かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ジェリーフィッシュ』
2008年 04月 10日 |
ふわふわラブリー。

イスラエルの都市、海辺のテルアビブに、結婚式場で働く若い女性バティア、花嫁のケレン、フィリピンから出稼ぎに来た介護の仕事をするジョイがいた。



ふわふわユラユラものが大好きな私はクラゲの存在もとても好きで。水族館で見入ってしまうものTOP3に入りますね。jellyfish というハンドルも使ったことがあったっけ。そんなわけで、タイトルだけで既に高得点だったのだけど、そのイメージに違わない好みの作風だったな。群像劇になっていて、3つの物語が交差するというスタイルがまた私好み。そして、広い海を漂うクラゲのような主人公に感情移入しないはずはないわけで。

青い海、浮遊する透明なjellyfishのイメージのもと、幻想的な世界に飛び込むのだけど、最初はそこにファンタジーをさほど感じはしなくて、ささやかな日常の物語がリアリティにあふれて繊細に描かれていることにまず見入ってしまう。身近とはいえないイスラエルの国だけど、そこで暮らす人たちの日常の風景やそこに生まれる感情はもちろん私たちのものと何ら変わらないわけで。しばし夢心地なファンタジーを忘れて、冴えない出来事にしばしば遭遇する等身大の彼女達の姿を共感しながら見守っていくのだった。

まず、メインキャラクターともいえる結婚式場でウエイトレスをして働くバティアが好き。学生時代にそういう配膳バイトをしていた私にはなつかしいシチュエーション。一大イベントで盛り上げるパーティ客を別世界のもののように眺めてしまうことってあるよね。水漏れの憂鬱感なんかにもやけに親近感。地に足が着いていない流されるばかりのトホホなキャラなんだけど、海辺で遭遇した謎の迷子ちゃんのために一生懸命になる姿がほほえましくて。『アワーミュージック』にも出ていたのだね。彼女の親との関係性、今へと繋がるトラウマ的な心の引っ掛かりが徐々に見えてくる展開も秀逸。

エピソードの一つ一つがリアルな痛みをもっていて、そのツボを心得た描写にスッと共感できちゃうものだから、どちらかといえば寂しくて憂鬱な気分になりそうなことが続くのに、嫌な気持ちに満たされたりはしないのだよね。だって、クラゲは沈まないんだもん。哀しみさえもポッカリ浮かび、果てしない心の海には負の感情も溶け出していくような。そうして物語が進むごとに、リアルな日常に潮が満ちていくように徐々に、いつのまにかその世界はまた詩的な幻想の色を帯びていくの。私たちのココロもクラゲ化して心地よく漂うのだった。この感じがすごくいい。

浮き輪をつけた小さな女の子の存在が不思議にかわいいったらありゃしない。映像は色彩豊かで、ディテールも女子好みで、これは女性監督の作品かなって思ってしまうところだったのだけど、実際は、映画監督としては新人の著名な作家夫婦の共同作品とのこと。それゆえに文学的でポエティックなものが感じられるのも納得。それでいて作家だからと言葉ばかりに頼ってはいなくて、映像で多くが表現されているところがステキなの。本作の監督もそのようなことを語っていたようだけど、イスラエル映画は政治色の強いもの、社会派路線のものが多いのだよね。だから、こんなに等身大にポエティックな女子映画がイスラエルから漂着したことにはとても嬉しくなっちゃうな。

★★★★
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by CaeRu_noix | 2008-04-10 23:59 | CINEMAレヴュー | Trackback(14) | Comments(10)
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Tracked from 覚え書き at 2008-04-11 12:16
タイトル : ジェリーフィッシュ
いやあ、これはツボにはまりましたよ(そうとしか言い様がない) イスラエルにはこういった映画を撮る監督(カップルなんですが)というか、こういった感情・感覚を映像にする世代が出てきているんだなあとたまげました。 「あなたに愛を伝えたいの」 どうしたらいい....... more
Tracked from レザボアCATs at 2008-04-12 15:32
タイトル : 46●ジェリーフィッシュ
自分の肌の内側にジワリと侵食されたような感覚を味わった。そして、忘れていた様々なことを思い出した。そんな映画は久しぶり。決して多くの人にススメることは出来ないけれど・・・... more
Tracked from NiceOne!! at 2008-04-12 15:56
タイトル : 『ジェリーフィッシュ』 (2007) / イスラエル・フ..
原題:MEDUZOT/JELLYFISH監督:エトガー・ケレット、シーラ・ゲフェン脚本:シーラ・ゲフェン出演:サラ・アドラー、ニコル・ライドマン、ゲラ・サンドラー、ノア・クノラー、マネニータ・デ・ラトーレ鑑賞劇場 : シネ・アミューズイースト/ウエスト公式サイトはこちら...... more
Tracked from knockin' on .. at 2008-04-13 02:01
タイトル : ジェリーフィッシュ
Jellyfish ジェリーフィッシュ=くらげ。人生という海にふわふわと漂う市井のくらげたちを心優しくスケッチしたイスラエル発の群像劇。 生と死のイメージが交錯する詩的な映像と音楽が紡ぎ出す3つのエピソード。彼らはやがて、ささやかな心の自由を手に入れる。... more
Tracked from 此処ではない何処か at 2008-04-15 14:17
タイトル : 「JELLYFish(ジェリーフィッシュ)」
予告で見た少女の笑顔に惚れ込み、絶対見たい!と思ったらイスラエル映画だった。 「迷子の警察音楽隊」(レビューはこちら)に続き、またまたイスラエル映画。 両者とも色彩の優しい鮮やかさや、ゆるゆるとしぎ..... more
Tracked from カエルノセカイ at 2008-04-19 16:46
タイトル : 『ジェリーフィッシュ』
バティア(サラ・アドラー)は、結婚式場のウェイトレスをしている。恋人には出ていかれるし、職場の上司は嫌なヤツで、オンボロのアパートの家賃は値上げされるしで、どうにもツイてない。 ある日バティアは海辺で迷子の少女(ニコール・レイドマン)を拾う。 なりゆきから..... more
Tracked from シャーロットの涙 at 2008-04-19 17:10
タイトル : ジェリーフィッシュ
ビンの中の船は沈まない・・・... more
Tracked from CHEAP THRILL at 2008-06-28 21:32
タイトル : 真・映画日記『ジェリーフィッシュ』
JUGEMテーマ:映画 11月22日(木) 632日目 今回、再び「ひとこと塾」提出バージョンで。 ・・・わざわざ書くの面倒だしね。  今年はイスラエル映画の当たり年。3月に岩波ホールで公開された『約束の旅路』。自爆テロを題材にした『パラダイス・ナウ』。そして、12月22日公開の『迷子の警察音楽隊』がある。  「第8回東京フィルメックス」でもイスラエルの作品が3本あった。ジュリエット・ビノシュ主演の『撤廃』、カンヌのコンペ部門で上映した『デリヒーヌ』、それとカメラドール(...... more
Tracked from ダディャーナザン!ナズェ.. at 2008-07-21 23:11
タイトル : 【2008-164】ジェリーフィッシュ
人気ブログランキングの順位は? 愛されたいのに、口では言えない。 しあわせなのに、笑顔が苦手。 瓶の中の船は沈まない 帆が風に揺れることもない 船底にふわふわクラゲが揺れるだけ ひとりひとりに、天使がいる。 ... more
Tracked from 銅版画制作の日々 at 2008-07-29 08:59
タイトル : ジェリー・フィッシュ ふわふわ〜〜くらげのように生きる人たち
  なんともいえない不思議な作品「ジェリー・フィッシュ」を7月25日、京都シネマにて鑑賞しました。バディアと浮き輪少女のお話を軸に3つのお話が展開されます。   テルアビブ市内の結婚式場で働くバティアは、恋人と別れたばかり。おまけに職場では失敗続きの上、アパートは水漏れ状態で、どうにもさえない日々を送っていた。そんなある日、海辺で浮輪をつけた少女と出会う…。アクシデントから新婚旅行先の変更を余儀なくされたケレンとマイケルは、滞在先のホテルで険悪な状況に陥り…。フィリピンか...... more
Tracked from 虎党 団塊ジュニア の .. at 2009-04-15 06:55
タイトル : 『ジェリーフィッシュ』'07・イスラエル・仏
あらすじ結婚式場で働く若い女性バティアは、海辺で不思議な少女に出会う。浮輪をつけ、一言も話をしない少女は、何故かバティアについてくる。警察に迷子の届け出はなく、週末だけバティアが預かることになる。花嫁のケレンはバティアが働く式場で披露宴の最中に骨折し、...... more
Tracked from MESCALINE DR.. at 2009-06-06 00:11
タイトル : アイスキャンディー
試写会に当選して虎の門に。ニッショーホールにて「ジェリーフィッシュ」を観た。 云いたいことを口にせず...... more
Tracked from サーカスな日々 at 2009-10-08 01:07
タイトル : mini review 09402「ジェリーフィッシュ ..
2007年カンヌ国際映画祭最優秀新人監督賞を受賞した感動の人間ドラマ。美しい海辺の街テルアビブを舞台に、三者三様のちょっと不幸な主人公たちの日常を温かく見つめる。監督はイスラエルの人気作家エトガー・ケレットと、詩人で劇作家でもあるシーラ・ゲフェン。出演者には『アワーミュージック』のサラ・アドラーをはじめ、イスラエル演劇界のベテランから素人まで多彩な面々が勢ぞろいした。幻想的な音楽と詩に乗せて描き出される、キャラクターたちの心の機微が胸にしみる。[もっと詳しく] 「ディス・コミュニケーション」をめぐ...... more
Tracked from シネマな時間に考察を。 at 2010-08-12 12:34
タイトル : 『ジェリーフィッシュ』
1/fのゆらぎのような、 心地よさと大いなる安らぎに身を任せて。 波間を漂うjellyfishのように、 あてどなくうつろう人生と言う名の“日常”に。 『ジェリーフィッシュ』 MEDUZOT 2007年/イスラエル・フランス/82min 監督:エトガー・ケレット、シーラ・ゲフェン... more
Commented by Sa at 2008-04-11 12:15 x
かえるさん、この映画、想像以上に私にもツボでしたよ~。
迷子の音楽警察隊もそうだけど、イスラエル、こういう映画を撮る世代が続々と出てきているんだなあと妙に感心してしまいました(フランスが製作援助のような構図が出来ているようですね)。

群像劇なんだけど、そこが詩的に演出されているのもやはりこの二人の監督ならではなんでしょうね。
見た後しばらくぼ~っとしていましたよ私も

このヒトが持つ「絶対的な孤独」っていうのかな、これってウインターボトムの「ひかりのまち」を見て涙ぼろぼろこぼした時の感覚に近いなあと思ったのでした。
Commented by CaeRu_noix at 2008-04-12 14:26
Sa さん♪
ツボでしたかー。それは嬉しいでっす。
私の場合は予想通りな感じでしたー。
そうですね。アモス・ギタイ作品あたりから、イスラエル関係の映画は機会あるごとに観てきましたけど、こーんなに親近感と共感をもてるガーリーな映画には初めて出会いました。本作は東京フィルメックスでも上映されていたんですが、その時に私が観たイスラエル映画「テヒリーム
」などもシリアスタッチで、ほのぼのファンタジックな雰囲気などは皆無でしたもの。そういうテイストの作品も好きですが、こういうのに出会えるととびきり嬉しいですよねー
製作国にフランスも入っていましたね。こういうアート系の作品はやっぱりフランスに資金提供されるというパターンがやはり多いのかな。そんなわけでフランスの映画風味な感じもあり。だからツボなんだけど。
トホホんで地味な日常が詩的に表現されていることにとにかくググッと心つかまれましたよねー。
なるほど。『ひかりのまち』に通じるものがありますねー。ジワーっときます。
私も孤独感を描いている映画にはノックアウトされがちなんですが、その底なしの寂しさがクラゲカンカクとうまくダブって切ないのに心地よかったですー
Commented by rose_chocolat at 2008-04-12 16:02 x
こんにちは。TBありがとうございました^^

これ、重たかったですし地味な宣伝ですが、なかなか考えさせられるものがありました。
あの女の子の瞳にどんどん吸い込まれていく反面、何ともいえない不安感なども映し出されていて、これはキャスティングの成功例だと思いました。
詩人と新妻さんの詩も深かったと思いました。

以前少しTBいただいていたような気がいたしましたが、ご覧になった映画が同じ感じなので、またいくつかTBさせていただきますね。またお気軽にお越し下さい。ありがとうございました。
Commented by sally at 2008-04-13 02:10 x
かえるさん、こんばんは☆
そうか、クラゲは沈まないのですね。そしてビンの中の船も。
いろんなメタファーが込められているのかわかりにくいところもありましたけど、それ以上に引き込まれる物語でした。淡々としているのに。私もくらげ気分ー。
こういう何気ない日常に潜むドラマを描く群像劇は好きなのです。
そう、世界中どこでも人の思いや光景は変わらないのですよねー。
Commented by とらねこ at 2008-04-13 12:46 x
こんにちは~★
無意識って、形が一定したものではなくて、いつも表面で揺らめきながら、中に核があるもの、という表現を、
以前どこかの心理学の学術書で読んだことがあって、それをクラゲに喩えるのはすごく分かることだなあと、初めから安心して見ることが出来ました。
私は倒れて死んでいる女性の姿は、溺れたんだ・・と考えたりもしましたが、
中には分かり合う姿もあって、癒されたりもしましたし。
すごく心に残る、いい映画でした。
Commented by CaeRu_noix at 2008-04-14 23:36
rose_chocolat さん♪
コメントありがとうございます。
私は重さ・・というのはあまり感じなかったんですけど、彼女たちそれぞれが抱えていたものはリアルで切実でせつないものがありましたよねー。だからこそ、ぐぐっとハマってしまった感じです。不安感、憂鬱な思いの描き方も見事でしたよね。みんな印象深く素敵な女優さんだったと思います。あの小さな女の子の存在もこの上なくファンタジックで素晴らしかったですし。
登場した詩も味わいがありましたよねー。そのへんはさすが作家の書いた脚本だなーっていう感じでした。
そうです、そうです。以前もTBのやり取りをさせていただいてますね。
同じ作品を観ているというのは嬉しいです。またよろしくお願いしますー
Commented by CaeRu_noix at 2008-04-16 00:08
sally さん♪
クラゲは沈みませんー。
たまにグッタリ後に砂浜に打ちあげられていたりはしますが~。
同じく沈まないビンの中の帆船も素敵な存在でしたね。
作者はおそらく多くのメタファーを散りばめていたのでしょうね。そのへんの全てをわかったわけじゃないけど、感覚的にスーッとハマってしまえるアイテムに満ち溢れていたから、それが何を表わしていたかなんて二の次でわくわくしちゃいました。
何気ない日常を描いた群像劇ってホント、いいですよねー。
イスラエルならではの光景を興味深く見守りつつ、普遍性にキューンでしたよねー
Commented by CaeRu_noix at 2008-04-16 00:29
とらねこ さん♪
なるほどー。無意識ってそういうものなんですね??
いや、無意識をクラゲにたとえるというのはよくわかるけど、無意識が形が一定してないものというのがよくわからないかも。無意識は、一定ではなく変貌するにせよ、「形」があるというとらえ方が・・・。無意識が揺らめく???
って私はそのたとえがあまりしっくりこないかも・・なんだけど、意識・無意識よりか、人の思いや人間の存在というものを、クラゲに重ねるっていうのがものすごくしっくりきたのでした。
詩人の彼女のことはショッキングだったけど、それによって生の輝きも見出されたりして、心にしみるエピソードの数々でした。
いい映画でしたねー
Commented by シャーロット at 2008-04-19 17:06 x
滑り込んで見ますた;
私、恥ずかしながらジェリーフィッシュってクラゲの事とは知らずにいまして;今更ですが、魚とか動物がタイトルの作品にハズレなしっ!ですね
クラゲって海で見ると逃げるけど;水族館でなら私も見るのが好きです。
イスラエル映画ってそんなに知らないのですけど、こんな作品はホント嬉しいですよね。あの少女がラブリー♪でももしかして少年?なんて一瞬思いつつ。ケーキの上の人形を逆さまにしたのは彼女?思わず笑いましたです。あんなちっさい浮き輪じゃ沈んでしまいそうだけど;クラゲだったら沈まないわねw何をするのも微笑ましかったです。
Commented by CaeRu_noix at 2008-04-22 07:14
シャーロット さん♪
jellyfish っていう英単語は、学校では習わなかったかもしれませんね。
でも私はなんか知ってました。ものすごくかわいい言葉だなーって思って。それに比べて、日本語のクラゲっていう言葉はかわいげがないかも。お盆過ぎの海水浴はクラゲに刺されるっていうのは子供の頃にお馴染みだった忠告でした。だから、私にとっては、子ども時代の思い出が海水浴のビーチに象徴されるっていうのは、すごく自然なことだったんですよね。浮き輪にはまってプカプカ浮いていたことを思い出したり。天コケや「サイドカーに犬」のストレートななつかしさとはまた別の不思議ななつかしさがあったりしました。それもこちらはイスラエル映画なのにー。小さい浮き輪でも沈みませーん。それが浮力というものです。(笑) 私たち人間は海の中では、浮くのも沈むのも大きな浮力や圧力を感じて格闘するのだけど、クラゲはあんなにフンワリと海をさまよっているから、やけに感動しちゃうんですー。動物の名前なタイトルはいいですよねー。海洋生物もLOVE.
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