かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
latchodrom.exblog.jp
(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
Top
『アフタースクール』
2008年 06月 11日 |
目に見えたものも受け止め方次第。



『運命じゃない人』の内田けんじの新作がやってきた。前作はユーロスペース(それも今のシアターN渋谷の旧ユーロ)で単館公開だったのに、今回はのっけからシネコンでも封切られることになっていたから、その出世ぶりにビックリ。出演者がメジャーな人たちだからというのもあるのだろうけれど、面白い映画がちゃんと買われるというのは喜ばしいことだねー。

常々ぼやいていることだけど、ハリウッドも邦画界も、小説や漫画やTVドラマの映画化ばっかりなのが寂しいったらありゃしなかったもの。こんなに巧妙なオリジナル脚本の書ける映画監督がいるということに嬉しくなってしまうよね。いやいや、おもしろかった。見事なお手並み。気持ちよく騙されちゃったな。

騙されサスペンスものというと、去年は『キサラギ』などが大評判だったかと思うけど、あちらは脚本に、オチに結びつけるための強引さが感じられたりもしたんだよね。途中で激しくキャラが変貌する人物がいたことがスマートじゃないと思ったりして・・・。まぁ、キサラギの方は、笑いに満ちた今日的な題材というのがポイントだったので、マンガ的な極端さも合ってはいたのだけどね。

片や、本作アフタースクールのネタそのものは、企業とヤクザと警察と水商売の女なんていう古めかしいほどの定番もの。ユーモアを含みながらも、現実にあり得るかもしれないと思えるリアルなタッチでドラマが進む。それがミソ。ついつい王道パターンに安心して、登場人物の関係からして、与えられるがままに受け止めてしまったのであった。基本ネタは古典ちっくながら、21世紀ツールな動画ケイタイやパソコンが存分に活躍しているところは前作同様にイマドキ印。それらのツールが騙しに一役かっていたのも心憎い。

お手並みの鮮やかさに膝を打ってしまったのは、人物にまつわる謎解きのタイミングが絶妙なこと。自分が違和感を感じてほどなく、一つの真実が明かされたのには歓喜。だってね、途中にミスキャストって思わなかった?彼女はヤクザの親分の愛人顔じゃないだろー、ヘヴンのNO1なんて嘘だろーって、台詞に違和感を感じるわけですよ。むしろ彼女の方こそ、ヘヴンのNO1タイプでしょうって。と思って程なく、腑に落ちるわけだ。思えば最初から、夫を見つめるにしては不自然な眼差しが彼女にはあったんだよね。演技がクサいなぁって、ゲンナリしたのだけど、ゴメンゴメン、そういうことだったんだね。

ドンデン返しが爽快な極上サスペンス。でも、それだけじゃない。『運命じゃない人』で主人公の人柄の良さと友情模様に心温まったのと同様に、人間ドラマとしてもホロリとさせてくれるのだ。神野と島崎の対話が興味深くって、人間の善性と悪性のせめぎ合いにハッとさせられた。初めのうちは、神野は人のよすぎるおとぼけくんにしか見えなくて、修羅場をくぐってきた島崎の方が一皮向けているウワテの人物に思えた。そのことについても観客の自分はすっかり見誤っていたのだった。

「彼女を助けて何の得があるの?」って、そんな疑問が自然にこぼれ出てしまう生き方をしてきた島崎を憐れむかのように見つめる神野の眼差しにグッときてしまうのだ。損得勘定の上で行動する人間だらけの世知辛い現代社会を思うにつけ、そんなものには振り回されずに大切なものを見出している神野はすんごくカッコいいじゃないか。内田けんじは人間と人間関係を信じているんだなーってことが嬉しくなる。
[PR]
by CaeRu_noix | 2008-06-11 23:58 | CINEMAレヴュー | Trackback(8) | Comments(6)
トラックバックURL : http://latchodrom.exblog.jp/tb/8081749
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2008-06-12 06:47
タイトル : アフタースクール
 『行方不明の友人、同級生を名乗る探偵、大人の放課後<アフタースクール>には何かが起きる!! 笑って、驚いて、巻き込まれて、グッとくる。驚きエンターテインメント! 甘く見てると ダマされちゃいますよ』  コチラの「アフタースクール」は、5/24公開となった一....... more
Tracked from Wilderlandwa.. at 2008-06-12 20:09
タイトル : 「アフタースクール」映画感想
題名の軽さにほとんど見る気なかった映画でしたが、映画ブロガーの皆様が「面白かった」とか「騙された!」とか言っているので気... more
Tracked from スワロが映画を見た at 2008-06-13 22:32
タイトル : アフタースクール
原題:―― 製作年度:2008年 製作国:日本 上映時間:102分 監督:内田けんじ 原作:―― 脚本:内田けんじ 出演:大泉洋/佐々木蔵之介/堺雅人/田畑智子/常盤貴子/山本圭/北見敏之/伊武雅刀 あらぎ..... more
Tracked from ノラネコの呑んで観るシネマ at 2008-06-15 01:01
タイトル : アフタースクール・・・・・評価額1700円
キーワードは「同級生」? 「運命じゃない人」の内田けんじ監督の第二作「アフタースクール」は、失踪した一人の男の行方を巡って、様々な人間の思惑が交錯する異色のドラマ。 ごく普通のミステリと思っているぎ..... more
Tracked from 京の昼寝〜♪ at 2008-06-20 08:14
タイトル : 『アフタースクール』
□作品オフィシャルサイト 「アフタースクール」□監督・脚本 内田けんじ □キャスト 大泉 洋、佐々木蔵之介、堺 雅人、田畑智子、常盤貴子、北見敏之、山本 圭、伊武雅刀■鑑賞日 5月31日(土)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★★(5★満点、☆は0.5)<感想>  軸がぶれない映画とはこういう映画のことを言うのだと思う。自身の脚本には細かい登場人物ディテールと、自分自身が遊び心を持ちつつ且つ第三者的(観客の立場)発想の転換を用いてわかりやすく騙し続けてくれる。 『運命じゃない人』は劇場で観逃...... more
Tracked from 三毛猫《sannkene.. at 2008-06-21 23:52
タイトル : 「アフタースクール」(日本 2008年)
大人になった同級生との放課後(アフタースクール)には 『裏』があって『建前』があって『嘘』がある。... more
Tracked from SGA屋物語紹介所 at 2008-06-23 23:14
タイトル : 親友どうでしょう 内田けんじ 『アフタースクール』
キャストも絵面も地味なのに、最近やけに評判のよいこの映画。なるたけ慎重に紹介いた... more
Tracked from 日々のつぶやき at 2008-06-24 16:22
タイトル : 【アフタースクール】
監督:内田けんじ 出演:大泉洋、佐々木蔵之助、堺雅人、常盤貴子、田畑智子、伊武雅刀 「神野は母校の中学校に勤める教師。ある日彼の元に、同級生だと名乗る怪しげな探偵がやってきた。神野の親友の木村を探しているという。大企業のサラリーマン木村探しを手伝う... more
Commented by cinema_61 at 2008-06-13 20:52 x
こんばんは。小耳に挟んだ情報で、観る前から構えていたせいで、疑いながら観ていたので、おもしろさが半減した感じでした。しかし、なさそうでありそうな「日本的関係」→ヤクザ、企業、水商売の女・・・を中学時代の同級生という共通項でひっぱっていく手法には拍手!
それにみんな適役で・・・特に伊武雅刀の存在は絶品。

ただ、アメリカドラマなどのスピーディな謎解きストーリーと比べるとちょっと・・・・・・(私が今嵌っているNHKBS2の「ダメージ」は時系列が入り乱れ、9話を終えてもまだ先が読めない)
Commented by CaeRu_noix at 2008-06-13 23:52
cinema_61 さん♪
いらっしゃませ。
そうですかー。疑いながら見てしまいましたかー。
必要以上に内容を知らずに観れば、疑いを持ちながら見ても、充分に騙されてしまいそうなプロットだと思うのですが、cinema_61 さんは肝心なことも先に読めてしまったのでしょうか??
多くのサスペンスものは、最初に事件があって、犯人は誰だろうと疑うことがお約束で、犯人は意外な人物だったいうオチになるくらいのものですが、本作の場合は、何を疑うべきなのかがわからないのがミソでしたよね。
普通に見ていれば、木村の失踪事件、彼が関わっている問題についてを推理するという流れにのってしまいますもんね。
というわけで、視点がグラっと揺らぐ、とってもナイスなひっくり返し方だと私は思いましたー。
連続ドラマなサスペンスというのはまた別の面白さがあるのでしょうけれどね。
ホント、キャスティングも素晴らしかったですよねー。
主役3人がわりとサラリタイプゆえか、わき役伊武さんの濃さはよいスパイスになってました。
Commented by ノラネコ at 2008-06-15 01:20 x
こんばんは。
今オリジナルの企画を通すのは映画でもテレビでも大変です。
複雑で文学的な様でいて、その実非常に映画的なこの作品がヒットしてるのはうれしいですね、
内田けんじにはオリジナルを作り続けて欲しいです。
次にどんな話を仕掛けてくるのか、今から楽しみになります
Commented by CaeRu_noix at 2008-06-16 20:00
ノラネコさん♪
オリジナルものって本当に少ないですよね。
ヒットする実績がないから、企画が通らないというのはわかるけど、そうやってどんどん悪循環のごとく、作り手と受け手両方で、その傾向に拍車をかけている感じなのは寂しい限りです。
というわけで、本作のヒットはホントに喜ばしいですよね。
雇われ監督業をやる人は他にたくさんいるのですから、内田監督には是非今後もずっとオリジナル脚本の映画を続けてほしいですよね。
次も騙されたいなー。
Commented by SGA屋伍一 at 2008-06-23 23:13 x
かえるさん、おばんです

よくできた映画でしたねー
わたしが感じた違和感は「妙に画面に強面の人が多いなあ」というものでした(笑) 

神野先生はかっこよかったですね。上のセリフもさることながら、すべてを知った上でさらっと「佐野さんは何が変わったの?」と言えるところもすごい。なかなか言える言葉じゃないですよね

時代は変わるし、学校でもPCやメールが活躍してるこのごろですが、いつの世も人情は変わらない、と信じたいものです
Commented by CaeRu_noix at 2008-06-24 23:29
SGA屋伍一 さん
めるはば。
お見事に練られた脚本でありましたね。リボルバーとは大違い。
(あ、リボはむしろこねくり回し過ぎなのか・・・)
こわもての人多かったですかね?
確かに主演格の三人がわりと愛嬌のあるタイプなのに比べるとその周りの人たちは、気弱そうな人はあまりいなかったかもですね。
神野先生ったら、すっかりおいしいところをもっていきましたよねー。立場だいぎゃくてん。でも、彼のような物事の捉え方ができる人が学校の先生というのはスバラシイことです。偶然会って助けを求めた旧友というのが、あの頃の特別な存在の佐野さんじゃなくても助けたでしょうかね? 神野先生なら、きっとと思えるのですが。
友情も人情も、なかなか見えにくい荒んだ世の中ではありますが、そういう温かさは失われてはいないはずです。
振りこめサギ被害が増えるばかりなのは、みーんな人を信じてるからなんですよー♪ んーー。
<< 『ランジェ公爵夫人』 Ne t... PageTop 『アウェイ・フロム・ハー 君を想う』 >>
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Beige Shade by Sun&Moon