かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ファーストフード・ネイション』
2008年 03月 05日 |
早い、ウマい、安い、を追求し続けた罪。

アメリカの大手ハンバーガー・チェーン「ミッキーズ」では、主力商品ビッグ・ワンの売れ行きが好調の中で、自社の肉パテに糞便性大腸菌が混入していたことが発覚・・・。



ルポルタージュの「ファーストフードが世界を食い尽くす」が原作で、著者のエリック・シュローサー(奥さんはレッドフォードの娘なのね。)も脚本に参加。

有名俳優も複数出演しているリチャード・リンクレイターの監督作なのに、2006年の作品がようやく2008年に入って日本公開。メジャー系作品じゃないからとはいえ、本作と同じ一昨年のカンヌ映画祭コンペ出品作は軒並み去年の公開されたというのにね。それほどに上映されにくい問題作。でも、食品の偽装事件が相次いで、極めつけの毒入りギョーザ事件まで起こった我が国では、食に対する関心が高まっているタイムリーな封切り時期だったかもしれない。いつもすいているイメフォで、『いのちのたべかた』が大ヒットロングラン上映していることも合わせて。ギョーザの話はまた別次元の問題としても、食にまつわるシステムについてを見つめ考えるのに絶好のタイミング。

普段会社勤めをしていて、そもそも利益追求・効率追求と、安全管理・品質管理とを同時に実現させようなんて無理な話だよなーって思うことが多々あったのだけど、それを両立させることで成り立っているのが企業なんだよね。速さを追求したら、当然に正確性は失われるわけなんだけど、それを最小限におさえようと、工夫・努力がなされ、それを首尾よく実現できれば、利益が得られるのだよね。だけど、経営者サイドが現場の現実に目を向けずに、効率や利益の方ばかりにとらわれてしまうととんでもないことになる。いや、結局はみんなとらわれていないわけじゃないと思うけど、自社の製品に問題があっては元も子もないので、車をつくる会社ならば、事故を起こさない車を生産する努力を惜しまないのだけど。それに比べて、食品というのはごまかしやすいものだからね。ミンチの肉パテに何が入っているのかなんてわかりゃしないもの。人肉パイだって何だって。そして、家や車を買う時のように、人はその商品ハンバーガーをいちいち悩んでは買わない。それなりにおいしいものが手軽に安く手に入ればいいのだと。そうやって大量消費を確保し、こーんな恐ろしきシステムが成り立ってしまうんだよね。

多様な作品を手がけるリチャード・リンクレイターったら素晴らしい。ここでは、フィクションのカタチをとって、大手ハンバーガーチェーンのシステムが暴かれる。興味深くも戦慄の社会勉強ができるのだ。原作はノンフィクションなのに、真面目なドキュメンタリー映画にはせずに、フィクションとしての面白さがもたらされているのがお見事。それでいて、多くの似たようなことが現実におこっているのだろうなぁと推測できるから、重苦しさも含めて手ごたえも格別なのだ。ハンバーガーの肉パテに牛の糞が混じっていることを知らされたグレッグ・キニアの姿が印象的だった予告から、観る前はもっとコミカルテイストの映画をイメージしていたのだけれど、そこに横たわっていたのは真剣に見つめざるを得ないシビアな現実だった。

田舎のハンバーガーショップでアルバイトをするアンバーのパートはやや気軽に観られたかな。その母パトリシア・アークエットと叔父イーサン・ホークとソファーで語らうシークエンスがとても好き。リンクレーターの得意の会話映画的な醍醐味を味わうことができた場面。環境問題に立ち向かう学生たちの理想と現実というのも興味深い一面。そして、気軽な気持ちで眺めることなんてできず、胸が痛くなるばかりだったメキシコからの不法移民たちのパート。カタリーナ・サンディノ・モレノは、『そして、ひと粒のひかり』でも、麻薬の運び屋という過酷な体験をしてアメリカに渡った少女だったのだけど、この度もまた・・・。要領よく目先の快楽を手に入れる妹ココの姿もまたやるせないし、妹とは対照的に実直な彼女シルヴィアの身の上は不憫で仕方ない。夢と希望を求めてやってくる中米からの不法移民を安くて手軽な労働力として使い捨てているシステムには呆然、愕然とするばかり。

こんなの間違っていると多くの人は思うはずのことなのに、他の多くの不条理な問題と同様に、一度つくられた仕組みは維持されて、こうやって世界はまわり続けているのだよな・・・。ダイハードの男が言った言葉が現実なのだった。問題があるとは思っていないわけではないけど、歯車を回し続けるしかないだろうって。そして、ここにはびこる問題を言い表していたクリス・クリストファーソン扮するルーディの言葉も印象深かった。どうしたらいいんだろう?の答えは容易にはでないけれど、ミッキーズのバーガーという究極的な一例を通して、グローバルな資本主義システムの恐ろしさを具に直視させられる、重苦しくも見ごたえのある映画であった。

封切り時はレイトショーのみだったのに、3月に入ってからは18:40の回も増えて、3月8日からは 10:30の回も追加になるもよう。
消費者に身近なモノを扱ったこういう映画は多くの人に観てほしいのですがね。

★★★★
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by CaeRu_noix | 2008-03-05 07:50 | CINEMAレヴュー | Trackback(9) | Comments(4)
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Commented by とらねこ at 2008-03-05 10:25 x
おはようございます、かえるさん♪
何と~!ユーロスペース、18:40の回も増えたのですか!
それは良かったです!朝の回も増えるんですね!
私にとってはユーロの2と1では見易さも好き度も全然違うので・・・。私が見た時は2の方で見れてすごく嬉しかったです。

食というものを、経済システム論としてマクロ的に語る、そんな極めて重い話になりそうな題材で、
これだけ面白く、かつ見ごたえあるドラマとして成立させているなんて、リンクレイターは本当に素晴らしいですよね。
テーマとしては確かに、目新しいものではないかもしれませんが、何度語られても変わらない、生活レベルに密着した食文化の構造があって・・・。
変わらない私達の姿、というのが依然としてそこにあるので、
それすら表現している本作が、素晴らしいと思ったのでした。
でも、最後は、遊び半分の映像ではなかったですよね。
あそこは、リンクレイターの本気を感じました。
だからこそ、余計に素晴らしかったです!自分のブログでは「涙目になっちゃった。にゃおーん」なんて生ヌルイこと言っちゃいましたけど、本当は前のめりになって見てましたとさ。
Commented by CaeRu_noix at 2008-03-06 22:47
とらねこ さん♪
上映回数が増え、より多くの方にご覧いただけますね。よかった、よかった。
ユーロの2って、右の席数の多い方? そうか、今は狭い方になってますね。

リンクレイターったら、ホントに引き出しがたくさん。
マイケル・ムーア的に熱く攻めるのもいいけど、リンクレイターのスタイルはクールだなって思いました。例えば、『ダーウィンの悪夢』などにもテーマ的に通じる部分があると思ったのですが、あれはドキュメンタリーでありながら作為的な感じもしましたからね。本作はフィクションの面白さをしっかり獲得しているのが素晴らしく。環境保護の若者たちの集いは『バッドチューニング』な感じだったり。
でも、観る前はもうちょい軽めでコミカルなものをイメージしていて、思った以上にHEAVYなところも攻めているなとビックリ。大いに本気なのでしょうね。カッコイイー
この原作本は数年前のものだし、今初めて問題になったことではないといえ、メジャーなメディアでは大々的には取り上げられないでしょうから、やっぱり1本の映画にしてくれたことは素晴らしいなと思います。
移民のドラマはかなり泣けました。
作品の出来映えが嬉しく、そこにある現実にどよーん。
Commented by sally at 2008-03-08 23:27 x
リンクレーターの新作だけあって、やっぱり観たい方も多いのかな?
上映回数増えてますねー。
最近極めて個性的な場所にある渋谷のあの映画館に出没することが
多い私です^^
3者の視点から描いている中でも、アンバーのパートはやっぱり共感し易かったです。イーサン叔父の言葉は印象的で観た後普通に自分で使っちゃいましたー。爆
Commented by CaeRu_noix at 2008-03-10 01:11
sally さん♪
夕方や朝の回も増えてよかったですねー。
初日は立ち見が出るほどに盛況だったからでしょうか。
むしろ、なんで初めはレイトだけの見込みだったのかっていうのが不思議ですー。
おお、sally さんもあの界隈に通っていますのねー。
私もユーロ通いの頻度は高いですよー。特集上映も充実しているし。
アンバーがオジサンの話を聞いて、自分のバイトを見つめ直すところなんてとても等身大なリアルさがあってよかったですねー。
叔父イーサンの語らいシークエンスはめちゃめちゃ気に入ってます。
ジュリー・デルピーにも参加してほしかったくらい。
共感するとかしないとかはさておき、ハンバーガーに関わる3つの立場の人々が同時に描かれているのがとてもよかったなぁと思いました。
例えば、青鬼の褌を洗う女的なココちゃんの振る舞いは、賛同したいというのとはもちろん違うんですが、共感できんと突き放したくもないんですよね。
グレッグ・キニア部長の着地点もため息ものなんだけど、それが現実なのだから、いわゆる共感はなくても、考えさせられるものであったし・・・。
でもそう、アンバーちゃんたちは青春映画風味だったのがとりわけ楽しかったですよねー。
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