かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『この自由な世界で』
2008年 09月 05日 |
ケン・ローチの鉄拳。

ロンドンに暮らすシングルマザーのアンジーは会社を解雇され、友人と事業を始めることにした。



自由=FREEDOMという言葉は大好き。それは人間が持つ当然の権利だと思っていた。だけど、このタイトルに清々しいイメージを抱いていた私は、自分の単純さを省みることになる。移民、労働者というキーワードから、『ブレッド&ローズ』のような作品を思い描いていたのだけど、両者には共通項はありながら、主人公女性のアグレッシヴな姿勢を見て抱いた思いはまるで異なるものだった。原題の「it's a free world...」は文末がピリオドで結ばれていないのがミソで、「これがお前たちの言うところの自由な世界ってやつなのかい?」って、問いかけるケン・ローチのまっすぐな眼差しが脳裏に浮かぶのだった。欲望が肥大化するばかりの自由な自由な世界に生きる私は、ため息をつくばかり。

いつものようにケン・ローチの映画の主人公は、危なっかしい存在なのだ。必ずひた向きに熱心な姿を見せてくれるのだけど、それは常々、盲目的な偏りがあって、倫理道徳を持ち込んだ場合には、眉をひそめてしまいたくなるんだよね。本作の主人公、シングルマザーのアンジーもまた、観客を大いにハラハラさせてくれる。最初は不当に解雇された彼女を応援したいという気持ちでいっぱいだったのに、物語が進むごとにその思いが揺れ動く。彼女のやっていることが不当だから、そのうちに警察沙汰になったり、闇のトラブルに巻き込まれかねないという不安もあれば、そういう最悪の結果にならなくても、弱き立場の移民労働者たちをいいように使い、搾取して大儲けするという行為そのものに嫌悪感を持ったり。それでいて、ビジネスが軌道にのった時の彼女の気持ちもわからなくはないから、全否定して突き放すこともできなくて、傍ら痛くなりながらも、そのスリルから目が離せないのだ。リアリティ満点の真摯な社会派ストーリーなのに、エンタメ性を帯びたハラドキ感を持続させることができるとはお見事。

鉄の女と呼ばれたサッチャー元首相が認知症を患っていたというニュースが記憶に新しいのだけど、私はサッチャーの名前を聞くと、ケン・ローチのことを思い浮かべてしまうのだった。それは、大場正明氏の書いた文章を読んだ時に、印象づけられたものだと思うのだけど。80年代のサッチャー政権の時にイギリスでは、福祉よりも自由主義経済を優先させる政策がとられて、弱者はよりいっそう立場を弱くし、貧しさを極めるようになったのだよね。そして、イギリス映画には、サッチャリズムの弊害がよく描かれるようになった。今の日本でも叫ばれている格差社会問題の先駆け? 自身が患っても、手厚い福祉よりも経済発展が大事だと思いますか?って、サッチャー女史に聞いてみたいなんてことを思ったけれど、特権階級にいる人は、それでもやっぱりYESなのかな。鉄の女はとっくに政治の舞台を降りて、個の老いと向き合うばかりなのだろうけれど、この社会には平穏に老いることさえできない弱者たちがあふれていて、ローチという監督は、まだ彼自身の舞台で闘っているんだよ。弱者の姿、置かれている環境は変化しつつも、その仕組みは同じようなもので、ケン・ローチの主張も変わらないのだ。大場氏いわく、"ローチもまた鉄の意思を持った監督"と。
 サッチャリズムの現実を対極から描くボイルとローチ(大場正明)

搾取するか搾取されるかのどちらかしかないようなこの社会のシステムが歯がゆい。去年観たイスラエル映画『ジェイムズ聖地へ行く』のことを思い出した。それは、本当は牧師になるような徳の高い青年なのに、不運に見舞われて、外国のイスラエルの地で低賃金労働をする羽目になったジェイムスくんを描いた風刺コメディ。やがて、彼自身も仕事を斡旋する立場、搾取される側からする側に移っていったのだった。誰だって、まっさらな状態では、人を踏み台にしてまで自分一人が甘い汁を吸うおうなんて思わないはずなのに、そんなふうに社会は回っていることを実感するうちに、どうせなら苦労せずに儲かる方がいいさって思ってしまうのだよね。人間はそんなもの。落ちゆく人も登ろうとしている人も結局は利のため金のために手段を選ばなくなる。自己責任と言うばかりじゃまずいよね。誰も彼も、普通に働いて、それに見合った対価の給料を得て、家族を養って生活をしていきたい、そんなことを望んでいるはずなのに、何でこんなに軋み歪んでしまうのだろうね。

浮かび上がる物語のテーマに目を向ければ、やるせない気持ちに見舞われるのだけど、いつもながらの真摯で鋭いケン・ローチの思いに、心は掴まれて満たされるのだった。サラリーマンのオジサンたちは定年が近づくごとに守りに入ってしまうけど、我らがケン・ローチ監督は、70歳を過ぎても尚、僕らの住む世界全体のことを懸命に考えてくれていることが嬉しいじゃない。
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by CaeRu_noix | 2008-09-05 07:29 | CINEMAレヴュー | Trackback(14) | Comments(14)
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タイトル : 「この自由な世界で」 DVD
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Commented by mi10kuma at 2008-09-05 23:50
シリキです。じっくり読みました。私もやはりどこか『ブレッド&ローズ』のような展開を期待していたんだけど、いい意味で裏切られた気がします。同じ展開にしないのがローチ監督の力量なんですね。

私が初めて英国を訪れたのがサッチャー時代の一番貧者切り捨てが行われていた時期。今でも思いだす悪夢のような体験があるのですが、ロンドンの駅裏を夕暮れにひとりで歩いていたら、目のくぼんだ若い夫婦がベビーカーをひきながら物乞いしているんですよ。で、その尋常じゃない姿に、私はつい逃げ出してしまったのです。その夜も、ライブの帰りに何人も紙のプレートに「どこかに泊めて」「お金を下さい」と書いた若者や老人達をみて驚きました。これがあの揺りかごから墓場までの大英帝国?
今は英国も景気が戻りホームレス対策もかなり効果が出ましたが、今度は移民の貧困に移っているのですね。
ただ、かえるさんのご指摘のように派遣労働者の待遇の悪さが日本の格差社会の状況と重なるような気がしてなりませんでした。英国固有の問題でなく、先進国全体の問題として考えさせられるのがさすがです。ベテランになると丸くなる監督が多い中、ローチ監督は一生闘う監督なのでしょうね。
Commented by CaeRu_noix at 2008-09-06 07:40
シリキさん♪
ありがとうございます。
私は最初、主人公が移民労働者かと思ったのですが、搾取する側とは!ローチの映画は一見同じような題材を扱っているようで、切り口が多様なのでエクセレントですよね。

おお、シリキさんは、サッチャんが手厳しく改革をしていた頃にイギリスを訪れたのですが。そんな人たちを目の当たりにしてしまったら、大好きな国に失望も覚えてしまうかもしれませんね。若い夫婦が物乞いというのは、その当時にゃショックですね。サッチャん政策も弊害があった一方で、経済を発展させた評価はされているみたいだし、皆が幸せになれる方法なんてありえないのかもしれないけれど、しかし日本は、弊害が出た分の効能さえも見えず、ううむっていう感じですよね。蟹工船ー
以前なら移民の物語というと差別、アイデンティティなどがテーマだったけど、もはやそれ以前の問題なんですね。人間らしく暮らすことさえできない人たち。
英国の移民問題というテーマ限定で評した文章も見かけましたが、私はいつも、その国固有のものとして眺められずに、世界の問題として見てしまいがちかもです。そして、思考はとめどなくー。
闘うケン・ローチの姿勢には毎度心打たれますよね。
Commented by cinema_61 at 2008-09-08 23:32 x
こんばんは。
ケン・ローチの作品好きで・・・・・この作品も派手ではないけど、ロンドンの移民の問題をテーマにしながら、逞しく生きる女性を描いていますね。
見終えて充実感を覚える映画でした。
Commented by カオリ at 2008-09-10 00:38 x
こんばんは~
おっしゃるとおり、とてもやるせない気持ちにはなりますが、ケン・ローチ監督の気概には感服しますね。
どうあっても生きていこうとする人間の「さが」のようなものも感じました。
Commented by CaeRu_noix at 2008-09-10 01:07
cinema_61 さん♪
ケン・ローチという監督に関しては、"敬愛"という言葉を使ってしまいたくなる、素晴らしい方ですよね。
私もケンローチ作品は大好きでおっかけまくりました。(夜空に星のあるようには未見ですが。)
映画の作りとしては、本当に地味なトーンのものなのですが、これで手に汗握るドラマになっちゃうからすごいなぁと思います。
彼女のやっていることを思うとホントに胸が痛むばかりなんですけど、彼女のたくましさには感動的なものすらありましたよね。
本当に、ガツンと手ごたえある満足感が感じられる秀作でした。
Commented by CaeRu_noix at 2008-09-10 01:11
カオリさん♪
とてもお久しぶりのような気がするのですが、そんなことを感じさせない登場の仕方ですね。(笑)
我らがケンローチなのですが、アミューズ単館上映のせいか、本作のレヴュー書いているブログは少ないようで、ちょっとさみしかったのでした。
カオリさんは、お忙しくてもこういう重要な作品を逃さずにいてくれてうれしいです。
ホント、、ケン・ローチの気概には、心揺さぶられます。
そして、実に鋭く人間というものを見据えているんだなぁということに感嘆。
サガを感じましたよねー
Commented by acine at 2008-09-11 22:44
かえるさん おひさしぶりです!
主人公がもっと地味な女性かと思ってたら、意外にもイケイケだったのが
意表をついてました。パワフルで行き過ぎな所もあるんだけど、
人間の弱さも同居してて、目が離せませんでしたね・・・。
しかし、自由がある・・・とされてる国ほど、その落差、こういう裏世界が
存在するんだな~。ほんと、自由って一体何?という感じさえして
きますね。私は彼女が○捕されるのか、○されるのか?と思っていたら
結局一人になってもウクライナへ・・・。誰しも生きるのが大変な時代ですよね。
Commented by CaeRu_noix at 2008-09-13 01:51
acine さん♪
お久しぶりですー。
そうですねー。アンジーったら、かなりのイケイケ女でしたわね。
豹柄の似合う女でした。バイクに乗る姿もかっこよく。
でも、わりと、ケンローチ映画の女主人公って、激しめキャラが多い気がします。タイプはいろいろでいわゆる派手系とは違うのだけど、強い女が多い気がします。男性の方は地味主人公っていうパターンも多いですけどね。
そんなわけで、主人公が危なっかしい女だったから、ずいぶんとハラハラドキドキなエンタメ風な要素もいっぱいでしたよね。
アンジーは確かに、やり過ぎてしまったのは事実だけど、誰にもああいう部分はあるんじゃないかと思えますよね。世の中の成功者の多くは、大なり小なりずるいことなどをやっているんじゃないかと思えたり・・。でも、あれじゃあ、しっぺ返しがあっておかしくないだろうというハラハラ感が・・。
自由という言葉を用いて、こういう社会の問題点をクローズアップしてくれるケンローチはさすがですー。
Commented by シャーロット at 2008-09-24 22:10 x
もっとローチの作品が見たいものです。出遅れまして;
どうも男性主人公ものを多く見てるせいなのか私が男目線なのか;…アンジーも女性というよりも男性的に見えてきたのでした。
危なっかしいとはホントですね;
でも私にはどうも彼女は否定できないものがありましたよ;
個人事業主の私にとっても、この日本もなかなか厳しい社会っす;
アンジーをまるで自分の事の様に感じながら、ハラハラしつつ見守って・・・やっぱりこの人はこうやって生きていくのか~と諦めとは違った、なんか複雑な思いを抱きました。。。
人助けをしていると思ってるアンジーにとっては、感謝されて当然という思いが生じてもあたりまえの様な気もするし;
なんだかいい意味で、たくましさを感じます。
そのくらい精神的に強くないとこの世で生きてくって大変な時代なんでしょうかねぇ…;
Commented by CaeRu_noix at 2008-09-26 01:55
シャーロットさん♪
もっと見てください!
アンジーは男顔負けのたくましさでしたね。
それでいて、最初の方ではちゃっかり女であることを利用して、仕事をとったりしていたし。
もちろん、彼女のことは否定できません。この社会では、誰しもが彼女になる可能性をもっているのですから。
それでいて、やっぱり肯定もできません。法律を破るとかそういうのは自己責任でいいかなと思うのですが、弱者の弱みに付け込んだ卑怯な搾取はやっぱり許せない行為!
とどっちも仕方ないと思えてしまうから、ケンローチの映画は味わいがあるんですよね。
日本も厳しいですね。個人事業主に限らず。w 個人事業主は経費計上ができるからいいですよね。というか、法人格にしちゃうのがいいのかしら。そして、どんどんアンジー化?
そのたくましさにはある意味、プラスの活力を感じましたね。けど、そのパワーを人を虐げない方向に使えるならどんなにいいかとも思うし。
生きていくのが大変だからと、強者の立場に立ったものがその力をふるい続けるのはやっぱり違うと思うんです。
アンジーには共感できんという意見には、反論したい私だけど、ややアンジー擁護な意見にもやっぱり反論したくなりー。(笑
Commented by ぺろんぱ at 2008-11-24 19:28 x
こんばんは。
かえるさんが本作を観ていらっしゃらないはずはない・・・と思いつつ探して行けば、随分前に御鑑賞だったのですね。やはり!と思いつつ一気に読ませていただきました。

私はちょっとアンジーを批判する側に立ってしまった感があり、そうなるに至った経緯や背景、かえるさんの仰る「ビジネスが軌道に乗った時の」アンジーの純粋に喜ぶ気持ちを思うと確かにやるせない気持ちになりますね。
それだけに、初めはセクハラまがいの上層で胡坐をかいてるだけの男達に立ち向かう姿勢が天晴れだっただけに、彼女が“そっち側”の人間になってしまったことが悲しかったですね。
ローチ監督の真摯な姿勢は私も感じました。一貫してその姿勢が貫かれている監督ですね。(私は多くを見ていないのでこれからの課題です。)

「サッチャリズムとローチ」に言及された挿入文も非常に興味深く読ませて頂きましたよ。
Commented by CaeRu_noix at 2008-11-24 22:59
ぺろんぱ さん♪
もちろん、ケン・ローチ映画は絶対観てますとも。

実際、アンジーの行為・行動には、批判対象になるものは多々ありますよね。全否定はしないでほしいけど、正義感や良識ある人ならば、彼女に批判的な思いを抱いてしまうのは当然のこと。でも、彼女は愚かだとは思うのだけど、特別な悪い奴だとも思えなかったりして。大体、ケン・ローチは、道を踏み外した個人を否定するためにこの映画をつくったわけではないでしょうしね。誰もがアンジーになり得る社会の仕組みについて思考する割合の方が多かったかな。
以前は弱者の立場では正義感をもっていた者が、強くなった途端、弱者に卑劣な行為を働くというのは、アンジーに限らず、この世界では本当はよくあることですよね・・。独裁者も昔は苦労人だったり。権力や富を保持するためには人は何でもしちゃう生き物なんでしょうかね。と、考えるとウンザリしちゃうのだけど、ケンローチの思いには救われます。

サッチャリズム全盛期には世の中のことを何も知らなかった私なので、後になって映画でお勉強している私ですー
映画評論みたいなものってあんまり読まない方なんですが、大場さんの切り口は好きなのですよ。
Commented by 真紅 at 2008-12-04 10:54 x
かえるさん、こんにちは。TBさせていただきました。
この映画、東京では8月公開だったのですね~。大阪では11月で、やっと観れました。
鉄拳、まさに・・・。ガツーーーーン、でしたね。
ケン・ローチ、本当に素晴らしい監督だと思います。厳父って感じで。
今の金融危機で、移民や派遣労働に従事する人々の雇用状況って、ますます悪化してますよね。
ニュースなんかで「調整弁」なんて言葉を聞くと、怒りが込み上げます。
アンジーみたいに逞しく生きる女性を眩しく感じていたのに、あの電話のシーンは衝撃でした。ラストも。
ケン・ローチ作品、最近のものしか観れてないのです。旧作をDVDで再販して欲しいなー。
ではでは、また来ますね。
Commented by CaeRu_noix at 2008-12-04 23:41
真紅 さん♪
おお、公開状況は地道な展開のようですが、全国のたくさんの方に観てほしいですねー。
素晴らしい監督ですよねー。着いていきたいー。

でも、本当に社会は危機に見舞われていますよね。
この映画で描かれている不遇者は移民労働者であったわけだけど、今の日本では移民ではなくて、円高の打撃を受けたメーカーの工場関係の労働者の大勢が職を失うことになるだろうというシビアなニュースが・・・。
それがその自由という名のついた経済システムの一環なんですよね。
今の日本は本当に、ケン・ローチが描き続けてきたテーマが身に染みる状況という感じですよね。
『蟹工船』が再映画化されるようですが、こちらはイマドキ風味のエンタメ系作品になるみたいだから、もっとケンローチな風をー!って私は思ってしまうのですが。

たくましいゆえに走り過ぎてしまったアンジーが歯がゆかったですよね。
ケン・ローチ作品はくまなくDVDリリースしてほしいー。
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