かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『1978年、冬。』 西幹道
2008年 07月 14日 |
映画はやっぱりロングショットでしょう。凍てつく大地よ。

文化大革命が終わって2年。地方都市・西幹道で暮らす18歳の四平(スーピン)と11歳の方頭(ファントウ)と兄弟は、北京からやって来た少女雪雁(シュエン)と出会う。



ユーロスペースで封切られたいかにも地味地味な感じの中国映画。これはひょっとしたら、ちょっと物足りなさを感じてしまうタイプの作品かもしれないとも思ったんだけど、予告で目にした映像の雰囲気がとても好みだったので、見逃すことはできずに劇場鑑賞。はい、正解。ジャ・ジャンクーの映画がスクリーン鑑賞必須であるのと同様にね。(この監督も第六世代なのね) 娯楽性は乏しいし、ストーリー性を重視する多くの方々にとっては、たぶん面白い映画じゃないだろうなとも思うのだけどね。私としては、中国映画に求めていた映像の質感に出会うことができてとても満足。

静かで台詞も少ないので、じっくりとその映像に見入ってしまうの。その街の風景、日常の何気ない場面の切り取り方、その構図がいいのだよね。工場の煙突から上る煙と、食事の支度の時に立ちこめる湯気とに何だかとても魅せられてしまった。出来事が描写されているシーンではないところにグッとくるものがあるっていうのが好きだなぁ。何度となく映し出される線路の存在も何かを暗示しているかのようで。物語の主人公をあえて遠くから見つめる寒々しい大地を映し出したロングショットが素晴らしくて。

文革後を舞台にした家族の物語というと、 『孔雀 我が家の風景』の記憶が新しいのだけど、こちらはもっとシンプルな構成かな。それでいて、通じるものがある家族模様や日々の閉塞感。兄弟それぞれの息の詰まる思いにやるせなさを覚える。田舎にやってきた謎めいた孤独な少女スーピンに彼らが惹かれていくのもよくわかるな。初めは兄が主人公なのかと思ったけれど、11歳の弟の思いが次第に胸に迫るものとなる。 なるほど、リー・チーシアン監督は1962年生まれで、自身の記憶がそのまま小学生のファントウの立場に重なるということらしい。それは監督の30年前の記憶でもあるから、リアルな質感を感じさせるのだろうか。そして、現在の足早に発展する現在の中国を知っているからこそ、この過ぎ去りし日の物寂しい静謐な空気に魅了されたのかもしれない。

監督自身でもあるファントウは、絵が得意で1人で黙々と描いていた。そんな監督は、美術科を出て、映画の美術の仕事もしてきた、美術の人なのだね。絵を学んだことが空間創造力を培ったのじゃないかということ。でも、本作のロングショットはそういう構図的な狙いからじゃなくて、ドラマの主人公への客観性を表現したものだそう。主観的にならないという意図によって、こんなにも味わいのあるロングショットをきめてくれるなんて。撮影監督ワン・ユーの名前にも今一度注目。

がんばれ、アートな第6世代!ロウ・イエ作品も控えているし。
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by CaeRu_noix | 2008-07-14 23:27 | CINEMAレヴュー | Trackback(4) | Comments(4)
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Commented by sabunori at 2008-07-27 23:23
かえるさん、こんばんは★
この作品確かに地味〜でしたね。
公開されたことすらほとんどの人は知らないかも。(笑)
寒々とした冬しか季節がないような町。
寒空に青(ファントウの上着の青、ドラム缶の青・・・)が美しく印象的でした。
ただ私としては邦題がちょっとセンチメンタル過ぎるかなぁ・・・。
Commented by CaeRu_noix at 2008-07-27 23:36
sabunori さん♪
じみじみでしたよねー。
同じような淡々とした中国映画でも、国際映画祭で賞をとったジャ・ジャンクー作品なかは大盛況だったというのに。
中華圏の映画もアイドル俳優が出ているものやアクションものは集客力ありますが、これはホント、知る人ぞ知るって感じだったかも。
でも、私にとってはスクリーンで観てよかったなーと思える秀作でありました。
映像が素晴らしかったですよね。そう、寒々しさが美しいのです。
邦題はちょっと飾り過ぎですよね。こういうのに「。」はやめれーって思います。
Commented by 狗山椀太郎 at 2008-12-23 22:42 x
こんばんは。
なるほど、あの次男坊は監督さん自身がモデルだったのですね。そういえば『トウキョウソナタ』の次男も芸術に目覚めていましたし、先頃見たトリュフォーの『大人は判ってくれない』の主人公についても別のブロガーさんから指摘がありました。映画制作に携わる人は子供時代に何かしらの契機を持っているのかも知れませんね。
寒々しくて、ホコリっぽくて、どうしようもない情景なのになぜか味わいを感じてしまう。こういう地味系の中国映画は私も好きです。
Commented by CaeRu_noix at 2008-12-24 09:33
狗山椀太郎 さん♪
年代的にも一致するのですが、二男くんが監督の分身だったのですよね。
どこかのインタビュー記事かなんかでちらりと読みました。
それゆえに、二男坊の目線で描写されているという感じも色濃かったですよね。

トウキョウソナタの二男坊は後の映画作家の誰かがモデルなんですか?
じゃなくて二男つながり?
脚本家あがりの監督、俳優から転身した監督、撮影監督あがり、といろいろいますけど、美術の素養がある人が映像を手がけてくれるのって、私としてはとても魅力的なのです。
「初恋の想い出」の監督も美術畑出身ですもんね。
私も小さい頃は絵を描くのが好きだったけど、才能は見出せませんでした・・・。

私も中国映画は、今はこの手のタイプが一番好きです。
第六世代!
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