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かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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Les Chansons d'amour 『愛のうた、パリ』 Love Songs
2008年 07月 20日 |
小粋な歌で彩られた可笑しくてせつない愛の物語に胸はときめき。
ジャック・ドゥミの系譜にあるゴキゲン・ミュージカルに胸は高鳴る。
ヌーヴェルヴァーグな幸福感に包まれて、キューン。



d0029596_13271114.jpg去年のカンヌ映画祭のコンペに出品されたフランス映画が東京国際レズビアン&ゲイ映画祭に登場するなんて意外な喜び。日仏には行けなかったんだもの。本作は、監督とキャストで大いに注目だったのだけど、それもミュージカルだなんて必見でしょう。でも、初めはコレがミュージカルでもあることをすっかり忘れていて、夜道を1人歩くサニエの目の前に、突然ルイ・ガレルが現れるやいなや歌い始めた時には、そうだ、ミュージカルだったんだーって歓喜しちゃった。そうそう、こんな風に街を歩きながら、突然始まるミュージカルが大好きなんだよー。ジャック・ドゥミの世界の始まりに心は躍り。フランス語の柔らかな響き、シャンソンの囁きの歌声、恋人たちの甘い表情、若者たちの軽快な闊歩に、心はとろけとろけてトレビアーン。

『ドリーマーズ』に始まり、日本で一般公開された作品の中のルイ・ガレルはいつも、シリアスに鬱な表情をした青年だったから、クリストフ・オノレ監督の前作で、コミカルな役どころを軽やかに演ずる姿が新鮮だった。そして、今回も歌ったり、言葉当てジェスチャークイズをしたり、ユーモラスにハジケてくれた。ルイ・ガレルって、そんなに表情が豊かでもないと思うのだけど、彫刻顔のイメージを裏切るという感じの愛嬌のある芸達者な俳優なんだよね。前作の時から言われていたように、ルイ・ガレルは、クリストフ・オノレ作品の中で、トリュフォー作品におけるアントワーヌ・ドワネルたりえていることを実感。軽率な行動さえも憎めないカワイイ奴。

ドワネルな主人公イスマイルの彼女ジュリー役は、キュートなリュディヴィーヌ・サニエ。『8人の女たち』の中でも聴いたちょっとハスキーなその歌声。歩き、拗ねて、歌い、キスするその表情としぐさがとびっきりチャーミング。それで、一組の男と女では終わらない、一筋縄ではいかない三人模様を見せてくれる現代のヌーヴェルヴァーグ。1人の男と2人の女が時に仲睦まじく、複雑な方向に嫉妬し合ったり。妙な関係なんだけど、呆れるよりは楽しさと微笑ましさを覚えてしまう。三角関係に悩む恋人たちをフワリと飛び越えるの。ベッドで並んで読書する3人がとってもラブリー。快活なクロティルド・エスムも魅力的。

なのに、そんな関係性を面白がるのはつかの間のことで、まさかまさかのショックな展開。失われてよりきらめく思い出。彼女の不在が彼女の家族とイスマイルの心に影を落とすのだった。普段は言葉にしないような胸の奥の思いが、ミュージカルという方法によって、その感情にふさわしい哀切のメロディとともに、素直な言葉としてせつなく響いてくるの。歌われる思いはこんなにも悲痛な叫びでありながら、人の行動はやけに滑稽だったりして。傷をなめるように、軽かったり危うかったり奇妙だったりする関係が模索・交錯されながら、孤独な魂がこの街を浮遊しているの。Les chansons d'amour/愛のうたにのってね。

哀しみに沈んだ空気は、ブルターニュ人弟の登場によって、時にまた明るい色を帯びる。それにしても、イスマエルったら、レズビーのアリスを交えてトライアングルな関係にチャレンジし、今度はゲイのエルワンを受け入れるとは。そういえば、そういうテーマの映画祭だったんだ。ゲイムービーはあれこれ観てきたけれど、男2人が歌いながら抱き合う姿はなかなかないよね。さすがのフランス映画。その混迷の突き抜け具合がむしろ楽しくなってしまうのだった。愛のかたちはイロイロなのだ。歌の味わいが感傷的にさせてくれたのかもしれない。妙で滑稽でも、迷い彷徨える人々の姿が愛おしく心に焼きつくの。

キュンキュンです。1970年生まれのクリストフ・オノレは、カイエ・デュ・シネマに批評を寄せていたというシネフィルな監督ゆえに、映画への愛がめいっぱい感じられるの。ヌーヴェルバーグへ作品へのオマージュも当然。去年観た前作の 『パリの中で』 がすごーく気に入っていたのだけど、今作もまたすごーく気に入った。クリストフ・オノレは、屈指のお気に入り監督に入れちゃおうー。

パリの街の撮り方があまりにもステキなことにも感銘。舞台になっていたのはパリの10区あたりらしい。観光名所でも何でもないし、典型的なパリならではの情緒が感じられるような場所じゃない、移民の人の姿も多かったりする小綺麗とはいえない地帯。それなのに、夜の街に浮かぶライトの明かりがすごくいい感じなんだよね。歩く登場人物を映す躍動するカメラがとらえる街の通りの一つ一つの構図が素晴らしくよいの。そう、歩く姿を常に映すところがとても好き。そんな通りに水兵さんの姿が見えたのもドゥミ作品っぽくて嬉しくなっちゃった。

弟くんの部屋に『誰も知らない』のポスターが貼ってあったのも嬉しかったな。
サニエが映画を観に行った「Cinema le Brady l'Albatros」はカルト寄りな映画館。
LIVEのステージで歌っていたのは、この音楽全般を手掛けているアレックス・ボーパン自身だったのね。
本作の歌曲は、セザール賞で最優秀音楽賞受賞。

AlloCine.com
Soundtrack /Last.fm

-キャスト-
イスマエル…ルイ・ガレル
ジュリー…リュディヴィーヌ・サニエ
アリス…クロティルド・エスム
ジュリーの姉ジャンヌ…キアラ・マストロヤンニ
エルワン…グレゴリー・ルプリンス=リング
ジュリーの妹ジャスミン…アリス・ビュタール
ジュリーのママ…ブリジット・ルアン
ジュリーのパパ…ジャン・マリー・ウィンリング
グエンダル…ヤニック・レニエ


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by CaeRu_noix | 2008-07-20 13:12 | CINEMAレヴュー | Trackback(3) | Comments(8)
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タイトル : 『愛のうた、パリ』
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Commented by シャーロット at 2008-07-20 22:11 x
おお、きゅんきゅんな記事。お待ちしておりました。
その節はお疲れ様でした。
やはりかえるさんは監督さんありきなんですね…。すみません、あまりにも私はボケてました;。かえるさんなら何が何でも見る作品だという事が改めてわかりましたです;
そう、ルイくんてば芸達者でしたねー。なにやらパントマイム?なゲームをやってる姿も、歌を歌う姿も、涙にくれる姿も、もう彫刻でもペットにでもして;マジそばに置きたいお人だ。
監督さんもシネフィルな方なのですねっ。なるほど・・・ドゥミ風味。。。
音楽もよかったし、カメラワークもとってもツボでした。水兵さんは、気がついてなかったかもー;;
お話もまさかの展開で。でもそれも自然と歌で悲しい気持ちを歌われると、こちらも自然にそれらを受け入れられる感じでなんら違和感なくキュンとしました。
この映画祭、これからも通いそうな予感?!やはり夏はビールとそれに合うつまみ系がいいですわ;
それと・・・業務連絡。例の番組は本日23時30分から放送なのでした。早速ボタンを押しておきますw・・・それからダンサーの件ですが;先ほど名前と顔が一致しますた;くるくる回る人ですねっw

Commented by umikarahajimaru at 2008-07-20 23:45 x
こんばんは。
相変わらず熱心で頭が下がります。私は、クリストフ・オノレは全然買っていませんでしたが、まあ、一応、押さえとくっていう感じで……。
かえるさんは、今回の映画祭はこれ1本きりだったのでしょうか。
私は『ヒストリー・オブ・~』も観たかったんですが、朝イチとラスト1本の両方を観るのはつらいので、『愛のうた、パリ』の方を選びました。明日また観ますけど。
(では、次週末に渋谷東急で、お会いしましょう(笑))
Commented by D at 2008-07-21 16:41 x
はじめましてー
映画のタイトルは去年から知ってたんですが
たまたまYoutubeで見つけてみちゃった程度なんですが
はまってます
サントラ普通にmp3Playerに入れて歌いながら仕事に行ってます
映画本編はなんかいか突然の展開にくるくる翻弄されましたがよかったです
今年で今のところベスト5に入ります
Commented by nouilles-sautees at 2008-07-22 18:33
なるほどそういう映画祭に出品だったのですか。
そうなるとちょっとネタがバレバレですね・・・。

フランスでの公開からかなり日が経ちましたが、いまだに時々サントラ聞いてます。
Commented by CaeRu_noix at 2008-07-22 21:11
シャーロット さん♪
きゅんきゅんですよ。
世間一般的にはミョーな映画であろうとも。
そうですね。私の必見作となるのは、監督の名前によるところが大きいです。
とりわけ、こういう一派?の作品は逃せませぬ。
ルイくんのジェスチャーゲーム、すばらしかったですよね。あと、ふきんか何かで作った人形づかいなシーンも可愛かった。
『~革命』でじいさんガレルがコインで手品をやったシーンを思い出したのですが、芸達者なのは血筋なのかなぁって。
『ドリーマーズ』や『ママン』の役を思うとすごいギャップ。
で、思い切りドゥミドゥミですよ。『シェルブール』仕立てなんだけど、私は『ロシュフォール』を思い出しましたわ。
で、通りで水兵さんが追い越して行くシーンがあったのですよ。そんな格好をした人はそこらにいないはずなので、嬉しくなりました。
歌詞とメロディの哀切と、主人公の行動の軽さのギャップがまたおもしろかったと私は思ったんですけどね。
あらすじ的にはずいぶん妙なお話だけど、ミュージカル仕立てだとそんなに強引な気もしなかったのでした。
ホント、音楽はとにかくステキでググっと心に染みましたよねー。
業務連絡メルシーです。わくわく。
Commented by CaeRu_noix at 2008-07-22 21:27
umikarahajimaru さん♪
熱心です。(笑) 
クリストフ・オノレの前作を日仏で観て、とっても気に入りましたのですよ。
ママンも映像の質感がすごく好きだったし。
とりあえず、おさえていただき嬉しいです。w
映画祭では数本観ましたよー。後ほどまとめ記事をあげます。
当初は私はバルト9だけのつもりだったんですよ。
が、映写トラブルで半券でまた観られるチャンスができたことと、本作が超気に入ったことがありまして、土曜の晩のスパイラルにも足を運んだのでした。
週末は渋谷東急でー! 私は昨日も行きましたよー。
Commented by CaeRu_noix at 2008-07-22 21:38
D さん♪
はじめまして。ようこそー。
この映画を気に入った方にご訪問コメントいただけるとは非常に嬉しいです♪
偶然に見つけたっていうのがまた素晴らしい。
いやー、ハマりますよね。
私は中毒症状おきましたよ。
バカみたいにYoutubeリプレイ繰り返し。
サントラ聴きながら、歌いながら仕事に行くってすんごくイイですね。
私も歌いたいので、フランス語を学ばなくちゃと思いました。
とりあえずハミングでー。
ストーリー展開にはちょっと驚きましたよね。
面喰いつつも、斬新なところがよかったなぁと。
中毒症状度ではかったら、私も5本の指に入ります。
Commented by CaeRu_noix at 2008-07-23 08:22
nouilles-sautees さん♪
映画祭名は明記しませんでしたが、そうこういう映画祭だったのですー。
そんな題材のおかげで、映画祭上映になったのは嬉しい限りです。
こういうのは日本では一般公開にはなりませんから・・・。
でも、そうなんですよ。映画祭のサイトや案内の映画の紹介文でネタはバレバレなのです。
と事前にわかってはいても、そうきたかーと意外性にあふれた内容でした。
サントラ私もほしいです。音楽は本当にいいですよねー。
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