かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
latchodrom.exblog.jp
(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
Top
『アメリカン・ギャングスター』
2008年 02月 27日 |
シロクロつけられない大人な味わい。

1970年代のニューヨークを舞台に実在した伝説のギャング、フランク・ルーカスの半生を描く



さすがのリドリー・スコット。現代アメリカを舞台にした犯罪もの、こういう男のドラマって、マイケル・マンやスコセッシが描くような題材というイメージだったんだけど、そんなオハコを奪うような勢いでリドリー・スコットは見事に血潮みなぎるハードボイルドな男のドラマを描いてくれた。見ごたえ満点、おもしろかったー。

デンゼル・ワシントン×ラッセル・クロウなんて、ちょっと濃すぎるんじゃないかとさえ思えるキャラクターのぶつかり合いというのもこの上ない魅力。決して、キャスティング的には食指は動かされないんだけど、このスリリングなドラマの主人公としては申し分のない存在感のある名優の2人。本当にもう、いつも別人のラッセルには感服。ハードに生きる男たちのドラマはやっぱりこのくらい脂ののった世代の俳優競演に限る。デカプ×デイモンじゃあ、全然、まだまだ。デ・ニーロ×パチーノはややキャラかぶり気味な気がするし。オートゥイユ×ドパルデューってのもね。(コンビものの『マイアミ・バイス』のコリン・ファレル×ジェイミー・フォックスなんかはセクシーでよかったけどね。)と2人の男が主役のドラマをあれこれ思い浮かべつつ、本作のデンゼル、ラッセルが扮する黒人ギャング麻薬王フランク・ルーカスと刑事リッチー・ロバーツの色濃い対立構図にそれはもう膝を打ちたくなるのだった。

実話ベースでありながら、堅苦しい感じではなくて、スリリングなエンタメ映画として楽しめるのがいいよね。それでいて、こんな真実の物語にゾッとさせられたりもする。これがアメリカなんだなー、グローバルな社会の仕組みなんだよなーということに改めて愕然とさせられることが大きなポイント。2人の男の対立を軸におきながら、彼らを取り巻く世界は、決してどちらが善でどちらが悪とレッテルを貼ることはできない。正しさと悪は表裏一体のものであり、混沌と入り乱れていることが描かれているのが最高なのだ。それが事実をもとにしているというから、ため息をついてしまうのだけど、そういう現実の複雑なテーマを面白くクールに仕上げているのがすばらしい。

人を蝕む麻薬を売りさばいているという事実を度外視したら、ルーカスという男の生き様は実にかっこいい。掟破りの賢い方法によるビジネスマンとしての仕事ぶりの完璧さには目を見張るし、人間的にも魅力的で仲間を大切にして、人種差別にも負けずそこまでの成功者になったなんてスゴいよね。彼ののし上がっていく様を眺めているのも何だか爽快。それでいて、仕事は仕事というその割り切りぶりが恐ろしいと思う。ねぇ、エンデ。自分がやらなくてもどうせ誰かがやるのだし、これはあくまでもビジネスだからと、麻薬に武器に臓器に人間さえ、世界中で売買されているわけで。あまりにも多くの犠牲が払われる戦争の裏で常に誰かが大もうけをしているわけで。

正義の看板を掲げた警察も、特権を利用してウマい汁を吸っている。みんなが当たり前のようにやっていたら、罪悪感なんて誰も感じなくなってしまうのかな。そんな恐ろしき現実があるからこそ、ワイロを受け取らないロバーツ刑事の信念には心から感動してしまうのだ。この世界はまるでクリーンではないけれど、完全に汚れきっているわけじゃない。正義の刑事が犯罪者に恨まれるのではなく、同僚の汚職警官に敵対視されて身を案じなければいけないなんて何とも不条理。ロバーツの心意気にうたれつつ、いくつもの困難にハラハラ。そして、職務の上では模範的な正しい人間であるはずのロバーツが、家庭では最低の亭主で父親失格であったという現実的な皮肉にも考えさせられるのである。『インサイダー』のラストを思い出した。

何が正しいのかなんて本当にわからない・・・。
でも、そんなことをまざまざと見せつけてくれたのが魅力。

★★★★
[PR]
by CaeRu_noix | 2008-02-27 13:01 | CINEMAレヴュー | Trackback(11) | Comments(8)
トラックバックURL : http://latchodrom.exblog.jp/tb/7359822
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2008-02-27 16:46
タイトル : アメリカン・ギャングスター
 『けもの道を行く実在の男たちの、容赦なき闘いの人生!』  コチラの「アメリカン・ギャングスター」は、デンゼル・ワシントン、ラッセル・クロウ主演、リドリー・スコット監督の2/1公開となったR-15指定のノンフィクション・クライム・ムービーなのですが、早速観て来...... more
Tracked from I am invinci.. at 2008-02-27 19:09
タイトル : アメリカン・ギャングスター
1968年。 アメリカはがまだベトナム戦争を続けていた頃、ニューヨークのハーレムを仕切っていた黒人ギャングのバンピー(クラレンス・ウィリアムズⅢ)が死んだ。... more
Tracked from 八ちゃんの日常空間 at 2008-02-27 22:38
タイトル : アメリカン・ギャングスター
はどちらも自分の信じるもののために生きる、行動する、戦う、そんな正反対でありながら共通点がしっかりある、まさにアメリカの「漢」の物語なんですよね。 ... more
Tracked from 真紅のthinkingd.. at 2008-02-29 01:00
タイトル : デンゼル・ワシントンがカッコよすぎる件について〜『アメリ..
 AMERICAN GANGSTER  60年代後半から70年代、ベトナム戦争が泥沼化するアメリカ、ニューヨーク。 黒人ギャングのボスの運転手から、その才覚でハーレムの麻薬王に昇りつめた フランク・ルーカス(...... more
Tracked from SCARECROW'SR.. at 2008-03-01 02:08
タイトル : アメリカン・ギャングスター(2007年・米)
★男二人の熱演が、心地よい暑苦しさ(?)を感じさせてくれます★俳優さんが大根なのにストーリーの面白さや監督の力量で楽しめる映画もあれば、ストーリーは特にどうって事がないのに俳優陣の演技に釘付けになってしまう映画もある…全てを満たしていれば一番いいんですけ...... more
Tracked from 映画通の部屋 at 2008-03-01 22:00
タイトル : アメリカン・ギャングスター
「アメリカン・ギャングスター」AMERICAN GANGSTER/製作:2007... more
Tracked from 愛情いっぱい!家族ブロ! at 2008-03-02 08:42
タイトル : アメリカン・ギャングスター
1968年、二人の男の闘いがはじまった。 NYを仕切る親玉バンピーが心臓発作で亡くなる。 そのかたわらにいた運転手こそが、フランク・ルーカス(デンゼル・ワシントン) 彼はバンピー亡き後、跡目をつぐ。 そしてバンピーにもなしえなかった一大事業へと手を染... more
Tracked from Akira's VOICE at 2008-03-05 12:31
タイトル : アメリカン・ギャングスター
悪い事をすると必ず捕まります。 ... more
Tracked from よろ川長TOMのオススメ.. at 2008-03-06 09:31
タイトル : アメリカン・ギャングスター/ほんとうに悪いのは誰だ。
麻薬の売人、麻薬中毒、麻薬の製造人、汚職警官。でもそんな世界を作ったのは誰なのか。俺のやってることは本当に悪いことか?───娯楽作のフリをしていろんな疑問を投げかける傑作登場。... more
Tracked from SGA屋物語紹介所 at 2008-03-07 21:53
タイトル : 拳銃の星 リドリー・スコット 『アメリカン・ギャングスター』
やあ、良い子のみんな! 「いきいき社会科」始まるよ! みんなはドラッグ大好きだよ... more
Tracked from My Favorite .. at 2008-03-08 16:17
タイトル : アメリカン・ギャングスター を観ました。
ずっと観たかったのですが…抜け駆けすると相方の怒りをかうのでガマンしていました。... more
Commented by kusukusu at 2008-02-27 14:32 x
見てないけど、戦争の裏側で麻薬が・・というのは全然、過去の話でなくて、まさに今のアフガニスタンでのことですよね。アフガニスタンは世界一の麻薬大国であるわけで、そのことがアメリカがアフガニスタンで戦争をしていることとやっぱりどこかでつながっているんだろうなーと。リドリー・スコットがこの70年代の話を映画にしたのは、まさに今のアフガニスタンのことが念頭にあったのではないでしょうか?
Commented by 哀生龍 at 2008-02-27 19:21 x
アレだけの商才と日々の生活をコントロールする自制心があるのだから、もっと別の・・・
と、思いますよね。
それに対して、不器用な生き方をしているあの人。
そして、どこにでもいる甘い汁を吸う小悪党ども。
相変わらず、この映画と同じような攻防が続けられているなんて、本当に人間は進歩が無いと、見終わって数日してからふと思いました。
Commented by CaeRu_noix at 2008-02-29 00:08
kusukusu さん♪
そうですね。なぜ今、この実話を映画化したのかといったら、現在の問題に通じるものがあるからなんでしょうね。『キングダム・オブ・ヘヴン』にもそんなところがありました。ビジネスという方では武器兵器の売買から石油ビジネスなどのことも考えてしまいますし。麻薬といったら、やっぱりアフガンですよね。そして、麻薬売買の儲けは、石油利権やら軍需産業の儲けよりも絶大らしいじゃないですか。「君のためなら千回でも」はタリバンが思いきり悪者として描かれていたんですが、タリバン政権下は麻薬も取り締まられていたみたいですね。アフガン侵攻は麻薬マネーのため説もあるようで・・・。
Commented by CaeRu_noix at 2008-02-29 00:15
哀生龍 さん♪
ルーカスのできる男ぶりにはしびれますが、その有能さを世のため人のために使いたいですよねぇぇ。
麻薬以外なら、低価格で消費者に商品を届けてくれるなんてすばらしいんだけど・・。
世の中って、ホントに不条理に満ちています・・・。
甘い汁を吸う小悪党はどこにでもいますが、正義の職務の職権によって私腹を肥やすっていうのは小悪党どころじゃないですよね。ゆるせーん。
人間の総体は進歩なんてないと思います・・。欲望が肥大化するばかり。
Commented by しゅぺる&こぼる at 2008-03-02 08:41 x
これは見ごたえありましたね。
今のところ今年劇場で観てよかったなあと思える1本になってます。
そうかあ、麻薬とアフガンの問題・・・
フランクが「俺を逮捕してなんになる?またちがう誰かが出てきて同じことをやるだろう」と言うセリフを思い出しますね。
リドリー・スコットならではの軽やかなタッチもよかった!
でもじっくりと長尺でコッポラ風にシリーズものにしてもこの題材なら見たいと思いました。
Commented by CaeRu_noix at 2008-03-04 01:02
しゅぺる&こぼる さん♪
見ごたえありましたー。
私はミニシアター女なので、シネコンで観る拡大上映系作品には、イマイチと感じられるものも比較的多いのですが、本作はガッツリ面白かったですー。
その面白さは単純に、フィクションのスリリングなエンタメ作品としてのものだという受け止め方をした人も多いのかもしれませんが、私としては社会派テイストなところがポイントでした。
そうなんですよね。目の前の悪事をせき止めても、他の誰かがまたやるというのは紛れもない事実・・・。
全ては利権のために世界は回っているっていう感じで、その事実の断片を知る毎に頭を抱えたくなりますが、こういう作品を撮ってくれる巨匠がいると思うと少し希望がもてますかな。
なるほど。シリーズにもできそうなタイプですね。
Commented by SGA屋伍一 at 2008-03-07 21:51 x
またまたおばんです

自分が好きな「対決もの」は・・・『フェイス・オフ』かな

で、こういう対決もので「黒人対白人」という構図、そんで「黒人が悪玉」という作品珍しいですよね。バディムービーならいっぱいあるけど
だいーぶ前に「ハリウッドでは『黒人をなるたけ悪く描かない』という風潮がある」と聞きましたが、それが本当なら、きっと本作は「実話だからしょうがないじゃん」ということで押し切ったんでしょうね

>自分がやらなくてもどうせ誰かがやるのだし

この言葉『ロード・オブ・ウォー』の主人公も言ってましたね。とんでもねえヤツだ、と思いながらも、彼らのサクセスぶり、切り抜けぶりがついつい痛快だったりして・・・・ いかんいかん

フィクションだったら最後はルーカスを撃ち殺してるであろう、リッチーの独特な正義感も印象的でした。恐らく多くの観客が「それでいいんか!?」とつっこんだことと思いますが、彼にしてみれば組織と法律が正常に運行されればそれでよかったんでしょうね
Commented by CaeRu_noix at 2008-03-08 23:31
SGA屋伍一 さん♪
うー。フェイス・オフは顔をそっくりに造ったって、背格好が違うじゃーんって思ったような・・。
ふむ、私は別段、「黒人が悪玉」として描かれていたとも思いませんでしたのよ。もちろん、デンゼルの役どころはギャングな犯罪者で、ラッソーの役は不正もしない刑事さんでもちろんこっちが善玉なんでしょうけれどね。レヴューで書いた通り、善悪を分けていないテーマ性に私は感銘を受けたので、そういうふうに話をふられても、すんなりのることができませんー。(笑
まぁ、デンちゃんはマルコムXまでやった大俳優ですから、どんな悪漢を演じようと世間的には問題ないんじゃないでしょうか。悪玉といえども、カッコイイ男でしたしね。

ロード・オブ・ウォーや本作のような題材では、私は彼らのサクセスに爽快な気分にはならないんですよねぇ。個人的な恨みによる復讐劇の方が主人公の活躍で爽快になれるかも。一握りの人間が目先の利益のために、人々の健康や安全を害するという図式には、あまり痛快な気持ちにはなれないのですよーー。でも、そういった現実問題を見据えた題材で映画がつくられることには嬉しくなりー。
<< 『君のためなら千回でも』 Th... PageTop 『ラスト、コーション』 >>
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Beige Shade by Sun&Moon