かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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ダグラス・サーク!!
2008年 07月 29日 |
「第30回ぴあフィルムフェスティバル」の「ダグラス・サーク特集」鑑賞メモ



ダグラス・サーク-Douglas Sirk- という名前を認識したのは、トッド・ヘインズの『エデンより彼方に』(Far From Heaven)についての記事を読んだ時だったと思う。その映画は、50年代のメロドラマ、ダグラス・サーク作品を再現したものであるということだった。フランソワ・オゾンの『8人の女たち』や『エンジェル』も、黄金期のハリウッド映画にオマージュが捧げられていて、関連記事でサークの名を目にしたこともあったっけ。『エデンより彼方に』の中で、ジュリアン・ムーアが泣き崩れた時に、その悲痛な感情を表すようにジャジャーンと響いた大仰な音づかいが印象的だった。同時代でそれを観るのとは違う種の感慨、古めかしさに懐かしさを覚えるような、独特の空気が漂う作りこまれた甘くもほろ苦いドラマチックな世界に惹かれた。

先月初鑑賞をしたライナー・ヴェルナー・ファスビンダー作品の『不安と魂』(74)も、ヘインズの『エデンより~』と同様に、サークの『天はすべて許したまう』が基になっているということだった。(ジョン・ウォーターズの『ポリエステル』もこれが元ネタなのだね。)多くの映画作家に支持される夭折のファスビンダー。そして、そのファスビンダー自身を含めて、オゾンやヘインズやらに影響を与えたダグラス・サークその人の映画にも興味をもったのは必然。つい最近の「レズビアン&ゲイ映画祭」の記事でも、オゾンやヘインズの名前を出したばかりだったのだけど、そんなタイミングで鑑賞の好機に恵まれたのは何より。

本当はね、いわゆるクラシック映画の作風はそれほどに自分の好みではないの。演出にしろカメラや音楽にしろ、スタイル・技法的に、いわゆる名作のタイプより、私はそれ以降のもうちょっと軽やかな感触のものの方が好きなもので。50年代頃のハリウッド作品は、面白いのだけど、カッチリクッキリキメキメで、劇的にドラマチック過ぎるかなぁという印象。好み系ではないので、ちょろっと観ればそれでいいかなと思ったのだけど、最初で最後のチャンスと思われる、サーク作品をまとめて劇場鑑賞できる機会を無下にはできず、結局7本鑑賞。見ごたえ満点の濃厚なサーク体験でありました。

メロドラマの巨匠という頭があったのだけど、思った以上にバラエティに富んだ作品展開がされていて、毎回多様な面白さと感動が訪れた。主だった筋書きは定番のようでいて、隅々まで緻密であり、中味が詰まっていると思える豊潤な味わいがあった。お話はメロドラマちっくであっても、しっとり落ち着いた上質な描写の積み重ねによって、芸術性が感じられる。朗らかな笑いを生むシーンがあったりと芸の細かさに感銘。ちゃんとしているなぁー、上手いなぁと思うことしきり。あらすじだけを切り取ったら、幾分陳腐に感じられるようなシロモノなのに、実に説得力をもって心に迫ってくるのだよね。

世間体だとか。人と人との間に生まれる関係性やこの社会と人生のドラマは、時代が変わっても普遍的なものなんだなという当たり前のことを実感。こんなにも本質をついた味わい深い映画が半世紀も前にとっくに作られていたのだなぁ。廉価版DVDもない時代に、リアルタイムでこういうドラマを観た人たちはどんなにか心が熱いもので満たされたことでしょう。そんな思いを追体験させられたような気がする。そして、21世紀の今観ても、古さを感じさせないとも言えるし、古めかしさが明らかだからこその熟成された味わいが広がるのだった。

というわけで、満喫した7本。風共も観たかった。

『思ひ出の曲』 Das Hofkonzert 1936
出演:マルタ・エッゲルト、ヨハネス・ヘースタース、オットー・トレスラー
音楽:エトムント・ニック
軽いタッチのオペレッタ・コメディ。
セレニスムス侯が催す音楽会に呼ぶため、ミュンヘンの若く美しい歌姫ベロッティの許へ使者が立った。それと入れちがいに一台の旅行馬車が国境へ。警備をしていた大臣の息子であるワルターは、クリスティネという娘と出会う。

『心のともしび』 Magnificent Obsession 1953
出演:ジェーン・ワイマン、ロック・ハドソン、アグネス・ムーアヘッド
撮影:ラッセル・メティ、音楽:フランク・スキナー
本作の大ヒットによってメロドラマ作家としてのサークの名声が確立。
金持の道楽息子ボブ・メリック(ロック・ハドソン)は、ある日湖で乗っていた競争艇を転覆させ、近くのフィリップス博士邸から借りてきた救急器で一命をとりとめた。やがて、ボブは博士の妻のヘレン(ジェイン・ワイマン)に出逢う。

『天が許し給うすべて』/天はすべてを許し給う All That Heaven Allows 1955
出演:ジェーン・ワイマン、ロック・ハドソン、アグネス・ムーアヘッド
タイトルは、天が許してくれるのはこれくらいのことでしかない、という意味。
未亡人ケリー・スコット(ジェーン・ワイマン)は、二人の子供たちと共にニュー・イングランドの小さな街ストニングハムに暮らしていた。ケリーは、彼女の家の庭の手入れをする年下の園芸家、ロン・キルビィ(ロック・ハドソン)と恋に落ちる。しかしふたりの年の差、階層の違いは小さな街で噂の種となってしまう。

『いつも明日がある』 There's Always Tomorrow 1955
出演:バーバラ・スタンウィック、フレッド・マクマレイ、ジョーン・ベネット
おもちゃ会社の社長として成功をおさめる主人公がかつて思いを寄せた女性と再会。

『翼に賭ける命』 The Tarnished Angels 1957年
出演:ロック・ハドソン、ロバート・スタック、ドロシー・マローン
文豪フォークナーの小説「パイロン」(飛行標塔)が原作。
1932年、新聞記者のバーク(ロック・ハドソン)は、ニューオルリンズで開かれている曲芸飛行競技会へ赴き、パイロットのロジャー(ロバート・スタック)に出会う。賞金を稼いでの不安定な生活を送るロジャーたちに同情したバークは自分の部屋を彼らに提供し、その夜、ロジャーの妻ラバーンの話をきく。

『愛する時と死する時』 A Time to Love and a Time to Die 1958年
出演:ジョン・ギャヴィン、リロ(=リーゼロッテ)・プルファー、エーリヒ・マリア・レマルク
出演もしているレマルクの同名小説が原作。ドイツ軍の視点から描かれた、異色のハリウッド映画。
第2次世界大戦末期のベルリン。ドイツ軍のロシア戦線での敗退が始まっていた頃、アーンスト・グレーバー(ジョン・ギャビン)が3週間の休暇をもらって故郷へ帰るが街は廃墟と化し、両親は行方不明だった。母の主治医だったクルーゼ医師を訪ねると、幼馴染である娘のエリザベス(リゼロッテ・パルヴァー)がいた。

『悲しみは空の彼方に』 Imitation of Life 1958
出演:ラナ・ターナー、ジョン・ギャヴィン、サンドラ・ディー、スーザン・コーナー、ファニタ・ムーア
最後の長編。白人と黒人の二組の母子の人生が描かれる。
1947年ー美貌の未亡人ローラ(ララナ・ターナー)は1人娘のスージーと訪れていたコニー・アイランドで、黒人の女アニー(ファンタ・ムーア)と知り合う。白人の夫に捨てられ、8歳の娘サラ・ジェーンを連れて職を探すアニーを、ローラは家に住まわせることにした。やがてローラは女優として成功をする。
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by CaeRu_noix | 2008-07-29 23:54 | CINEMAレヴュー | Trackback(1) | Comments(6)
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Tracked from 海から始まる!? at 2008-08-03 07:14
タイトル : 私のダグラス・サーク体験!
 ヘンな人たちが騒いでいるので、気持ち悪いなあと思い、今回は1本も観なくてもいいかとも思ったのですが、結局ついフラフラッと3本ばかり観てしまいたしたダグラス・サーク。... more
Commented by manimani at 2008-07-30 22:32 x
すごいですね7本。
デトルフ・ジールク時代の作品もあるんですね。
「「気狂いピエロ」に出ていたのは誰だっけ?ダグラス・サーク?いや、違う、オットー・・ああ違う、えっと、ああ、サミュエル・フラーだ」というのがいつものワタシの思考経路です。
関係ないコメントですみません。ワタシも観たかったです。
Commented by CaeRu_noix at 2008-07-31 00:43
manimani さん♪
別段ファンでもないくせに、7本というのは確かにすごいとも言えますね?
去年のアルトマンもそうだったんですが、これをフィルムで観られる最後のチャンスという売り言葉に弱い貧乏性なのでした。(笑)
全作ご覧になったという方もいらっしゃいます。
パスポートは速攻で完売したみたいですし、往年の支持者?がたくさんいるのですね。
そうそう、デトレフ・ジーレク名義の作品もありという豪華さでした。
1日までやってますよー。フィルムは古さを感じさせないきれいなものが多かったですし。
Commented by kusukusu at 2008-07-31 01:41 x
いや、みんな、「サーク、すごい」みたいな言葉しか出て来ないのに、「クラシック映画の作風はそれほどに自分の好みではないの」って言いながら、でも7本、見ましたっていう、かえるさんの余裕ぶりが実は一番すごいのでは(笑)。
「往年の支持者」と言っても今回のサーク特集に通っている人達も、アテネフランセの特集上映とか、テレビやビデオで見てきた層で、リアルタイムにロードショーでサークを見ていた人は少ないのでは・・。
以前に『風と共に散る』をテレビで放送したのを録画したのを親と一緒に見ていたら、母が「ああ、これ、昔、見た」と言うのを聞いて、そうだよなあ、普通に映画館でやっていたんだよなあと思ったんですが、そういう風にごく普通に見ていた層もいるはずなんだけど。でも母は別にシネフィルじゃないので、サークなんて監督名は覚えてないし(ロック・ハドソンはもちろん覚えているけど・笑)。あと『心の旅路』をやっぱり母と一緒に見た時、これじゃなくて心のなんとかってタイトルでメロドラマがあったって話を母がして、うーん、なんだろうと思ったことがあるんですが、今回、『心のともしび』を見て、これのことだったのかーとようやく分かりました。
Commented by CaeRu_noix at 2008-08-01 01:05
kusukusu さん♪
わはは。余裕というか何というか。
観るべき映画とは思うので、足を運んだわけですし、大いに満足しましたよ。でもホント、個人的には至福映画っていうタイプじゃないんですよね。心に沁みわたる幸福感でいったら、去年のアルトマンの『ナッシュビル』の方が上でした。こないだ観たフェリーニの『女の都』の方が興奮しましたし、『愛のうた、パリ』の方が耽溺映画といえるのです。いやー、すみません。

そうですね。確かにリアルタイムで観た人はほとんどいないでしょうね。そんなに高齢者ばかりじゃなかったし。w 80年代以降、再評価された時に注目した人が多いのでしょうか。
前はTVでも放映されていたんですね。素晴しい。私が物心ついた頃にはそういうのなかったような・・。地方だから?『風と共に去りぬ』ならやってたけど。w
お母様と一緒にサークの映画をご覧になるって、とてもステキですね。
昔はTVでも映画館でも洋画のしっとりドラマが普通にかかっていたんですね。今は若者向けエンタメばかりが主流で・・
タイトルはイメージ的に似たものが多くて、どの物語がどの題だったか一致させにくいですー
『心のともしび』がわかってよかったですね。ココトモー
Commented by umikarahajimaru at 2008-08-03 07:19 x
専用パスではなくて、7本鑑賞ですか?凄いですね~。
私は、ミロシュ・フォアマンは観ても、ダグラス・サークはパスするつもりだったんですが、結局3本だけ観てしまいました。
サーク特集は、ヘンな盛り上がり方をしていて、ちょっと気持ち悪いなあと感じていたんですよね。
Commented by CaeRu_noix at 2008-08-03 21:32
umikarahajimaru さん♪
最初は3本くらい観ようかなって思っていたんですけど、徐々にチケットを買い足し、結局7本観てしまいましたー。
ヘンな盛り上がり方ってどんな盛り上がり方?
それよりも、そちらの記事の 「ヘンな人たちが騒いでいる」という表現がもっと興味深いです。(笑)
結局、サークがもてはやされるのって、ハスミンなんかが持ちあげているからなんですか?
アルトマンなんかは作品を何本か観ると、そこにある思い、哲学みたいなものが伝わってくるんですけど、サークの場合は私はそういうのが感じられないので、心の奥底からの感動っていうのはないんですよね。
うーん、うまいなぁ、すごいなぁとは思うのだけど。
そういう意味では、フォアマン作品の方がわたし的に愛すべき映画でした。
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