かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
latchodrom.exblog.jp
(映画を見るのにいそがしくてブログはもう)
Top
『エグザイル/絆』&『イザベラ』
2008年 12月 19日 |
つながりは、中国返還間近の澳門。黄秋生。



<『エグザイル/絆』 放・逐 Exiled>

『ザ・ミッション/非情の掟』 の続きともいえる、マカオで因縁の再会を果たしたマフィアの仲間たちのドラマ。

男子ではない私が、香港映画において最も愛するのは王家衛監督作品なのだけど、もしも私が男子であったなら、きっと大いにジョニー・トーに熱狂したであろう。そうでなくても、『PTU』で、そのバイオレンスの緊迫感と夜の闇の美しさにシビれて以来、その手のジャンルに興味の薄い私でも、ジョニー・トー先生の名前はしっかと心に刻みつけたもの。残念ながら、前回の『エレクション』はあまり好きになれなかったのだけど、去年のフィルメックス上映の際にはチケットが素早く完売した今作は、評判も上々で楽しみにしていたのだった。

そして、それは期待を裏切らない、これぞ、ジョニー・トー印という快作だった。もはや、、『PTU』を観た時のように、その迫力に圧倒されて心釘付けになるというのではなくて、歌舞伎やオペラのお決まりの演目を鑑賞する時のような感覚で、様式美を堪能するような感じ。お馴染みの型のバリエーションをニヤリとしつつ、楽しんじゃうの。その独特のテンポ、リズムが気持ちいいだよね。ピンと張りつめたり、フッと揺るんだりの緩急のつけ方が小気味よくって妙に面白い。マカオの風景のせいか、音楽のせいなのか、黒社会ものなのに、何やらエレガント。

これって、脚本なしの撮影だったのね。ウォン・カーウァイみたいなことをやるんだ。ハリウッドなんかには、"出演作は脚本で選んでいるよ”なんてことを誇らしげに語る俳優もよくいるけれど、そんなシステムには同情を覚えます。どんなストーリーの映画なのかサッパリわからないのに、アンソニー・ウォンやフランシス・ンという、香港映画界のスターが監督のもとに結集するってことが、それはもう素晴らしいじゃないか。脚本がないからか、初めは背景や状況が掴みづらくもあるのだけど、お馴染みの顔ぶれのキャラクターがそれぞれに人間的な魅力を放っているから、全体像が見えずとも、引き込まれていく、魅了されていく世界がそこにあるのだった。

銃の扱いが上手い男は、鍋の扱いもお手の物。冒頭の突然始まる調理&晩餐シーンからして楽しすぎる。さっきまで命がけで銃を構えていたことが嘘のように、黙々と飯を掻き込む男たちの姿が何かを物語り始める。彼らの関係性についても、直接多くは語られないのだけど、映し出されたセピアカラーの写真が全てを伝えてくれるのだ。グダグダ説明せずに、画で、映像で見せきるっていうスタイルが抜群にカッコいい。男は黙って・・・のダンディズムに満ち溢れながら、カッコつけ一辺倒ではない愛嬌いっぱいに笑いのスパイスを混ぜ込んでくれる味わいもオツ。闇医者のところで鉢合わせするシークエンスが印象的。そして、にじみ出る男たちの厚い熱い友情にグッとくるのさ。



<『イザベラ』  伊莎貝拉 isabella> 2006

マカオ返還の前夜、警察官シンは人生最悪の1日を過ごしていた。贈収賄容疑で停職処分を受けた彼は、慰めを求めてバーをさまよい、ヤンと出会う。

ベルリン国際映画祭の銀熊賞・音楽賞がおくられた『イザベラ』は一昨年のTIFFで上映されていて、その時に観たいと思ったのだけど、結局鑑賞はできなかったのだよね。そして、その監督パン・ホーチョン(彭浩翔)は、TIFFでお馴染みということで何だか大人気。今年のTIFF上映作品の夜の回のチケットは発売後即完売していた。より一層観たくなるじゃないか。そんな折、シネマヴェーラのアンソニー・ウォン特集で、『イザベラ』が上映されることになってそれは嬉しかったのであった。(フィルム上映ではなかったけれど。)

この女の子、イザベラ・リョンは、夏に観た台湾映画『Tattoo-刺青』の竹子じゃないですか。ハムナプトラなんかにも出ていたとは知らなかった。そして、主演女優の名前と同じこのタイトルは、イザベラちゃんの役名などではないところがいいよね。「最初の女に似ている」とクドく。そりゃあ、似ているわけだ、と始まる男と女の物語。それも、ちょいと複雑な関係。ジワリ、ジワリ。好みなテイストでありました。香港舞台の映画はごまんとあれど、マカオで暮らす人々が主人公の物語というのは少しもの珍しくもあり。香港同様、マカオでも。返還前って、こんな思いがあふれていたのだね。結局のところ、飲んだくれが主人公のドラマには好感度大。提供はカールスバーグ。
[PR]
by CaeRu_noix | 2008-12-19 22:00 | CINEMAレヴュー | Trackback(10) | Comments(10)
トラックバックURL : http://latchodrom.exblog.jp/tb/9084176
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Tracked from シャーロットの涙 at 2008-12-22 16:09
タイトル : エグザイル/絆
EXILED 放・逐... more
Tracked from まてぃの徒然映画+雑記 at 2008-12-26 22:01
タイトル : エグザイル/絆 EXILED/放・逐
杜[王其]峰監督の下、黄秋生や呉鎮宇、林雪、張家輝、任達華、張耀揚たち香港黒社会映画の主要メンバーが結集してできたハードなガンアクション。始まりは、ドアをノックする男。「ウーはいるか?」の問いに「いない」と答える女。そして二組目の男たちも同じように「ウー...... more
Tracked from soramove at 2008-12-28 11:26
タイトル : 「エグザイル/絆」これぞ香港映画、こだわりの作品
「エグザイル/絆」★★★★ アンソニー・ウォン 、ニック・チョン 、ジョシー・ホー 、フランシス・ン 、サイモン・ヤム 、リッチー・レン 出演 ジョニー・トー監督、2006年、香港、109分 大袈裟な音楽と スローモーションのような 美しい銃撃戦、 お約束の決めのポーズ。 やってる、やってると 顔がニンマリしてくる、 溜めに溜めた暑苦しい顔のアップや 時折の間の抜けたような 笑えないジョーク。 全てが作り込まれ、 現実感は無い、 アリエ無いよと思いつつ、...... more
Tracked from 犬も歩けばBohにあたる! at 2009-01-09 01:54
タイトル : 男の生き様、男の死に様【エグザイル/絆】
これぞ“ザッツ・ホンコン・ムービー”!! 香港映画好きの私、年末にこんな素晴らし... more
Tracked from CINECHANの映画感想 at 2009-01-12 11:08
タイトル : 356「エグザイル/絆」(香港・中国)
金よりも、命よりも大切なもの  中国返還間近のマカオ。乳飲み子を抱えた妻が夫の帰りを待つとある家。この家の主・ウーは、かつて香港マフィアのボス・フェイの命を狙ったために逃亡の身となった男。  そんなウーの家に現われた4人の男たち。2人はフェイの命令でウーを始末するために、そしてもう一方の2人はウーを守るため。  そこへ、ついにウーが姿を現わし、ほどなく三すくみの銃撃戦が始まる。... more
Tracked from tomozoのうれし★た.. at 2009-01-18 17:05
タイトル : エグザイル/絆
もし、2008年の内にこの映画を見ていれば、間違いなくはまった映画に入れてただろう。ずっと待ち遠しかったのに、年が明けてやっと見ることができた。でも、2009年... more
Tracked from tomozoのうれし★た.. at 2009-01-18 17:06
タイトル : イザベラ 伊莎貝拉
良かった〜。何がってこの空気感。情感あふれる風景。床のタイルに、窓に、緑の林に、街の壁に。そして流れる音楽に。チャップマン・トゥーのオジサン役、いいじゃない♪。... more
Tracked from だらだら無気力ブログ at 2009-01-18 23:17
タイトル : エグザイル/絆
香港映画界を代表するジョニー・トー監督が裏社会に生きる男たちの友情を 描いたノワールアクション。 マフィアのボスから逃げる男とその男を殺す男達と逃げる男を助けようとする 男たちの運命を描く。中国返還間近のマカオにあるとある一軒家。そこには夫の帰りを待つ妻と..... more
Tracked from まてぃの徒然映画+雑記 at 2009-01-31 23:11
タイトル : イザベラ 伊莎貝拉
いろんなところで評判よいんです。てなわけで、久々の一日二本、観てきました。ま、一時間半の香港映画二本だし、間が3時間近く空くから大丈夫かな、と思って。舞台は1999年、中国返還直前のマカオ。停職中の刑事、馬振成(杜[シ文]澤)はナイトクラブで張碧欣(梁洛施)...... more
Tracked from Diarydiary! at 2009-03-02 19:29
タイトル : エグザイル / 絆
《エグザイル / 絆》 2006年 香港映画 - 原題 - 放・逐 - 英題 -... more
Commented by Minita at 2008-12-19 22:56 x
かえるさん、こんばんは~!
エグザイル/絆、私もすっごく好きでした~。
ジョニー・トー監督は初めてみたのですが、素晴らしいですね。
ガンアクションシーンの華麗さにもううっとり・・・♪
出ている役者もみんな、渋くてかっこいいし・・・・。
女がはいれない、男だけのダンディズムな世界ってあこがれますね。
私も闇医者でのシーンが印象的でした。

この映画、中国では公開禁止なんですってね~。
中国政府の思うような作品を作らないから、お金をだしてもらえず、
次回作品はフランスで作るそうです・・・ジョニー・トー監督。
Commented by CaeRu_noix at 2008-12-21 00:21
Minita さん♪
きゃー、気に入っていただけて嬉しいですー。
素晴らしいですよね。ほとばしる作家性ー。
ジョニー・トー監督のことはブログを始めてから知り得て、それ以降のアクションものは劇場鑑賞してきたので、大ファンでもないくせに、この手の作品を手がける監督にしては珍しく注目している人なのですー。
フィルメックスで観たものもまたコミカルなのにエレガントでしたよー。
俳優さんは完璧な二枚目というんでもなく、愛きょうを感じさせるダンディだったりするのがいいですよね。
アンソニー・ウォンの素晴らしさを実感した次第。
闇医者のシーンはホント、いろんな意味で見ごたえありましたよねー。
治療中なのにーw

おおお、そうなんですか。中国で公開禁止。
香港はもはやただの香港じゃなく、中国の香港なんですよね・・ってことを実感・・・。
「天安門」とかならともかく、これは別に中国政府にとって、問題になるような内容じゃないですよね。
うーん、恐ろしい。
フランスで思う存分、がんばってほしいですねー。楽しみー
Commented by シャーロット at 2008-12-22 16:31 x
エレガント・・・むーん、まさにそんな感じですねぇ。
今年に入ってからトー監督作品をやっと見た私ですが;
ホント、音楽使いも洗練されててあんまり男臭さとか感じず。
なんともいえない温かさを感じましたよ。女子な私もやっと注目;
これからさかのぼって鑑賞したくなる監督さんっです。
横レスですが、フランスで作るんですか~。
そりゃあ、私はすごく楽しみですー。

・・・「イザベラ」も何やら気になる竹子ちゃん・・・♪
こちらも人気があるのですね・・・全然アンテナがたってなかった;w
Commented by CaeRu_noix at 2008-12-23 23:43
シャーロット さん♪
シャーさんがフィルメックスで「文雀」をご覧になったのはちょっと意外でしたのよ。
でも、そう、ギャングものなのに、洗練された美しさがあるから、それ系にさほどの熱意のない女子でも、トー作品には魅了されるのですよね。
音楽もやたらに心地よいし。
ジョニー・トーといえば、香港ノワールなんでしょうけど、意外といろんなジャンルの作品を手掛けているんですよね。
が、聞くところによると、恋愛ものとかは大して面白くないらしいですー。
まるで別人な仕上がりらしいー。
マカオ舞台と同様にフランスでもサマになるノワールをつくってくれるでしょうー。

リー・カーション監督作品以来、1年以上ぶりにいわいさんにバッタリお会いしたのはこの「イザベラ」の時でした。
Commented by CINECHAN at 2009-01-12 11:16 x
かえるさん、コメント・TBありがとうございました。
あんまり足が向いていなっかたけど、今年も(こそ?)よろしくです。

お、かえるさんもジョニー・トー好きですか?
私はあまり監督で作品を選ばないんですが、ジョニー・トーは公開したら必ず観てます。
「ザ・ミッション」からですけどね。
映像とか雰囲気もいいし、出てくる男たちも格好いいんですね。
適度なコミカルさもいい味付けになっていると思います。
次の作品が楽しみです。

今年は昨年よりは訪問回数増えるようにしたいな。
Commented by CaeRu_noix at 2009-01-13 09:07
CINECHANさん♪
ジョニー・トー、いいですよねぇ。
劇場鑑賞必須です。
私は『PTU』で初めて知ったのですが、その後に『ミッション』もキネカ大森に見に行ったりしましたよ。
恋愛ものなんかは全然見たことないんですけどね。
激しきバイオレンスにずっこけユーモアの緩急がよいですよね。

私の去年の本数はトータルではCINECHANより多いのですが、一般公開作は半分ほどで メジャーものやイマイチだったものはレビューを書かないことも多いので記事はたまにしかかぶりませんよね。
でも、お互い余裕がありましたら、訪問しあいましょう。
Commented by tomozo at 2009-01-18 17:16 x
かえるさんのこの記事を読んで、
おお!イザベラ!と思ったのですが、
年末年始に忙しくて「エグザイル/絆」がなかなかみれなくて、
やっとやっと見ることができました!

もちろん、直球ど真ん中で、ジョニー・トー作品の中でも
一番好きかも〜。
ともかく、キャストが最高ですわ。

そして、イザベラも気に入っていただけたんですね〜。
チャッピーのシリアスな演技もよかったし、
イザベラちゃんは、この映画ではすごく良かった。
竹子も良かったですね〜。
ハムナプトラはあまりに普通でしたけど。

私はTIFFでみたんですが、どうして上映されないんでしょ。
でも、今度シネマートでやるみたいなので
また見にいこうと思います〜。
Commented by CaeRu_noix at 2009-01-19 21:14
tomozo さん♪
それはよかった。ど真ん中でしたかー。
ジョニー・トー作品6本観た中で、衝撃度が高かったのは『PTU』なんですが、好き度ではかったら私もこれかなぁ。
抜群のキャスティングで素晴らしきフォーメーションを見せてくれましたよね。
アンソニー・ウォンは今度のオダジョーの映画にも出ているんですよね。

『イザベラ』も気に入りましたよー。
カールスバーグをバカスカ飲むところとか。w
そうTIFFで見られなかったから、この時の上映は嬉しかったのでした。
あれこれ活躍している女優ちゃんなのねって、イザベラちゃんのことをちゃんと認識。
部分的にマカオが舞台になっているものは今までも観ていたと思うけど、マカオで暮らす普通の人々のドラマって初めて見る気がするので興味深かったですし。
パン・ホーチョン監督にしてもすごく人気があるようなんですが、なんで公開されないんでしょうね?
そう、シネマートの香港特集でまたやってくれるんですよね。
私はランユーを観ましたぜ。
Commented by tomozo at 2009-01-20 00:21 x
おお!
私も明日いきますぜ。
ランユー。たぶん。。。
Commented by CaeRu_noix at 2009-01-20 00:49
tomozo さん♪
いってらっしゃーい!
ランユーってどんな意味かと思ったら、人名でしたのね・・・。
Liu Yeってば、こういう役がホントにお似合いで♪
ブラッド・ブラザーズはどうかなぁ。
<< 12月19、20日の公開映画ち... PageTop 『WALL-E ウォーリー』 >>
XML | ATOM

個人情報保護
情報取得について
免責事項
Beige Shade by Sun&Moon