かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ノン子36歳(家事手伝い)』
2009年 01月 25日 |
ほろ苦、でも快走、大人の青春。

元タレントで、バツイチで、神社の実家に出戻った36歳のノン子のところに、神社の祭りで出店をやりたいという青年マサルが現れる。



PFF出身の監督は一応チェックしなくちゃと思いつつ、熊切監督作はほとんど観ていなくて、これまで唯一観ている『フリージア』はあまりいいとは思えなかった。今作の雰囲気は好み系な感じで、去年の東京フィルメックスで監督と主演の坂井真紀っちのトークイベントをのぞいて興味をもったものの、あの監督に女性映画が撮れるのかなと半信半疑だったんだよね。それがなかなかどうして、和嘉34歳(映画監督)。主人公のノン子ってば、家事手伝いなんていいつつ、ちいとも家事の手伝いなんてしちゃいないんだけど、熊切監督はいい仕事したじゃない。インディペンデント系日常邦画としてはすこぶる好みのタッチ。主人公は三十路女だけど、これって結局、青春映画なんだよね。だから、彼女達がどんなにダメダメちゃんでも、どんなにイタくっても、それゆえに愛おしいものになるんだな。

人セクの永作さんといい、この坂井さんといい、童顔女は30代後半でもキュートにチャーミングじゃないですか。(36もアラフォーって呼ぶの?四捨五入?)その永作さんの方の映画は、『人のセックスを笑うな』という挑発的なタイトルの恋愛ものでありながら、そういう赤裸々なシーンが映し出されることはなかったのに。片やこちらは、脱力系タイトルとはウラハラに、坂井さんがほぼオールヌードのオトナな大胆なシーンを披露していたから、それはもうドッキリ。これが何というか実に生々しくてリアルで、おおっ!って感じ。激しい性描写をしっかり映し出した映画というのは珍しくはないけど、例えば、『ラスト、コーション』のそれなんて、体位ダイジェスト編集って感じで、せっかくの体当たりシーンが強引で台無しに感じられたんだよね。カットが多すぎるのは興ざめなの。そういうのに比べて、こちらのノン子と元亭主のカラミは固唾を飲んじゃうばかり。初めは本気でダメって思っているんだけど、その攻めに抗い切れずにオチちゃうまでの過程が妙にリアルでスゴい。

フィルメックスのトークショーの時に、熊切監督がカメラがよいってことを仕切りと語っていたのだけれど、山下監督とよく組んでいるカメラマンの撮影で、人も風景も気持ちよく切り取られていて満足。ノン子ったら、ふてぶてしい可愛げのない女なのに、ちゃんときれいに映っていたしね。山下監督と撮影の人が同じことは何の関係もないのだろうけれど、山下作品を思い出すようなちょいとイジワルなユーモアもよかったな。ノン子は共感しづらいダメ女なのかもしれないけど、イナカのスナックママなニッタエリにあんな言われようをしたり、妹に容赦なくキツいことを言われたり、厳格な父親の家庭で肩身の狭い思いで暮らしているノン子のやるせない状態には笑いつつ同情もしてしまう。そんなノン子と彼女を取り巻く人々とキャラクターを表す行動や言動の描写が最小限で的確に表されているのがよいのだ。ノン子の性格と鬱憤のたまった投げやりな状況も煙草の吸い方やらドタドタと足音のうるさい歩き方やら自転車のかっ飛ばし方やらで一目瞭然。そんな場面の積み重ねがニヤリと笑えてチクリとイタくって。

私は単純なことに、クストリッツァしてたところが何といってもお気に入り。例えば、ガチョウが愉快に駆け回る姿なんてものは、現代邦画じゃなかなかお目にかかれないものなんだけど、そういうのが夜店のヒヨコたちで実現できちゃうんだというのに嬉しくなった。お花畑の中を駆けちゃうところなんてモロ好みだったのだけど、監督もあのシーンが一番好きなんだって。ヒヨコの箱詰めが登場した時から、きっとコレぶちまけてくれるよねって思っていたから、ヒヨコたちが自由に走り回っちゃうクライマックスが訪れたことがそれは楽しくて。具体的な問題が解決するとかそういうことよりも、そんな映画的な高揚感をもたらしてくれるところが好き。お祭りの最中の神社で大暴れ。そして、逃走。ヒヨコも大人になる生命力がそこにあればいいの。
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by CaeRu_noix | 2009-01-25 09:00 | CINEMAレヴュー | Trackback(1) | Comments(2)
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Tracked from 映画的・絵画的・音楽的 at 2009-11-25 05:07
タイトル : ノン子36歳(家事手伝い)
 銀座シネパトスに行って「ノン子36歳(家事手伝い)」を見てきました。  銀座シネパトスの方は、銀座三越のスグ裏という絶好の場所に位置しながらも、予想通り、昔の場末の映画館の雰囲気が残っていて(席の作りは綺麗ながらも、トイレの臭いが籠っている感じ)、さらには前に一杯飲み屋が何件か連なっているのも懐かしい感じがします。  とはいえ、映画の上映中、スグそばを走る地下鉄日比谷線の音がするのには参りました─騒音と言うほどではありませんが─(何しろ、地下一階に作られているので)。  さて、映画の方ですが、何...... more
Commented by moto at 2009-01-28 22:39 x
僕はどうも男目線で見てしまって、おいおい、二人ともそれでいいのかってなってしまいましたね。。。
Commented by CaeRu_noix at 2009-01-29 21:10
moto さん♪
男目線というのは、マサルの立場でってことでしょか?
そうですね。その立場に限らず、道徳的な尺度で見たら、全然よろしくないかなぁとは思います。
何もよくはないんですよね。よい、わるいでいったらちいとも。
でもまぁ、マサルくんはまだ若いから、これからまたがんばれるでしょう。
ノン子の人生も改善されたわけじゃないんだけど、どん底からちょっと這い上がれたかなーって感じで。
ちょっと面白いいい思い出ができたなーって感じで。
そんなもんです。よくはないですけどね。反面教師にしませうー。
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