かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ランジェ公爵夫人』 Ne touchez pas la hache
2008年 06月 12日 |
魅惑のコスプレ。

1823年、ナポレオン軍の英雄アルマン・ド・モンリヴォー将軍は、スペインのマヨルカ島にあるカルメル会修道院ミサに参加していた。
フランスの文豪オノレ・ド・バルザックの名作が原作。



ギョーム・ドパルデューの姿をスクリーンで見られて感無量。それほどにファンというわけでもないのだけど、『天使の肌』を観た頃に知った右足切断のことはショッキングだったから、彼がその後も俳優活動をしていることを嬉しく思うの。久しぶりの息子ドパルデューは、ずいぶんと風格が備わっていて、将軍役にふさわしい重厚感がみなぎる。美形青年だったギョームも徐々に容貌が父親似になってきたのかな。初めは義足のぎこちない歩みが痛々しくもあったのだけど、凛々しい軍服姿がキマっていて、大きな動のアクションなどなくても、表情と佇まい一つでその演技に魅せられる。妹ジュリーにしても、演技力は血筋なのかなって。ポスターの横顔は本当に父似と思えるのだけど、父とは違って、ギョームの方が鼻のカタチはよいよね。

ジャンヌ・バリバールはどちらかというと現代女性的な雰囲気が漂う快活なカッコいい女性。なので時代ものの公爵夫人役というのはイメージが違う気がしていたんだけど、いかにもという感じじゃないところがむしろ映画的にはナイスキャスト。社交界の人気者で、夫がいるのに将軍にモーションをかけては翻弄する気まぐれな女にピッタリの魅惑のレディ。スレンダーな肢体にまとった華やかなドレスの数々にも目を楽しませていただいた。格調高く美しい衣装と調度品、美術的な見どころに溢れているからコスプレものは魅力的なのだ。軽やかに踊る舞踏会のシーンも好き。こういうアクティブ風味の女性がはたまた修道女になっちゃうところがオツだし。「タホ川の流れ」はせつなく。

そんなわけで、美術にウットリしつつ、高貴なお二方の男と女の煮え切らないラブゲームに見入ってしまった。と言いつつ、静寂に包まれて、ふと気づけば何度か目が閉じそうにもなったから、夢中でのめり込んで観たというほどではないのだけれどね。でも、この質感はとても好みで、恋のシーソーゲームの模様と2人の心の変化を興味深く眺めちゃった感じ。今作はオリヴェイラっぽいように感じた。或いは、ロメール作品のコスプレものにも似ている感触。と思ったら、昔リヴェットにバルザックを薦めたのがエリック・ロメール師匠なんだってね。ジャック・リヴェットという監督の作風はつかみきれていないのだけど、今作はロメール風味なテイストを思い出す男と女の物語に感じられたのがよかったかな。静けさが多い分、音楽の美しい響きも印象的。

知識不足で、秘密結社十三人組のことはちっとも知らなかったんだけど、誘拐大作戦はおもしろかったなぁ。貴族様のやることはダイターンと思ったのだけど、結社あってこそだったのか。愛に生きるフランス人なのに、この時代の虚飾の貴族社会では恋の情熱を素直に表現することもできなかったなんてね。でも、最初は優位に立っていたはずの女の方がやがてその恋にのめりこんでしまうというのは普遍的に思える恋愛譚かな。
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by CaeRu_noix | 2008-06-12 23:58 | CINEMAレヴュー | Trackback(6) | Comments(6)
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思うに、この映画はフランスの文豪、オノレ・ド・バルザックを充分に読み込んでいる熱心な読者のための娯楽映画である。バルザックなんて一冊も読んだことのない私のような東洋の小娘なんぞ、ジャック・リヴェット監督にとっては最初から観客の想定外。ちょっとくやしくなるのだが、恋の駆け引きや恋愛ゲームなんぞとうていできそうにもないあかぬけない日本人でも、『めぐり逢う朝』」で本当にジェラール・ドパリュデューの息子かと疑った美青年、ギヨーム・ドパルデューがバルザックの作品で主役を演じるとなれば、思わず真剣そのものでスクリ...... more
Commented by cinema_61 at 2008-06-14 15:15 x
こんにちはかえるさん。私、これ、ずいぶん前に観ました。
バルザックの大作、監督が「美しき諍い女」のジャック・リヴェットということで、かなり期待していました。
このようなコスプレ大好きですし、出演者も美しく、見ごたえはありましたが、日本の歌舞伎にも似て・・・やはり途中で睡魔におそわれました。
このような作品は舞台のほうがいいのかもしれません。
周りの観客は平均年齢高く、バルザック愛好者?のように思えたのですが・・・・・・・。
Commented by CaeRu_noix at 2008-06-16 08:10
cinema_61 さん♪
そうですよね。封切り後すぐにご覧になったんですよね。
私ときたら、イワナミ嫌いなもので、最終週まで持ち越してしまいましたー。
でも、ちゃんと劇場鑑賞できてよかったです。コスプレものはスクリーンで観ないといけませんー。
でも、そう、美しさにウットリしているのに、眠くもなっちゃうんですよね。
気持ち的には前のめりなんだけど、体がついていかなかったりして・・・。
会話劇な部分が多いので、舞台劇としても成立しそうだよなって思いますよね。でもでも、舞踏会のシーンだとかマヨルカの空の青さや海だとか、主演の2人の表情のアップだとか、映画ならではの素晴らしい描写があるので、映画で観られて嬉しいです。
監督、原作者の関係というよりも、イワナミのお客は常に年齢層高いですよね。
Commented by シャーロット at 2008-06-17 10:41 x
ぼんじゅーる。
わ、わたしも駆け込んで観てきましたです;
あそこも椅子が好きくないもので;
それにしても私ギョームの事故は後で知ったのでビックリでした。
そんな事を知ってから思い出すとなんだか痛々しい姿に胸がつまりますが…彼は素敵でしたね。
私、リヴェットもオリヴェイラもロメールもあまりわかってないんですけど、こんな作風は大好きでありまする。すごく静かだけど歌もダンスもとても印象的でした。
それと、、、誘拐大作戦は秘密結社だったのですか。
仰るとおりダイターンだなあ;と、なんだか唖然としちゃったんですけど、
それならなんだか納得ですわw

Commented by CaeRu_noix at 2008-06-18 01:03
シャーロット さん♪
「も」というと、他に好きじゃないイスの劇場はどこでしょう?(笑)
イワナミは場所的にも遠いし、スクリーンも小さいのに遠くてヤでしゅ。
ギョームの切断のニュースは2003年頃のことだったでしょうか。
結構やんちゃな方みたいで、父ジェラールと不仲で勘当されたとか、そんな話題に事欠かない人でした。
そんな彼ゆえ、あの歩みは痛々しかった・・・。
わかるわからないでいうと、私も何もわかっちゃいないですが、ロメールととか他のヌーヴェルヴァーグ監督作品なんかは何本か観ると作品の傾向が掴めてくるんですよね。なのに、リヴェットはまだちょっとよく掴めないカンジなのですよ。
でも、やっぱりそれぞれに好きなのであります。
静かさがまたとてもよかったですよねー。
そうそう、ダンス!ぴょこぴょこ跳ねるやつが興味深かったです。
リヴェットの過去作品『アウト・ワン』はというのはバルザックの「十三人組物語」がベースになっているらしいです。
秘密結社のことは気になりますよねー。
妙だけど面白い展開でした。顛末にもドッキリ。

Commented by mchouette at 2008-07-08 22:54
こんばんわ。
今更ですがTBもってお邪魔します。
ギョーム・ドパルデュー…「ポーラX」の時はスレンダーで柔な雰囲気の美青年だったけど、「天使の肌」では段々と父ドパルデューに似てきて、本作の横顔などは、私チラシ観たときはジェラールが今度は若い女性相手に…なんて思ったしまったくらい(笑)。よく観るとギョームだった。
リヴェット監督、今回は正攻法で男と女をストレートに描いていて面白かったわ。コメント読んでると、眠気を誘われた方もいるみたいですね。
ギョーム・ドパルデューの迫力はなかなかのもの。フランス映画界で稀有な存在かもしれませんね。片足切断が惜しい。「ポーラX」でも終盤は美っこ引いてたけど、あれも具合がきっと悪かったんでしょうね。ポーラXでは後姿だけどスレンダーで美しい裸体を披露していたんだけどね…。
見終わった後、もう一度じっくり観てみたいなって思える作品でした。
Commented by CaeRu_noix at 2008-07-10 02:18
シュエットさん♪
ギョームもいつのまにやら、青年のイメージから抜け出しちゃいましたね。近年は妹ジュリーの活躍が目についていたのですが、兄の映画復活も嬉しいです。そう、本作のフライヤーの横顔はホント、父の面影いっぱいですよね。私もこの映画の主演が誰かがすっかり抜けていた時に、この写真を見て、ジェラール・ドパルデューが出演していると思いこんだりしましたもの。
『ポーラX』はなんとも陰鬱な気持ちにさせられる作品だったという印象が残るばかりで、その当時の私はうまく受け止められなかったんですよね。
また観てみたいなーという思いにかられました。とにかく、強烈な題材でしたもんね。母との関係に、姉に・・・。あれって、本番シーンだったりしたらしいですね。(女優はダブルさん)
本作はですねー、私自身もちょっと眠気におそわれましたよー。油断するとスッと眠りに落ちそうになることが何度かありました。内容が退屈だとかそういうことではなくて、こういう静かな作品を休日の昼下がりに鑑賞するとそうなるんです。(笑)そんな状態でしたが、映画としてはとても気に入りましたー。
そう、この世代でこんなに重厚感のある俳優は稀有ですよね。
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