かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『コッポラの胡蝶の夢』 Youth Without Youth
2008年 09月 29日 |
復活おめでとう。

第2次世界大戦前の1938年、ブカレストの街で年老いた言語学者ドミニクは雷に撃たれ、病院に搬送される。



現代ルーマニア文学の巨匠ミルチャ・エリアーデの幻想奇譚「若さなき若さ」が原作。
「荘子」の故事「胡蝶の夢」をモチーフとしている。

ルーマニアな幻想譚なんて、コッポラのイメージではないんだけど、そんなタイプの映画はとても私好み。一体どこまでが現実でどこからか夢/幻想なのって迷宮に引きずり込んでくれる映像世界は大好物。だけど、そういうのが大好きな私としては、思ったほどにはめくるめく迷宮体験はできなかった感じ。やはり骨太重厚な映画を撮る巨匠コッポラにそういうのを期待すべきではなかったのかな。こういうストーリーならば、酔いそうになるほどに手持ちカメラのゆれゆれ映像がふんだんに使われている方が個人的には好みなんだけど、しっかりカッチリ正統派なショットが積み重なっていたよね。もっとゆれろー、もっとコラージュを!と念じてしまった。好みの問題です、すみません。こういう題材には私は、もっともっと摩訶不思議に幻想炸裂な映像を求めてしまうの。タルコフスキーとかフェリーニとかシュミットとかアンゲロプロスとかシュヴァンクマイエルとかトリアーとかみたいな雰囲気のものをね。

という部分に関しては期待以下だったりもしたんだけど、好みのタイプであることには変わりなく、なかなか楽しいヒトトキでありました。ルーマニアを皮切りにインドも舞台になるとは嬉しい。宗教色が差し込むと神秘性も深まるし。言語の探究っていうのがとてもステキ。ルーマニア語じゃないのが残念だったけれど、それ以外の言語は聴こえてきたのでエキゾチックな響きが面白く。サンスクリット語なんかの不思議な響きがまたいいんだな。聴覚から幻想世界に誘われる感じ。「Shanti、Shanti、Shanti」にグッときちゃう。そんな風にずいぶんと怪奇な不思議体験が展開するのだけど、学者が主人公の物語ゆえに、結局はハチャメチャにはなり過ぎず、地に足のついた哲学性が感じられるのが持ち味かな。

巨匠コッポラですから、メジャー資本じゃなくても有能なスタッフが集まるのは納得。それ以上に、キャストのセンスのよさはさすがだなぁと思った。こういうストーリーにはティム・ロスは最適だもの。苦悩と迷走とオカルトとメタモルフォーゼが似合う俳優。学者には見えないほどにセクシーだったりもして、ラブストーリーが軸になっていてもバッチリ。映像の遊びが控え目だった分、俳優の演技に見入ってしまうのだった。フランス映画のミューズのような存在感をもつ『コントロール』でもめちゃめちゃチャーミングだったアレクサンドラ・マリア・ララをヒロインに起用したのもナイスだし、出番は少ないながら抜群の表情を見せてくれたアナマリア・マリンカ にも拍手。世界のコッポラが現地ルーマニア出身の女優を大抜擢してくれるなんて嬉しいじゃない。

とにかく、コッポラ監督が10年ぶりにメガホンをとってくれたことが何よりな興味深い作品だったかな。彼もやはりハリウッドのシステムにはウンザリしているんだね。私には娘ソフィアの感性の方がツボだけれどもまたよろしく。
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by CaeRu_noix | 2008-09-29 07:44 | CINEMAレヴュー | Trackback(5) | Comments(4)
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Tracked from Mani_Mani at 2008-09-29 07:43
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Tracked from シャーロットの涙 at 2008-09-29 20:26
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Commented by manimani at 2008-09-29 07:46 x
こんにちは!
わたしはすごいツボでした。これ。
揺れないカメラにもコッポラは大分こだわったようですね。
唯一インドのモノクロハンドカメラが揺れて、あの揺れが全体の中でものすごく際立って見えたのが効果的だったのではないかと思います。
コラージュは冒頭でやり尽くしたのかな。

女優さん達はこれ以上ないキャスティングでしたね〜

と興奮冷めやらぬワタシです。
Commented by CaeRu_noix at 2008-09-29 20:22
manimani さん♪
超速効トラコメありがとうです。
記事エントリ時刻より、TB送信時刻の方が早いのは何故?w

すごいツボでしたか!それはよかったです。
フランシスも10年ぶりにメガホンをとった甲斐があったというものです。
わたし的には、すっごいツボではなかったのですが、好み系ゆえに楽しめましたです。
インタビュー記事をちらりと読みましたが、固定カメラにはこだわっていたようですね。それがコッポラのやり方かぁ。
なるほど、そうか。ずっとフィックスできたからこそ、インドのシークエンスが効果的な映像になるわけですね。
私ときたら、辛抱が足りず、早くから揺れ揺れを望んでしまいました。
まったくもってコッポラの意図をくむことができずにすみませぬ。
なんとなく、ロマン・コッポラの「CQ」が見たくなっちゃいましたー。

女優キャスティングは最高ですよね。
10年のブランクがあっても、ヨーロッパの旬な女優をちゃんとチェックしているのかしら?目ざといというかwさすがですー。
マリアララちゃんはこれ以外にも名匠の作品にあれこれ出るらしいいですね。
Commented by manimani at 2008-09-29 22:43 x
時刻はうむむむむ??

で、拙ブログにもコメントありがとうございました。あちらでは伝わらないかもと思い、こちらにまたコメントさせていただきますが、たまたま買ったエスクァイア「SF再読」にハスミンさんによるコッポラインタビューが載っていまして、そこに衝撃的に書いてありましたよ。「インドの山のシーンも実はルーマニアで撮っています」と(笑)
他に必要な絵があって実際インドでの撮影はあったそうですけど。

他にも「病院での撮影は好きではありません」とか面白いことがいろいろと・・・

アレクサンドラはこれから大注目株ですね!
Commented by CaeRu_noix at 2008-09-30 07:32
manimani さん♪
再訪ありがとうございまーす。
おお、そのインタビュー記事は興味深いですな。
ああ、やはり、あの場所はインドじゃなかったんですね。そんな気がしました。(笑) インドと認識できるものがほとんどなかったんで。
息子ロマンは、「ダージリン急行」でじっくりインドロケをしたわけだけど、父はさすがにインドにまでは入り浸らないでしょうなぁ。そこが寂しい。
地獄の黙示録のラストが、ベトナムらしからぬ風景だったことを思い出し、コッポラは異国のロケ地にはこだわらないタイプなのかしらって・・・。
なんにせよ、情報感謝です。

アレクサンドラは、これからアンゲロプロス作品などにも出るんですよね。すごいなー。で、やたらにブルーノ・ガンツとの共演が多いことにも注目。「ヒトラー」の時に気に入られて、彼が彼女を推しているんだろうか、まさか2人は、、なんてことを妄想しつつー。これからも楽しみなマリアララちゃんであります。
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