かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『パーク アンド ラブホテル』 
2008年 05月 27日 |
オアシスの癒し。

59歳の艶子が経営するラブホテルの屋上には公園があった。



ホテルものって、大好きなジャンル。でも、多くはそこに宿泊する人々の群像劇となっているパターンなので、本作はちょっと毛色が違うかな。都会の片隅にあるらしいこのラブホテルは、ちょっと古めかしい感じで、どうやら休憩オンリーらしい。というわけで、この物語は多くのホテルものとは違って、宿泊客が客室で繰り広げるドラマで構成されているんじゃなく、オーナーの艶子とホテルに足を踏み入れる3人の女性のドラマになっている。思ったんだけど、これって、パキパキと明るくない『かもめ食堂』って感じじゃない?

ラブホテルの屋上に公園があって、近所の子どもたちやお年寄りの娯楽の場になっている。その取り合わせにとっても惹かれちゃうのだよね。屋上にブランコやすべり台という公園の遊戯物があるのってファンタジックで幻想的なんだもの。実際問題、この公園は安全上は問題あり。子どもたちというのはいつも元気で走り回っているわけで、時には転んだり、ブランコから落っこちたりもするだろうから、下が土じゃなくて普通にセメント系なのは大きなケガをしてしまうこともありそうで怖いかも。そうなると近所の親たちが責任問題を追及することになるに違いなくて、艶子さんはせっかく厚意で公園をやっているのに、全てが台無しになってしまいそう。

そんなことをふと考えてしまったのは、本作がイメージしたほどにフワフワした幻想的な世界観を有しているわけではなくて、案外と地に足のついたリアルな物語を提供していたからなのだった。案外と現実的なつくりになっていたものだから、艶子さんの旦那が、経営するホテルがあるのに、身一つで出て行ってしまうこともあり得ないよなぁということもふと思った。もちろん、この物語においては、子どものけがと責任問題の心配をする必要はまるでなくて、登場人物の背景について、絶対的な現実性を追求するのも野暮なんだけどね。不思議な雰囲気に身を任せればよいのだ。つまり、もうちょっと幻想性の方が色濃くてもよかったかな。

思ったほどにファンタジックな世界ではなかったけど、その分女たちの物語としては、リアリティのある悩みごとが描かれていて、味わい深いものとなっていた。艶子さんの存在感がとてもステキなのだ。無愛想でちょっと怖いおばちゃんなんだけど、そのむやみに優しくはなくて凛としているところがいい。ワケあって、女一人で生きてきたのだから、へらへらとしてはいられないのだろう。でも、他の女たちよりも伊達に長く生きているわけじゃなくて、心に蟠りを持っている女たちを見過ごせない艶子さん。銀髪の少女美香、ウォーキングを日課とする月、常連客のマリカは、艶子さんに出逢って、不思議なホテルの公園に足を踏み入れて、彼女との語らいの中で、もう一度自分の問題を見つめなおすのだった。

そんな彼女たちの心の憂いを表す繊細な心情描写が素晴らしいので、ググっと心寄り添えた。そして、彼女たちばかりでなく、艶子の心にも変化がもたらされることになるのも嬉しいよね。互いが深くコミットするわけでもない、何てことのないさりげないふれ合いと対話を通じて、女たちが少しだけ前向きに生きることができるようになるってステキなの。私もこんな空間に足を踏み入れてみたくなる。私も艶子さんにご飯に誘ってもらいたいなって思うほどに、彼女たちと一緒に心に温かいものが広がるのだった。

エピソードは3人の女性のものだったけれど、いつも屋上の公園に遊びに来ているやんちゃな子どもたちやお年寄りの姿もこの情感に欠かせない存在で、味わいを深めてくれた。日が暮れて、「みんなそろそろ帰りなさい」って、声をかける艶子さんの姿がとてもいい。こうやって繰り返し、繰り返し日々を生きてきたのだなぁ。こうやってみんな生きているのだなぁって。おばあちゃん効果というのはあるかもしれないなぁ。地域社会に必要な光景かもしれない。屋上の公園で奏でられる音楽もメランコリックで最高。
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by CaeRu_noix | 2008-05-27 07:21 | CINEMAレヴュー | Trackback(2) | Comments(4)
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Commented by まてぃ at 2008-06-02 22:14 x
こんにちは。
不思議な雰囲気の映画でしたよね。
リアルだけどファンタジックな設定で、艶子さんを中心にいい味出してるな~と感じました。
そういえば、公園で遊んでいる子供たちって時に邪魔だけど、何かいいですよね。
Commented by CaeRu_noix at 2008-06-05 00:42
まてぃさん♪
ファンタジックな雰囲気がよかったですよね。
実際は結構リアル寄りの物語に感じられたのですが、その混じり合った感じが魅力でしたね。
艶子さんのキャラクターにすごくリアリティを感じたというのもあるかな。
誰かに似ていますよね? そこらへんにいそうなオバサンなのが味わいどころでした。
子どもたちも何気なく重要な存在でしたよねー。
子どもとお年寄りが一緒に存在する場所ってすごく大事だと思いますー
Commented by 狗山椀太郎 at 2008-07-01 00:16 x
こんばんは
>これって、パキパキと明るくない『かもめ食堂』って感じじゃない?
うまい!まさにその通りですね。荻上作品の「食堂」は純度100%の快適空間な感じで誰もが魅了されると思いますが、本作の女性たちにとっては快適すぎて逆に居心地が悪くなってしまうかも(笑)。ちょっと影を感じさせる雰囲気の、こういうレトロな癒し空間というのも意外性があって面白かったです。
ところで、本作の監督さんは劇中音楽を用いるにあたってジプシー的なイメージを持っていたそうですね。映画を見ながら、これは絶対かえるさんの好きそうなテイストだなあと感じていました。まるでストリートミュージックのようにどこからともなく聞こえてくる感じが自然で良かったですね。
Commented by CaeRu_noix at 2008-07-02 00:59
狗山椀太郎 さん♪
かもめ食道裏バージョン説?にご賛同、ありがとうございます♪
ホント、その湿度、質感はぜーんぜん違うんですけど、つかれた女たちがその場所でそこの女主人と交流しつつおいしいものを食べて、少しいやされいく・・・なんてずいぶん似ているなぁと思ったのでした。
こっちは全くもって、清涼には程遠いすすけた感じなんですけどね。
本作の女性たちは、かもめ食道のサチエさんのサッパリ感には到底ついていけないでしょうねぇ。艶子さんの暗さに落ち着くのでありまする。
昭和をなつかしめるレトロな雰囲気が魅惑的でしたねー。
はいはいはい。音楽は好みでしたよー。日本映画はこういう音楽を使ってくれるものは少ない気がするので、とても嬉しかったです。
そうか、ジプシー・ミュージックっぽいのをねらっていたのですね。
メランコリックなギターの音ってたまりません。
まてぃさんの記事によりますと、"屋上のバイオリニスト、HONZIさんは昨年9月に亡くなられた"のだそうです。
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