かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生』
2008年 03月 13日 |
静と動を行き交うエモーションとパッション。

女流写真家、アニー・リーボヴィッツを描いたドキュメンタリー。



大きなお腹の妊婦デミ・ムーアのヌード写真や、殺害される数時間前にベッドに横たわってヨーコを抱きしめる裸のジョン・レノンの写真を撮ったアメリカの名写真家、アニー・リーボヴィッツ。

アニー・リーボヴィッツのことなんて知らなかった私なので、本作にはそれほどに心惹かれたわけではなかったのだけど、何度も何度も見た予告編がずいぶんと魅力的なものだから、どうせ見るならばやっぱりスクリーンでと思い立った。これは、予告編のイメージそのままの、感慨深くエキサイティングな作品であった。予告編は確かに、特別な見どころ映像が使われているのだけど、フィクション作品とは違って、その写真や映像を既に目にしていたからといって、本編の感動が損なわれるということはなかった。不思議と、何度見ても感銘を受ける。それどころかそれらは、より感動的な1枚、ワンシーンとなって蘇る。アニー・リーボヴィッツについてを追究するドキュメンタリーという一連の流れの中で改めて、出来上がった写真や撮影現場の映像を見つめる時、そこからは被写体の人生や物語が感じられるし、同時にアニー・リーボヴィッツの情熱が伝わってくるからなのだね。

それほどに新鮮な体験というのでもないはずなのに、1枚の写真が映し出されるのに前後して、その写真の撮影現場の様子を映像で同時に見つめることができるというのは、思いのほか興味深くドラマティックなものだった。その人物の経歴を追うことや代表作品を紹介することそのものはドキュメンタリーの定番に過ぎないのに、静止画である写真というものがドキュメンタリー映画という映像の中で再生・再構築されて伝えられることの面白み、その醍醐味にググッと心掴まれてしまったのだ。静止画と動画がそれぞれの存在の意義を高めあっているかのようなの。彼女の撮った1枚の写真、それが本来のメディアに載ったままのカタチだったなら、手に取った雑誌の表紙や誌面で眺めただけだったなら、センスのよさやインパクトを感じたに違いないけれど、きっとそれだけだったと思う。映像表現によって、彼女の人生の物語と合わせて、その写真がスクリーンサイズで届けられたことに、私は魅了されてしまった。

そして、その人、アニー・リーボヴィッツという女性の人間性や仕事ぶりもすこぶるカッコよくて素敵だったから、全力投球する彼女のエネルギッシュな姿を見るにつけ、何度も感動させられた。私はどちらかといったら、旅を通じて撮るような街や自然、風景の写真なんかを眺める方が好き。セレブリティの写真なんていうものは芸術的ではなくて商業的なものというイメージがあった。だけど、リーボヴィッツの写真には魂が感じられて、とても魅惑的。撮影現場でモデルのセレブと心を通わせて、空気のような存在になってしまうのだという。いわゆるアーティストは我が道をいく孤高の存在だったりもするのに、こういった仕事の場合、順応力やコミュニケーション能力が名写真家として花開く重要な要素になっているのだね。人間が人間を撮るっていうのはそういうことなんだね。写真を撮られると魂が抜かれるなんて昔は言っていたけど、それも一理あるなぁって思えたりした。その瞬間に魂を抜き取られてしまうくらい情熱を捧げて撮られる写真がここにあるのだ。

★★★★
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by CaeRu_noix | 2008-03-13 21:09 | CINEMAレヴュー | Trackback(7) | Comments(2)
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Tracked from 地球が回ればフィルムも回る at 2008-03-13 23:18
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Commented by mchouette at 2008-03-20 19:55
かえるさん、TBありがとう。これは写真と音楽、それに錚々たるスターたちのコメント、堪能しました。彼女の写真観るだけでも値打ち。だから記事にも書いたけど、いま一つ私の中で踏み込めない、軽い苛立ちも感じたけどね。でもこれは観ていてDVD買ってもいいなって思ったわ。
Commented by CaeRu_noix at 2008-03-21 07:26
シュエットさん♪
写真の映し出し方、テンポがよくって、すっかり見入ってしまいました。
同じ写真を写真集で見たら、こんなにもワクワクが持続しなかったんじゃないかと思ったりして、映画の別のチカラを感じました。
セレブにはそんなに感心ないよーって思っていたのですが、彼らの本音なかが思いの外感動的だったし。
私はドキュメンタリーにそれほど期待しないからか、期待以上の手ごたえでした。
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