かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『君のためなら千回でも』 The Kite Runner
2008年 02月 28日 |
★★★

アメリカ在住のアフガニスタン人作家カーレド・ホッセイニのベストセラーになった自伝的小説の映画化作品。
1978年、カブール。アミールは召使いの子どものハッサンと仲良しだった。



アフガニスタンの少年が主人公のこの映画のことを知った当初はかなり楽しみにしていたのだけど、この邦題がつけられた時点で気持ちは下降。「君のためなら千回でも」と訳されたその台詞は、アフガニスタン人がよく口にする慣用句的な言い方らしい。でも、そう日本語にしちゃうとエラく語呂が悪いし、恩着せがましく響くような気がする。「君のため」っていう言い方がそもそも嫌い。俺は、君のためにこそ死ににいくチック。いえ、邦題にトーンダウンしたばかりではなく、有名俳優は出てこないアフガニスタン人の物語なんておよそ多くの日本人の興味を引くような映画には思えなかったのに、角川配給でシネコンを含む複数館で公開されたことが、逆に不安材料になった。アフガンの人々を描いた映画というと、イラン映画が定番だった私にとってはね。ベタなお涙ちょうだいものなんだろうかとか、エンタメ要素に満ちているということだろうかとか・・・。そして、ぴあの満足度ランキングで1位だった本作。

案の定、私個人としては、好きなタイプじゃなかったな。前半は、少年たちの笑顔がみずみずしさにあふれていてなかなかよい雰囲気だなぁと思ったんだけど、後半の展開には首を傾げたくなった。『アトランティスのこころ』のように、長編小説の初めの子ども時代の物語だけを1本の映画にする方がよかったのになぁなんて。といっても、後半の展開もあって、この原作小説はベストセラーになったのだろうから、大人になった主人公が大切な少年を救い出すために、勇敢にタリバン支配下のアフガンに赴くという正義のヒーローな行動は欠かせないものなのかな。

それにしても、せっかく、『アメリカン・ギャングスター』のような、シロクロつけられない現実を描くアメリカ映画を嬉しく思ったばかりなのになぁ。子ども時代のイジメっ子少年アセフが大人になってタリバンの一味になっているという展開にはあ然。そして、タリバンが100%の悪者として描かれていることに苦笑い。タリバンの圧政は確かに多くの人を苦しめた酷いものだったのはわかる。『アフガン零年』でも、タリバン兵の残虐さが描かれていた。それは大いなる事実。だけど、アフガンが酷い状況になる前にその国を脱出してアメリカで暮らしてきた主人公の物語を、アメリカの映画会社が製作するにあたって、臆面もなく徹底的に、タリバンを悪者として描いて世界に発信していることには少々面食らう。ただ単に、フィクションの原作に忠実に描いているだけなのだとしても。

何しろ私は、マフマルバフの映画が好きなもので。ハナちゃんの描いた『ブッダは恥辱のあまり崩れ落ちた』の記憶が新しいのだもの。その国の悲劇の中で、それでも今を生きる現地の貧しい人々の姿があまりにも印象深いから。祖国が荒廃する前に脱出をはかった裕福なアミールに心寄り添うことはなかなかできなくて。原作ではたぶん、亡命してから新生活を始めるまでの苦労がもっと丁寧に書かれているのかもしれないけど、映画では、ぴゅーんと逃げていったように見えてしまった。識字率の低いアフガニスタン人だけど、彼は英語でベストセラー小説も書けちゃうんだもんな。子ども時代は、アミールの罪の意識にも充分せつなく共感できるのだけど、境遇的に恵まれているのに、罪悪感で自己憐憫モードなので、亡命後は彼に同情しきれず・・・。贖罪の物語なのに・・・。

映画に登場する空を飛ぶものの映像が大好きな私は凧揚げのシーンにも期待をしていたのだけれど、これまた好みじゃなかったの。凧は大空を、開放的に自由にゆったり伸び伸びと舞ってくれればそれでよかったのに、ここで描かれていたのは、競争相手の凧糸を切ることに勝利があるなんていう男の子向きの競技ものなのだった。その競争がダイナミックにスピーディに展開する映像はCG凧だったりして、それがスクリーンの中でどんなに見事な飛翔を見せてくれようとも、私の心は高揚しなかった。そんなに派手な動きやカメラワークじゃなくていいから、本物の風にのる凧の悠然とした動きを見せてほしかった。何しろ今月は、空を飛ぶもの映像のオールタイムのベストに入れたいような『ミスター・ロンリー』のシスター・ダイヴを観ていたからなぁ。他の映画の好きな凧揚げシーンといったら、『リリイ・シュシュのすべて』の蒼井優ちゃんやヤスミン・アハマド監督の『ムクシン』のものかな。躍動感いっぱい。

そんなわけで、私個人的には、引っかかる箇所が多く、気にいる箇所の少ない映画ではあった。でも、アフガニスタン人が主人公の映画がハリウッドで作られて、その結果多くの人が本作を鑑賞するにいたったのは多いに意義があると思う。泣けると好評のようだし。どこの国の物語も英語劇にしてしまうのがハリウッドの常なのに、現地のダリー語で撮ったというのはすばらしい。ソ連侵攻の前のアフガンの町があんなにも活気あふれる場所だったことや、パシュトゥーン人とハザラ人の人種の問題を知ることもできたし。

マーク・フォースターは私にとってはイマイチなのかもしれない。一番よかったのは、『チョコレート』だもの。『ネバーランド』もファンタジーの飛翔に物足りなさを少し感じたような。実力のある監督なんだと思うけど、パンチ不足というか、すごく惹かれる何かがいつもないような・・・。異文化を描いているのに、『その名にちなんで』ほどに惹きつけられる描写がなく、パーティの賑わいすら伝わってこないというか。007『Quantum of Solace』はこの人なんだよねぇぇ。
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by CaeRu_noix | 2008-02-28 23:59 | CINEMAレヴュー | Trackback(6) | Comments(0)
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