かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『地球でいちばん幸せな場所』 Owl and the Sparrow
2008年 08月 22日 |
ホーチミンもひかりのまち。包み込む優しさが心に染みてお気に入り印。

叔父さんの家を飛び出した10歳の少女トゥイはホーチミンの街へやってきた。



歴史に翻弄されてきたベトナムは映画の舞台になることも多いけれど、現在のベトナムの街とそこに暮らす人たちの等身大の姿を映し出したものはまだ本当に少ないよね。本作が長編劇映画のデビュー作だという70年生まれのステファン・ゴーガーは、ベトナム系アメリカ人。その地にずっと住んではいなくても、こんなふうに出身地であるベトナムに目を向けてその国で映画を撮るというのはステキなことだなって思った。そして、そんなこの作品も、いくつもの映画祭で観客賞などをとっているだけあって、とてもステキなものだった。

小さな女の子が主人公の物語ということくらいしか知らずにいたので、初めは、可哀想な子どもを使ったお涙頂戴系なのかなと思われて、やや敬遠気味だった。でも、折角の珍しいベトナム産映画なので、せっかくだから観ておきたいなぁと思った。そうしたら、イメージしていたものとは違う、自分好みのテイストにあふれたものだった。やっぱり映画は観てみなくちゃわからないよね。小さな少女だけが主役なんじゃなくて、彼女と20代の男女二人、別々の三人が主人公格で、少女の計らいによって、その男女も知り合いになるというホーチミンの出会いの物語なのだった。思い思いにホーチミンで過ごす全く境遇の異なる三者を描いているという点がポイント。そして、その三人が接点をもっていくというのが映画的。

何が好みって、ドキュメンタリータッチで、リアルな躍動感いっぱいに日常の風景を切り取っているところ。最初は慌ただしいカットとカメラワークに初心者ならではのものを感じたのだけど、次第にのめり込んでいった。やっぱりこういう映像が基本的に好きなんだなぁ。音楽も控えめながら、情感にあふれていて効果的で素晴らしい。彼らのやるせない気持ちとコントラストをなすように騒々しい街の喧噪もなんだかすごくいい。ベトナムには行ったことがないので、ホーチミンの街の様子に興味津々。昼間の活気も、夜の雰囲気もいい感じ。ウィンターボトムの『ひかりのまち』を思い出しちゃうような感触があった。その街で孤独に悩みながらも生きる人々を街の光が優しく包み込んでいるっていう感じにグッときちゃうの。

10歳のトゥイちゃんがたくましいのもとてもいいな。可哀想な部分を強調していたら興ざめなんだけど、たったひとりでお金を稼いで生きて行こうとするんだもん。それでもやっぱり、その姿には不安な気持ちにもさせられたりするから、トゥイがフライトアテンダントのランや動物園でゾウの飼育係をしている青年ハイと出会って、それぞれがごく自然に小さな女の子に親切にする姿にはとても温かな気持ちになるのだった。どこの都会でも他人にいちいち関心を寄せることは少ないけれど、たった一人でいる10歳の女の子はほおっておけないでしょう。彼らそれぞれのやるせない気持ちに共感してみたり、彼らがトゥイと一緒にいる時の優しさに嬉しくなってみたり、しっかりと心をつかんでくれる愛おしい物語であった。

終盤の展開、エンディングはちょっと出来すぎのような気もしたけど、ひかりのまちのファンタジー感にはあっていたかな。
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by CaeRu_noix | 2008-08-22 07:21 | CINEMAレヴュー | Trackback(6) | Comments(6)
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Commented by cinema_61 at 2008-08-22 21:59 x
こんばんはかえるさん。
この映画、どこでやってるの?
私、ヴェトナム映画好きで、「青いパパイアの香り」や「シクロ」「夏至」なんかを観ました!
おまけに娘が外国語大学のヴェトナム語学科に行ってて、家の中はヴェトナム製品であふれている~勿論娘も何度もヴェトナムに行っていて、何だか第二の故郷みたいなの。でも、この作者もヴェトナム系アメリカ人ということなので、フランス系ヴェトナム監督と同じなのかな?DVDになったら観ようかしら?
Commented by CaeRu_noix at 2008-08-23 00:56
cinema_61 さん♪
これはあと一週間で終わっちゃうみたいなのですが、シネマート六本木で1日2回上映していますー。賞も結構とっているだけあって、地味目ながら良作でしたし、個人的にはとっても気に入りましたよー。
「青いパパイアの香り」「シクロ」「夏至」といえば、トラン・アン・ユン監督ですね!そうそう、つい最近も、「ノルウェイの森」映画化のニュースに際して、話題にしたばかりでした。私も大好きですよー。
おおお、cinema_61さんのお嬢さんは、ヴェトナム語を専攻されているんですかー。アジアに目を向けているなんて、ステキですねぇ。(若いお嬢さんは欧米の言語に関心を向ける人の方が多いと思うから。)ベトナムは日本人にも人気ありますよね。近いからいつでも行けそうと、私は行ったことがなかったんですが、そろそろ行こうかなと思っています。w
トランアンユン監督もこの監督も民族的には同じベトナム人なんだと思うのですけど、移住後に習得したものはそれぞれに違うでしょうね。
ヴェトナムに縁のあるcinema_61さん、是非いつかご覧になってくださーい。DVD化はすぐにはしないかもしれないですが。
Commented by えい at 2008-08-28 21:44 x
こんばんは。

これは大のオススメです。
にもかかわらず、あまりにも反応が少なかったので、
かえるさんにコメントいただけたときは
ほんとうに嬉しかったです。
おっしゃるとおり、
「街と人に対するまなざしが優しい」映画でした。
ドキュメンタリー・タッチなのに情感が溢れている。
多くの方に観ていただきたい作品です。
Commented by CaeRu_noix at 2008-08-29 01:57
えいさん♪
嬉しかったとおっしゃっていただけると、私もとても嬉しいですー。

残念ながら、ベトナムの映画というのは、なかなか広くは注目されないでしょうね・・・。私は世界各国の映画を見たいと思っていて、珍しい国のものほどに興味があるのですが、一般的には、英語圏のもの、知っている俳優が出ているものだったりしないとなかなか・・・。
でも、ホント、多くの人に見てもらいたいですね。

そうなんですよ。ドキュメンタリータッチでリアルに描かれるからこそ、胸をうつものがるのですが、それがドライな感じじゃなくて、情感があって、温かいんですよね。
これは、大穴的な拾い物でした。心に染みる素敵な作品ですー。
Commented by tomozo at 2008-09-13 09:57 x
私は今年ホーチミンへ行ったばかりなので、
この映画に映る街がほんとにリアルでした〜。
私も古くは「ラマン」や「青いパパイヤの香り」が
ベトナムのイメージだったけど、
実際に行ってみると、
もっと雑多で賑やかでパワフルでした。
なのに、道に座り込んでのんびりしている(ようにみえる)、
そんなところをちゃんと捉えていましたね。

やっぱりみなさんがいわれてるように、
監督の目が優しいんでしょうね〜。
3人それぞれの思いやりも、ほんとに心が温まりました♪
Commented by CaeRu_noix at 2008-09-14 01:39
tomozo さん♪
おお、ホーチミンに今年行かれたのですねー。
それは味わい深かったことでしょうー。
そうそう、ホーチミンのこと、教えてほしいですー。
「青いパパイヤ」って、実は全部フランスで撮影していたんですよね。
なのに、東南アジアならではの湿度が感じられたから素晴らしいです。
が、そんなセット撮影ではなく、現代の街の人々の生活の息遣いが聞こえたのが本作の魅力でしたよねー。
(ラマンといえば、私はその当時、デュラス原作のこととか全然知らず、ラマンと言えばコテコテのフランス映画に違いないと思って見に行ったら、アジアが舞台だったので拍子抜けしました。愛人はてっきりフランス人の中年男性だと思いこんでいたので。無知ですみません。その後、マルグリット・デュラスにもちゃんと興味を持ちましたがー。)
東南アジアの都市の喧噪って、とってもエキサイティングですよねー。
(期待はずれだった「TOKYO!」などを思い出しつつ、)街と暮らす人々のエネルギーが感じられたのがすごくよかった。
かなりかなり泣けちゃったし、幸せな気分にもなれる素敵な映画でしたー。
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