かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『未来を写した子どもたち』 Born Into Brothels: Calcutta's Red Light Kids
2008年 12月 16日 |
売春窟に生まれついたインド、コルカタの子どもたち。
2004年アカデミー賞最優秀ドキュメンタリー賞受賞作が今頃公開。



これって、町山智浩氏が日本での配給を呼びかけていたのですね。
なんで、今頃?ではなくて、やっとやぁ~っとの公開だったのか。

この映画のこととは関係ないけど、本作の紹介のついでに展開される町山さんの記事の映画評論家批判がおもしろい♪

>ブロイラーじゃないんだから、自分で映画を見つけ出せよ!


なかなか配給がつかなかったというのは仕方ないよね。雑食に見たがりな私でも、こういう題材の映画には、ある種の拒否反応を抱いてしまうのだよね。いえ、題材そのものにはとても興味があるの。豊かな日本とはまるで違う環境で生きる世界の子ども達の現実の姿を見たいなって思う。そこに横たわる社会問題を思い知りたいと・・。なのに、フィクションの『闇の子供たち』ならば迷わずに観に行くのに、この手のドキュメンタリーは積極的に観ようとはあまり思わなかったりするのだよね。

題材の重さの割に、手ごたえが感じられる社会派ドキュメンタリーに出会えることが少なかったというのも理由の一つだし。とりわけ、こういったものは、描かれているものの多くを想像できる気がするから。そして自分が、ああ、なんて可哀想な子どもたちなのって、いたたまれない気持ちになるだろうということも想像できてしまうから。それなのに、何もできないし、何もしやしない、という現実に向き合わなくちゃならないことまで想像されてしまうから・・・。

そんなことにうんざりするよりも、ローリング・ストーンズのLIVEドキュメンタリーを見て楽しむ方がいいに決まっているさーということになるの。どっちか片方しか見られないというならば、きっと私は 『シャイン・ア・ライト』を選んじゃう。例えば、フィクションの『それでも生きる子供たちへ』 を選んじゃう。今月どちらも未見だったら、シネスイッチでは、『マルタのやさしい刺繍』を見るでしょうしね。ドキュメンタリーならやっぱり音楽もの優先、同じ題材なら、作家性の強い監督の撮ったフィクションが優先というのは変わらない。

それでもね、これは観てよかったなと感じたし、ようやく配給されるにいたって何よりだなぁってしみじみと思った。アカデミー賞受賞しただけのことはあって、胸をうつ誠実なよい作品でした。それは結局、予想以上に作り手に好感をもつことができ、子どもたちに写真を教えるアメリカ人写真家ザナ・ブリスキの熱意に心打たれてしまったからかな。

この手のものに拒絶反応が起きるもう一つの理由は、作り手側に独善的なものを感じてしまうというのがあるからなんだと思う。アメリカ人の女性カメラマンがたまたま出会った不遇な子ども達に興味をもって、一つの計画が進められていくなんて。可哀想な子ども達を救おうと努めることは良きことなんだけど、それをネタにして感動的な映像作品をも撮っちゃうなんていう、一石二鳥な合理性が無意識に引っかかるのだと思えた。でも、やはり、結局のところ、何もしない人よりも彼女は断然に素晴らしいのだ。

カメラに向かって、子どもたちが目を輝かせながら、自分のことや未来のことを話すの。その屈託のない笑顔が本当に可愛いの。そして、少し驚いた。不遇な暮らしの中でも彼らが明るく元気であることに驚いたのではなく、外国人のスタッフ、カメラに向かって、あまりにも自然に素直に、小さな子どもたちが思いを言葉にすることに驚いた。自分が子どもの頃は、よその大人に対して、思っていることを話すことなんてできなかったウチキちゃんだったから。インドの子は日本人ほどにシャイじゃなく、人見知りをしない気質なのかなって。

映画の冒頭にはそんな第一印象をもった。それから、私は理解した。違うの、インドのこの子たちが特別に、人見知りをしない素直で社交的な子どもたちというわけじゃないんだ。ザナ・ブリスキはコルカタに暮らし、子どもたちと共に過ごし、写真を撮ることを教えた。そんな日々の中で子どもたちは彼女を慕い、心許すようになったんだよね。信頼できない大人に対しては、あんなにキラキラした瞳で話してはくれないよね。そこに芽生えた関係性があって、子どもたちの輝く笑顔がカメラに収められたんだね。だから、感動を呼ぶの。

夢をもつキッカケになるものは何でもいいのかもしれない。スポーツだっていいし、音楽でもいい。子どもたちに出会ったのが写真家だったから、写真を教えることになったに過ぎない。そうなんだけど、写真というのはとてもいいかもしれないなぁ。目に見えるカタチで残るものを生み出すのって感慨深いよね。静止した写真には、ファインダーをのぞいた時の感触とは異なったものが浮かんできたりして。子どもたちは物事の見え方が多様であることを学びとったのかもしれない。そして、その写真が売れたりもするのだから、賢いやり方だね。抜け出すことは簡単なことではなく、直接的に大きな変化に繋がった子どもは少ないのだけど、写真を撮ることで彼らの心にもたらされたものはかげがえのないものだったのじゃないかな。

変えることが難しいのは最初からわかっているし。
酷い親のもと、悪辣な環境で生きなければならない子どもたちの不遇に同情するよりも何よりも、子どもたちの元気な姿と、ブリスキさんの一生懸命さに胸がいっぱいに。
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by CaeRu_noix | 2008-12-16 23:51 | CINEMAレヴュー | Trackback(3) | Comments(2)
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Tracked from 地球が回ればフィルムも回る at 2008-12-17 00:17
タイトル : 『未来を写した子どもたち』についてもう少し・・
一昨日、書いたものがさすがにちょっと観念的な話みたいで、これでは具体的にどういう映画なのか、全然、分からないかも・・という気がしてきたので、もう少し、書くと・・ この映画って、小さなデジタルビデオカメラでおそらく撮影しているんだと思うんだけど、そういう小さなカメラの親近性というのを最大限に効果的に活用している作品なのではないだろうか? さらに、作り手自身がしている「運動」自体の記録みたいになっているのも凄いなと・・。 もっとも、あまりに「運動」の映画だから、ある意味、押し付けがましいとも言えるよう...... more
Tracked from 犬儒学派的牧歌 at 2008-12-28 22:47
タイトル : 未来を写した子どもたち:話がまとまりませんでした・・・
★原題:Born Into Brothels : Calcutta’s Red Light Kids...... more
Tracked from 銅版画制作の日々 at 2009-01-08 23:59
タイトル : 未来を写した子どもたち☆★女性カメラマンと8人の子どもたち
原題:BORN INTO BROTHELS:Calcutta's Red Light Kids   12月30日、京都みなみ会館にて鑑賞した2008年最後の作品です。第77回 アカデミー賞で、最優秀ドキュメンタリー賞を受賞した作品です。アカデミー賞は今年が81回目ですよね。ということは、もう4年前なのですよね。4年後に日本での公開になるなんて、何で? 舞台はインド・カルカッタ。ここにはこんな場所があったのだ。それは○春窟・・・・。写真の8人の子どもたちはその場所で生まれついた。 ...... more
Commented by 狗山椀太郎 at 2008-12-29 16:48 x
こんにちは。
ストーンズのライブフィルムは文句なしに感動しましたよ。個人的には年内ベスト1にしても良いくらいです。お時間がありましたらぜひ。そういえば、私も割と音楽関係の映画を優先して見る傾向があるので、現実問題を突きつけられてうんざりするよりは・・・というかえるさんの気持ちは分かります。
>写真を撮ることで彼らの心にもたらされたものは
>かげがえのないものだったのじゃないかな。
そうですね。写真撮影を通しての自己発見というか、各々の子供たちが自分のやりたいことを見つけていく流れは面白いですね。これは仮にフィクションだったとしても優れた作品構成だと思います。
Commented by CaeRu_noix at 2008-12-30 10:30
狗山椀太郎 さん♪
ストーンズのライブフィルムは観ましたよー
これを見るよりは、ストーンズを見ると明言している私ゆえ、これを見たということは当然、「シャインアライト」も見たのでした。
記事を書いてないですけど、素晴らしき興奮のLIVEでありました。

その話とはまた違うんですけど、映画のベストをランキングするにあたって、ドキュメンタリー作品の評価っていうのがまた難しいなぁと思うのです。
単純に自分の感動ではかればよいのだろうけど、感覚的にあまり上位に入れ込めなく。
だから、シャインアライトでどんなに感動・興奮しても、それを1位にはすることはない私。
私は、映画は基本的につくりもので、作家の作品である、と思っているからなのかな。

大自然ものや音楽ものは明らかに、大スクリーン、音響のいい場所で見る幸せがあるのに比べ、この手のものは、劇場鑑賞する意義をあまり感じないのですよね。
これは、DVDサイズでいいんじゃない?って思ってしまう。
でも、それじゃ結局なかなか見ないから、劇場鑑賞してよかったということになるかなと。

それがお節介な独善的なことであれ、子どもたちの可能性が広がることってやっぱり嬉しいことだと思えますー
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