かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
latchodrom.exblog.jp
(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
Top
『闇の子供たち』
2008年 08月 27日 |
児童じゃなくて、幼児なんだ・・・。

バンコク駐在新聞記者の南部は、幼児人身売買の取材をする。



人身売買で臓器売買、児童買春。何ともショッキングな物語。これが全くの虚構だったらいいのに・・・。だけど、残念ながら、原作はいくつもの事実をベースに描かれたものであって、私たちの生きる世界にはこんなにも惨たらしいのだということに愕然。このような痛ましいことが地球上で起こっていることを、断片的には俄かに知っていたりはするのだけど、その具体的な場面が映像で再現されるのをこの目で見るのは、やっぱりどうにもこうにもやるせない。

不遇に苦しむ可哀想な子どもというのは世界中にたくさんいるとは思うけど、こういうことばかりは仕方ないと済ませる問題じゃないよね。醜い大人のエゴと欲望のために、弱き子ども達が傷つけられ、踏みにじられてしまうなんて。未来あるその生がこんなにも蔑ろにされるなんて。力は金で、金は力で、弱き者たちは強者の犠牲になるばかりだなんて。腹立たしいばかりなのに加え、幼児が性の慰み者になるという構図はおぞまし過ぎて、本当に気持ちが悪い。

そんなわけで、ゾッとしつつ、涙しつつ、見入ってしまうへヴィーな題材のドラマだったのだけど、その演出や脚本には残念な部分もいくつかあって、観終わった時の手ごたえは、序盤に比べると薄くなってしまった感じ。キャスティングがどうもTVドラマ寄りな顔ぶれなのが気になったのに加え、その人物造形も単純にパターン化した印象だったから、せっかくのテーマなのに、思ったほどに重さと深さが感じられなかったかな。銃撃戦は浮いていた気がするし、南部の末路とその過去にはショックを受けるよりも、不自然な作り込みだと感じてしまった。

警察が踏み込むシーンなども、途中に登場した外国人客たちがみんな揃って通路で逮捕されているから笑えてしまった。こいつらは同じ時間帯にそこを利用し、ほとんど毎日通っているっていう設定なのか・・・とか。劇的なインパクトを狙い過ぎるために、リアリティが欠けたのじゃないかと感じられる場面、エピソードが時々見られた。

主人公サイドの女性がみんな感情的な生きものとして描かれているのが個人的には気になったり。福祉センタ―の所長は、あんなんでよく所長がつとまるなぁというタイプで、仲間がマフィアに殺された時に、「私を置いていかないで」っていうような嘆き方をしたのには苦笑い。宮崎あおい扮するNGOスタッフの言動と行動の青臭さにしてもね。一個人ならともかく、NGOの新米スタッフとして現場にいる若き女性が、あんなふうにむやみやたらに熱血漢を押し出さないものじゃないかなぁ。それは、ドラマには必要なキャラクター、肝心なテーマを浮き彫りにさせるためのふるまいなんだろうなとは思うけど、やや極端なものに見えてしまった。この蒸し暑い街で、危険な目にあって怪我をした後の宮崎あおいクローズアップが、いかにもメイクしたばかりですって感じで完璧に肌の肌理が整っていたことなんかもいちいち気にしてはいけないのだろうね。

せっかくの問題作なのに、ど真ん中にガツンとはこなかったのが残念。だけど、こういった題材に取り組んだことは大いに評価したい意欲作。キャスティングが人気者アイドル系寄りなのが、個人的には不満だったのだけど、こういう顔ぶれのキャストであることが、世の人々の本作への関心を引くキッカケになるのだもんね。こういう現実に対して、問題意識をもってくれる人が増えることに意義があるんだよね。映画の主人公たち以上に、自分が何もできないこと、何も解決できないことに愕然としながらも、これは間違っている、どうにかしたいと思う人が少しでも増えるなら嬉しい限り。
[PR]
by CaeRu_noix | 2008-08-27 10:24 | CINEMAレヴュー | Comments(11)
Commented by アフリカ象 at 2008-08-27 23:32 x
問題意識を持つというのは、事実に対して行なうことなのですが、この映画はあくまでフィクションであるということに注意が必要です。専門家によると、タイで日本人が心臓移植を受けたという事実はないそうです。この映画のストーリーの核心の部分がフィクションなのです。
Commented by CaeRu_noix at 2008-08-28 00:46
アフリカ象 さん♪
日本人がタイで心臓移植手術を受けるという件はフィクションだそうですね。鑑賞中もそのこと自体が事実だろうとは思えなかったですし。

で、ですね。私個人的には、"問題意識を持つ"ということ自体は、それほどに限定的なものだとは思ってないのですよ。具体的な問題解決に取り組む、という場合には勿論その問題が事実であることは前提ですが、映画を見た人が、このような酷いことが行われていることを知り、何かを思い考えることについては、フィクションに対してでもいいと思うのですよ。
日本人がタイで心臓移植というのは虚構にしても、世界の貧しい弱者の命が闇で売買されて、臓器が使われたり、売春させられたり、っていうことはあるようなので・・。グローバルに、麻薬や武器が売買されること以上に、人身売買にはゾッとしてしまいます。
肝心なエピソードがフィクションだから、この映画を見て、何かを考えたり、問題意識を持つ必要はない、とは私は思わないのでした。

でも、そういう話とは別で、ニュースや報道、あふれる情報については、何が事実なのか、情報の送り手に都合よく曲げられてはいないのか、注意を払うことは常に大切なことだと私も思います。
Commented by mezzotint at 2008-08-29 21:39 x
かえるさん
今晩は★☆
TBありがとうございました。買春ツアー客の多くは日本人だということが、非常にショックです。べトファイル(幼児性愛者)という人が子供を買い、それも男の子を好むという実態にも驚きと憤り!トランクに詰め込むのも、子供に限らず、大人の女性もあるそうです。こうした事態が闇の中で、今も行われていると思うと、本当にやるせない気持ちで一杯です。
キャスト、人物像等、言われてみると、重さ、深さの面では今ひとつでしたが。でもこの作品の中のことは現実だと認識する必要はありますよね。
職場で毎年タイ研修のツアーがあります。今年もあるということで、誘われました。行けるか?どうかは分かりませんが。もし参加可能なら行きたいと思っているのですが。
Commented by CaeRu_noix at 2008-08-30 09:59
mezzotint さん♪
コメントありがとうございます。
東南アジア買春ツアーってヒトコロ話題になりましたよねー。
おぞましいです。今は日本人はそんなに多くはないのかもしれませんが。
いずれにせよ、豊かな国の人々が、そういう目的のために外国へ赴いて、金にものを言わせて、弱者の人権を踏みにじることに荷担しているというのは、腹立たしいですね。
昔、タイに行った時、白人の中年男性が現地の若い女性を連れて、街を歩く姿をよく見かけたことが印象的でした。お金で買っているんだろうなぁと不快な気持になりましたが、それを商売とわりきって、半分は楽しみながら、旅行者とのデートをするお姉ちゃんたちの場合は、今思えば、本人たちの意思もあったわけなんですよね。がしかし、ここで描かれているような、子どもたちにこの上ない苦痛しかもたらさない、無理やり力でねじ伏せるやりくちには本当に愕然としちゃいます・・・。可哀想という言葉が空空しく響いてしまうほどに・・・。
Commented by CaeRu_noix at 2008-08-30 09:59
世界の出来事に興味をもてば、このような現実はあふれているとわかるのですが、関心をはらうことさえしなかったら、知る機会もないわけで。そういう意味で、宮崎あおいちゃんやらが出演する映画で、こういう社会派な見ごたえのある映画が作られたのはとてもよかったと思います。
これもまた自由なグローバル資本主義の一側面なのかなぁと重く受け止める必要がありますよね。
社会派ものならば、ケン・ローチやウィンターボトム作品のようなリアリティが好みな私個人的には、本作の展開はちょっと陳腐に感じられたのですが、一般的にはほどよいバランスだったのかなぁ??
こんな一面もある東南アジアですが、タイはエキサイティングで魅力的な国だと思います。秀作映画も多いし。旅行はぜひ楽しんでくださいー。
Commented by 狗山椀太郎 at 2008-09-02 01:12 x
こんばんは。
映画の印象についてはほぼ同感です。ご丁寧に歌詞のテロップまでつけたエンディングの主題曲もいささか狙いすぎな感じがして、どうせならタイの子供たちが歌う素朴な童謡をさらりと流すくらいのほうが良かったのでは・・・と思いました。

コメント欄を拝見していろいろ考えさせられました。
本作での児童・幼児売春は論外ですが、日本という国が様々な面で「需要者」の立場にある現状が見えてくる気がしました。食糧にしても石油などの資源にしてもそうで、日本人はそれらを切実に求めている。でもその取引の裏では『ダーウィンの悪夢』的な負の連鎖が生じているかも知れない、傷ついている人たちがいるかも知れない。では、それを知ったところで日本人は需要をストップできるのか、みたいな、何とも悩ましい世界の一側面が感じられるような作品でした。なんだかまとまりのない文章でスミマセン。
Commented by CaeRu_noix at 2008-09-02 22:54
狗山椀太郎 さん♪
そう、あの歌もちょっと浮いていましたよね。せっかくのものだけど・・・。
まぁ、私の場合は、主人公の過去とさいごの選択に首をかしげつつ、白けてしまったので、もはや歌に文句をつけようとも思わなかった感じですー。
彼が地面に横たわって、嗚咽・絶叫した場面、その演出にはホントにあ然。

多くの場合、先進国の日本人は買い手、消費者側なんですよね。食料品の輸入問題なんかはまたちょっと違ってきますけど、富める国の者が貧しい国の物価の安さや外国ならではの自由さ、旅先ならではの開放感にいい気になって、現地で殿様気分で羽目はずして豪遊するのって、今に始まったことじゃないですもんね。そういう傲慢さを反省しなくちゃかもしれません。
そして、企業のビジネスによるものも、コストの安さばかりを追求して、貧しい国の労働者を搾取しまくりなんですよね。『おいしい珈琲の真実』 っていうドキュメンタリーもありましたし、今度は『女工哀歌(エレジー)』ってのが公開されるもよう。わたし的には、資本主義グローバリズムの弊害のことはまず企業かなぁ。
でも、闇の子供たち的な問題には、個人の行動も大事かなと。
Commented by かりおか at 2008-09-24 15:46 x
これは原作を読んでの鑑賞でしたが、かえるさんが違和感を感じたところは、原作どおりではなく、阪本監督の創作部分だと思います。日本人自身に跳ね返るようにわざとパターン化した人物像にしたみたいですね。映画化の相談をしたタイに詳しい方が、原作のもっとタイの腐敗した描写を抑えるようにというアドバイスがあったのかなーと。
一般的にわかりやすくなったと思いますが、映画を見慣れてる方には違和感があったのかもしれないですね。
でも、これを映像化した阪本監督の思い、あってはならない酷い事実があるんだという怒りは受け止めたいと思いました。
Commented by CaeRu_noix at 2008-09-26 01:33
かりおかさん♪
そのようですね。時代も違うし、そんなに原作には忠実ではなかったみたいですね。原作の方がもっとおぞましい描写だったりするみたいですね。
小説は読んだことがないんですが、この原作者梁石日の映画化作品「血と骨」や「夜を賭けて」の凄まじさを思うと、想像できるものはあります。

罪が日本人主人公に追いかぶさってくるという方向性はよいと思うのですけど、そういう性嗜好の人はそれほど一般的だと思っていなかったもので、その罪は出来すぎ・・・と思っちゃったんですよね。罪の重圧に耐えられないと自ら断っちゃうという末路もワンパターン過ぎると感じてしまいまして・・・。わたし的には残念な展開でしたが、ショックゆえの見ごたえを感じる人が多かったのならよいと思います。

そうですね。問題は避けようという動きが主流な我が国で、こういう題材で映画化にふみきった監督や関係者のみなさんの意欲には拍手したいです。
注目作、話題作になっているのは何よりかな。
Commented by peridot at 2008-10-02 23:02 x
そうそう。人物描写が一元的なところが、
深みのないものになってしまった気がして、
残念な気がしました。
どうも昭和クサい。
Commented by CaeRu_noix at 2008-10-04 01:11
peridot さん♪
そうなんですよ。昭和くさいし、人物造形やエピソードがTVドラマ風味な感じでした。
もっとナチュラルにリアルにいってほしかった・・・。
古臭さを感じちゃうので、邦画の場合は60年代以降の生まれの監督のが自分の好みに合うのでした。
でも、同じ50年代生まれでも、クロサワ清監督は、そういう古くささは感じさせない独特のスタイルをもっていて面白いですよね。
<< 『アクロス・ザ・ユニバース』 PageTop 『シティ・オブ・メン』 Cid... >>
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Beige Shade by Sun&Moon