かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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第21回東京国際映画祭 鑑賞メモ その6
2008年 10月 29日 |
おしまい

鑑賞メモ その6  ヨーロッパ



『ハンガー』 (WORLD CINEMA) イギリス
 Hunger   (英語)
監督:スティーブ・マックィーン 
出演:マイケル・ファスベンダー、リーアム・カニンガム
2008年カンヌ映画祭カメラドール(新人賞)
北アイルランドのメイズ刑務所でハンガー・ストライキを実行したIRAの活動家ボビー・サンズ。
さすがのスティーブ・マックイーン。違。刑務所ものは多数観てきたこれど、こんなにも凄まじさに圧倒されてしまうものはなかなかない。この行動、その気迫、すごすぎる。糞尿作戦にも驚嘆。看守たちのお仕事の方だってしんどいだろうし。傍観できずに緊迫感いっぱいのままで引っ張られる。描かれている内容は酷いのだけど、画的には端正に整っていて。前半の刑務所描写だけで充分に、心は凍りついたのに、終盤のハンガー・ストライキ末期の姿がまた痛々しくて。その意志の強さっていったい・・・と思うわけで、サンズと神父の対話のシークエンスも興味深いものだった。信仰をもつ聖職者でさえも説得する余地のない強い信念があってのことなのかと。
画家でもあるというスティーブ・マックイーン。

『ホーム 我が家』 (WORLD CINEMA)
 HOME  (フランス語)
監督:ウルスラ・メイヤー
出演:イザベル・ユペール、オリヴィエ・グルメ、アデライード・ルルー
高速道路脇の家で暮らす一家の物語。
魅力的なキャスト。スクリーンで見るのは久し振りのイザベル・ユペールが嬉しい。スリムです。このドラマの状況設定は一風変わっていて、普通ならファンタジーかコメディにしかならないようなものなのに、それがリアルに物語られるのが面白くて。冒頭のやたらにハイテンションな家族の姿がまた鮮烈だったんだけど、高速道路が開通して、気まずさが漂っていく。クスクス笑える箇所多し。渋滞模様にウイークエンドを思い出し。妙なお話のようでいて、似たようなことは世界中でおこっているような気もするし。自分たちのお城が奪われることに人はパニックしてしまうものなんだなぁ。不思議テイスト。

『クスクス粒の秘密』 フランス (WORLD CINEMA)
 LA GRAINE ET LE MULET (フランス語)
監督:アブデラティフ・ケシッシュ
出演:アビブ・ブファール、アフシア・エルジ、ファリダ・バンケタッシュ
2007年セザール賞
"チュニジア系フランス人家族のクスクス料理店開業騒動を尋常でない緊張感で描く。ケシッシュ監督のアクの強い演出が鮮烈。"と紹介されていて、「尋常でない緊張感で描く」、「アクの強い演出が鮮烈」というフレーズに興味津々。そして、なるほど納得。人々の日常のやり取りがこんなにも濃厚に描写されるとは。物語そのものには大した起伏はないはずなのに、それを演出で見せきっちゃうのは凄いなぁって。フランス人はお喋りだけど、チュニジア系フランス人もお喋りなのね。彼らの人間模様はとても興味深いのだけど、クローズアップで感情むき出しで喋りまくられるのは暑苦しさをも覚える。だけど、それゆえに引き込まれっぱなしで、不快さを感じる一歩手前のところで圧倒されたまま見入ってしまうの。長いのに長さを感じなかった。もの悲しい物語なのに、エネルギーが燃えたぎる。うん、凄い。そんなに執拗におなかを映しちゃうこの監督って・・・。

『8月のランチ』 イタリア (コンペティション)
 PRANZO DI FERRAGOSTO (イタリア語)
監督:ジャンニ・ディ・グレゴリオ
出演:ジャンニ・ディ・グレゴリオ、ヴァレーリア・デ・フランチシス、マリーナ・カッチョッティ
ベネチア映画祭・批評家週間・新人監督賞
Ferragosto(8月15日/聖母被昇天の祭日)に際し、ローマで年老いた母と暮らすジャンニは、大家の母親を預かることになり。4人のおばあさんを家に置かざるを得なくなり、てんやわんやな1日+が展開。でも、あくまでもささやかな日常。何てことはない物語ゆえにとても愛おしいステキな小品。好みテイスト。ばあさん達はもはや人に気を使ったりもせず言いたい放題なのが面白い。慌てるジャンニの姿もね。そのやり取りはコミカルなのに、ローマという舞台のせいなのか、その映像はしっとりと美しい。雰囲気、料理はとてもおいしそうだし、窓から差し込む光が美しいし、スクーターで駆けるシーンは素晴らしく気持ちよかった。主演は監督自身だと後で知る。

マイク・リーの『ハッピー・ゴー・ラッキー』が観られなかったのが残念。
カンヌ・グランプリの『ゴモラ』も観たかった。

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韓流ブームがあったかと思えば、日本映画絶好調だったりして(製作本数にしても、大ヒット作にしても)、ヨーロッパのアート系作品の一般公開本数が非常に少ない昨今。この機会に、優れた優れた作品の数々を観ることができて大満足。
プログラミング・ディレクターの矢田部氏以下のスタッフに感謝です。
一つの映画祭でこんなにたくさん観ちゃったのは初めてなんだけど、欲張らずにはいられなかったとてもとても魅力的なラインナップだったのでした。
こんなTIFFったら、素晴らしい。
終盤は風邪もひいちゃったし、忙しかったけど、充実の日々でした。
―と過ごした4日間にソワソワしつつ。
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やっぱり映画は脚本そのものじゃなくて、演出であり、映像や音声、視覚と聴覚に訴えるものが命だよねーってことを実感。
やっぱり作家性ありきだよなーという思いを新たに。

かえるグランプリ・金蛙賞は
『シルビアのいる街で』

銀蛙賞は、
・『レイク・タホ』
・『トルパン』
『アンナと過ごした4日間』

銅蛙賞は、
・『8月のランチ』
・『クスクス粒の秘密』
・『スリー・モンキーズ』

鉄蛙賞 も追加
・『ムアラフ』
・『ハンガー』
・『ホーム』
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by CaeRu_noix | 2008-10-29 23:59 | CINEMAレヴュー | Trackback | Comments(4)
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Commented by umikarahajimaru at 2008-10-31 01:31 x
こんばんは。
私も今年はたくさん観ちゃいましたが、う~ん、これはどうだろう?っていう作品も多かったですね。それに引き換え、かえるさんはほとんど外してなくて凄いですね~。
ここに挙がっている以外では、『陽もまた昇る』『ゴモラ』『世界の果ての出会い』あたりも面白かったですよ~。
あと、矢田部さんていうのは、コンペ部門のみのプログラミング・ディレクターだと思いますが……。
Commented by CaeRu_noix at 2008-10-31 23:56
umikarahajimaru さん♪
たくさんご覧になったのですねー。
これはどうだろう?っていう作品のことも気になります。(笑)
ほほほ。私のセレクトはなかなかのものだったと思います。自画自賛。
(marionさんの手堅さには負けるけど)
『陽もまた昇る』『ゴモラ』も観たかったんですよねー。
『世界の果ての出会い』って、ヘルツォークなんですね。観たいー!

矢田部さんの役割の全てはわかりませんが、ブログの9月22日の記事を読んだ限りでは、彼あっての「World Cinema」部門という感じでもあるんですけれど。?!
http://blog.cinemacafe.net/tiff2008/blog/2008/09/000539.html
「海外の有力監督の新作や、大きな映画祭で受賞した作品などが日本で公開されないケースが多いことを、僕はかねてから悲しく思っていました。そして苦節数年を経て、去年からようやくその趣旨を汲んだ部門、WCを立ち上げることが出来たのでした。」という言葉に感謝なのです。
Commented by シャーロット at 2008-11-02 11:41 x
寝ても覚めてもシルビアを探してるんですけど。笑
そんなに強力プッシュされると、やっぱり見なかった事を後悔しちゃうぅ。
でもかえるさんのレビューはしっかり読んじゃったw
他、私が見られなかった作品のレビューも拝読いたしました。もうそれで見た気分になったから満足ww
いつかどんな形でもいいから御縁がある事を祈ってます;;

で、「ハンガー」ですが。
監督の名前がまず印象的でして;画家でもあるのですか~
もう映画は私には強烈すぎちゃって。ホントすごすぎました。
そうそう前半だけでも十分圧倒されたんですが・・・後半は辛かったですよ。。。もし帰りが一人だったらしばらくどよよん気分だったかも。お付き合いありがとでした。いつもなら飲んで帰ったと思うのだけど、めずらしく飲めなかった;

Commented by CaeRu_noix at 2008-11-03 10:38
シャーロット さん♪
シルビアを探しています。私もいつだってー。
観る前は、何やら必見作品っていう不明瞭な情報に過ぎなかったのだけど、実際に観てみて、こういう感性に訴えるタイプの映画は、○○の○○なシネフィル○〇男性陣よりか、シャーロットさんなどに観てほしい映画だなーって思いましたのよ。

クスクス粒は、一般公開はされないタイプかなって思いました。でも、いつかCSなどで放映されたりはしそう。クローズアップがやたら多いので、スクリーンじゃない方がむしろほどよいかもーと思えたりもして。

ハンガーは辛かったけど、心が凍りついて引き込まれっぱなしだったから、作品としては素晴らしいなって。酷い内容を描いた映画でも、表現が下手だと傍観しちゃいますもんね。内容は凄まじいのにショットは美しいものでしたよね。画家と知って納得。
私は圧倒されたといえば前半の方かな。で、神父との対話のシーンにもすごく引き込まれてしまったし。最後のヤセヤセはただただ目をそむけたいって感じで・・。あれって、合成などではなく、医療によって、本当に痩せたらしいですよ。
あんなん観た後でもガツガツ飲み食いしちゃう私って・・。ありがとうございました。
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