かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『リダクテッド 真実の価値』
2008年 11月 06日 |
戦地の狂気とメディア操作の恐ろしさは現実だってこと。

ビデオ・ダイアリーを撮影して映画学校に入学するという目論みから兵役に志願したサラサールがイラクのサマラにある米軍駐屯地で撮ったビデオ映像から明らかになる真実・・・。



タイトルの"Redacted"とは、"編集済み"という意味なのだそう。検閲済という感じなのかな。問題のある部分が削除された文書や映像を指すらしい。

メディア等によって届けられるニュースは限られたものであること、報道には偏りがあること、意図的に情報は操作されるということを知っている私たちにとって、とても興味深い作品であった。ここに描かれているのは、実際に、2006年に米兵がイラクで起こした事件がもとになっているというのだから、これは悠長な一般論レベルの問題提起ではない、ブライアン・デ・パルマ監督の決死の思いがうかがえる渾身の一作なのだ。そんな取り組みにヴェネツィア映画祭の銀獅子賞がおくられたことにはなるほど納得。

だけど、そういった取り扱いにくい現実問題に果敢に切り込んでいることを抜きにすればと、1本の映画としては、『グアンタナモ、僕達が見た真実』ほどに、直接的に私の心にガツンときたわけではなかった。一米兵が撮った映像を通して伝えられるという手法はおもしろいと思うけれど、モキュメンタリーのスタイルは目新しくもなかったし、ドキュメンタリー風に撮ってはいても、それはフィクションであるという確信があるわけだし、そういう素人テイストの撮り方をしていることで、むしろ衝撃が損なわれてしまった感じもあって、個人的には、そのやり方が最大の効果を発揮していなかった気がしたのだよね。この事件そのものは題材としては初めて観たのではあるけれど、同じような類の戦地での悲惨な出来事を描いたものを見過ぎていたせいか・・・。

でもね、多くの場合、戦争だとかその事件が終わってから数年、十年以上の時を経てからやっとその題材が映画化されるものなのに、遠まわしな婉曲表現をすることもなく、向かい風を覚悟の上で渦中にすばやく本作を作り上げたことには拍手をしたい。とにかく意義のある作品だった。だって、たぶん私は、このマハムディヤの事件のことを、アブグレイブ刑務所のことのように認識していなかった気がするのだもの。一般市民が被害者となるこのような酷い事件が常に起こりうる戦地、そんなことが常に起きているのだろうということは俄かに知ってはいても、俄かに、という次元のままで、事の重さを直視することさえなく。真実が覆い隠されていることにも気づかないまま、他の身近なニュースに気をとられてしまうばかりだったと思うから。

この物語は、『告発のとき』につながったりもするし。『大いなる陰謀』の葛藤のことも思い出す。アメリカはベトナム戦争の傷をどうして教訓にできないのだろうと思うこともあったけれど、ひょっとしてひょっとしたら、オバマ氏を選んだ人の中には、それらの映画に影響を受けたっていう人もいるかもしれないよねぇ。そんなわけで、オバマ新大統領の誕生。どれほどの変革が実現されるのかはわからないけれど、多くの命が犠牲になるばかりのハイコストなせんそうはどうかやめにしてほしいなとは思いますが。撤退。

戦地のシーンからは、ブリュノ・デュモンの『フランドル』 のことも思い出した。
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by CaeRu_noix | 2008-11-06 23:58 | CINEMAレヴュー | Trackback(5) | Comments(0)
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