かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
latchodrom.exblog.jp
(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
Top
『モンテーニュ通りのカフェ』 Fauteuils d'orchestre
2008年 05月 29日 |
心の琴線に響く、エスプリッチなパリの人生賛歌。

田舎町からパリにやってきたジェシカは、カフェ・ド・テアトルで“ギャルソン”の仕事を始める。



映画が始まってすぐ、フランス語の響きが私は好きなんだなーってことを再認識。映しだされた街の風景に重なって聴こえてきた年配の女性のフランス語が何だかとても心地よかったのだ。それは、おばあちゃんが孫に、夢と希望に胸弾ませていた若い頃のパリの思い出を語る言葉であったから、心に響くものだったのかな。ジェシカの祖母役のシュザンヌ・フロンの声が優しくて、孫への愛情が伝わってくるから心に温かいのかな。冒頭のちょっとした台詞で、私の心をつかんだステキなおばあちゃんのシュザンヌ・フロンはこの撮影の後の2005年6月に亡くなっており、本作は彼女に捧げられている。

そして、まさかのシドニー・ポラックの訃報。俳優としても活躍するポラックではあるけれど、フランス映画への出演は稀なことかと思うので、映画監督役で登場した彼の姿もとても印象的だったのだけど、この映画を観た2日後にその訃報を聞くことになったのだった。思いのほか衝撃を受けて、映画を反芻して、感慨も一段と深まった。この物語の登場人物の一人、グランベールのことを思い出してしまう。価値ある美術品を収集してきた彼が、人生の終わりを見据えて、コレクションの全てを売り払う。誰しもの人生がいつか終わる。だから、人生を輝かせたいと思うし、そのために自分にとって大切なものが何であるかを見極めて、それを選びとって、前に進んでいきたいと思うのだ。

モンテーニュ通りは8区にあるのだね。どのへんなのか思い出せないのだれど、たぶん観光客向けのスポットではなく、パリで暮らすリッチでハイソな人たちで賑わう場所。皮肉屋のフレデリックが言うことには、金持ちのオヤジを見つけるには最適なスノッブな界隈。ジェシカが働くことになる由緒正しきカフェの周りには、高級ホテルや大劇場が立ち並ぶ。そんな劇場で仕事をする人たちなどがこの物語の主人公の群像劇なのだ。これがアメリカ舞台の群像劇だと、銃と犯罪が絡むエピソードなんかがありそうなものだけど、これは芸術の都パリらしく、美術品コレクターに女優にピアニストのドラマが交差するのだった。それぞれの行き詰まりがせつなかったり、滑稽だったり。とっても魅力的で楽しい群像劇なのだった。

本作は、一昨年に映画祭で一度鑑賞している私なのだけど、大好きな映画なので1年半ぶりに再見をしたのだった。二度目はより小ネタを楽しめた気がするな。ポラック扮する映画監督ブライアン・ソビンスキーと絡む、TVのメロドラマの人気者から映画俳優へのステップアップも目論む女優カトリーヌの言葉の数々がとても面白かった。ビノシュ、ベルッチだの、スコセッシだの、サルトルとボーヴォワールの話だの、固有名詞が楽しいの。「宗教が神と人間を遠ざけているように、コンサートが演奏家と観客とを遠ざける」なんて哲学的なことを言うピアニストに、日本人インタビュアーが呟く台詞もリアルで笑えた。

ディテールが痛快で、味わい深いんだよね。そう、フランス映画らしいダニエル・トンプソンの脚本が大好きな私。これぞ、エスプリと思える小粋な台詞、絶妙なユーモアが詰まっているの。そして一見バラバラであるような、それぞれの人生を悩み迷いながらも精一杯生きる人々のエピソードが積み重ねられるごとに、それが調和するハーモニーとして響いてきて、人生賛歌として謳い上げられていることに胸がいっぱいになるのだった。セ・ラ・ヴィ!
[PR]
by CaeRu_noix | 2008-05-29 07:31 | CINEMAレヴュー | Trackback(13) | Comments(8)
トラックバックURL : http://latchodrom.exblog.jp/tb/7994894
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from シャーロットの涙 at 2008-05-30 02:05
タイトル : モンテーニュ通りのカフェ
オーケストラの曲を劇場で聴く時は、自分の耳の位置が楽器と同じ所に来る席を選びませうw演劇やバレエなら一番前で見たいけどww... more
Tracked from ヨーロッパ映画を観よう! at 2008-06-01 00:52
タイトル : 「モンテーニュ通りのカフェ」
「Fauteuils d'orchestre」...aka「Avenue Montaigne」「Orchestra Seats」2006 フランス パリ8区にあるカフェを舞台に描いた群像劇。 ヒロイン ジェシカに「ロシアン・ドールズ/2005」のセシル・ド・フランス。 ピアニストのジャン・フランソワ・ルフォールに「地上5センチの恋心/2006」のアルベール・デュポンテル。 妻ヴァレンティーヌに「息子の部屋/2001」「エンパイア・オブ・ザ・ウルフ/2005」のラウラ・モランテ。 女優カト...... more
Tracked from 小さな街から at 2008-06-02 22:28
タイトル : 「モンテーニュ通りのカフェ」
パリ8区のモンテーニュ通りに実在する”カフェ・ド・テアトル”。 パリ大好きなおばあちゃんのお話に影響されて、田舎から出てきたジェシカ(セシール・ドゥ・フランス)は、アラン・ドロンも訪れたという、この由緒あるカフェで働けることになります。 ギャルソ... more
Tracked from knockin' on .. at 2008-06-07 21:01
タイトル : モンテーニュ通りのカフェ
Fauteuils d'Orchestre パリ8区、モンテーニュ通りのカフェに集う人々の姿を暖かく見つめた群像劇スタイルの軽やかなハートフルコメディー。 カフェで交錯する人生のオーケストラ。おいしいカフェ・クレームのような、ほっこり芳醇な味わいのひとときが流れるのです。... more
Tracked from cinema!cinem.. at 2008-06-11 19:09
タイトル : 『モンテーニュ通りのカフェ』
4月に観たい観たいと騒いでいた『モンテーニュ通りのカフェ』をやっとのことで観てこれました。 こんなに長い期間上映していてくれたユーロスペースさんに感謝。 劇場や高級ホテル、有名メゾンなどが並ぶ由緒正しき街、パリ8区のモンテーニュ通り。マコンから憧れを抱いて... more
Tracked from Aspiring Bo.. at 2008-06-13 01:58
タイトル : 映画「モンテーニュ通りのカフェ」を観ました。2008年5..
製作年 : 2006年 製作国 : フランス 主演;セシール・ド・フランス 、 ヴァレリー・ルメルシェ その名の通り、モンテーニュ通り沿いにあるカフェに集まる人々の人間模様を描いた作品。 主人公はおばあちゃん子のジェシカ。おばあちゃんの話に感銘し、田舎からパリで飛び込みで仕事を見つけた。 瀟洒なブティック等が建ち並ぶ都会8区で。 それがモンテーニュ通りのカフェテアトル。向かいの劇場で主演を演じる女優、オーケストラのピアニスト、 オークショんをひらく予定の老人、ホテルで働く女性。さまざまな気持ちをか...... more
Tracked from レザボアCATs at 2008-06-13 20:11
タイトル : 66●モンテーニュ通りのカフェ
パリ8区、モンテーニュ通り・・・。カフェを通じて垣間見る、人びとの生活。そこにある甘さも、苦さも、愛情を持って描かれる物語。だから酔えた。... more
Tracked from Art- .. at 2008-06-30 00:12
タイトル : モンテニュー通りのカフェ
モンテーニュ通りのカフェHP http://www.montaignecafe-movie.jp/ 映画のチラシをみると、気になってしょうがなかった。こんなイラストデザインをチラシに使うなんて、オシャレなヤツだな。... more
Tracked from 寄り道カフェ at 2008-07-07 20:02
タイトル : 「モンテーニュ通りのカフェ」
FAUTEUILS D'ORCHESTRE 2006年/フランス/106分 at:京都みなみ会館 大阪で公開時に見逃したので、週末に、高温多湿の真夏日のような中、さらに盆地でひときわ暑い京都まで観にいってきました。 そこまでして劇場に足を運ぶほどの映画というほどのものではないけれど、パリのおしゃれな街並みとハートフルなお話を手土産に、大阪・京都間のこんなちょっとした小旅行の時間も悪くはないなという気分で帰路につけた映画。 舞台は邦題タイトルになっているパリ8区にあるモンテーニュ通...... more
Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2008-12-10 20:30
タイトル : モンテーニュ通りのカフェ
 『人生に恋をした パリ、8区。 夢が座る時間に、 カフェも開く』  コチラの「モンテーニュ通りのカフェ」は、エッフェル塔を望み、シャンゼリゼとジョジュ・サンクを結び、劇場やオークション会場といったセレブが行き交う一角に実在する”カフェ・ド・テアトル”....... more
Tracked from 迷宮映画館 at 2008-12-17 08:59
タイトル : モンテーニュ通りのカフェ
うーん、これはいい感じ。好きです。... more
Tracked from シネマな時間に考察を。 at 2010-02-19 17:40
タイトル : 『モンテーニュ通りのカフェ』
コンサートホールのオーケストラな厳粛、 喜劇舞台の笑いと癒し、オークション会場の緊迫と思惑。 隣接するカフェを介して交差する、それぞれの人生劇場へようこそ。 『モンテーニュ通りのカフェ』 FAUTEUILS D'ORCHESTRE 2006年/フランス/106min 監督:ダニエル・ト... more
Tracked from 不良中年・天国と地獄 at 2010-04-06 12:43
タイトル : 「モンテーニュ通りのカフェ」
ニューヨークの変貌ぶりは目を見張るものがあります。かって摩天楼と言われた高層ビル街も、ワールドセンタービルの建設と崩壊などで、様変わりしました。パリやロンドンの中心部は、昔と変わらぬたたずまいを見せています。パリ8区のモンテーニュ通りも、ほとんど変わっ...... more
Commented by シャーロット at 2008-05-30 01:29 x
ぼんそわー。そうでした、かえるさんは映画祭で見たのでしたねー。またこうしてレビューをあげてくれるのが嬉しい♪
そう、私もフランス語の響きは好きです。やわらかさといい、しなやかさといい、たとえ何を言ってるかわからなくても(笑)凄くしっくりきます。
ところで、なんかこの頃、かえるさんちでいろんな方の訃報を知るんだな。シドニー・ポラックがーー;;泣
私も観た時や直後に知っていたら映画の見方が変わりそうです。そう、そしたらホントに人生賛歌。
ピアニストが言う台詞になんだかとてもジワッときて涙がでてしまった私。
身近にいるアーチスト達もまさにそんな悩みを抱えていて、本当に一生懸命にもがいているんですよ。なんか胸いっぱいで苦しくなって。
今パリにむしょうに行ってみたい気分。セ・ラ・ヴィ!

Commented by CaeRu_noix at 2008-05-31 20:36
シャーロット さん♪
『オーケストラ・シート』のタイトルで東京国際女性映画祭にて2006年秋に鑑賞したのでした。
ってか、その時は一行たりとも感想を書いてなかったので。(笑)
あの時は表参道のホールが会場でイスも全然よくなかったりで、再見した今回の方が断然味わい深かった感じですー。
フランス語の響きって大好きなんですよねー。眠くなっちゃうけれど。
でもって、前に観た時は、この監督役が現役のシドニー・ポラック監督だという認識をしてなかったかもしれないんです。今回は、スケッチ・オブ・フランク・ゲーリーやフィクサーでしっかと顔を覚えた後だったので一目でわかりましたが。
で、鑑賞したその2日後に訃報を聞いたものだから、ビックリしましたよ。
フランス映画の(というかヨーロッパものは全体的に)群像劇って、登場人物の平均年齢が高めだと思うんですが、それゆえに人生についてじんわり染みるものが多いです。
ピアニストの苦悩も切実なんでしょうね。理想と現実のギャップだとか。この後にフィラデルフィア管弦楽団の秘密を観たので、そういう思いもリアルに想像できまする。
パリの人は観光客には冷たいので(笑)やっぱりフランス人になりたーい。
Commented by sally at 2008-06-07 22:02 x
かえるさん、こんばんは♪
パリに思いを馳せちゃう素敵な作品でしたね。ビルみたいな高い建物がなくて、その中でエッフェル塔がそびえる街。こんな場所なら日常の光景も絵になるものです。
フランス映画はこういう軽やかな作風のものが好きです^^
シドニー・ポラックの映画監督とカトリーヌの会話はほんと面白かったー。カトリーヌの売り込み(?)に圧倒されながらも「タダで仕事を受けちゃいけない」なんて返す監督がすてき。
カフェで交錯する人生、っていうのもとっても好みなシチュエーションだったのでした。
Commented by CaeRu_noix at 2008-06-09 00:22
sally さん♪
パリってやっぱりステキな街ですよねー。
エッフェル塔ってホントに絵になりますよね。
そうそう、高層ビル群なんかがないからいいんですよね。
街のど真ん中に川が流れて橋が連なるのもまたいいし。
そして、私もあんなカフェに私も通いたいー。
ちょっとしたクロワッサンとカフェの朝食がめちゃめちゃおいしかったりするんですよね。
最近パンがやたら高いのでTOKYOではそうそうクロワッサンも食べられませんが・・・。
フランス映画は全般的に好きなので重いものも私は好きですが(笑)、こういう楽しくて心温まるドラマも最高にイイですよねー。
カトリーヌにはめちゃめちゃ笑わせていただきました。この女優さんは前にフランス映画祭で握手してもらったんですが、その時に観た別の主演映画でもまたすごいコメディエンヌぶりを発揮してくれていて。
あれも日本公開されればいいのになー。
ポラック監督は役の中でもステキな映画人でしたねー。
私もカフェもの大好きです。群像劇ばんざーい。
Commented by とらねこ at 2008-06-13 20:23 x
かえるさん、こんばんは!
こちらをご覧になったの、やっぱり二度目でいらしたのですね。
私がお会いした人で、映画祭で見たって言ってた方が居たので、もしかしたらかえるさんはこちら、もうご覧になっているかなって思ったのですが、やはりそうでした。
かと思ったら、“女性”の映画祭だったのですね。その彼はその一言は省略してました(笑)

ここでの監督の役柄も、ひときわ味わい深いものに思えました。
軽快なコメディって、セリフのリズムが大事なんですね。なるほどーなんて思ってしまいました。
ラストのカトリーヌに、感激してしまいました!女優としても、一皮向ける瞬間っていうか。
「彼女はいろんな表情が出来る人だから」って見抜いたジェシかは素晴らしい、なんて思いました。
Commented by CaeRu_noix at 2008-06-13 23:37
とらねこさん♪
無理やり二度目鑑賞しちゃいました。
今回の方がより多くが味わい深かったので観てよかったですー。
そうそう、女祭でした。といっても、男子禁制でもなく、普通に男性も大勢いらっしゃったと思いますが、やはりあえて、その映画祭の名前は言いたくないでしょうね。(笑) なんとなく。

ホント、ポラックのソビンスキー監督のお言葉も重みがありましたよね。
カトリーヌの気持ちになって、感動しちゃいました。穏やかな笑顔がステキでした。舞台稽古時に台本の台詞をどんどん変えていくシーンもおもしろかったですよねー。フランス語で聴くことができたら、もっと面白かったのでしょうね。そう、そして、監督の教えを心に抱きつつ、舞台に立った彼女の輝きもジーンでしたね。図々しくてわがままな女優な一面もちゃんと見せるのに、彼女に共感せずにはいられなくなってしまうという、徹底した笑いの追求姿勢がお見事。そういえば、ジェシカはカトリーヌのよさを最初からわかっていましたよね。一番若いのに一番物事が見えていたのですなー。
Commented by mchouette at 2008-07-07 20:08
かえるさん、たまにはこちらからTBを持ってお邪魔します。(笑)
大阪で見逃してしまった作品。京都で公開されたので、大阪の街中をうろうろするより、ちょっとした小旅行気分もいいかって、この週末、うだる暑さのなか京都まで見にいってきました。
「ブッシュ・ド・ノエル」も案外と気に入った作品でした。
これもパリの街にいるような気分にさせてくれた106分。
軽やかな気分で家路につけた映画でした。
Commented by CaeRu_noix at 2008-07-08 23:18
シュエットさん♪
またまたありがとうございます。
いいですね、関西。大阪で見逃したものを京都で観られるなんて。
粋なパリの街の映画をで京都でご覧になるなんてまた素敵。
私が観たのは、若造たちでごった返す渋谷の街でしたもの・・・。
渋谷でお茶をしても、そのゴミゴミした雰囲気や周囲のうるささにより、心からの休息気分を味わえない感じなんですが、モンテーニュ通りのカフェタイムはそれはもういい感じでしたね。
京都でしっとりおいしいものをいただくのもまたよさげですし。
「ブッシュ・ド・ノエル」も私は大好きなんですよねー。
フランス製の群像劇は大好物なんですー。
<< 『パリ、恋人たちの2日間』 2... PageTop シドニー・ポラック死去 >>
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Beige Shade by Sun&Moon