かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『譜めくりの女』 La Tourneuse De Pages
2008年 05月 01日 |
ピアノの旋律が戦慄をうむ。

ピアニストを目指す少女メラニーは、パリ音楽院(コンセルヴァトワール)の実技試験の時、審査員を務める人気ピアニスト、アリアーヌの態度が原因で、演奏を失敗してしまう。そして、十数年後・・・。



思いやりとデリカシーの足りない態度をとった人気ピアニストのせいで動揺して試験に失敗し、ピアニストへの道までも封印してしまった不憫な少女メラニー。その後彼女がどんなふうに生きてきたのか、どんな思いを抱いてきたのか何も語られないままに、成長したメラニーがあの時のピアニストに再会をすることになる。その再会は全て計画的なものだったのか。メラニーは何を目的にしているのだろうか。具体的なことは何もわからないのだけど、恨みを抱いていてもおかしくない相手に再会なんて、これから一体何が起こるのだろうかとサスペンスフルな空気に引き込まれてしまうのだった。

息子の世話をしてもらうために住み込んでもらったメラニーがそんな過去を持っているなんて、アリアーヌの一家は知る由もない。観客だけがそれを知っているから、気をもんでハラハラさせられてしまうのだ。といっても、私たちは、彼女の入試の失敗の出来事を知っている他は何も知らない。メラニーが一体何を思っているのかをつかむこともできないまま、日々が経過していく。不可解だからこそ、緊張感いっぱいに不穏な思いに囚われる。単なる興味本位で近づいたのかもしれないし、綿密な復讐計画が進行中なのかもしれないし。彼女が一家に馴染んでいけばいくほどにドキドキと目が離せない。

息子がプールで潜水をしている場面が映れば、このシーンはその後に巻き起こる不幸のアクシデントの伏線となるのかもしれないなぁと身構えてしまう。いくらなんでも家族の命を奪うまではしないだろうと思いつつ、何を考えているのかわからないメラニーだから、最悪の事態をも想定してしまう。譜めくりの仕事をまかされれば、きっと肝心なステージ上で、わざとページのめくり間違いをするんじゃないかと本番を迎える前からハラハラ。主人公の目的がわからないということはこんなにもスリリングなものなのだ。

それに、メラニー役のデボラ・フランソワといったら、ダルデンヌ兄弟の『ある子供』だもの。『ある子供』や『息子のまなざし』のように、人の心は揺れ動くということを思い出させるのだよね。もしかして、復讐目的で近づいたのかもしれないけれど、親しい人間関係を見出していく中で、その恨みは溶解していくという可能性だってあったもの。どう転ぶか分からない謎にあふれ、殺すことや奪うことなんていう具体的な目的が見えている復讐劇より、緊迫感いっぱいの心理サスペンスであった。美しいピアノの音色が、時にはとても冷たく響いて心を凍りつかせるものなんだね。

三重奏も聴きごたえがあったなぁ。それにしても、チェロ刺し事件は血の気がひいた。あの場面で、メラニーという女の筋金入りの怖さを垣間見て、ただでは引き下がらないのかなと思わせられた。静かに謎めいた運びの中で、激情のアクシデントを見せてくれたのはお見事であった。プールもそうだし、追いかけっこも怖かった。監督が音楽家というのもうなづけるアプローチだよね。あらすじはごくシンプルなのに、場面ごとの想像力をかきたてる演出が的確で、心理的な怖さを堪能。
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by CaeRu_noix | 2008-05-01 23:59 | CINEMAレヴュー | Trackback(11) | Comments(4)
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Commented by シャーロット at 2008-05-02 10:22 x
ぼんじゅ。
そうですよね、とっても鼓動が激しくドキドキなってました。
どんな目的があるとかわからなくても、いえ、わからないからスリリングなんですよね。
もちろん復讐劇という雰囲気もあったけど、彼女の胸の内は私達が考える以上に揺れ動いていたのかもしれませんよね。どう転ぶかなんて自分でもわからないってこと、私でもしょっちゅうありますわ;笑
もしかしたら本当に演奏中に何かサイアクの事態を起こそうかと思っていたかもしれないけど、何かが彼女の中であってただ舞台を放棄しただけで済んだという解釈もありだと私は思ったし。
まあしかしあのチェロが凶器になってしまったのも、ぞおぉ~っとしましたです。
ショスタコビッチなんて小難しい曲を使うのも音楽家な監督のセンスだとすごく納得もしたり。演奏シーンは俳優さん達があまりにも上手そうに弾くのでとても私は感激だったんですよ。フロさんは私の中でほわわんとした雰囲気のイメージがあったので、新たな一面を見た気がしました。
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-04 09:15
シャーロット さん♪
ドキドキと釘づけになりましたよねー。
デボラ・フランソワは、フランス映画祭で観た『暗闇の女たち』でも熱演していましたが、今回は謎めき能面女を見事に演じていましたよねー。
例えば殺しが目的っていうのもそれはそれでドキドキと見入ってしまうかもしれませんが、本作に関しては、目的や彼女の心がちいとも見えてこないところに引きつけられて、終始面白く観られたという気がします。
確かにね、観終わってみると、復讐劇という括りになるのも納得なんだけど、途中は全然どういう方向にいくか油断がなりませんでしたよね。ヒューマン・ドラマなラストも思い描いていた私。
そう、彼女の復讐心は消えることはなかったけど、最初の計画ではもっと残酷なことをするつもりだったのかもしれないですしね。
で、代わりにチェロ奏者の人は残酷な目にあっておりましたねぇ。尖ったものでの流血はマジ怖いっす・・・。ギターが火を噴く銃というのは、ボブ・ディラン的には比喩なのだけど、ここではホントに弦楽器が武器になってましたね。
音楽はありがちじゃなく、高尚で冷たさも感じる、さすがなセレクトでしたよねー。
演奏シーンも見事だったのですねぇ。
Commented by jester at 2008-06-04 10:51 x
いまごろになってやっとレビューをアップしたので、こんな下にコメントごめんなさい・・・

どうなるかわからない展開で、はらはらしましたよね~

あと、チェロの釘刺しはビックリ!
うぎゃ~って感じでした。

音楽もよかったですよね。

それと、カトリーヌ・フロが美しかったです♪
Commented by CaeRu_noix at 2008-06-06 18:27
jesterさん♪
こんなに下?
こんな私に誰がシタ?
観たのは1ヶ月以上前のことですが、あのヒンヤリとしたハラドキ感は今でも鮮明です。
音楽な映画って感動ドラマな展開のものが多いからか、こんなふうに美しい音楽が恐怖感を煽るというのが絶妙でした。
チェロ刺しはホントに怖かったですよね。刃物による流血場面もダメなんですが、足先を思いきり刺すってのも凍りつきますね。
こういう役柄のフロさんは初めて見ましたが、案外とハマり役で美しかったですね~
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