かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『チェ 28歳の革命』、『チェ 39歳別れの手紙』 
2009年 02月 04日 |
なんてストイックなカッコよさ。



伝説の英雄エルネスト・チェ・ゲバラの半生を映画化するなんていう企画は、とても魅力的な反面、非常に難しい側面をもっていると思う。伝記ものには、それが作り手の解釈だと言い切って、対象の一側面だけを強調して、物事を美化してドラマティックな映画に仕上げるというのもよくあることなのだけど、チェ・ゲバラという人物を描く場合にはそうはいかないだろう。生半可な取り組み姿勢では手を出せないような一筋縄ではいかない題材なのだけど、ベニチオ・デル・トロが演じてくれるなら、それをスティーヴン・ソダーバーグが撮ってくれるなら、何も言うことはなかった。それは期待通りの素晴らしいものであった。

『モーターサイクル・ダイアリーズ』 がラテン・アメリカの監督の手によって、スペイン語作品として撮られたことも嬉しかったけれど、本作も、アメリカ人監督のソダーバーグが手がけたものでありながら、潔くスペイン語映画として生み出されたことがまずよかったな。カピタンなのだ。コマンダンテなのだもの。いかに真のチェ・ゲバラという人物を真摯に忠実に再現しようとしているかという意気込みが見て取れるのだけど、やはりそれは、徹底的にリサーチが重ねられて準備され、創作したエピソードや筋書きは一つもないのだってね。

むやみにドラマを盛り上げようとする過剰演出の大作が多い中、こんなに抑制された静かでリアルな映像をシネコンで見るのは本当に久しぶりで、そのクールさにやけに感動してしまった。本当にいつもシネコンで観るメジャー映画ときたら、闘う場面が映し出される時には決まって、スリルを盛り上げようとジャンジャカ大音響の音楽が響き、それに負けじと目まぐるしくカットが切り替わるのものなんだもん。そんな作りに辟易していたから、まるでドキュメンタリーのようなこのソダーバーグ映画の透明な質感には心底惹かれてしまった。ドキュメンタリー色を帯びながらも、ソダーバーグのカメラって、まぎれもなくアーティスティックですごくカッコイイのだもの。静かな運びであるがゆえ、ワンショットワンショットに注視することになり、その構図に惚れぼれ。そんなナチュラルな映像と調和するように音楽も必要最小限なのが的確なセンス。ここぞという時のラテン・ミュージックと鳥の声や風の葉音が聴こえる森がまたいいしね。

『モーターサイクル・ダイアリーズ』以外の映画を観てもいないし、ゲバラ関係の書籍を読んだこともない私は、結局断片的なことだけしか知らないままで本作を鑑賞したのだけれど、それほどに状況がわかりにくくはなく、事の成り行きが親切に説明的に描かれてはいないことはマイナスにはならず、むしろこのスタイルだからこそ、しみじみと心に響くものがあり、エクセレントだって思えた。とにかくゲバラが魅力的で偉大な人だってことはどこからでも伝わってきたし、これまで知らずにいた彼の活動の過程をこうやって追体験することには、せつなくも身が引き詰まる思いの感銘があった。どう物語は展開していくかはわかりきっているのに、こんなにも彼の行く末を案じてしまうのだから、ベニチオの完璧な演技とソダーバーグのスマートさとその実力を賞賛せずにはいられないの。

英雄視するばかりではいけない側面・要素をもっていることは事実だけど、多くの権力者が安全な場所で胡坐をかいているこの世界で、貧しき民衆のために自ら闘うことを貫いたチェ・ゲバラは最高にカッコいいよ。
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by CaeRu_noix | 2009-02-04 01:12 | CINEMAレヴュー | Trackback(5) | Comments(12)
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Commented by Minita at 2009-02-04 12:57 x
かえるさん、こんにちは~!

>むやみにドラマを盛り上げようとする過剰演出の大作が多い中、
>こんなに抑制された静かでリアルな映像

本当にそうですね。
これほど偉大な人物であれば、
もっとおおげさに描かれそうなものだと思うのですが、
静かな語り口によってかえって、本当にこういう人が実在したのだなあと、その存在感がより確実に伝わってきました。
スペイン語で見られて本当に嬉しかったです~♪

結末を知っているはずなのに、
ラスト近くは先がみえないような不安感と息苦しさでいっぱいになりながらただただスクリーンを見つめていました。
素晴らしいですね。ベニもソダーバーグ監督も・・・。
あと、カストロ役のデミアン・ビチルもよかったな~と。似てましたよね?

ちなみに、チェをやるためにベニは25kgも減量して、精悍そのものでしたが、
舞台挨拶ではもとに戻っていてぼよよ~んとしてました(笑)
それでも、とっても、素敵だったのですが♪
Commented by manimani at 2009-02-04 22:34 x
こんにちは
やっぱりTBできないみたいで;;しくしくどうしてだろう

ソダーバーグは苦手なんですけどこれは大筋共感できました。
ワタシは観賞後に評伝本を買いました。
今読んでいます〜
Commented by acine at 2009-02-04 23:25
かえるさんのおっしゃる通り、凄く難しい題材にも関わらず、このコンビネーション
素晴らしいものでした。マジメにそして煽らずによい意味で淡々と。
革命家ゲバラというより、人間ゲバラが滲み出てくるような静かな
演出がとても良かったです。
そして、本格的スペイン語映画だったのが、ホント良かったですよね!
終盤、うとうとしてしまったので、39歳を見る前に、今日28歳の2回目を
見てきたんですが、うとうとしていたアレイダが出てきた辺りから、
女にちょっと甘いとこなど、チェも只の男だな・・・とちょっとガッカリしつつも、
これまた人間くさいな~と。 私も今ゲバラ本を読んでいるところです。
Commented by CaeRu_noix at 2009-02-05 21:00
Minita さん♪
内容とは裏腹に、澄み切った静かにクールな映画だったことにとにかく感銘を受けました。
メジャー系で他の監督が撮っていたら、もっと仰々しくドラマティックな映画になっていたでしょうね。
戦闘シーンも、彼の最期の場面も、音楽がジャカジャカ鳴り響き、小刻みなカット割りで編集されたに違いない・・・。
ソダーバーグが撮ってくれて本当によかった♪
そうなんですよ。映画の終わる頃には、彼の命は失われていることは承知のはずなのに、終盤が近づくごとに、ドキドキと息をのんでしまいましたよね。
死んじゃうんだなーって、哀しくなりました。
カストロ役もそっくりでしたよねー。
おお、ベニは25キロも落としたんですかー。すごい役者根性。
ぼよよーんでも何でも、生トロに会えたなんてうらやましい限りっす!
Commented by CaeRu_noix at 2009-02-05 21:07
manimani さん♪
残念ですー。どうしてでしょう?
ひょっとして他のgooブログからのTBも受けられない状態??
あら、ソダーバーグ、苦手でしたか。
でも、これはOKだったということで、何よりでした。
私は共感というよりか、ソダの仕事ぶりに感嘆っていうカンジでしたー。
本の購入にいたるほどにチェがmanimaniさんの心を掴んだというのは何か嬉しいですー。
Commented by CaeRu_noix at 2009-02-05 21:17
acine さん♪
完璧なコンビネーションですよねー。
『トラフィック』のベニもよかったことを思い出し。
この題材に取り組むにあたって、ソダがベニっちと仕事をしていた実績があったから、すんなりとこの黄金コンビが実現したんでしょうね。
私は、ゲバラのことを詳しくは何も知らなかったので、こういう人物だったのかーとすべての場面が興味深く、心に響くものでありました。
人間性が静かににじみ出てくる感じ、が本当によかったですよねー。
わはは、女にはやはりちょっと甘かったですか。まぁ、そうかも。
でも、極端に差別しているわけでもなく、男の下っ端にも威張ったりせずに誠実に接している人なのが、凄いなーって思いました。
それだけ偉い人になったら、威張りくさっちゃう人間の方が多いと思う中。
人間くさいけど、やっぱり気高いなぁって。
Commented by ノラネコ at 2009-02-05 23:31 x
過剰なドラマチックさを捨て去ったストイックさが、描いているゲバラというキャラクターに通じてピッタリでしたね。
しかし、淡々と撮っているようで、非常に緻密に計算された作品でした。
全体的には「39歳」の方が、ビジュアル的な演出が目立ちました。
これはビスタサイズで、黄金分割に基づいた、決まる画が作りやすかった事もあるでしょう。
平原にシルエットの敵兵が一人また一人と増えてゆくカットなどは、実に映画的な美しさがありました。
Commented by CaeRu_noix at 2009-02-07 00:56
ノラネコさん♪
ストイックという言葉がぴったりのゲバラ。
そして、そうですね。この映画のつくりも、そのゲバラの人間性・生き様に即すようなクールにストイックなものでありましたね。
どのエピソードを採用し、どういうふうに撮るか、どう組み立てていくか、構想するだけでもものすごく大変な作業だったに違いないですよね。
クレバーなソダーバーグはこれみよがしではないのだけど、本当に計算しつくしていたのでしょうね。
スクリーンサイズが変化していたことをしっかり認識してなかったし・・・
が、私は前篇のシネスコのショットにうっとりしまくったのでした。
過酷なゲリラ戦を描いているというのに、惚れ惚れする美しい映像にあふれていましたよね。
そこがとても気に入ったところです。
Commented by Nyaggy at 2009-02-09 13:06 x
かえるさん、こんにちは。
ようやく2作品とも鑑賞しましたが、素晴らしかったです。
ソダーバーグが(しかもスペイン語で)撮ってくれて、本当に良かった・・・!
かなり地味な作品で、興味のない人にはさぞかし退屈だろうと思いますが、
かえるさんのおっしゃるように、ショットの一つ一つが美しいですよね。
ストーリー的に後編の方が重いのもあるけど、前編のタッチの方が好みでした。
でも、どちらも見れてよかったな~と思います。
大袈裟な英雄モノではない、でも心に響く作品を撮ってくれたソダーバーグに感謝です。
Commented by CaeRu_noix at 2009-02-10 23:57
Nyaggy さん♪
素晴らしかったですよねぇー。
スペイン語バンザーイ。
カンヌ映画祭でお目見えした頃は、これって、日本で配給されるんだろうか?くらいに思っていたのに、ふたをあけてみたら、全国一斉拡大上映公開でビックリな嬉しい状況でした。
あれやこれやのアメコミヒーロー映画もかからない方のシネコンでも「チェ」は堂々と上映されていましたから。
シネコンものの中では確かに地味なタイプという感じでしたね。
ソダーバーグの映画がもともと好きじゃない人は本作もそんなによくはなかったかもしれませんね。
まぁ、いいんです。私たちにとって素晴らしい映画だったのだからー♪
私もどっちかというと前篇により魅せられた感じです。
まるで本物ニュースフィルムのような質感だった国連演説のシーンもポイントが高かったし、シネスコスクリーンが画的に好みだったんですよね。
グラッシアス、スティーヴン。
Commented by at 2009-02-13 13:29 x
ソダーバーグという監督は小生の好みの映画があるかと思えばそうでないのもあり、作品の出来不出来も激しくてよく分からない人なのですが、この映画の「抑制された映像」「透明な質感」は素晴らしかったですね。『トラフィック』を最後に、最近どうもなと思っていましたが、さすが、でした。この人、やるときは思い切ったことをやりますね。アメリカでは日本のようなロードショーでなく、数館しか上映されてないようですが。
Commented by CaeRu_noix at 2009-02-14 00:33
雄さん♪
ソダーバーグはやっぱり賢くてセンスのある監督だと思いますー。
確かに、『トラフィック』以降は、一般受けはしなそうな作品も続くのですけどね。
オーシャンズなんかは別にアレなんですが、私は『フル・フロンタル』や『ソラリス』や『さらばベルリン』も好きでした。
でもそう、作家性も実力もあると思うのですが、コレを撮りたいという強い意思があふれているようなテーマの映画を手がけるイメージが近年はなかった感じです。
なので、本当に今回は、やる時はやってくれるなぁという感じでした。
字幕嫌いで、エンタメ系好きなのはわかるけれど、アメリカでそんなに上映館が少なかったとは寂しいですね。
アメリカン人伝記的映画はいつも大々的に話題作になるのに。
で、日本ではこんなに拡大公開されることになって驚きました。
多くの人が劇場鑑賞できる機会を得られてよかったです。
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