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『いのちの戦場 - アルジェリア1959 -』 L'ennemi intime
2009年 03月 08日 |
戦争を知らない世代のブノワ・マジメルが1959年のアルジェに迫る。

フランス領アルジェリアで、独立を求めて蜂起したアルジェリア民族解放戦線(FLN)に対するフランスの軍事作戦は強化される中、カビリア地方の山岳地帯で闘う小隊に新しく赴任したテリアン中尉。



「アメリカがベトナムを描いたように、フランスもアルジェリアを描かねばならない」と愛しのブノワ・マジメルがフランスでタブーとなっていたアルジェリア戦争についてを映画を自ら企画したという。ブノワの思いが嬉しいじゃないですが。

映画好きになってほどなくするとベトナム戦争について描かれた映画はさんざん目にすることになった。だけど、アルジェリア戦争について描かれたものは、その比ではないほどに、見聞きする機会がなかったよね。(さらりと触れられたものさえも、レネの『ミュリエル』とか数えるほどしか知らないかも。)もちろんそれは元々ハリウッド映画に比べたら、日本で観る機会のあるフランス映画の数が絶対的に少ないことが原因。でも、それは長い間タブーでもあったのだね。1954年から62年まで続いたその戦争の存在自体をフランス政府が公式に認めたのは、1999年だったという。フランス兵の死者は2万7千人、アルジェリア人の死者は推定30万から60万人というほどのものでありながら・・・。それが公式に認められてからも、残念ながら、フランス映画界ではなかなかその題材が直接的に描かれることはなかったようだ。そして、74年生まれのフランス俳優ブノワが立ち上がる。とれびあん。アルジェリア出身の移民二世の物語なんかを観る機会の方が多かった昨今、立ち返ってこのテーマに触れることができてよかったな。

技師なのに志願して赴任してきたブノワ扮するテリアン中尉は理想主義の人。初めのうちは、ブノワたんったら、トムクル的に、自分が立案したのをいいことに、主演で思う存分優しくてカッコいい男役をやるつもりなんだろうかと疑った。だって、テリアンは、戦地に不似合いなデリケートな優しさをもつ善良な男なんだもの。が、ほどなくして、それはカッコいい男にはほど遠い、けっしてできる上官とはいえないあまっちょろい男だということが露呈してくる。彼のよみの甘さで、変装した敵を見過ごしそうになったり、逆にその教訓を刷り込み過ぎて、敵じゃない人たちを撃ち殺してしまうことになるという展開は印象的。そこが戦地でなかったら、優しいテリアンはステキな人だったはずなのに、ここでは行動が裏目に出てしまう危なっかしい上官。戦争は無情にも人間性の価値を反転させてしまうのか。

その任務にはふさわしい男ではなかったテリアンだけど、彼を何度も助けてくれたアルベール・デュポンテル扮するドニャック軍曹の存在感は卓越していた。このアルベール・デュポンテルは最高にいいよ。デュポンテルって、近頃日本公開された映画では、小説家だったり、ピアニストだったりしたんだけど、彼の筋肉質なたくましさって、文科系キャラにはそぐわない気がしていたから、この人はソルジャーが似合う男だよなーって実感してこのキャステイングに大満足。対称的なテリアンとドニャックのキャラクター、そのやり取りが私の見どころでありました。終盤、ドニャックの言葉で、テリアンの最期についてが語られていたのがまたよかったな。キャストといえば、薬指の標本技術士マルク・バルベが出ていたことも拾いものな嬉しさ。前歯を見せるところが最高。

戦争映画としてはスタンダードな感じかなと思うのだけど、フランス俳優贔屓の私はこの競演を楽しみつつ、アルジェリア戦争とはこんなものであったのかを疑似体験できたことは有意義でした。『チェ 39歳別れの手紙』の印象も色濃い今、ゲリラ制圧のための政府軍という言わば逆側からの目線で闘いを追ったことも興味深いものだったな。マグレグの風景は大好きなのだけど、その牧歌的な場所が一瞬にして真っ赤な炎と黒煙に覆われてしまう武器兵器の怖ろしさには何度でもゾッとしてしまうの。戦地では空回りしていたテリアンが抱いていたようなヒューマニズムそのものがちゃんと機能する世界であらんことをブノワと共に願うのだー。
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by CaeRu_noix | 2009-03-08 23:40 | CINEMAレヴュー | Trackback(5) | Comments(2)
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Commented by mezzotint at 2009-04-09 01:19 x
かえるさま
今晩は☆★
まったくもってこのような戦争があったことさえ知らず(汗)
色々勉強させてもらいました。戦闘シーンはチェ・ゲバラシリーズ
同様、リアルでした。ベルトー大尉役の方が、薬指の標本のおじさん
だとは・・・・。まったく気づきませんでした。
Commented by CaeRu_noix at 2009-04-10 07:26
mezzotint さん♪
私もこの戦争のことを知ったのは、フランス映画を観るようになってからのような気がしますー。
映画は歴史のお勉強にもなっていいですよねー。
その史実を知れば、さらに別の映画のディテールも味わえるようになったりしますしね。
フランス映画でもリアルな戦闘シーンが撮れるのですよね。
ベルトー大尉、鑑賞時には私も標本士だとは気付かなかったんですが、後で知って嬉しくなりました♪
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