が入りますね。今回は気合負けということで(笑)。
次回もしどこかであるなら、その時はまた是非通いたいと思います。
これは必ず劇場で見ないと!と思ったりします。
この濃蜜な空気は、なんだか特別でした。
どれをTBしようかな?と思ったのですが、『牡牛座~』をTBさせていただきました。
Commented by manimani at 2008-02-22 22:11 x
こんにちは。
いいですね〜たくさん観られましたね。
わたしはヒマがなく3本だけ。
まだ「牡羊座〜」には行けていないので、「日陽は〜」をTBしちゃいます。ちゃんとTBできるかな?

それから「ファザー、サン」絶対観なきゃという気になりました。
Commented by CaeRu_noix at 2008-02-23 01:05
とらねこ さん♪
いやー、まじでまじで。
とらねこさんはちゃんと「静かなる一頁」のレヴューを書いていてスバラシイなぁと思ってましたよ。
私は言葉を絞り出そうとしても出てこなくって。
ロシアの美しい森で森林浴でもしないと頭がスッキリしませんー。

すみませーん。オリヴェイラとソクーロフを観るために仕事を休んだりしたしー。
全作品観たいくらいでしたが、上映回数の少ないものは難しく。
前に観たドキュメンタリーっぽいやつはかなり眠かったので、今回はフィクションをおさえる方向でいきました。ぞくぞくと塗りつぶしー。
『ストーン』もまたよかったですよ。かなり"静"なんですが、その空気には惹かれ。
そして、やっぱり『牡牛座』よりか、『モレク神』には感嘆するものがありました。
機会ありましたら、ぜひご覧いただきたいですー。
ソクーロフ特集は、シモタカにいく可能性があるんじゃないかと私は密かに思っているんですが、どうかなぁ。
家のDVDで観ても遜色ない映画というのも確かにありますが、こういうのは絶対に劇場体験すべしですよね。
睡眠をしかりとって、挑みましょうー。
TBは関連記事全部していただいてもOKでっす。
Commented by CaeRu_noix at 2008-02-23 01:10
manimani さん♪
すみませーん。いっぱい観ちゃってー。w
情熱的な牡羊座と保守的な牡牛座は大違いなんですが、私はロマンチストな魚座ですー。
『日々~』ご覧になったのですねー。
私もつい2度目を観に行ってしまいました。
あの世界観、たまらく好きですー。
『ファザー、サン』も魅力的ですよ、躍動感があって。
どれもこれもステキですよねー。
Commented by manimani at 2008-02-23 05:13 x
あ、間違えた^^;
もしかしてあちこちで間違えてるかも^^;なワタシは天秤座。
で、TBがついてませんね〜
すみません。
Commented by 風情♪ at 2008-02-24 00:33 x
こんにちは♪

レーニンばりの斑ボケならぬ斑寝で三分の二
を寝ていたこともあって、本作に関しては本
来ならとてもTBもコメも残せる身じゃないん
ですが、残させてもらいますね。
最初は青色を基調にを霞がかった映像に惹か
れて観てはいたんですがね。
本当にこんなコメントでゴメンなさいね…r(^^;)
Commented by CaeRu_noix at 2008-02-24 10:47
manimani さん♪
ふふふ、字は一見似ていますけどね。
星座的にもお隣だしー。
ユーロカウンターで「オヒツジザ」と言うことにならず何よりー
TBありがとうございます。
Commented by CaeRu_noix at 2008-02-25 00:14
風情さん♪
さささ、三分の二も寝ちゃいましたかー。
いえ、私もあまり人のことはいえませんね。
これはまぁ一応起きていたけど、それほどに頭スッキリ状態ではありませんでした。
半分くらい寝ちゃったかもっていう作品や、朦朧とした状態で観たっていう作品もあります。ソクーロフのって。
映像はとてもいい雰囲気でしたよねー。それゆえに睡魔が訪れるんですがー。
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