かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『シルビアのいる街で』 (東京国際映画祭 その2)
2008年 10月 24日 |
6年前に出会った女性の面影を探して青年が街を歩く。
2007年ヴェネチア映画祭コンペ出品作。



「En la Ciudad de Sylvia」(WORLD CINEMA部門)
監督:ホセ・ルイス・ゲリン (スペイン)
出演:グザヴィエ・ラフィット、ピラール・ロペス・デ・アジャラ、ターニヤ・ツィシー

このたびのTIFFの鑑賞作は、完成度の高いものが多いと思うのだけど、物語内容的には重苦しいものの比率も高くて、心温まるヒトトキを得る機会が少なめだった中、こんなにも感性に訴えるモロ好みな映画に出会えたのが嬉しい。
これはね、あなた達の映画ではなくて、私たちの映画なの。
私も何度もシルビアを探していたなぁってことを思い出す。

この前々日だったかに、路面電車の話をして、その時にストラスブールの街の名前もあがったのだった。映画が始まってしばらくして、この街は一体どこなんだろうってことにまず興味を持つの。カフェでは多くのフランス語が聴こえてくるから、フランスなのだろうけれど、どうもパリの風景とは全然違う。そして、登場する路面電車。私はその街を訪れたこともないというのに、フランスで路面電車といえば、きっとストラスブールだよねって思って、すごく嬉しくなった。

ヨーロッパの街のオープン・カフェでは人間ウォッチングしちゃうよね。路地で迷子になりそうになったりするよね。歩き疲れた時にふと聴こえてくる鐘の音が本当にステキなんだよね。旅人の姿を通して、街の日常の何てことのない風景が詩的に切り取られていく。彼と共にその街とそこを行き交う人々の息吹を感じて。街を訪ね歩くことのときめきを思い出しながら、その魅力にすっかりとハマっていく。そよぐ風も人の足音も風景の全てがきらめいて弾んでいるんだもん。

主人公の彼、グザヴィエ・ラフィットくんはこれまたカッコいい青年で、寡黙に悩む姿が絵になるの。ストーキングしてもカワイイし? ラテン男のちょいと甘めマスクはオトメチック過ぎるほどなんだけど、女子的には胸キュン度を高めてくれる彼のルックスであって、彼だからこそ、詩的映像がきらめくロマンチックな美しい映画になったと思うの。(王子系?先生の推奨で観に来た人たちには共感しにくいタイプのようにも思うけれど?) 彼目線でシルビアを見つめ、彼女たちを見つめる。そして、見知らぬ彼に見つめられる彼女たちの1人に、誰もが瞬時になり得るのだということを思う。(知らない人しかいない場所でも身なりや立ち振る舞い等他人の目を意識しましょうって?)

シルビアという女性を探しているはずの彼が、カフェで目に入った別の女性の姿を熱心に描いてみたり。何かが流れるように、世界は回っている感覚、リズムが感じられるのが心地よいの。目当ての彼女がウィンドウの向こうにういるのに、二階の窓越しに見える女性に目が釘づけになっちゃうところは面白くて、観客はハラハラしてしまうウィンドウ使いがいい感じ。ガラスや窓越しの光が美しく輝いて、走るトラムはクラクラしちゃうほどにステキだった。詩情あふれる美しい映像を生み出しながら、同時に少しずつユーモラスにトホホ感をもたらしてくれるところが心憎いなぁって。(そのズラシを何と呼ぶんでしたっけ?ヤタベさんー)

「アンナと」に続いて、「シルビアの」もストーカーものだったりしたわけだけど、のぞきと侵入に比べると明るい時間の街尾行は清々しいような気がしなくない?かくいうワタクシも、本格的なストーキングはしたことないけれど、ちょろっと尾行は何度かしたことありましたかね・・・。バッタリ遭遇できる確率はかなり低いはずなのに、その人と出会う可能性のある場所に行ってみたりしたことって、あるよね???偶然の出逢いの歓びも失意も。陽射しを浴びて、風に吹かれていく。彼女たちの髪がなびく。シルビアを探して。シルビアを待ちながら。バスを待ちながら。あなたのシルビアになりたーい。世界中の街で、彼の物語と彼女たちの物語が繰り返されている。

シンプルだからこそ素晴らしい、映画的な魅力あふれる映画。これは女子好み系ですよ。ホウさん、王さん的ロマンチシズムというか。日本公開されるスペインものは、ホラーだとかちょっとアクの強いタイプがなぜか多い中、詩的に美しい作品を届けてくれるさすがのエリセ組? こないだエル・スールを観にいったもの。

でも、ティーチインはやっぱりあまり聞かない方がよかったかなぁ。映画監督は神のような存在であるのはわかりきっていても、あえて、小津のようにムルナウのようにコントロールしているなんて言葉は聞きたくなかったかも。作り込まれた計算されたものだとはわかっちゃいるんだけど、私はそれらのことが偶然に起きて、たまたまカメラに映し出されたかのような印象をもっていたかったのかもね。

ともあれ、ホセ・ルイス・ゲリン的センスは、断然支持。
グザヴィエくんは『ガブリエル』にも出ているんだね。
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by CaeRu_noix | 2008-10-24 07:51 | CINEMAレヴュー | Trackback(6) | Comments(8)
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Commented by umikarahajimaru at 2008-10-24 08:40 x
そっかあ、この映画はかえるさんのお気に入りになりましたか。
映画ってどこかで主人公のメンタリティーに入っていける瞬間があると思うんですけど、この映画に関しては、私の場合、それがなくて、「彼」は最後までずっと「他人」のままでしたね、残念ながら。ひょっとして彼の姿はほかの誰にも見えていなくて『言えない秘密』してる映画かと思ったり(笑)。
「ラウール・ジュテーム」という落書きがそこかしこにあったり、カフェ自体も演劇学校の学生が集まるカフェだったりして、愛と芸術の町が舞台で、街自体がもうひとつの主人公かと思ったりもしましたね。
Commented by umikarahajimaru at 2008-10-24 08:54 x
追記:
青山真治は、この映画を『白夜』(ヴィスコンティのではなく、ブレッソンの方)のリメイクだと書いてますね。なるほどね~。
と聞いても、私の印象は変わらないんですが。
Commented by Minita at 2008-10-24 13:13 x
かえるさんのレビュー読んで、見逃したことを大後悔です(泣)
私もちょい甘めマスクのラテン男にストーキングされてみたいと
妄想がはいりました(違)

私も今年のTIFFは好きな作品が多いです。
レビューは全然かけてませんが・・・。

ところで、ヒルズって美味しく食事できる店が少ない気がしますが、
お勧めってありますか??



Commented by CaeRu_noix at 2008-10-25 08:13
umikarahajimaru さん♪
至福の映像詩なんていう紹介文とその写真1枚だけで好みのタイプであることは予想できたんですが、期待は裏切られなかったです。
『言えない秘密』みたいなオチもありえそうなほどの不思議な空気が満ちていましたよね。そこがステキでした。でも、彼は冒頭のカフェでちゃんと給仕されていたから、他の人にも見えていたかと。でも、そういえば、レヴュー書いている時に、私も『言えない秘密』のことを思い出しましたよ。あちらは主演の男女のルックスがイマヒトツ好みじゃなかったから、その恋愛ドラマにハマれなかったけど、その点こっちは男女が画的に美しいのが私のツボだなぁって。w
そうですね。街が主役の映画であったと思います。そもそも街もの、街歩きものって大好きなんですよね。私好みの素材、ディテールがいっぱいでした。ストラスブールに行ってみたくなり。ヨーロッパの街はいいなー。
青山さんの文章を読んだことってないかもしれない私。ブレッソンの『白夜』なんて観ていないので、なるほどーと言うことはできませんが、なるほどー。
どこぞの人が絶賛したからといっても、結局は好みの問題ですよねー
Commented by umikarahajimaru at 2008-10-25 08:34 x
青山真治監督も、ブログやってますよ~。最近の話題は、キム・ギヨンの衝撃についてですが。
Commented by CaeRu_noix at 2008-10-26 00:17
Minitaさん♪
ストーキングされるなら甘めラテンイケメンがいいですよねぇ。w
はい、これは見てほしかったですよー。
本来ならば女性向けの映画のような気がするんですよね。
主演のこのキャスティングは女子のためのものでしょうって思うし。
全く同じ内容でも、主演がハビエル・バルデムだったなら、こんなふうに胸キュンな映画にはならなかったと思わざるを得ないー。見た目で差別してごめーん。

その件は、お役に立てずすみません。ヒルズのおいしいお店データは全くなっしんぐです。自分が途中食事をしたのは3回ほどだったんですが、クイックパスタとかカプリチョーザとかね・・・。唯一、休日昼に、某レディにご案内いただいた紅茶屋さん系のお店ではヘルシーで優雅なランチをしたくらいのもので。軒並み食事の時間もないケースが大半でした。お腹がグー。で、終わった後はビールに焼き鳥なパターンとか・・。
そんな六本木通いも昨日まででしたー。
Commented by CaeRu_noix at 2008-10-26 00:30
umikarahajimaru さん♪
たびたびどうもー。
青山ブログは是非読んだ方がよいってことでしょか??
本当はそんなに青山っちに興味はないんですが。(笑)
いえ、青山氏も黒沢氏も彼ら自身はそれは素晴らしい映画作家、文化人だと思います。ただ私は、ひたすら彼ら一派を崇めて、右に倣っちゃうしねふぃるさんが大勢いることに拒絶反応がおこってしまうみたいで。みんなが同じのを観て、同じのを褒めているのがナンダカナーって感じなので、私はあまり耳を傾けたくないのです。そもそも好みや感性は違う気がするしー。
とか言っておきながら、ハスミンに影響される人々の多さを認識したのは、ほんの1,2年前くらいのもので、まだまだリサーチ中なんですが。なんで見るからに好みが違いそうな人たちがこぞって同じ監督を称賛しているんだろうと不思議に思った時期があって、その後その謎が解けてきたのでした。本作のチケット売れ切れ現象にもそれはビックリでしたよ。
ま、青山っちは去年観た「サッドバケ」がよかったし、秘宝おの時に生トークを初めて聞いて好感度はアップしたんですけどね。でも、基本的にはやっぱり興味ないかもです。私は岩井俊二、是枝が好きなんです。(笑)
Commented at 2008-10-26 04:12 x
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