かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY
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『ゼラチンシルバーLOVE』
2009年 03月 20日 |
レトロに近未来SFチックな感触。

向かいの建物に住む女を窓からビデオカメラで撮り続ける男がいた。



ベテラン写真家の操上和美が72歳にして初メガホンをとったという。写真家が撮る映像とはどういうものかと惹かれてしまう。前に観た若手女流写真家が監督した映画に、ワンショットの構図はセンスいいのに、動画としての面白みは少し足りなかったものがあったりしたのだけど。でも、本作のアプローチは興味深くて、私の求めるものはしっかと表現されていた感じ。予想どおりに良くも悪くもアート映画。そういうのが好きじゃない人にとっては、ストーリーがつまらないだとか退屈なタイプなのだろうけど、私はこういうの大好きなので、映像世界に耽溺して、ばっちり楽しめちゃった。砂漠の虫映像から心掴まれる。

瞬間を静止画としておさめることを生業とする写真家が、時間の流れを物体の動き・変化を映像で撮る機会を得た時に何を撮りたいと思うのかということにとても興味があった。映画でありながら、あえて主人公永瀬正敏は写真家であるという設定が面白い。それなのに、なぜか彼は部屋で向かいに住む女をビデオに撮り続けているというのが謎めいていて。最初に本作のシノプシスを知った時には、主人公の男は個人的興味のもとに向かいの女を撮っているのだと思っていた。そう、よくあるストーキング系の覗き見ものなのかなぁって思っていた。それがそうではなくて頼まれ仕事であり、彼自身もその理由目的がよくわからないままに彼女を観察し、意図せずに彼女に惹かれていくという物語であった。頼まれ仕事であったから、あくまでもビデオを使用していただけであり、彼自身が彼女に惹かれた時にはやはり、ファインダー越しに見つめて、その姿を写真という静止画にせずにはいられない衝動が何とも興味深いのだった。ビデオ映像を映すモニターに向かってシャッターを切る男という画ズラにはニヤリ。

今の宮沢りえちゃんは、同性の自分から見ると監督が思うほどにフォトジェニックな色気はないような気もしたのだけど、ゆで卵やアイスクリームを食べる口元のエロティシズムはさておき、この映画には似合う存在感をもつファッショナブルな謎の女でありました。本作の世界が醸し出す雰囲気は、昭和なレトロ感と近未来チックなクールな無機質さが混ざり合っていたところが一番の魅力だったの。そういうレトロ風味のスタイリッシュ空間には、鮮やかなサンライトイエローのコートをまとうりえちゃんの姿がハマっていたと思う。半熟卵の黄身色のコート。彩度をおさえた暗めのひんやりとした映像に、浮かぶサンライトイエローの鮮やかさが魅惑的。古めかしさをまといつつもまるで近未来SFのような味わいなので、リアリティがないのがむしろ似合っていた。アニメでは時々見かけるこういう独特のテイストが実写邦画でシリアスに表現されるのは意外に新鮮。

ストーリーラインはシンプルながら、要所要所のズラし方が面白かったな。ビデオを何度も巻き戻して見ながら、何の時間を計っているんだろうと思ったら、絶妙のゆで時間の測定だったのかって。彼は彼女に惹かれたのと同時に、抜群のゆで加減の美味しそうなゆで卵に惹かれてしまったのだなぁっていう描写がユーモラス。女としての自分に興味を持った男だとはつゆ知らずに、敵と誤認して監視する男の前に現れた皮肉。アイロニックな終焉を見て、この写真家の燃焼した生に思いを馳せるのだった。写真は動いているところを見たくなるもので、動画は静止せずにはいられないもので。
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by CaeRu_noix | 2009-03-20 11:32 | CINEMAレヴュー | Trackback(1) | Comments(4)
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Tracked from いとしこいし ーいとしい.. at 2009-03-21 02:57
タイトル : ゼラチンシルバーLOVE @試写会
ゼラチンシルバーLOVE 2/26(木)@ヤクルトホール 男は24時間、向かいの女をビデオカメラで監視し続ける。 殺風景な部屋で毎日卵をきっちり12分30秒ゆで、卵を食べた後は着飾って出かける美しい女。  「あの女はいったい何者なんですか?」 依頼人に尋ね... more
Commented by こべに at 2009-03-21 03:10 x
こんばんは!かえるさん☆
いつUPするのかなぁーと楽しみにしてました!

そっか、レトロなのか!
音楽が古めかしくってエレキがないてたのも
あえてだったのですね~。

りえちゃんがあまり好みではなかったので
りょうちゃんのよなクールな美人さんだったら
スキだったのになーんて思ってしまいました。
Commented by CaeRu_noix at 2009-03-22 10:07
こべに さん♪
ありがとうございますー。
こういう映像、雰囲気がウリなタイプって、感想が書きづらいから、レヴューは書かないことにしようかとも思ったのだけど、世間一般的には不評だとしても私はよかったよーってことを一応声にしておこうって。
スタイリッシュ風でありながら、昭和レトロな空気があふれていませんでした?
そのタッチが魅力だったんじゃないかと思えました。
鳴くエレキの哀愁も合っていたような。w

りえっちはいい女優さんだと思うけれど、最近はめっきりおっとり柔らか和風女の方が板につく感じですよねー。
完璧な仕事をするスナイパーにはとても見えないー。
そう、そういうのはもうちょっとシャープな印象のあるクールビューティ女優の方がハマるんじゃないかと思えました。
ゆで卵をエロティックに食べることが重要なら、それはそれでオーディションでもしたらよかったのにって思ったし。
サンタフェりえっちは昔からヘルシーなお色気の方が得意のような感じで、ファムファタールじゃないんですよね。
ざんねん。
Commented by ガオ at 2009-04-08 04:17 x
はじめまして。お邪魔します。
この映画の検索していたらコチラのブログにたどり着きました。
かえるさんのレビューすごく素敵で
思わず自分のブログの日記ないにリンクしてしまいました。
TBがうまくいかなかったのでコメントにて報告します。
事後報告でごめんなさい。ほんとに、ちょっとレトロ風味なところと
SFチックな感じが絶妙の映画でしたよね。
操上監督、また撮ってほしいです。それでは、これからも
色んな映画たちのレビュー楽しみにしていますね。
Commented by CaeRu_noix at 2009-04-09 00:01
ガオ さん♪
はじめまして。ようこそ、いらっしゃいませ。
記事内リンク、ありがとうございます。
ガオさんは永瀬さんがお好きなんですねー。
私も結構好きなんですが、かつて日本映画といえば、浅野と永瀬と思っていた割に、永瀬さん出演作はあんまり劇場鑑賞していないことに気づきました。
本作の永瀬さんの存在感はとてもよかったですよねぇー。
昭和レトロなテイストによく似合うたたずまいですよね。
この手の映画はいつも広く一般ウケはしない感じなんですが、私は大好きですよー。
映画は映像が何よりも大事ですものー。
操上監督、また撮ってほしいですねぇ。
写真作品の方も見てみたくなりました。
myブログにもまた是非遊びにきてくださいねー。
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