かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ハンティング・パーティ』
2008年 05月 23日 |
男は狩猟民族なのだ。

かつては有能な戦場ジャーナリストだったサイモンは、ボスニア紛争レポートの失態を機にテレビ局を解雇され、やがて姿を消してしまった。一方、サイモンと組んでいたカメラマンのダックは順当に出世し、ボスニア紛争終結後の2000年に、テレビ局の新米プロデューサー、ベンジャミンを伴って、久しぶりにその地を訪れる。



そして、国際的に指名手配され懸賞金もかけられているフォックスと呼ばれる戦争犯罪人ハンティングにトライすることとなる。フォックスというのは、民族浄化と名付けられたムスリム大虐殺の首謀者、セルビア人のラドヴァン・カラジッチがモデル。キツネ狩りに行くなら、ララ気をつけてお行きよ。キツネ狩りは素敵さ。ただ生きて戻れたら♪

「Esquire」誌に掲載された、スコット・アンダーソンという実在のジャーナリストによる「What I Did on My Summer Vacation」という記事をもとに作られた映画。この物語の中では、まさかと思える部分こそが真実なんだって。久しぶりのサラエボを訪れたダックとベンがBARで、昔の仲間たちと賑やかに談笑するシーンがとても好きだったんだけど、その仲間たちというのが、この物語の実体験者である本物のジャーナリストだと終りの方でわかった時は嬉しくなっちゃった。ただならぬ独特の雰囲気をもっている男たちに見えたのだけど、俳優さんじゃなくって、こーんな冒険を本気でやっちゃう百戦錬磨のタフな男たちだったのだ。

そして、脚色されたこの映画の主人公は、その実在のジャーナリストほどにいかにも冒険しそうなタイプの男たちではないのだけど、それぞれに個性的でバランスのいい、映画ならではの愉快な3人組なのであった。キャスティング、人物造形が映画的にほどよく魅力的だったと思う。紳士のイメージのギア様だけど、ニヤケ男も似合う人だったから、このとことんあさましく調子者で軽薄だけどたくましい男、サイモン役がとてもハマっている。そんなサイモンと名コンビネーションを発揮する野心的な男、ダックに扮するテレンス・ハワードの存在感はそれはもう素晴らしい。この人って、ぬいぐるみっぽいルックスにも見えるのに、色気があるんだよね。はにかんで微笑んだ時のセクシーでキュートな目もとがたまらない。ギターでの弾き語りも見せてもらえて嬉しかったな。実際にはこんな若造はこういうハードな経験は難しいだろうと思いつつ、映画的にはベンくんのキャラもなくてはならないものだったな。

3人組の珍道中といえば、『ダージリン急行』を思い出す。これって、実話ベースゆえに、国際問題を取りあげた社会派テイストな側面もあるというのに、ダージリンのごとくキャラ立ちした3人組の愉快なロードムービーになっているのが面白いよね。加えて、こちらはスリリングな大冒険なのだけど。そして、予告を観た段階で、まず思い出した映画は、『スリー・キングス』だった。実際の紛争地だった場所を舞台としていて、いたずらな野心にあふれた3人組が冒険をするという、皮肉なユーモアが痛快なエキサイティングな物語というのが共通。そんなわけで、怖いもの知らずのタフな男たちの珍道中を眺めるのは楽しいの。

『ウェルカム・トゥ・サラエボ』などと比べ、アメリカ人は軽いなぁって思うんだけど、アメリカ映画がその地を舞台とする作品はたぶん初めて見る、ボスニアの地でロケをしたというのはとても興味深いことなのだ。ジャーナリストを描いた映画なのだから、現地でしっかりロケすることは肝心。お笑いノリの映画だからってそれを放棄せずに、銃弾の跡が無数に残るその地をきちんと映し出してくれたことに好感。大悪人フォックスをターゲットにした物語なので、セルビア人を全面的に悪者扱いしていたように感じられたのはやや残念でもあったけど、こういった現実にある国際問題に切り込みながら、ノリノリに楽しいエンタメ作品が作られたことは評価。この問題へのCIA関与等々の疑惑を問う最後のまとめも痛快。カラジッチは、悠々と逮捕を免れながら、本を出版したりもしているというから怖ろしい。そんな現実にはうんざりしてしまうけど、汚れた事実を世界の人々に伝えようとするタフなジャーナリストたちが戦い続けていることが嬉しいの。

まぁ、本当は戦地のジャーナリストのことは単純には語れないもので、戦地で実況中継をするTVレポーターの姿をシニカルに映し出している映画も多い。ボスニアを描いているダニス・タノヴィッチの『ノー・マンズ・ランド』やクストリッツァの『ライフ・イズ・ミラクル』ではそうだった。現地の人々から見ると、出来事の表層のニュースバリューのある部分だけを高みの見物姿勢で映し出すレポーターの存在は少しも意義深いものではないのだよね。せっかく苦労して撮られた現地の映像もニュース番組の中では、有名人のゴシップネタよりも重要度の低い扱いだったりする。そんな現実を、ミヒャエル・ハネケやドゥニ・アルカンはシニカルに描いていたよなぁということを思い出しつつ、これは興味のつきないテーマなのだ。

それから、友情ものとしてもすこぶる楽しかったな。あれだけ、図々しくて、恩をあだで返すようなサイモンなのに、何度もあきれながらダックは彼を見限ることはなくて、根底にある信頼関係が揺るがないことが、女の私から見ると、実に感動的なものだった。女子の友情ならば、もうあんたとなんてつき合ってられないととっくにヒビが入っているに違いないのに。友情を損なわないように、もっとむやみに気を使ってしまうほどなのに。あれだけ欠点をさらけ出しながらも、同志でい続けられるのって最高だね。ヤワじゃない男たちの生き様ってカッコいい。そして、次世代をになうベンがこういうタフな先輩たちとスリリングながらまたとない経験をしたという事実も案外とステキ。彼の成長も楽しみだ。

音楽がバルカン・ミュージックだったらなおよかったなぁ。

★★★★
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by CaeRu_noix | 2008-05-23 08:13 | CINEMAレヴュー | Trackback(6) | Comments(4)
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Commented by 哀生龍 at 2008-05-23 12:30 x
>友情ものとしてもすこぶる楽しかったな
「全くお前っちゅう奴は・・・  まぁ、しゃぁねぇな、お前だから」(苦笑)
そんな感じで許してもらえる“悪童”サイモンと、そんな感じで許してしまう“お守り役”ダックの関係。
微笑ましくて楽しいヤンチャな盟友の2人を見ていたら、悔しくなるぐらいに羨ましくなってしまいました。
そしてベンジャミンは、まるで小学生のお兄ちゃんたちの仲間に入りたがる幼稚園児の弟が、オモチャにされたり邪魔にされたりしているようで、可笑しいやら可愛いやら・・・
Commented by 真紅 at 2008-05-23 13:52 x
かえるさん、こちらにも。
テレンス・ハワードかっこよかったですね~。あの三人組が微笑ましくて、それだけでも満足なくらいでした。
サイモンとダックの関係って、「萌え!」と思う方もいらっしゃったりして(笑)。
セルビア人の描き方については、私もう~ん、と思いました。
みんな、表情が暗かったですよね。。セルビア=悪、っていう前提はちょっと。。
ラストはしかし、ギター買ってる場合か!と思いました。借金どうすんの~?って。まさかダックが肩代わり・・・。
ではでは、またです~。
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-26 00:54
哀生龍 さん♪
男同士の盟友な関係って、羨ましいほどにイイですよねー。
私は女子的な友人関係によくある、褒めあったり、同調し合ったりすることが仲良しへの道、みたいなのがそんなに得意じゃないので、「おまえ、いいかげんしろよー」って言いたい放題で関係性が揺るがない男の友情模様は心底いいなーって思いまする。
でもって、ベンジャミンの存在がこのチームをまたバランスよく面白いものにしていましたよねー。先輩の成長にも貢献するカワイイ後輩でした。それぞれキャラがかぶらずにボケたりつっこんだりと役割分担できていてよかったし。
字数の都合でか字幕ではベンになっていたけど、ベンジャミーンって呼びたいっす。
Commented by CaeRu_noix at 2008-05-26 00:59
真紅 さん♪
テレンス・ハワードかっこいいですよねー。
そんなにカッコイイルックスでもないと思うんですが、ちょっとした表情が本当にセクシーでクラっときちゃいます。今回は弾き語りなシーンもあって嬉しかったし。クラッシュやハッスル&フロウなどシリアスタッチのドラマでは、はにかみ笑顔を見る機会はたぶんなかったから、今回はとりわけその自然な笑みに魅力を感じたのかもしれませんー。

「セルビア人にもいい人間はいるけど・・・」なんて台詞の後にフォックスが指揮した軍の悪行が説明されていたけど、あまりフォローになっていないような取ってつけたような言葉のみだったので残念でしたね。

ギターは小道具としてはめちゃめちゃ面白い存在だったのでOKです。(笑)
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