かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『水の中のつぼみ』 Naissance des pieuvres
2008年 07月 18日 |
ぬめり、どろりとした感触。

親友アンヌが出場するシンクロナイズド・スイミングの競技会を見学に来た15歳のマリーは、ジュニア・チームのキャプテンとして華麗な演技を披露するフロリアーヌの美しさに惹かれ・・・。



水の中のつぼみ。なんて美しいタイトルなんだろう。若さは瑞々しいけれど、大人への階段を上る途中の思春期の少女たちの青さは、不安定な痛々しさを持ち、青さゆえのエロティシズムを感じさせる。原題は、「蛸の誕生」の意。「蛸」には頑固者、厄介者という意味もあるという。女という生き物はこんなふうに生まれていくものなのかもしれない。観客席から眺めるシンクロナイズド・スイミングの演技はとても華麗なものだけど、水の中では選手たちは必死で脚を動かしているんだよね。なるほど、その様はタコの足みたいでもあるなぁ。美しく神聖な競技の水上の笑顔とは裏腹の水面下の死闘はグロテスクでさえある。

シンクロのシーンが思ったよりも少なかったのは残念だったな。邦題から勝手に大いに期待をした、水に関係した詩的に幻想的に美しい映像というのもそんなにはなかったし。むしろ、その期待を大いに裏切ってくれた水使いが見事なのかもしれない。仲良しマリーとアンヌが、互いの頬っぺたをぶつけて、口にふくんだ水を吐き出す遊びは、見ていて気持ちがいいとはいえないんだけど、彼女たちの無邪気さと女子特有の親密さが感じられる象徴的なシーンだったな。

この監督は1980年生まれで、思春期の思いというものがそんなに遠い日の記憶ではないのだろうし、その世代を親目線で見つめるにはまだ早いからか、彼女たちの描写には憧憬の思いはほとんど見えなくて、同性ならではの辛辣な残酷さを感じるばかり。それゆえに、歯がゆくて居心地の悪さを覚えてしまうのだけど、監督の視点の意地悪さこそが、このドラマの面白みなのかもしれない。自分がアンヌのような体型だったら、絶対にシンクロなんてやらないけどな。あえて、アンヌというキャラクターを登場させて、初っ端からロッカールームで素っ裸にさせるっていうのは相当に意地悪だと思ったよ。さすが、FEMIS出身?

やせっぽちの主人公が大人びたグラマラスな美しい同性に恋心のようなものを抱くというドラマだけじゃなくて、複雑な四角関係が描かれていたので、そこらじゅうに生まれる負の感情、アンバランスな関係性がとても興味深かったな。レズビーな思いにはピンポイントには共感できなくても、彼女たちの思春期特有の不安定な焦燥感には身に覚えがあるものだったしね。同性愛というものとは関係なく、少女の友情は時に、独特の親密さをもつものだったりするよね。とても複雑な感情で、憧れの思いは嫉妬心と紙一重だったり。ストーリーそのものは虚構ならではの大胆さがあったけれど、そこに見え隠れする感情の数々はリアリティにあふれていて、好きという言葉は使えないものの、当初の期待とはやや違うタイプの作品だったものの、フランス映画ならではの面白さを味わえたかな。
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by CaeRu_noix | 2008-07-18 07:10 | CINEMAレヴュー | Trackback(7) | Comments(8)
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Commented by 狗山椀太郎 at 2008-07-20 23:39 x
こんばんは。
さすがフランス映画好きのかえるさん、ご覧になっていましたか。私は別の好奇心というか甘美な女の園みたいな雰囲気を勝手に期待して見に行ったのですが、まあそんなに世間は甘くないということで(爆)。とはいえ主人公に感情移入しながら見ていたところもあったりします。
一見可憐な少女たちの内面に暗く潜んだ部分、ネガティブな感情発露の描写は、若くてしかも同性の監督さんならではの感性・観察眼でしょうね。確かにアンヌのキャラ設定にはかなり引きましたが、若さゆえの残酷さみたいな部分はかつての自分にもあっただろうし、そのあたりをしっかり描く誠実さと映像作品ならではの美しさを両立させるのは難しいかも知れません。あと何ヶ所か「これは!」と思えるシーンがあったら文句なしに満足できたような気がします。
Commented by CaeRu_noix at 2008-07-22 21:21
狗山椀太郎 さん♪
これはセザール賞でいくつかノミネートされていたので、私には当然ミルミル印でしたー。
それよか、普段そんなに欧米の作品をご覧にならない椀太郎 さんがしっかりご覧になったのでちょっと驚きました。
でも、そういえば、『中国の植物学者の娘たち』もご覧になっていたわけだし、決して意外ではないってことですね。
そうそう、イメージしていたものとは若干違いました。私はもっと、プールを舞台にドラマを展開してほしかったんですよね。それが、肝心の場面は、部屋の中やら、パーティ会場やらだったりで、ビジュアル的に寂しかったです。
そして、椀太郎 さんご期待の甘美さっていうのもほとんどなかったって感じですよね。まぁ、青いつぼみちゃんですからね。
男性監督だったら、もっと視覚的にエロティックな描写をするのでしょうけど、そんなに甘くはないぜっていう女性監督らしいドラマとなっていましたね。
思春期の女の子たちの心情はすごくリアルだったと思います。
面白かったけど、やや残念さは残りますよね。
Commented by mchouette at 2008-07-23 09:04
かえるさん、おはよう。
この映画、思春期の感覚を見事に映像化していて、この監督の感性は評価物。ラストは涙があふれたわ。
この映画の感覚って女性にしかわからないものではないかなって思う。
TBもってきました。
Commented by CaeRu_noix at 2008-07-24 00:34
シュエットさん♪
またまたありがとうございます。
そうなんです。思春期の複雑な心情がリアルに描かれていました。
とても鋭く繊細な感性ですよね。それでいて、結構理性的な感じがします。主人公の少女たちに同化はしていなくて、冷静に見つめているような感じもしました。
ヴァージン・スーサイズなんかはモロ主人公=作り手でしたけどね。
ホント、この微妙さは女にしか実感できないものかもしれませんね。
エロエロ系を期待してか、男性客も結構いましたけど、たぶん彼女たちの気持ちをわかった人は少ないんじゃないかなぁって。
Commented by mezzotint at 2008-09-14 10:19 x
かえるさん
おはようございます。コメント・TBありがとうございました。
昨晩、駅ビルフランス映画祭でこの作品を鑑賞してきました。
確かに男性客はエロっぽさを期待して観にきた方もあったかも。
タイトルで想像した映像美はほとんどなく、少女たちの憧れや
性的な欲望がリアルに描写されているので、あれ~って感じでした。
シンクロの美しさも水中から見ると、あんな風だし。アンヌのような
無骨な少女が選ばれてシンクロやっているという設定もギャップが
あって面白いし・・・・。不思議な現実を見たって感じでしょうか?
自分があの年齢の時期、どうだったのか?と思い出すきっかけにも
なりました(笑)この年代は好奇心がグルグル巡っていますからね。
監督自身もきっとそうだったのでしょうね。ところで、このフランス映画祭
、かなりの反響のようで。昨晩も多くの方で賑わっていました。
100人収容できるスペースで、料金は1000円なのでお得です。
RCSの会員は800円なので、私にとってはラッキー!
後2本くらい観に行こうかなと思っています。
Commented by CaeRu_noix at 2008-09-15 09:38
mezzotint さん♪
こちらこそありがとうございます。
駅ビルフランス映画祭、魅力的なラインナップですよねー。うらやましい。
こちらも今、いくつかの映画祭・特集上映が重なっていて、仏映画の名作・旧作が充実している今日この頃なのですが、そういうクラシックもの尽くしとはまた違って、その駅ビルのやつは実に私好みな感じなのでした。
やはりそちらも、アートなフランス映画ファンとはちょっと違う層の何かを期待していると思われる男性客の層が見られましたかー。配給されるフランス映画が一握りしかない中、他のセザール賞ものを差し置いて、本作の配給が素早く決まったのって、結局、そういうのに淡い期待を抱いて見に来る男性客を当て込んでのことなんだろうなぁと思う次第。(というわりには、すいていた気もしますが・・)
アンヌの使い方は衝撃的なほどに本作のポイントになっていた感じですよね。彼女に痛ましさを感じちゃう自分もゴーマンかなと思ったりしつつ・・・
15歳の頃ってホントに繊細で複雑に難しい年齢だったと思います。自分は同性へこういう感じで強く惹かれたことはなかったけれど。
では、引き続き、映画祭を楽しんでくださーい。私も今日もフランス映画っす。
Commented by utage at 2008-09-30 23:39 x
はじめましてうたげっていいます今日京都みなみ会館で見てきました
サントラをさきにしって聞いてみてよかったので映画も見たいと思ってみました映画はいろいろ見てきましたが僕の中ではかなり新しい演技の映画を見たという感じでした初めて映画との共感を得たような気がします。日本語字幕版ぜひ出てほしいですDVDでw
Commented by CaeRu_noix at 2008-10-01 23:57
utageさん♪
はじめまして。コメントありがとうございます。
うたげさんは男性ですよね。だけど、この思春期の少女たちの物語に確かな共感をおぼえたのですね。このドラマは男性にはわからない世界を描いているんじゃないかなとも思ったりしたんですが、そんなにしっくりと気に入られたとは私も嬉しいです。映画とのステキな出会い! DVDはきっとそのうち出ると思いますよー。よりエロティックな邦題がつけられる可能性も大。w
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