かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
2008年 05月 09日 |
ドロドロの美学に圧倒。

20世紀初頭のカリフォルニア。鉱山労働者のプレインビューは、石油採掘事業
に乗り出し、息子のHWとともに石油が沸く源泉があるというリトル・ポストンへ向かう。



愛しのポール・トーマス・アンダーソンの久しぶりの作品が高い評価を浴びていて、とても嬉しかったのだけど、どうやらその作風はガラリと変わり、ポップな色彩なんてどこにも見当たらないような骨太な映画を作り上げたという評判で、同時に少し寂しくもあった私。PTAの映画って、どちらかといえば宙のイメージに近い感触だったのに、今回は荒涼とした大地に圧倒されるのだった。どっしりと地に足が着いているどころか、地を這うような息苦しい重々しさに覆われている。乾いた大地の下に眠っていたその石油は、探し求めているもの、やがて黄金の光をもたらす宝物なのに、そのドロリとした真っ黒な液状のものは、精製された無色透明の液体の方が身近だった自分には毒々しいものにしか見えなくて、最初から不穏な思いにかられるのだった。

There Will Be Blood というタイトルからは、『ノーカントリー』の原作小説の題が「血と暴力の国」だったことを思い出し、文字通り流される血を指すのだと思っていた。が、それだけではなく、まるで血のような石油をも表しているということに、序盤の映像で気づかされるのはうなった。血のようにどす黒くドロリとしたそれは、血液が身体の生命活動に欠かせないものであるのと同じように、この世界の営みのかけがえのないエネルギー。エネルギー資源の枯渇が危ぶまれていたり、ガソリンの価格は高騰し続けていたり、でも、今も変わらずにグローバルな規模で、どこかの誰かがそれで大儲けしているわけで。d0029596_2384939.jpg

初めはむしろ、労働者上がりのダニエルを賞賛したいほどだった。だって今では、利権が利権をよび、大企業が政治家がラクしてホイホイ儲けるシステムが出来上がっているわけだけど、ダニエルは成功と富を得るために、その身を挺して命の危険と背中合わせで奮闘しているんだもの。湯水のように使ってしまっている石油を採掘することはどれほど大変なものだったのかをまず見せつけてくれたということに拍手を送りたくなった。本来は、何かを得たいのなら、身を粉にして向かうべきものだったのじゃないのかな。でも結局、お金が一度手に入れば、そのお金が次の欲望を満たす手段になってしまうのだけれど。

そして、これが、アメリカン・ドリームというものの正体なんだということを描いているのが素晴らしい。その言葉の響きは、明るく清々しいもので、ついそんなものがあるのだと信じてしまうのだけど。才覚と努力と運のよさだけで、夢は簡単に掴めるものじゃなくて、人を利用し踏み台にして、多くの犠牲を払って、ボロボロになってやっと何かを手に入れられるのだろう。そうやって、富を手にするため、欲望を満たすために、まっしぐらに突き進むダニエルの執念、その生き様こそが見どころ。

ダニエル・デイ=ルイスの熱すぎ濃すぎる存在感はやや苦手でもあったのだけど、NYのギャングの時の演技みたいにやり過ぎな感じはしなくって、リアリティのある人間臭いその男の姿には釘付けになった。肉体労働者上がりでも、ビジネスにも長けていて、賢く段取りをして周到に立ち回り、弁舌も巧みなのだ。ダニエルの口八丁な熱弁には、『マグノリア』のSEX教祖トム・クルーズの講演シーンをふと思い出した。それは、神父イーライの説教にもオーバーラップする。向いている方向は別でもそれぞれの狂信的な姿は同じなのだ。初めはまるで異なる人種のように見えたダニエルとイーライの類似性がすこぶる面白い。金の亡者となってクレイジーに突っ走る石油王を描きながら、宗教に携わる者の欺瞞にも切り込んでいるなんて。

ポール・ダノのイーライ牧師は、出演作の『キング 罪の王』の父牧師にもダブって見えて、宗教者の偽善性や、父息子の確執というテーマの共通項があるかも。Bloodというのは、血縁をも指しているのだね。血縁者になりすまして、利益を享受しようと近づいてくる者がいたり、商売をうまく進めるために血縁者を作り上げたり、金のために利用され、金ほどに確かな価値などない血のつながり。それなのに、ダニエルの息子への思いが案外と強いものだったのが何だかせつなくもあり。

ドロドロに醜悪なドラマなのに、美学にのっとって完璧に描写されていて、見入ってしまうばかりだった。だけど、最終章には何だか戸惑ってしまったな。いえ、よく考えたら、もはやそういうラストを迎えるしかないのだと思う。彼は破滅に向かうしかなかったのだから。でもね、私には何で?という思いもあった。カエルが空から降ってきて、皆がちょっとだけ救われる着地を期待したわけじゃないけれど、そのむき出しの憎悪には驚いた。まぁ、DDルイスが主人公の映画なら、最後にはそんなシーンを撮りたいと思うのはわかるかな。と最後の最後に腑に落ちなさを感じつつ、PTAの仕事ぶりには満足したのだった。

でも、またマグノリアやパンチドランク・ラブみたいなのもやってほしいなー。

アンビバレントな主人公の美しさ/ Variety japan
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by CaeRu_noix | 2008-05-09 08:09 | CINEMAレヴュー | Trackback(23) | Comments(24)
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Commented by 哀生龍 at 2008-05-09 12:48 x
>そのドロリとした真っ黒な液状のものは
“掘り当てた石油”を見て、大昔に見た“ジャイアンツ”を思い出してしまいました。

>そのお金が次の欲望を満たす手段
富とは命がけで・身を粉にして手に入れたものの対価だったはずなのに、いつのまにか・・・
石油は勝者の美酒であり、どす黒い欲望の血であり・・・
かえるさんが書かれているように、これもまたアメリカン・ドリームの真実の姿の1つなんでしょうね。
ブギーナイツを見直したくなりました。
Commented by Nyaggy at 2008-05-09 12:55 x
かえるさん、こんにちは。
かえるさん的にはちょっと微妙?…な感じが残ったんでしょうか。
今までのPTA作品とは違って、ラストは全く救いがないですよね。
でも、私はすごく好きです、あのラスト。
ダニエル・デイ=ルイス扮するプレインビューに、とにかく圧倒されっ放しで。
PTA曰くダニエル抜きでは考えられない作品とのことだったけど、実際に
鑑賞して、まさにその通りだな~と実感しました。
個人的には思いのほか好きな作品でしたけど、またマグノリアやパンチドランク・ラブ
みたいなのも見たい~、というのには激しく同感です(笑)
Commented by 豆酢 at 2008-05-09 23:31 x
マグノリアとパンチドランク・ラブがとても苦手な(最後まで観切れなかった)ヘタレの豆酢です~(_ _。)。みなさん、ホントにごめんなさい。私みたいなPTA苦手者がこの映画を語ったりして。

でもね、私自身はこの作品の方が好みです…。なんだか新しい世代のキューブリック誕生の予感がして。一分の隙もない構築美と様式美に、彼独自のセンスを加味したイメージを感じました。
Commented by moviepad at 2008-05-10 00:02 x
かえるさん、お久しぶりです!

------ 以下ネタばれコメントなので未見の方はご注意を--------

あのラストは僕はすごく好きですね。
ダニエルは息子が"造反"したことで、自分の終わりが近いことを感覚的に悟っていたと思います。
金以外の"生きがい"がなくなり、かつ息子は商売敵になるわけですから。そんな最悪のタイミングにイーライ牧師が登場した...。

アメリカン・ドリーム物語は途中でやめることができないのかもしれません。ラストの台詞のようなことを感覚的に悟るまでは。アメリカン・ドリームとはある種の麻薬みたいなものなのかな、と思いました。

----- ネタばれコメント終わり------------------------------

この作品、クレジットを見なければ監督がPTAだとは絶対思わなかったでしょうね。
PTAがずっとこの路線でいくとは考えにくいので次はポップ路線に戻るのでは?

最後に遅まきながら、ブログ3周年おめでとうございます。
これからもミニシアター・クイーンとして君臨し続けてください!
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-10 00:20
哀生龍さん♪
ジャイアンツは知らないですが、俺はジャイアーン♪ガキ大将ーなら知ってます。
黒い石油の映像で思い出したのは、WATARIDORIのワンシーンだったり。

ビジュアルの方ではなく、テーマからは近頃観たいろいろな映画を思い出しました。「アメリカン・ギャングスター」があって、「ノーカントリー」があって、「フィクサー」があって、本作があったからこその味わいも感じ。ついでに、「ジェシー・ジェームズの暗殺」、「ファーストフード・ネイション」もここに入れようー。ザッツ・アメリカ。ザッツ・人間。

闇のアメリカン・ドリームを描いているという評判だったことはつゆ知らず、鑑賞中に、おお、アメリカン・ドリームだ!って感じられたのが嬉しかったです。虚像を暴くっつぅ感じがカッコイイです。
ブギーナイツもいわゆるひとつのアメリカン・ドリームですかね。
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-10 00:56
Nyaggyさん♪
うーんと、内容的に好みのラインではないというのは観る前から承知のことだったので、全体的には満足、賞賛という感じです。
でも、ラストのシークエンスには、えええ??!って思ったことも事実なんですよ。単に、自分が生理的に血みどろが苦手だからというだけなのかもしれないのだけど、私の感覚では瞬時に、当然のリアルな成り行きに感じられなかったんですよ。ダニエルとこの物語にふさわしい終幕だとは思いますけれどね。と、PTAの書いた脚本に反対はいたしませぬ。(笑) カエルが降る時代にはまだ遠かった・・・。
群像劇の名手が、一人に焦点を絞って物語を紡いだわけですが、群像劇の数人にも相当するものをダニエル・デイ=ルイスはたった一人で見せてくれたって感じですよね。
ええ、こういう作品の方が評価されるのは当然なのだけど、人間の愛おしさを感じちゃうようなポップな作品もまた是非撮ってほしいなぁと思うわけなのですー。
便器をカッポンカッポンするやつやプリンが出てくる映画をー♪
Commented by リュカ at 2008-05-11 00:12 x
かえるさん、こんにちは。
アメリカンドリームというと、それをポップに描いた映画を思い浮かべてしまうので、こんなドロドロした野望の渦に塗れた成功例を見ると呆然としてしまいます。
それ以上にDDルイスの怪人演技に魂抜かれてしまいましたが(笑)。
血には色んな意味合いがありましたね。血のつながらない息子への複雑な愛情とそれにすがる子供の姿がせつない。
PTAの久々の作品が観られたことがとてもうれしかったですが、やっぱりわたしもカエルが降ってくるようなあのラストの方が好みです。
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-11 00:17
豆酢 さん♪
ヘタレというのはむしろ私かも・・・。
こんなに本作は評論家たちにも絶賛されているお見事な映画だっていうのに、マグノリアとパンチドランク・ラブの方がいい~なんてほざいているんですものね。
豆酢さんの評価の方がまっとうでプロフェッショナルだと思います。
でも、その二作も是非ー。私はそれぞれ劇場で二回観ましたわ。おうち鑑賞だと途中で止められちゃうのがいけませんね。w
ヘタレな私は情けなさやトホホ感の垣間見える主人公が好きなのかも。作品の出来栄えには文句ないのですが、これに「好きな映画」という言葉はどうも使えない私。
なんだろう、マチズモ的なものを感じちゃうからかなぁ。主題がっていうことじゃなくて、こういう豪傑骨太な映画が求められ評価されるアメリカ映画の世界に??
そうっすね。様式美にはクラクラしました。今まではもうちょっと隙があったと思うのだけど、今回はキメキメ。
おおお、アルトマンの後継者ってだけじゃなくて、キューブリック誕生なんて、最高の賛辞だー♪
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-11 00:27
moviepad さん♪
ネタばれコメントありがとうございます。
そうですね。ラストも様式美の中でとらえるなら、ダニエルがたどり着くべき終焉、これ以上のものはない幕引きだったのだと思います。ギリシャ悲劇のような。
ただ、他のどういう結末がふさわしいとかそういう話じゃなくて、、、私が単にダニエルという男のことを理解していなかった、心寄り添っていなかったからなのかもしれませんが、最後の最後のその心理や感情がわからなかったんですよね。もはや自暴自棄で何でもよかったのか、ピンポイントでの憎悪と復讐心がむき出しになったのか。孤独で絶望し、もはやこの生活にうんざりすることはわかるのだけど、そこに憎きイーライが登場したからって、あんなに残虐にいっちゃうのは唐突な感じがしちゃったんです。私の気持ち的にはね。でもそれがチとボーリョクのクニ?
でも散りばめられた今日に通じるテーマの数々はしっくりきましたよ。テーマ的には、『ノーカントリー』の方が膝を打つようなしっくり感がなかったのでした。

ポップ路線も、また新たなる作風のものも手掛けてくれるといいな。

ありがとうございます。ミニシアター街道を突っ走りますよー。
Commented by swallow tail at 2008-05-11 08:26 x
かえるさん、こんにちは。

ずっしりと骨太の作品でしたね。
重すぎて太すぎて・・・
それでも有無を言わせず観客を引き付ける
あの圧倒的なパワーにはびっくりしました。
ただ、スワロは好みの作品ではありませんでしたが。

ポール・ダノはD・デイ=ルイスに引けをとらずすばらしい演技でしたよね。
その奇抜さもあって、スワロはルイスよりも目が行きました。

『マグノリア』って見たことがないのですが
>SEX教祖トム・クルーズの講演シーン
とうのが非常に気になりました(笑)
絶対に見ます!!
Commented by ノラネコ at 2008-05-12 00:09 x
いや~、これは本当に圧巻というか、映画のパワーにあてられて観ていてどっと疲れました。
ダニエルとイーライのもの凄い濃いキャラクターの二人の因縁も、まさに近親憎悪というかドロドロでしたものね。
映画としては私はアメリカの神学的な比喩と解釈しました。
そのせいか、何となく「2001年宇宙の旅」をずっと連想してましたね。
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-12 00:56
リュカ さん♪
アメリカン・ドリームという言葉には長い間、明るいポジティヴなイメージだけを描いていました。ホント、アメリカという国のイメージ自体もそうだし、ハリウッド映画全体も希望いっぱいサクセスストーリーだらけですもんね。
でも、大人になって、世界のことを知るようになって、サスセスの陰にあるものに考えさせられるようになりました。『リチャード・ニクソン暗殺を企てた男』なんて映画のことも思い出し。成功できずにおちる者、成功はしても多くの犠牲を払い、他者を蹴落とし、結局は空虚というのが痛々しいです。
DDルイス、最初は思ったほどに怪人演技じゃなくて、人間臭さがよかったのですが、徐々にモンスター化していき圧倒されましたよね。ノーカントリーのハビやんといい、過剰に激しいキャラの方が世間では求められているのでしょうか?
カイブツなのに人の子なのねぇってな息子への思いがまた印象的でしたね。不器用な父なり。
そーなんですよ。PTAの成長を心から嬉しく思っていますが、やはりカエルが降って、みんながベッドで歌を歌っちゃうようなのも大歓迎。
Commented by jester at 2008-05-12 17:41 x
かえるさん、おじゃまします~
いつもどおりの素敵なレビュー、ありがとうございます♪

>最終章には何だか戸惑ってしまったな

私もなんですよ・・・・
終わった途端、ちょっと唖然としてしまいました。
しかし確かにこう終わるしかなかったのかもという気もしますけど。

ダニエルさんの演技も、ああ、アカデミー賞が気に入りそうな熱演だな~と思いましただ。

>人を利用し踏み台にして、多くの犠牲を払って、ボロボロになってやっと何かを手に入れられるのだろう

この映画といい、ノーカントリーといい、救いがないアメリカ映画が続きましたね~
Commented by となひょう at 2008-05-12 19:57 x
かえるさん!!!!!
TB&コメントありがとうございますすすすすー♪♪♪
ズシッとくる作品でしたー。
プレインビューという男の怪物性には、ドン引きしてしまう人が多いようですね。
私は、共感してお近づきになりたいと思った訳ではありませんが。
あの反骨精神というか、この男から溢れ出てくる異様なパワーに圧倒されっ放しでした。
成功への執着が、そのまま生きることへの執着にも思えたりなんかして。
とにかく目が離せませんでした。
ヒーローものの映画を観る時も、必ずと言っていい程に主人公であるスーパーヒーローよりも倒すべき悪の側に目がいってしまうんですよね。
勧善懲悪ものは、『悪』に存在感がないと楽しめないなんて具合に。
この作品は、完全懲悪ではありませんけど。
やはり、プレインビューの圧倒的な存在感には魅せられてしまいました。

>よく考えたら、もはやそういうラストを迎えるしかないのだと思う。

ボーリング場まで作ってしまう程の大豪邸でしたが、どことなく淋し気で幸せそうには見えなかったりなんかしました。
見応えのある1本でしたー。
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-13 08:07
swallow tail さん♪
骨太な作品で見ごたえがありましたね。
しっかし、スワロさんの好みではなかったですかー。
まぁ、どっちかといえば、淑女の皆さんにはこういうのよりか「つぐない」のようなドラマの方が好まれるのだろうとは思います。
いわゆる好み系ではないながら、わたし的には面白く見ることのできた満喫度はなかなかの作品でした。
でも、スワロさん的には星二つということでホントに全面的にイマイチだったんですね・・・。

ポール・ダノも熱演でしたよねー。ただ、ちょっと胡散臭いエキセントリックさが前面に出過ぎていた気がするので、何故彼がそんなにカリスマ性をもっていることになっているのか、しっくりこない部分もありました。

えええ、『マグノリア』は必見ですよー。
このトム・クルーズは出演作の中で一番だと私は思ってます♪
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-13 08:10
ノラネコ さん♪
パワフルでしたよねー。
それが力づくという感じではなく、美学にのっとって完璧に構築されていたところがエクセレントでした。
PTA自身も、2人の対立を「タチの悪い兄弟ゲンカ」と表していたそうなんですが、ホントに近親憎悪的なものが見えるのが面白かったですよね。
神学的にとらえた解釈というのも興味深いですー。
おお、「2001年宇宙の旅」ですかー。
豆酢さんの、新世代のキューブリックの誕生という言葉につながりますねー
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-13 21:55
jester さん♪
どもですー。
いや、ちいともステキじゃないですよ。
実はコレ、観てから一週間以上経って書いたものでして、その間に映画祭などで10本超の映画を鑑賞し、細部をかなり忘れていたのでした。
で、印象に残ったことにのみ触れたのですが、描かれているドラマそのものは自分の中でかなり勝手に変わっているような気が・・。

終わり方に関しては、私の心にはしっくりはこなかったんですが、

豆酢さんの
"自らの欲望に食い尽くされた人間には、ただ自滅するしか道は残されていないのです"
と、

映画のメモ帳+α 、moviepad さんの
"アメリカ人は、アメリカン・ドリームが大好きだが、それが崩れ落ちるのを見るのも同じくらい好きなのだ"

という言葉で納得できたかも。
あと、PTA自身が本作はホラー映画だとも言っていたので、ホラーが好きじゃない私がコレを好きと思えなくて当然よねーって思ったり。

そう、ホント、DDルイスの演技はアカデミー賞好みの熱さがありますよね。この人は本当に上手いので、受賞には言うことなしですが、アカデミー俳優賞の傾向として、モノマネソックリ系、体型改造系、パワフル熱演系、などばかりが評価されているのが気になりますぅ。
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-13 22:11
となひょう さん♪
ズシリ重々でしたねー

>ドン引きしてしまう人
え?
私が読んだものにはそういう感想はなかったような。
引くのではなく、圧倒された人は多かったですよね。圧倒されるのは、釘づけになる感じで、拒み姿勢のドン引きとは逆ですよね??
でも確かに、ドン引き(私は使わない言葉なので用法間違えてたらスイマセン)はしないまでも、彼には共感できない、好感をもてないというのは多いかな?私はほとんど客観視、俯瞰していた感じなので、共感や応援もしないけど、嫌悪もせず興味深く眺めていたかな。それに比べ、となひょうさんはもっとグっとダニエルに魅了されたのですねぇぇ

善悪二項対立のとらえ方に決別したいと私は思っているので、普段は、ヒーロー×悪役ものに興味はなく、ヒーローは虚像で、悪は誰の心にも潜むもの、それらは表裏一体、なんて方が好きです。はい、だからある意味、となひょうさんが悪の存在を重要視するのと同じかも?(違うか)  というわけで、本作はエンタメ映画的善悪対立でなく、近親憎悪的な対立が描かれていたのがよかったですよねー

ダニエルが体現した異様なパワーは恐るべしでした。
ボーリングの練習、こっそりしてたのか・・
Commented by kazupon at 2008-05-20 09:34 x
かえるさん

おひさしぶりです。^^
PTA映画はだいたい好きだったんですけど、なんとなくPTA
的なもの
○群像劇○既存曲が劇中で鳴りまくる○恋愛がらみ
○流れをガラっと変えるような飛び道具的シーンを入れちゃう
○個性的な女性キャラクター○フィリップシーモアホフマン・・
というようなものを敢えてとっぱらって自分の作風に対するチャレンジ
だったのかなぁとも思いました。
アメリカでは劇場でかなり笑い起こる、ブラックコメディみたいな見方を
されてるみたいですね。確かにそういう見方のほうが面白いかもなぁと。
ダニエルの演技なんてイッてしまってますし^^ 若いならではの映画って
ありだとおもうんで、今のうちにもっと作って欲しいなぁとファンとしては
思ってしまいます。
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-20 23:20
kazupon さん♪
訪問ありがとうございます。TBおくりっぱでした・・・。
そうなんですよ。お馴染みのPTA的な要素が本作にはまるで見えなくて、ちょいとビックリしましたわ。音楽もオリジナルとはホントに意外。
(『ハードエイト』はこういう質感に近かったかな??)
でも、とにかく、あえて方向性、作風をガラリと変えて、久々の新作で高評価を勝ち得たとは、素晴らしいチャレンジでありましたねー。

おお、アメリカではブラックコメディなのですかー。
確かに並はずれた怪演は笑いと紙一重な感じもします。
そういえば、「アイ・ドリンク・ユア・ミルクシェイク!」ネタは大流行だそうですねー。シガーもプレインビューも。
http://www.nbc.com/Saturday_Night_Live/video/play.shtml?mea=221737

今回は、オリジナル脚本が行き詰まり、脚本書きの練習のような感じで、この小説の脚色に取り掛かったということらしいです。そんなわけで、また独創的なPTAオリジナル作品もまた手掛けてほしいですー。ホント、年老いて頭が固くなる前に、じゃんじゃん撮ってほしいですよねー。
Commented by SGA屋伍一 at 2008-05-24 21:39 x
>字通り流される血を指すのだと思っていた。が、それだけではなく、まるで血のような石油をも表しているという

あー、自分も似たようなこと考えておりました

血の赤も石油の黒も、なんとなく「罪」のイメージの色ですもんね

この前に『つぐない』、この後に『ミスト』を見たのですが、どういうわけかいずれの作品にも「贖罪がどうの」という話が出てきて、「人間はなんて罪深い存在なんだ・・・」とうちのめされてしまいました・・・

じゃあどうすれば罪を清めることが出来るのかな? 真っ白な牛乳飲めばいいのかな?

あとすいません、自分は『マグノリア』の魅力がよくわからなかった人間なんですが(^^;)
かえるさんはあの作品のどんなところがお好きなんでしょうか?
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-27 07:07
SGA屋伍一 さん♪
ですよねー。タイトルの意味は血そのものを指すのだろうと思っていたので、物語が進むたびに複数の意味、テーマがその言葉に含まれているということがわかってきて、そのことに感動しちゃいました。原作のタイトルはそのまんま「OIL」なのに、こういうタイトルをつけたPTAってやっぱりセンスあるぜって思いました。
血は真っ赤なものもありますけど、状態によってはかなりどす黒かったりもして、見た目のイメージ的にも血と石油は大いにかぶりますよね。拡大解釈するば多重に共通点が見えますしー。

人間は罪深い存在ですけど、「つぐない」と「ミスト」で使われる「贖罪」という言葉はちょっと曲者だったような・・・。
罪を償うことなんて、できないんじゃないかなーって思うんですけどね。
でも、牛乳は飲んでください!

マグノリアは理屈じゃないでっす。胸がいっぱいになりませんでした?それぞれの心の痛みにググっと感情移入し、不思議に絡み合う人間模様に見入るばかりでしたわ。そのうえ、カエルですよー
Commented by 狗山椀太郎 at 2008-05-27 23:18 x
こんにちは。
(何度かコメント投稿を試みて失敗しています。今度は大丈夫かな?)
私にとってPTAさんの作品鑑賞は初めてでしたが、なかなか見応えがあって面白かったです。主人公の気迫や凄みに圧倒されました。強欲ではあるが、その一方に孤独や不安、そして人間不信があり、そういった面が上手く表現されていたと思います。あの不敵なヒゲ面は夢にも出てきそうです(苦笑)。
>最終章には何だか戸惑ってしまったな。
私も同感でした。なんだかダメ押し気味というか、あの主人公が決して幸せな人生を送ったわけではないことはハッキリしているのだから、もうすこし静かで余韻を持たせた幕切れのほうがよかったかな。再会した息子が去っていったあたりで終わらせた方が満足できたかも知れません。
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-29 20:56
狗山椀太郎 さん♪
ご面倒をおかけしましたー。
本作はこれまでのPTA作品とは毛色が違うのですが、欠点のある人間の描き方はやっぱりPTAと思わせられました。そうそう孤独な魂というものもいつもうまく描いてくれるのです。DDルイスの気迫はすごかったですよねー。彼のあくの強さはちょっと苦手系でもあるのすが、逆にそう感じさせられる強さが並大抵のものじゃないんですよね。夢に出てきたら怖いです。上司にはしたくないですし。でも、おひげは何となく上品ささえ感じられましたが。ミルクシェイクがついちゃうー。
椀太郎さんも最終章に首を傾げた派でしたか。わたし的には本作は、終盤がおしかったなぁって感じです。小説原作ものに多い、いきなりsuun数年後や十数年後に舞台が切り替わる構成のものは、その時間の飛躍に気持ちがついていけないことが多かったりするのでした。そうそう、そのへんで終わった方が好みだったかも。
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