かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『大丈夫であるように Cocco 終らない旅』
2009年 03月 05日 |
あなたがいるから、きっと大丈夫。

アーティスト Coccoのデビュー10周年を記念した全国ツアーを追ったドキュメンタリー。



私が信頼する是枝監督が一ミュージシャンのドキュメンタリーを撮ったというのは少し意外な気がしながら、彼を突き動かす何かがあったのだなぁと興味を持った。だけど、シネマライズで上映された公開1週目には優先順位の関係上行けなくて、2週目以降のライズXで音楽ものを観るのは気が進まなかったして一度は見送ってしまったの。でも、これがまた、シネマート六本木でかかることを知り、もはや見逃せまい。

だってね、
"泣きながらカメラを回したのは生まれて初めてだ。
この感情を一人でも多くの人たちと共有できたらいいなあと、今、強く思っている。
--映画監督 是枝裕和
"
なんて文が、フライヤーの裏面に書かれているんだよ。
それはやっぱり気になるじゃない。よほどのものなんだなって。

そして、それはシンプルなつくりながら、衝撃的なほどに感動をよぶドキュメンタリー作品であった。ちゃんと観ることができてよかったなって思ったよ。うん、この感情を共有できてよかった。何しろ、カメラを回す任務をもった人が泣いちゃうくらいなのですから、気楽に見て聴いて感じるだけでいいただの観客の私なんて、涙を止める努力をする必要もないわけで、とめどなく涙が流れてしまうのね。

ミュージシャン、Coccoのことなんて、ほとんど何も知らなかったし、歌を丸まるちゃんと聴いたこともなかったかもしれなくて。そして私は、今まで知らなくてごめんねーって思った。彼女が、六ヶ所村のことを今まで知らなくてごめんねって言ったのと同じようにそう思った。沖縄出身というアイデンティティがこういう意思をもって表現されていたとは少しも知らなかった。ステージから会場の皆に語りかける、独特の方言をまじえて、親しみをこめながらも真摯に語られるCoccoの言葉の一つ一つ、その思いにグワワーンと感情が揺さぶられるの。

ジュゴンのいる海が米軍基地移設予定地であることを知って、「ジュゴンの見える丘」という歌をつくったのだって。彼女の地元の人たちが、基地を受け入れざるを得ない暮らしの中で抱えてきた思いの数々を、彼女はあの痩せた体で精一杯受け止めて、その祈りが歌になるのだよね。こんなに歌声も歌詞もメロディも、澄んでいてしなやかでやわらかであればあるほどに、その祈りが聴く者の心に深く染みわたってくる。強い力に抵抗をするのにもいろいろなやり方があると思うのだけれど、うわー、これってすごいステキだよ。ジュゴンは泳ぎ、Coccoは歌う。

沖縄というワードから、ふとアクターズスクールなんかのことを思い出してしまったのだけど、ああいうふうに、芸能ビジネスの中で才能をもった少女が風土の欠片も感じさせない流行ものファッションアイコンになっちゃうのは少し寂しい気がしたの。もちろん、皆が皆、故郷を背負う必要はないとは思う。でも、沖縄で生まれ育ったことがアーティストCoccoの大切な要素になっているということに、私はとても感銘を覚えたの。LIVE会場の"ひめゆりのおばあちゃん達"の楽しげな姿も印象的。垣根がなくて、誰しもの胸に響く音楽はなんて尊いのだろう。

映画の最初の方では、彼女のエキセントリックな風貌と話し方、その個性にすぐには馴染めずにいたのに、ふと気がつけば、その飾らない人柄に魅了されていた。そして、彼女の繊細な感受性と、崇高な意志に何度も感慨が訪れる。素材の素晴らしさの上で、是枝監督の選んだシーンが紡がれたわけだから、もうどの場面も、その語りも、どの歌もキラキラしているのだよね。『もののけ姫』の話もすごく面白くて感動的。彼女が特別な存在なんだっていうんじゃなくて、彼女を通して、人間ってすごいなぁ、捨てたものじゃないなぁって思わせられるの。
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by CaeRu_noix | 2009-03-05 22:26 | CINEMAレヴュー | Trackback(3) | Comments(4)
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Commented by えいはち at 2009-03-06 10:21 x
かえるさん、コメント&TBありがとうございました。
ライズX、僕は初めてだったんで、あんな物置を改造したようなところだったとは知りませんでした。
でもこの作品は「音楽もの」というわけでもなかったので、気になりませんでした。
>彼女の繊細な感受性と、崇高な意志
まさにこれにつきると思います。是枝監督は見事に紡いでくれました。
ファンのみをターゲットにしたDVD発売ではなく、劇場公開されて本当に良かったと思います。
Commented by CaeRu_noix at 2009-03-07 00:53
えいはちさん♪
こちらこそ、ありがとうございます。
本作がシネマートで上映されると知った時に観に行くつもりではいたのですが、先日「ポーラX」の記事でえいはちさんがこの映画のこともコメントされていたので、その偶然にお告げめいたものを感じ(笑、絶対に行こうって思ったのでした。

ライズXは、酷いですよねぇ。せっかくの映像があんな小さい見にくいスクリーンでは台無し・・。が、そうですね、本作はそれほどに音楽ドキュメンタリーというんでもなく、映像勝負タイプでもないので、それほどの支障はなかったかもしれませんね。
でも、キャパが小さいゆえに休日などはいつも満席になっていたようで、そんなに人気があるんだから、大きいハコでやればいいのにとライズ界隈に行くたびに思ってました。

本当にシャーマンのような女性ですよね。
是枝監督が彼女を撮らずにはいられなかったということが大いに納得できました。そんな熱い思いがあってこそ、その魅力はめいっぱい凝縮して映し出されていた気がします。
そうですね。DVDだけだったら、私は見なかったでしょう。是枝監督が撮って劇場公開されて本当によかったですー。DVDになってからも、多くの人に見てもらいたいですが。
Commented by らでぃー at 2009-03-13 06:09 x
観ました!

とても感動しました。是非ファンの方以外にも観て頂きたい映画です☆
Commented by CaeRu_noix at 2009-03-13 10:33
らでぃー さん♪
コメントありがとうございます。
私もとても感動しました!!
私は別段Coccoファンではなく、是枝監督ファンとして観たという感じなんですが、思いのほか、Coccoその人に魅了されました。
本当に、多くの人に観てもらいたいですね。
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