かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『おくりびと』
2008年 10月 06日 |
あまりにも大好評なので、むしろ悪い予感。
やっぱり、ショウチクのエーガはミニシアター派の私好みではない感じ。
よい映画だったと思いますが、褒めるのは皆にまかせた。
というわけで、気に入らなかった点を中心にお送りします。
この映画を愛する人は読まないでー。



涙が滲んじゃう箇所はちょろっとあったのだけど、流れはせず。だって、要所要所のエピソードがちょっと出来すぎ、ベタすぎ、クサすぎに思えちゃって、感動するよりも、苦笑しちゃったんだもん。TVドラマっぽいし、昭和クサい。わたし的には、ポニョやパコの方が大いに感動、号泣映画でありました。

でもね、死というものをテーマにした映画というのは好き。「納棺師」というポピュラーではなかった職業にスポットを当てるなんてナイスな発案。このアイディアを出したのはモックン自身だというから、素晴らしいじゃないですか。テーマ性としてはすごくいいと思うのです。脚本や演出が好みじゃなかったのです。あと、彼女・・・。

序盤のブラック・ユーモア寄りの頃の方が好感触でした。しんみりな後半はちょっとなぁ・・・。

納棺師の成長を描きながら、彼の体験を通じ、いろいろな死と遺族の姿を見せるという構成はおもしろかったのだけど、その中で遺族の台詞に首をかしげちゃうものがいくつかありました。納棺師という職業とその仕事の尊さや意義深さを描くために、さりげなく死者の人生が軽んじられているような気がしてしまったのですが・・・。

遺族である旦那さんが、モックンが施した死に化粧について、「妻は今までで一番きれいでした」なんて台詞を言ってお礼をしたシーンがありましたよね。あれって、たぶん、納棺師の立場で、遺族に感謝されたことに対して感動するシーンなんだとは思うけれど。私は遺体の妻の立場で、ギョギョギョっとしちゃいましたよ。いっくらなんでも、遺体になった時の死に化粧顔が今まででいっちばん綺麗だったなんて、あまりにも・・・な言い草じゃないっすか?!私がその妻だったら、成仏できないっつーの。化けて出ますってば。そりゃあ、あなた達はそんなに夫婦関係がうまくいっていたわけでもなく、妻が最も美しい顔を見せることなんて近年はなかったのかもしれないけれど。出会った頃には、結婚したばかりの頃なんかは、あなたのためにめいっぱい綺麗でいた奥さまの姿があったのじゃないのかしらね?死に顔が最も綺麗だなんて、他人向けの社交辞令だったのだとしても、かなり許しがたい台詞ですよ。綺麗だよって、妻が生きている時に面と向かって言えないシャイな日本のオヤジというのは仕方ないけど、それにしたって死に顔が一番綺麗だなんてあんまりだー。ここで憤りを感じたのは、世界中で私だけかなぁ??

それから、広末涼子扮する妻みかのキャラクターがどうしてもどうしても痒くてダメでしたね。なんで、そんなにブリブリキャラなんすか?ってことをあまり誰もツッコんでいないから、わりとナチュラルな人物造形だったりするんだろうか?という疑問がとめどなく。

旦那が超高額な楽器を相談もなく購入することは許せて、そこまでつぎ込んでいた専門職な音楽家業をいきなり辞めるということにも寛大で、再出発した夫の職業に関してだけ、「汚らわしい」とか言っちゃう嫁キャラがまるでわからなかったのですが。旅行会社に就職したふりをして、ずっと真実を隠していたことを怒るというのはわかるけど、それまで散々旦那の意思を尊重する妻だったのに、そこだけ汚らわしい、絶対許せない!ってなる価値観は不自然じゃないかなぁ。夫が男娼やってたとか、内緒でananにヘアヌード写真を出してたとかいうならショックだろうけど、臓器売買に加担してたというなら激怒しますけど、葬儀関係って普通じゃない?問題は社会保険等がどうなっているかってことくらい。

つぶしたてホヤホヤの鶏を食卓に出すことにも躊躇ない新妻なのに、なんでそこだけ汚らわしいんだか。大体、「汚らわしい」なんて言い回しは、普通は言いません。「ケダモノ」っていうのは、ハイティーンブギのモモコだけだし。「まぁ、お下劣」とか「まぁ、汚らわしいわ」とかはごっこ遊びの中でしか使いません。たぶん。

「こんなところで、恥ずかしいよ」なシーンも、こっちの方が恥ずかしくってしょうがなかったです。なんで、現代劇で、そこまでブリブリ妻にする必要があるんだろうか。『ぐるりのこと』の夫婦はなんて自然だったんだろう。ぷちリボン付き純白パンツはないだろうって思うのですけど・・・。誰のためのサービスショットなんだこれはー。と、広末キャラの演出のすべてが、不自然に感じるどころじゃなくて、ちょいともう気持ち悪ーいっていう域でした。広末さんそのものが嫌いっていうんじゃなくて、このキャラクター、演出が本気で気持ち悪かったんですよ。これが、求められる新妻像なのでしょうかねぇぇぇ。ああ、すみません。(当初の脚本では、妻は同級生という設定だったそうですね。監督の趣味かー。)

モックンはよかったですね。でも、皆さんが評価するほどに、私は心動かされたわけでもないかも。で、素晴らしくよかったのは、やはり山崎努さんでしたねー。彼らが食を追求するシーンがいっちばん好きだったなぁ。「困ったことに、ウマいんだな、これが。」ってね。死と対峙する職業で食べている人がまさに命を食べることに極上の歓びを感じるその場面。チキン食いに勤しむシーンが最上の感動ポイントだったかも。石はちょっとね・・・。

でも、食べるシーンと言えば、『歩いても 歩いても』が最高なんだけどね。モックンの義母の出演作。

死というものは映画では語りつくされているものですからね。ベタではダメなんです、私は。

私はどちらかというと、"看取り"と"弔い"に興味がありますかな。そもそも儀式なお葬式そのものをよかれと思っていないところもあるので、納棺にしても私のツボじゃないのですな。鳥肉返しで鳥葬にしようとは言わないけれど。

棺桶なら、『ここに幸あり』の自分の棺桶を選ぶシーンのユーモアが好き。納棺なら、ソクーロフの『セカンド・サークル』で、葬儀屋の女性に言われるがまま、父の遺体と棺桶と格闘する息子の滑稽な姿が好きだったりして。遺体なら、『メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬』のアプローチが最高。ブラック・ユーモア寄りの方が好きなんだろうか・・・。

杉本哲太の役はヤックンにやってほしかった。

フックンもがんばれー。

森田すばるー。
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by CaeRu_noix | 2008-10-06 21:21 | CINEMAレヴュー | Trackback(3) | Comments(10)
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Commented by ぺろんぱ at 2008-10-07 21:20 x
こんばんは、です。

本作については「観てよかった」と思った派ですが、貴レヴューは支持派でも反発派でもなく「無所属>として読ませていただきました。
そして、それぞれのご記述に対して、その実、頷くところも多かったです。

>さりげなく死者の人生が軽んじられているような気が

涼子妻のありかたや、死者への真の尊厳のあらわし方など、考えさせられました。

食のシーンへの御考察には深く同感・・・。
直接的?肉体労働的?に携わる人ほど、日々の食糧への関知の度合いが高かったと記憶する事がありましたので。「食」の描き方が一番ダイレクトでした・・・でしょうかね。

そのダイレクトな部分とそうでなかった部分と、そのへんの調合具合がミソなのかもしれませんね。

>杉本哲太の役はヤックンにやってほしかった。

初め、ジョークとして読みましたがあながちジョークじゃないですよね!?
哲多君にはもっと違う役のほうが・・?

シブガキ隊がちんこ勝負なら果たしてフックンは・・・・・??








Commented by となひょう at 2008-10-07 23:56 x
かえるさん、こんにちは。
私はこの作品には高評価でしたけど、満点じゃない理由は彼女でした。
嫌いとか下手とか、そういうことじゃなくて。
どうしても違和感を覚えてしまって、鑑賞後しばらく拭えませんでした。
って、今でも拭え切れていないっす。

>当初の脚本では、妻は同級生という設定だったそうですね。

ぐえぇぇぇぇーっ、そうなのかー
どうして幼な妻にしちゃったんだろー
年齢が離れていても、妙に大人びているというのならまだしも。
まだまだアイドルっぽい可愛らしさみたいな印象が強くて、むーんと感じた部分を消化しきれないでいました。
むーんと感じた点を、こちらを拝見してどこかスッキリできましたよ~
Commented by cinema_61 at 2008-10-08 21:17 x
こんばんは。
私、この映画どんなに評判良くても観にいく勇気ないの・・・・・・・
つい先日癌で逝った義姉を看取ったばかりなので・・・・・・・・
それも納棺師を間近に見て、死に化粧をするのも傍で見たので。

キネマ旬報の批評に「死の取り扱い方が好きではない」と辛口批評があったのも気になって・・・・・・でももう少し時間を経たら観るかも?
(かえるさんのレビューを参考にして)
Commented by CaeRu_noix at 2008-10-09 00:05
ぺろんぱ さん♪
ひねくれ者のレヴューにコメントありがとうです。
賞もとったし、軒並み大好評なので、あえてヘンだと思った点を発表しておきたくなったのでした。

人の感想を読んで、葬儀というのは、やはり遺族がその死、悲しみと折り合いをつけるためにあるものなんだなという一文を見かけ、ポイントはそこかと私も考えさせられました。日本人の死生観って、そういうものだっけかと。私はどちらかというと、あくまでも死者のためのものであってほしいと思っているかも。

ついでに、納棺師という職業を持ち上げるために、チェリストな仕事が道具になっていたのも腑に落ちなかったです。オーケストラの団員にまでなったのに音楽を完全に諦めちゃうものかなぁ?音楽の魅力って、その程度のものじゃないはずなのにって。ま、ピアニストよりはチェリストの方がありえそうかな。個人的には、サラリーマンが納棺師になる方が受け入れやすかったかも。

哀しみがつきまとう死をテーマにしているからこそ、食べるという行為からにじみ出る生のエネルギーにグッときましたね。

杉本哲太の役はヤックンがやればいいのに、と鑑賞中に思ったのは本当です。同級生役は銀蝿一家より2年B組仲間で。
Commented by CaeRu_noix at 2008-10-10 07:17
となひょう さん♪
高評価だったとなひょうさんにまでコメントいただき恐縮ですー
違和感は拭えませんでしたよね・・。広末さんそのものはチャーミングなタレントだと思いますよ。が、脚本の年齢設定を無視してまで彼女を採用し、アイドルのイメージまんまのキャラで妻役をやらせちゃう製作者/監督の趣味がナンダカナーって感じでした。映画における「女優」の存在って、大切なものなんだけどなぁ。同じ元アイドルでも、「トウキョウソナタ」のキョンキョンは女優としての存在感を発揮してくれていましたよね。

モックン自身も年下妻をもらっているからとはいえ・・・。
この設定には同い年妻の方がふさわしいですよね。夫の職業を知って出でいく所だけは、幼な妻の方がありえそうかもしれないけど。「歩いても」の夏川さんなんかはリアルな存在でよかったなぁと。年下なら、宮沢りえっちなどがよかったなーって思ったんだけど、それだとお茶屋になっちゃいますね・・。ざんねーん。
Commented by CaeRu_noix at 2008-10-10 07:29
cinema_61 さん♪
そうだったのですか。ご愁傷様です。
ならば、今映画をご覧になるのはまだ辛くなってしまうかもしれませんね。
その実体験があってこそ、より映画が味わい深くなる可能性もあるでしょうし、逆に違和感をもってしまうこともありえますよね。
私はまだ身内の死といったら、祖父母のものくらいしか経験がなくて、自分が駆けつけた時には、既に遺体は棺の中にあるのが常でした。なので、納棺師さんの仕事を見たことはないんですよね。
そういう意味では興味深いものではありました。クサさがなければ・・。
おお、キネ旬の辛口批評情報ありがとうございます。
気になるので、是非図書館のバックナンバーをチェックしたいです。
私個人は好き度の低い映画でしたけれど、見る価値はあると思いますので、気持ちが落ち着いたら是非ご覧くださいませー。
感想もおうかがいしたいですー。
Commented at 2008-10-14 12:10 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2008-10-28 23:33 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by アヤ at 2009-04-01 00:18 x
はじめまして。
今「おくりびと」のDVD観たところです。
私も広末の役どころが不自然すぎる、と思って悶々としてこのブログにたどりつき、エントリを読ませていただいて大分スッキリしました(笑)
「これから、どうするの?」「田舎に帰ろうと思う」「賛成!」って、賛成する前に「田舎に帰ろうと思うんだけど嫌?」とかきかないのか!と私なら怒ります。
欧米で評価が高かったのって、強い女の人の相手で疲れきった欧米男性のツボに入ったってことなんじゃないかと穿った見方をしてしまします。
Commented by CaeRu_noix at 2009-04-02 02:09
アヤ さん♪
はじめまして、いらっしゃいませー。
コメントありがとうございます。
スッキリしてもらえてよかったです。
何しろアカデミー賞までとっちゃいましたからね。
なかなか大きな声で批判はしにくいのですが、ヘンなものはヘンですよねー。
こんなベタな感動を売る映画が大きな賞を取って、こういうのが今後の日本映画の定番・理想になってしまうことを危惧せずにはいられないのです。
この夫婦関係、この妻の人物造形、言動行動は本当にちょっとヘンでした。
海外で評価されたのは、まずエキゾチックジャパンの文化・精神が描かれていることがウケたのだと思いますが、なるほど、アメリカ人男性なんかもこの監督の趣味に等しく、イッツ・ヤマトナデシコ、ソー・ラブリーって感じだったのかもしれませんね。
「けがらわしい」って、英語では何て訳されたのでしょうー
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