かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』
2009年 02月 12日 |
なんて、なんて。デビッド・フィンチャー監督作で、こんなに心あたたまっちゃうなんて。



意外な感じもしつつ、フィンチャーだからこそのビジュアルで見せてくれる映画になっていて満足。一昔前だったら、映像化するのは困難なストーリーに区分されていたんじゃないかと思うのだけど、技術の進歩とアイディアの勝利だね。80代の風貌で生まれ落ちて、年をとるたびに容姿は若返っていく奇妙な運命を背負った男の人生が、実に自然に映像化されていることに感心。1人の俳優が10年、20年という年の経過を演じる映画も多いけど、いくら演技をがんばっていてもメイクが不自然でそれっぽく見えないこともあるし。逆に、世代ごとに複数の俳優をキャスティングするという方法をとった場合、俳優同士の風貌がイマイチ似てなくて、同一人物として受け入れることに違和感があって、ドラマ全体の味わいがしっくりとこなかったりもするんだよね。その点、本作のメイキャップ技術とCG技術は見事なものだったし、ブラピ1人がその生涯のほとんどを演じきっているから、ベンジャミンの人生がそのまま丸ごとの重みをもって80年分、観客の私たちの心に響いてくるのだった。

ちょっと「アルジャーノンに花束を」のせつなさを思い出したりして、いや、この感覚は「ガープの世界」かな。(本当は、『フォレスト・ガンプ』だったらしい。)最初はてっきり、これは原作ものだから、アーヴィングの「ガープの世界」がそのまんま上手く映画化されたような感じなのかと思っていたの。でも、違うのね。原作のフィッツジェラルドの短編からは、80歳で生まれて若返っていくという設定を拝借したくらいのもので、映画の中で展開するベンジャミンの人生はまったくもってオリジナルのものだったのだね。この膨らまし方が素晴らしいじゃないか。独創的で味わい深い20世紀を綴ったよきアメリカ映画に仕上がっていたね。そして、映画的なディテールの魅力にわくわく胸キュンするばかり。ベンジャミンがピアノを弾いちゃうなんて。ベンジャミンは船乗りになるなんて。ベンジャミンはバイクで疾走するなんて。若かりし頃のさわやかブラピが登場するなんて。

そして、とびっきりツボだったのは、ベンジャミンの運命の女性デイジーが踊り子になったこと。デイジーの成長過程をざざっと説明するシークエンスに、わずかの間映し出された何カットかのバレエのオーディションシーンがすごくステキだったことにまず注目。審査員はあくびをしているほどのもので、サラリと流してしまうようなシーンなのに、手抜かりがないことに感動。と思ったら、この物語の中の大切な登場人物デイジーのライフワークがバレエであったりして、踊るシーンの全てが印象的に輝いていたのがもう最高。それもモダン・バレエだなんて。バレエ・リュスのバランシンの振り付けで踊るだなんて、その時代を切り取っているのが楽しくて。踊り子というのがポイント大幅アップになったことを差し引いても、ケイト・ブランシェットという女優の素晴らしさには、またしてもまたしてもノックアウト。優雅でしなやかで軽やかなバレリーナでもある大らかで強い美しい女性デイジー。ベンジャミンの人生を噛みしめながら、それ以上にデイジーの人生/生き様に魅了され、感銘を受けちゃった。

生まれてすぐに父親に捨てられて、普通とは違う年の取り方をしたベンジャミンの境遇は、不憫であったには違いない。でも、ベンジャミンはなんて幸せだったのだろうって思うよね。生まれてすぐに、代わりの母親の愛情を受けて育ててもらい、長い人生の果て、最愛の女性の腕の中で最期を迎えることができたなんて。たくさんの人々と出会い、多くの経験を重ねて、人生のピークを運命の女性と愛し合って過ごすことができたなんて。エエ話だ。こういうよいお話が、普通の設定のヒューマン・ドラマの中で、そのままストレートに描かれていたなら、むしろ逆にストレートに心に響いてはこなかったかもしれない。非現実的なおとぎ話の中に織り込まれたテーマだからこそ、厭味なく感銘をもたらすの。年の取り方が逆行していたって、人生の中できらめくものはそう変わらないのかもしれないね。雷に7回打たれた人生だって振り返れば愛おしいのだ。
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by CaeRu_noix | 2009-02-12 23:46 | CINEMAレヴュー | Comments(14)
Commented by 哀生龍 at 2009-02-13 12:53 x
>一昔前だったら、映像化するのは困難なストーリーに区分されていたんじゃないかと思うのだけど、技術の進歩とアイディアの勝利だね。
本当にそうですよね。
ベンジャミンの変化がとても自然だったので、彼自身の見た目だけに囚われず、違和感無くストーリーを見ることが出来ました。

先日の「エレジー」とセットにして、“好きな人と一緒に暮らし一緒に歳をとって行けるのは、当たり前だけれど凄いことなのかもしれない”と、改めて思ってしまいました。
Commented by CaeRu_noix at 2009-02-14 00:22
哀生龍 さん♪
ベンジャミンの年齢に沿った外見の変貌はとても自然でしたよねぇ。
BBMの後半のジェイクは全然中年に見えなかったよーとか。
コレラの時代の愛でウナクスくんがいきなりハビエルになった時は、違和感ありありだったよーとか、イマヒトツな例があれこれ思い出されるにつけ、本作の的確な采配と技術センスに感心するのでしたー。

エレジーと本作から、見いだせる共通テーマといったら、わたし的には、愛があれば、年齢なんて、老いなんて、外観なんてーということでしょうかね。
年齢を重ね、経験を積んだからこそ、人生において大切なものは何か見えてくる、という意味では、年齢は年齢で味わいがあり。
が、デヴィッドとコンスエラのように、ベンジャミンとデイジーのように、年齢的に見た目的に不釣り合いでも、本質的な愛と絆があれば、そんなのは二の次よーって感じなんですよね。
一緒に歳をとれなかったとしても愛は崇高、人生はキラキラー
で、もちろん、愛し合う人たちが共に暮らし、一緒に歳を重ねることはもちろん、映画に関係なくステキなことだと思いますー。

原作のベンジャミンは、老けていく妻に不満を持つ酷い奴なんですよー
Commented by ゆるり at 2009-02-14 18:09 x
かえるさん、ごぶさたしてます。(*^_^*)
ケイト目当てで観にいったんですが、あらまぁ167分という時間を感じさせないくらい、
どっぷりと物語の中に入り込みました。
とはいいつつ、バレエのシーン&エピソードは素敵でしたよねー。
ケイト・ブランシェットの人間ばなれした(?)優雅さみたいなものがピッタンコ!で私も嬉しくなりましたよん。

ところで、フィッツジェラルドの短編はやっぱりそんなもんですかぁ。
そんな気もしてましたが、それをこんな素敵な物語として表現できるのは
(脇役的エピソードの数々も面白いですよね)映画ならではって気がします。

若いブラピも懐かしかったけど、やっぱりオヤジ好きな私としては中年の彼が素敵やったな。
ケイトはおばあちゃんになっても上品で可愛いかったわぁ。
Commented by CaeRu_noix at 2009-02-15 00:27
ゆるりさん♪
おひさしぶりでーす。
私は長い映画だと認識してなく、終わったら遅かったのでビックリ。w
1人の人間の生涯を描いたのですから、その長さも当然なんでしょうけどね。

私は予告も観なかったので、こんなにいい質感の映像で綴られているとは思ってはいなくて。
ケイトのバレエなシーンもそれは大感激。
『アイム・ノット・ゼア』の時のロックな感じとは一転、優雅でしなやかに美しかったですよねー。
何でもできちゃうんだから、本当にすごい女優です!

原作小説は、映画を見た後、ちらり立ち読みをしたのですよ。
結構ドライにシュールに淡々と綴られている印象でした。
原作の方は、長編映画よりも、四コマ漫画なんかにするのが合いそうな感じで。
これはほとんどオリジナルな映画といっていいんじゃないかなぁ。
映画ならではの魅力にあふれた語りくち、エピソードの数々でした。

ゆるりさんは常にオヤジ世代好きなんですね♪
ブラピはですねぇ、『ジョーブラック』の時が最高にステキというのが満場一致。
あと、『テルマ&ルイーズ』も忘れがたい。
けど、オヤジ好みじゃなくても、ブラピはさわやかさんルックスだから、中年世代でも大いに魅力的ですね。
Commented by めかぶ at 2009-02-15 13:36 x
メジャー作品でもかえるさんのお眼鏡に適うものもある。メジャー、マイナー分け隔てなく観て味わってもらえているという姿勢に、ちょっとほっとしてます。不快に思ったらごめんね。最近、観た時のコンディションに左右される重さを切実に感じている私は、メジャー作品が事も無げにばっさり切り捨てられる評を見るのが辛かったので、かえるさんのこの作品に対する評がとても嬉しかったの。
かといって、この作品に私がベタぼれではないのだけど、目の肥えた人たちの評でばっさり「くだらない」と評された映画が面白かったと感じると、自分の映画を観る目に自信がなくなる弱さがあってね~。人、様々だってことは判っているんだけど、何となく(笑)。

デイジーが前衛的なダンスの道に進んだことには意味があると思う。年齢を感じさせながら「美しい人」を保っているのは痛切に感じます。女が老いることの哀しさや恐れ(本人が思う)をこんなに感じる映画は少ない。

>ブラピはですねぇ、ジョーブラック』の時が最高にステキというのが満場一致。
激同!10代のはいかにもメイクな感じ。40代の彼も十分に美しいですが、やっぱりシワも増えるし老けるのね~。
Commented by CaeRu_noix at 2009-02-16 00:47
めかぶ さん♪
自分がよかった映画の酷評を読むのはヤですよね。それが誰でも腹立つのだから、目の肥えた人と認めている場合は尚更ショックでしょう。
ま、私の態勢はめかぶさんとは逆で、大多数がフランス映画は苦手、アート映画は退屈だと言うのに抗いたくて、メジャー映画のわかりやすい大味な娯楽性がもてはやされることが不本意で、メジャーであるほどにダメな映画はダメ出ししたくなるのでした。めったにしませんけどね。範囲外のはそもそも見ないし。
拡大上映系でも作家性の強い監督のはやはり気に入る比率が高いですわ。『セブン』等は好きじゃなかったから、フィンチャー映画がよかったとはビックリ。

なるほど。デイジーが前衛ダンスの道に進んだ意義かぁ。体の衰え/老いと切実に向き合わざるを得ない職業ですもんね。映像的に美しいばかりでなく、よりテーマに沿ったものだったんだなぁ。
女は男よりも老いを恐れているものだと思うけど、この映画で私が感じたことに限っていえば、それが哀しいというより、老いることだって美しいなぁと。若さに価値をおく傾向にある日本に鉄拳!

ジョーブラックのブラピは最高に美しいですよねぇ。変わらないようで、彼も歳をとったんだなぁ。
Commented by cinema_61 at 2009-02-16 16:22 x
こんにちはかえるさん。
私メもオスカー候補作ということで多少眉唾で観にいきましたが、期待していなかっただけに、余韻が残りよかったです。
確かにCGの技術なくしてはできない映画だけど、時計を逆回ししたところで、その人にとっては一度しかない一生!それを自分だけ精神と肉体が相反して流れていく~なんと辛いことでしょう。
私にも「時間よ止まれ!」と思いたい時期がありましたが、ベンジャミンとデイジーにはまさにその時期が頂点だったのですね。

流れる音楽(ピアノも含めて)や、ブラピがバイクで駆け抜けるシーンが気に入っています。フィンチャー監督の作品か?と思わせる仕上がりなのでは?
私も「ジョーブラックによろしく」のブラピが一ベスト!(ちょっと垣間見れた!)でも、来日時のパパぶりもよかったかな。
Commented by CaeRu_noix at 2009-02-17 00:06
cinema_61 さん♪
私としても当初はさほど気になる映画ではなかったんですが、フィンチャー監督作というのが嘘のように、オスカー候補なのも納得の味わいのある感動作でありましたよね。余韻がいっぱい。
原作のアイディアそのものは風変りなお話という感じなんだけど、そんな切り口によって、人生の意味を物語る深遠な映画に仕上がっており。
自分だけが人と違って若返っていく特異な人間だっていうのは辛いったらありゃしないですよね。
でも、このベンジャミンはむやみに悩んだりせずに、自分の人生を受け入れて、出会いや経験を大切にしながら日々を送っているところがとてもよかった。
短い間だったけど、彼とデイジーがほとんど同世代の状態の時に愛し合って共に暮らせたことはステキでした。
時間よ止まれー、巻き戻したいー、やり直したい、リセット!って思うことはしょっちゅうなんですが、時間の流れはどうしようもできないからこそ、人生は貴重なものなんですよねぇ。ふぅ。
フィンチャーは音楽のセンスも抜群ですよね。
ブラピのライダー姿もステキでしたね。
なんだかんだ言って、常にカッコよい長年のスター。
Commented by minori at 2009-02-20 18:09 x
こんにちは、かえるさん。
オスカー候補になるなんて夢にも思ってない時期に見た映画でしたー。でも、長い割りに飽きずに見れた上になんかしみじみ考えてしまういい作品でしたよ。それにしても凄いですね、技術が。最初はあまりブラッド・ピットを意識しませんでしたが、ほんの少し若くなるだけで、ああ、ブラッド・ピットだ!と思ってしまうほどウマいこと顔が作られていました。彼の年齢とディジーの年齢をちょっと年表にして見ておけば…と混乱しちゃった点はありましたが、それでもあのホントに泡沫のときを過ごした二人が幸せでありつつ切なくて…しみじみ余韻に浸ってしまいました。
若いブラッドはやっぱりカッコよかったし!懐かしい彼に会えた気もしましたよー。
Commented by CaeRu_noix at 2009-02-22 09:52
minori さん♪
そうかぁ、そんなに前にご覧になっていたのねぇ。
日米同時公開されるものも時々あるけれど、それは一握りの超娯楽大作のみで、アメリカ映画でも日本の公開ってば遅いってことね。
私も、ブラピ主演フィンチャー監督作のこの映画のことを最初に知った時は、アカデミー賞に絡むようなものになるとは思っていなかった感じ。だって、フィンチャーですよ。
でも、見てみたら、賞レースを賑わせるのも納得の良質なものであったのでビックリです。
そうベンジャミンが生まれてしばらくの頃はブラピがやっていると言われなくちゃわかんないですよね。だけど、目もとなんかに時々その面影が感じられたりするのが面白いもので。
とにかく、若者顔も老人顔もこれまでに見たことがないほどに自然に映し出されていたのがグッドでした。(よくあるものは皺の線だけがやけにくっくりしたメイクだったりとやや不自然なんだもの。)
そうそう、私も年代とデイジーの年とベンジャミンの実年齢と身体年齢のと年表を作成したくなっちゃいました。
いろんな感銘ポイントのあるしみじみよい映画でしたねー。
Commented by シリキ at 2009-03-13 17:51 x
遅まきながら観てきました!さすがアカデミーでメイクアップ賞とっただけのことありますね。不自然さを感じさせる所か、最後に登場する十代?の彼はうっとりする程美しかったー!実は、私ってブラピをスクリーンで観賞するの初めてだったんです。彼が一番光っていた時に今よりもっとアンチハリウッドだったので(笑)

ベンジャミンは老人施設に育ったことで他のお子さんとの異質さにそれほど深刻にならず良かったですね。彼の成長過程でも良い人たちに恵まれて...そのへん、やはり脚本が「フォレスト・ガンプ」の人だなあって思いました。きっとデビット・リンチやテリー・ギリアムだったら、主人公を女性に変えてみるとか、もっと虐めなイバラの道を歩きそう(笑)辛口ですがその辺が私にはちょっと物足りないのでした。

とはいえ、登場人物達は魅力的な人多かったですねー。ケイトもバレエダンサーとして本当に美しく強くて...タトゥーの船長が印象に残るなあ。
時計の針を逆回転してみても、本当に欲しいものは簡単には手に入らない。そして、自分の老後のことをなんだか思いめぐらしてしまう作品でした。
Commented by CaeRu_noix at 2009-03-14 01:39
シリキ さん♪
メイキャップでここまで若さを再現できるとは驚きですよねー
おお、ブラピ初スクリーン鑑賞おめでとうございますー
ブラピの最も輝く頃って、いつ頃でしょうかね。90年代?
ブラピといえばメジャー俳優ですけど、わりとシブめのセレクトもしていて、いかにもなハリウッド大作派の俳優でもないので、私はぼちぼち劇場でも見続けてきた感じですー。

とにかくファンタジー色に包まれていましたよね。
現実的には、ベンジャミンのように生まれてきたら、本人も家族ももっと悩むでしょうね。
原作は結構シュールだったのに、まさかフィンチャーがこんなにファンタジックな感動作に仕上げてくれるとはー。
シリキさんはこういうテイストより、リアルな問題を取り入れ、もっとシュールに悲劇的にいく方がお好みだったのでしょうか。
リンチはこういう原作ものはやらないような気もしますが(題材にしても全く別もののオドロオドロシイ系になりそう)、ギリアムだったらブラック・ユーモア路線でいきそうな気がしますよね。

歳をとることに不安を感じる私たちに、ならば逆行することが幸せだと思うかい?と問いかけるアプローチが素晴らしいですよね。
考えさせられましたー。
Commented by mi10kuma at 2009-03-15 00:46
シリキです。mixiの方にもさらっと感想アップしましたー
Commented by CaeRu_noix at 2009-03-17 01:19
シリキ さん♪
お知らせありがとうございます。
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