かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『マルタのやさしい刺繍』 Die Herbstzeitlosen
2008年 11月 11日 |
ひと花咲かせましょうー。遅すぎることなんてない。

スイス、エメンタール地方トループ村に住む80歳のマルタは、9ヶ月前に夫に先立たれてから気落ちしていたが、ある日、昔得意だった裁縫仕事を依頼されて・・・。



ハートウォーミング系、ヨーロッパ映画は大好き。そして、じいさん映画、ばあさん映画も好きなのだよね。それもなかなかお目にかかる機会の少ないスイス映画。お、ブレネリ。去年は、『僕のピアノコンチェルト』 で、ステキなブルーノ・ガンツじいさんに出会えたのだけど、こちらのマルタもとっても魅力的なおばあちゃんなのだった。白髪で目だけギョロっとして骨ばったそのおばあさんを最初は魅力的だなんて思わなかったのに、やりたいことを見つけてから彼女の表情は輝くのだよね。これが80歳(この女優さんの実年齢は80代後半!)だなんて信じられないほどに活き活きしているの。彼女たちの朗らかさと、のどかな田舎の風景にも心洗われる。エメンタールチーズの産地なのだ。やーほ、ほとららら。

でも、のどかで美しいばかりじゃなく、田舎のコミュニティには古臭く面倒なしがらみがあるのだよね。ランジェリー・ショップなんていかがわしく恥ずかしいものだと真っ向から否定する封建的なオヤジたちの頭の固さにはウンザリ。せっかくマルタが、生きがいにできるようなことを見つけたというのに、年老いた女なんて家に引っ込んでりゃいいということなのかしら。そもそも、人にとって必要なものを売っているランジェリー・ショップが、いかがわしい店呼ばわりされるのがよくわからないのだけど(地味な下着ならいいの?)、田舎のオジサンたちから見たらそういうものなのかもしれないね。世代的には彼らより上のマルタたちが、村のコミュニティの主導権を握っている息子世代の男たちに立ち向かうという構図が興味深い。それは旧態依然としたムラ社会のお馴染みの問題にも思えるし、近年顕著になっている高齢化社会の一側面なのかもしれないね。

とにかく、気落ちしていたはずの80のおばあちゃんが、自分の得意なことを活かして、もう一度人生のきらめきを取り戻そうと奮闘する姿に胸が熱くなるの。その得意なことというのが、刺繍なんていう家庭的で女らしいタイプのものでありながら、それで良妻賢母なものへ保守的に向かうのじゃなく、華やかファッショナブルなセクシーランジェリーのお店を持ちたいって方向にいくから楽しくなってしまうのだ。田舎だから、もう年寄りだから、ということに遠慮なんてせずに、おしゃれランジェリーで夢を実現っていうのがこの物語の好きなところ。マルタの孫世代のお嬢たちが、頑固偏見オヤジ連中の前で堂々とファッションショーを見せてくれたところもまた爽快。若い世代に受け継ぐべきこともあるのだろうし、でも、ずっと現役でがんばっていいこともたくさんあるはず。年金はちゃんともらえない老後なのだとしても、活力を失わずに暮らしていけたらいいね。


原題のDie Herbstzeitlosenはコルチカム(イヌサフラン)という花のことで、秋に咲く花なのだそう。人生の秋に花を咲かせましょうってことね。
映画祭上映時のタイトルは、『遅咲きの乙女たち』

女性監督の作品だけあって、ファッション、小道具、色とりどりで美術的にもステキでした。この72年生まれのベティナ・オベルリ監督は、スティーヴ・ブシェミのもとでルー・リードの音楽ビデオの撮影をしたり、ハル・ハートリーのもとで舞台装置アシスタントをした経歴をもっているというのもまた興味深いのでした。
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by CaeRu_noix | 2008-11-11 22:37 | CINEMAレヴュー | Trackback(12) | Comments(12)
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Commented by margot2005 at 2008-11-13 00:02
かえるさん、こんばんは!
TBありがとう!
ポスト・カードのような景色と美しい刺繍のランジェリー...あんなランジェリー、ネットで発売していたら買いたいですね。
やはり女性監督の成せる技でしょうかしら?お花の名前を冠したタイトルもお洒落でした。
とにかくおばあちゃんはガッツありましたね。
わたしも将来あのように楽しく過ごせたら良いな...なんて思いましたわ。
Commented by CaeRu_noix at 2008-11-13 18:47
margotさん♪
スイスの山村の美しさにはカレンダーの写真やテレビのドキュメンタリーでは馴染みがありますが、意外と映画館で目にする機会は少ないので改めてうっとり。スイスはジュネーブあたりにしか行ったことがないんですがのどかな村の風景はやっぱりステキだなぁと。
色とりどりの刺繍が施されたらんじぇりーを眺めるのも楽しかったですよね。私もマルタ印の下着がほしいかも。通販の手軽さでこんなにオサレなものが買えるならいいですよね。ハンドメイドの割には安価だったりするのかしら。
そして、自分も歳をとった時にマルタのようにイキイキとしていられたらよいなと思いましたよね。がんばりましょう~
Commented by はらやん at 2008-11-13 22:05 x
かえるさん、こんばんは!

おばあちゃんたちが、保守的な息子世代をぎゃふんと言わせてしまう様子は爽快でした。
若さっていうのは年齢じゃないんですよね。
ある程度、年がいくと男の方が保守的で、女性の方が革新的かもしれないですね。
なんとなくおじいちゃんよりおばあちゃんの方が元気なイメージがあります。
Commented by CaeRu_noix at 2008-11-14 23:20
はらやんさん♪
爽快、痛快でしたよねー。
年齢が上の方がより保守的なものかと思いきや、逆だったのが面白かったですよね。結局年齢なんかじゃなく、そういう官僚主義的なものって、権力を握り管理する層がもつ特性という感じなのかもしれませんね。
女性は立場の気楽さゆえ、自由に行動できるのかなぁとも思いますしね。
本当に年齢は関係なく、マルタたちは少女のようにハツラツとしちゃっていたし、息子やその世代のオジサンたちは、老害の元凶っていうような存在でしたね。
確かに、とりわけ日本なんかでも、お年寄りは男性より女性の方が元気なイメージですよね。オジサンたちは定年退職でがっくりきちゃうけど、おばさんたちは子育てをおえて、自分の人生をエンジョイしようという態勢に入ったりして。
高齢者の犯罪が増加なんて悲しいニュースもあったりする、生きづらい社会だけど・・・。
皆がマルタのように、イキイキと日々を暮らせたらいいのですが。
Commented by ぺろんぱ at 2008-11-16 15:16 x
こんにちは。
マルタ達に「乙女」を見てしまいましたよ。(*^_^*)
夢見ることがパワーを生むのですね、本当に。

私はラストシーンがとっても清々しくて気に入ったのですが、そこで
大きく映されていた花・・・かえるさんのレヴューを読ませていただいて
ハッとしました。
>原題のDie Herbstzeitlosenはコルチカム(イヌサフラン)という花
あの花がそうなのかしら・・・と。
違うかもしれないけれど、あの花は印象的だったなぁと。

あの村の風景には見入りました。
私もあんなところで思いっ切り深呼吸してみたいです。

あ、そうそう、かえるさん御旅行なのですね!
どうぞ佳き旅を!! (^o^)丿
Commented by BC at 2008-11-20 03:11 x
かえるさん、お久しぶりです。

原題は花の名前なのですね。
素敵なタイトルですね。
前向きでオシャレ心もある彼女達に憧れました。(*^-^*


P.S.
今年も旅レポUPされるならば、楽しみにしていますね♪
Commented by Minita at 2008-11-21 13:11 x
かえるさん、旅楽しんでますか~?

空気のおいしそうな村ってやっぱり人々は長生きするんですかね~。
みんなご老人がかなり元気なような気がしました(笑)
本当にマルタをはじめとするおばあちゃんたちが皆キュートでしたね。

夢をおいかけるうちに、どんどんキラキラしていくマルタに
私もかなり元気をもらいました~。
年をとっても、ああいうふうに活き活きしていたいものですね!
Commented by CaeRu_noix at 2008-11-22 02:10
ぺろんぱ さん♪
旅行から戻りましたー。
これって、前に大阪ヨーロッパ映画祭で上映された作品なんですよね。
今年もまたよさげなラインナップでうらやましいです。
でも、評判のよかった作品は本作のように、一般公開されることになったら嬉しいなぁ。
ホントにマルタたちは乙女でしたよねー。
いい年をして恥ずかしいとか年寄りの出る幕じゃないとか思っちゃーいけないなぁって考えさせられました。
夢は見続けなくちゃ。
イヌサフランなんて言われても思い浮かばない私ゆえ、花の画像検索して、なるほどーって思ったのでした。
スイスの村の清らかな美しさもランジェリーのカラフルな美しさもステキでしたね。
年をとったら、空気のきれいなところに住みたいかも。
Commented by CaeRu_noix at 2008-11-22 02:19
BC さん♪
サヴァ?
そうそう、原題の意味は私も後で知ったのですが、しゃれていて素敵な意味合いのタイトルですよね。
マルタたちの前向きさには元気づけられましたよねー。
見習わねばー。

旅行記はザザッと記事にする予定ですー。
BCさんは海外旅行などには行かれないのかしらん?
Commented by CaeRu_noix at 2008-11-22 02:20
Minita さん♪
楽しんできましたー。
空気のおいしいところは長生きできそうですよね。
日本でも田舎の方がやはり長寿を誇る方が多い感じですし。
食べ物なども重要なのかもしれないけど、排気ガスなんかも少ないにこしたことがない気がしますー。
かなり元気な老人たちでしたよね。
病気で長生きっていうのはあれなんですが、いかにも健康そうな方々ばかりで何よりでした。
どんどんキラキラしていくところはマルタを演じる女優さんの演技力の素晴らしさでもあるのでしょうけど、80代後半でそんな女優力を見せてくれるところは、別の局面でまた感動的ですよね。
活き活きと健康な老後を目指しましょうー
Commented by 真紅 at 2008-12-10 09:39 x
かえるさん、こんにちは。TBさせていただきましたー。
この映画、すっごくよかったです。。ミテヨカッタ。
原題は、秋に咲く花のことなんですね。
観ながら、「これって季節はいつなんだろう?」と思っていたんですよ。
お花はたくさんだから春っぽいんだけど、木々は紅葉しているから秋かな?とか。
映画祭で上映されてたとは・・。さすが東京!
若い女性監督が撮ってくれたというのも、またうれしいですね。
ではでは、また来ます~。
Commented by CaeRu_noix at 2008-12-10 23:02
真紅さん♪
よい映画でしたねぇ。
お年寄りな年代の主人公が奮闘する映画というとじいさんものが断然多いのですが、男より女の方が長生きという現実をふまえ、こういうのを女性監督が作ってくれたのはステキですよね。
花は春にだけ咲くものじゃないのさ♪
映画祭上映されたのは東京じゃなくて大阪ですよ。私が羨ましく思っている大阪ヨーロッパ映画祭!今年の秀作もまた一般公開されたらよいなぁと。
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