かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
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『トウキョウソナタ』
2008年 10月 11日 |
トウキョウのカナタ、トウキョウのドナタ?ズッキン、ドッキン。
クールなのに込み入っているなぁ。

平穏に暮らしていた両親と息子2人の4人家族。ある日、父が失業し・・・。



ピアノでソナタなんて、黒沢監督らしくないような気がしたりなんかしたんだけど、この脚本は元々はオーストラリア人が書いたものなのだってね。そして、キヨシィが監督を務めるにあたり、脚本にも黒沢清印なアレンジが加えられたらしい。なるほど、だから、少しちぐはぐさが感じられるほどに、色とりどりな変奏曲になっているのだね。そうでなくても、黒沢作品には独特の奇妙さがあるというのに。 

ひょっとして、ヒューマンドラマ仕立ての直球の家族ものなのかと思ったりもしたけど、やっぱりそんなはずはない。密かに感動を求めて映画と向き合うも、広がりと余韻を残すのは妙なおかしみと面白味なのだった。考える余地もなく、感情を揺さぶられるべきなんだろうか。よくわからない。やっぱり私には、清の映画のことは語れないなぁ。わからないけど、面白かった。笑いあり、紙一重の恐怖あり、エピソード的にもテーマ的にも画的にも、見どころ盛りだくさんで見ごたえ満てーん。

リストラで会社を辞めた男が、そのことを家族に告げられずに、会社に通い続けるふりをするなんて、ドラマによくあるエピソードだなという気もするんだけど、それが今の雇用不安ニッポンのトウキョウの象徴ということなのかしら。大連というのはやけにリアルだけど、総務までも大連に行くものかなぁ?依願退職の形をとっているのに即日で辞めちゃえるものなのかなぁ。離職票はいつの間に発行してもらったんだろう?とやっぱり綿密なリアリティは求めちゃいけない。職のない人たちが炊き出しに並ぶ姿、ハローワークの長蛇の列のインパクトに感じ入ればよいのだ。切実に痛い。

香川さんはネクタイよりつなぎの方が似合うなぁなんて思っている場合ではなくて、いい歳の社会人があんな場所で、素早く着替えをせねばならない屈辱に愕然とするのみなのだ。同条件で正社員は難しいだろうけど、40代ならば清掃業務以外も見つかるんじゃないかと思うのは甘いですかね?腑に落ちないけれど、まぁやるせない。働き盛りの男のプライドはズタズタの不況ニッポン。失業者の盟友のキャラクターがめちゃめちゃ面白かったなぁ。こんなに悲哀に満ちている男のふるまいで笑いをとっちゃうなんて、心憎いというかイジワルというか。

でも、とにかくキャラクターの立ち方は素晴らしい。キョンキョンママはいいなぁ。ビジュアルだけじゃなく、今のキョンキョンの声がいいなぁって思う。空ろさも安らぎも細やかに伝わってくる。長男の口から「離婚しちゃえば」という台詞が出ちゃうのも納得。ドーナツというのは記号としては面白いけど、手作りおやつとして選ばれるのはスゴイと思うし、大体夫とはどんな出会い方をしたのかがちょっと想像しにくいけれど、2人の男兄弟の母が妙にハマっていて。そんなキョンキョンが巻き込まれる事件がまたヘンな面白さに満ち満ちている。オープンカーで海だよね。やっぱり。さすらい。まわり道。そして、脱皮。

誰も足跡 まだつけてない 一足お先の砂の上
夜明けのMEW♪

でも、ごめん。ドビュッシーだけはダメなの。使わないでほしかった。現代の日本映画においては、私にとってのドビュッシーは『リリイシュシュのすべて』がすべてなの。「月の光」のピアノの調べは美しくて大好きだからこそ、このシーンをラストにもってこられるのはちょっと困る。みんながここに感動しても、私はダメなの。ああ、残念。でも、演奏が終わった後のラストのラストはとても素晴らしかったなぁ。試験会場がまるで別の空間に様変わりしたかのように、その家族を柔らかな希望の光が包み込むなんて。
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by CaeRu_noix | 2008-10-11 23:58 | CINEMAレヴュー | Comments(6)
Commented by cinema_61 at 2008-10-12 20:31 x
こんばんは。
私、黒澤清監督の作品・・・苦手なんですけど、これは観たいと思っていきました。
設定は今のトウキョウにありがちなことだけど、あんなお父さん、あんなお母さん、そしてあんな兄弟が集まった家族は想像できません。
でもなぜかソソラレ・・・・・・惹きつけられた~
救いようのないようなストーリーかと思ったら最後はホッとして~

やはり日本人の脚本ではないのですね。なんか外国映画を観ているみたいでした。香川さんは上手すぎて・・・・キョンキョンはとっても良かったし、それ以上に次男の演技が印象的でした。
たしかに、入試の課題曲&ラストに「月の光」はちょっと・・・・・・・・
私にもあの曲には思い入れがありますもの。
Commented by peridot at 2008-10-13 11:40 x
こんにちは〜
まさに香川さん、つなぎ似合う!
かえるさんがご指摘にうなずきました〜(笑)
不気味、不思議、不協和音、
いろいろ「不」が重なると「和」になるのかしら…。
うちのTB復帰しましたー。
Commented by CaeRu_noix at 2008-10-13 11:52
cinema_61 さん♪
黒沢作品、苦手でいらっしゃいますか。
私は苦手ではないんだけど、どうもそんなに相性はよくないかなぁと感じることが多くて。
面白いと思うし、ウマいなーって思うんですけど、一観客としては、心の底からの感銘を受けることがあまりなくて・・。
でも、やっぱり今の日本映画界において、敬遠するわけにはいかない監督ですよね。そして今作は、カンヌの受賞も話題になったり、家族の物語であったりと、見逃せないものだったのでした。
ホント、最初から最後まで中味が詰まっていて、惹きつけられましたよねー。
オーストラリア人脚本家さんが書いたストーリーは、リストラされた父とピアノをこっそり習う息子の物語だったらしいんですけど、それが黒沢監督の手に渡って、キョンキョン妻の物語が生まれたもようです。父とピアノ息子のドラマ部分は幾分ありがち、平凡な発想という感じもしましたが、これが黒沢監督によって、奇妙なほどに個性的な方向へアレンジされていった感じですよね。俳優陣の演技も監督の演出力もお見事でしたよね。
ドビュッシーを使いたくなるのはわかるんだけど、ここまで重要なシーンでまるまる使っちゃうのは、むしろ残念で・・・
Commented by CaeRu_noix at 2008-10-13 12:03
peridot さん♪
訪問、ありがとうございますー。
香川さんったら、バッチリつなぎが似合ってましたよね。
本来、ここはそれまでスーツ姿でビシッときめていたビジネスマンが、ブルーカラーなユニフォームを着る姿にやるせない感情が生まれるシーンになりうるはずなのに、似合っちゃってましたからね。香川さんあっての本作でしたが、このシーンに限っては、キャスティングミスだったかもーって思っちゃいました。(笑) 
ソナタというタイトルの作品で、ドラマによってこれだけ不協和音を響かせるとは素晴らしいですよね。
伝統的な音楽においては明らかに不協和音だったものも、斬新な現代音楽の中では芸術とみられるようになったりして(弟分、青山真治がノイズという音楽を取り上げていたことを思い出しつつ)、不さえも調和と美をもたらすのかもという気もしたりしますよねぇ。
うーん、分析のしがいがあります。やっぱりこの人の世界は。w
TB、後ほどおくらせていただきまーす。
Commented by 狗山椀太郎 at 2008-10-15 00:24 x
こちらにもお邪魔します。
私は今まで3作くらいしか見ていませんが、黒沢清には一風変わったクセのある監督さんというイメージを持っているので、社会背景や家族関係についてのリアルな描写は最初からあまり期待しておりませんでした。そういう意味では、役所広司のヘンな強盗さんが出てきてからの展開は面白かったですね。まったく動じないお母さん役のキョンキョンもよかった。年相応の老け具合といったら失礼ですが、そういうものと、やっぱり声の質でしょうか、どこか可愛らしい雰囲気が重なって魅力を感じました。
Commented by CaeRu_noix at 2008-10-16 00:22
狗山椀太郎 さん♪
黒沢作品は私もそんなに見てません。7本目くらいかな。ホラーというジャンルに惹かれないこともあり。
黒沢清のことは語れない私なんですが、確かに一風変わった作風ですよね。ホラーと思いきや、思いきりコメディ寄りだったり。でも、監督は笑いをとろうとしたわけでもなかったりとか。描きたいことがつかみづらい作家なのでした。リアリティには期待はもちろんしないんだけど、邦画の現代のドラマを見ると、どうしても細かい部分の不自然さが気になっちゃうんですよね。ファンタジーと割り切るには、題材はやっぱり現実的だし。と、場面ごとにどうしても私は気になる不自然さがいくつかあったんですが、それを気にしないでいられるほどに、やっぱり見ごたえがあるんですよねー。役所さんの出演を忘れていた頃に、あんな役で登場するのもオモシロ過ぎでした。
キョンキョンはいい女優さんになりましたねー。チャーミングなママさんです。黒沢監督はキャスティングと演出のセンスも抜群ー
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